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応募書類・2009

立岩 真也 2009


■「進行性難病者の在宅生活移行・継続支援のための調査研究」申請書類
 →採択されませんでした(2009)。
 以下のような計画に適した研究助成などありましたらお知らせください。
 →TAE01303@nifty.ne.jp

■申請額638.5万円

■事業・研究の概要
 ALS(筋委縮性側索硬化症)筋ジストロフィー等の難病の人たちの中に病院・施設を出て暮らそうという人がいる。他方、病院を出たくなくとも、出されてしまい、次の生活を始めざるをえない人がいる。その人たちの在宅生活への移行の支援、移行の後の支援がとても大切である。だがなされるべきことがなされていない。どのような支援がどれだけ必要なのかという基本的な情報もない。重度障害を有する難病の人たちが、できるだけいたい場所にい続けるために、また移りたい場所に移れるために、そしてその時、むやみに急がされることなく、待たされることなく、様々な窓口をたらい回しになることなく、また、間違った情報を得てしまったり、知るべきことを知らされないままに置かれることがなくなるために、調査・研究を行う。現にどれだけがなされ、なされていないのかを調べる。何を誰がするのがよいのか、どれだけの人・知識・技術があれば、どれだけのことができるのかを明らかにする。


■代表研究者(事業者)
 法人・団体等の場合は施設の概況、事業開始経緯、収容能力、立地、職員数等もご記入下さい。

立岩真也。1960(昭和35)年8月16日生。専攻:社会学。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。千葉大学文学部助手、信州大学医療技術短期大学部専任講師・助教授等を経て、現在立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。単著として『私的所有論』(1997)『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』(2000)『自由の平等――簡単で別な姿の世界』(2004)『ALS――不動の身体と息する機械』(2004)『希望について』(2006)『良い死』(2008)『唯の生』(2009)。共著に『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』(共著、1990、増補改訂版1995)他多数。文部科学省科学研究費グローバルCOE「<生存学>創成拠点――障老病異と共に暮らす世界の創造」拠点リーダー、障害学会理事、日本生命倫理学会理事、等。

■実施担当者・関係スタッフ

□ 実施担当者:天田城介(1972年 10月4日、立命館大学大学院先端総合学術研究科(以下※)准教授)/井口高志(1975年12月7日、信州大学医学部准教授)/川口有美子(1962年12月8日、日本ALS協会理事、※院生)/佐藤浩子(1952年8月19日、東京都中野区区議会議員、※院生)/伊藤佳世子(1972年10月8日、千葉大学大学院人文社会科学研究科院生、株式会社りべるたす社長)/西田美紀(1967年9月25日、看護師、※院生)/武藤香織(1970年12月20日、東京大学医科学研究所准教授)/河原仁志(1957年2月6日、国立病院機構八雲病院小児科医長)
□ 関係スタッフ:長谷川唯(※院生)/山本晋輔(※院生)/堀田義太郎(※ 日本学術振興会特別研究員)/葛城貞三(滋賀県難病連絡協議会事務局長、※院生)/北村健太郎(※生存学COEポストドクトラルフェロー)

■当該事業ないし調査研究について(別紙補足も可)

(1)背景ないし必要性
 ALS(筋委縮性側索硬化症)や筋ジストロフィー等の難病の人たちの中に病院・施設を出て暮らそうという人がいる。他方、病院を出たくなくとも、出されてしまい、次の生活を始めざるをえない人がいる。その人たちの障害は重度であり、医療的ケアも必要とする。また進行が速く、必要が変化していく。
 その人たちの生活への移行は重要な課題である。だが病が進行し重度障害をもつに至った人が最初から独力で制度を知り使いこなすことは難しい。支援の必要がある。入院中に生活を始める体制を整え、退院後も医療機関と連携をとりつつ支援していく必要がある。しかしその支援の仕組みはないに等しい。使える制度も、専門職の知識不足や医療・福祉の連携の不備などから、うまく使われていない。現在、入院中にこの種の業務を担当するのはMSWとケアマネージャーだが、両者とも、主に家族同居の要介護高齢者を対象としているため、知識等に限界がある。誰もこのままでよいと思っていない。
 しかし、事態の改善のために、具体的に、どんな仕事がどれだけ必要なのかという基本的な情報もない。現在、どれほどのことがなされ、なされていないのか、知られるべきことの中のどれほどが知られ、知られていないかを調べる必要がある。生活を開始し維持していくために、誰がどれだけのことをすればよいのかを測定する必要がある。同時に、その手前のことして、「在宅移行」を困難にしたり、他方でむやみに急がせてしまう要因を探り、本人も支援者も無理をせずにすむ制度の構築が求められている。

(2)目標
 重度障害を有する難病の人たちが、できるだけいたい場所にい続けるために、また移りたい場所に移れるために、そしてその時、むやみに急がされることなく、待たされることなく、様々な窓口をたらい回しになることなく、また、間違った情報を得てしまったり、知るべきことを知らされないままに置かれることなのないように、どんな支援が必要であり、また可能であるのかを明らかにする。具体的には
 1)重度障害者、とくに神経難病の人たちの療養生活の実態を調査する。とくに、病院、福祉施設、在宅といった生活形態に関わる差異、生活形態の変化・移行に伴って生じた事態・問題に焦点を当てる。
 2)障害別、疾病別に、また施設・病院別にかなり差異のある、退所・退院を促す/引き止める制度的、経営的等の諸要因を明らかにする。制度の変遷と現実を分析する。病院・施設に聞き取り等を行う。
 3)実際に本人の移行支援、在宅での生活支援を行いながら、その内容を記録・分析し、支援内容と課題を明確にし、制度化に向けた基礎情報を整理する。
 4)医療・福祉の専門職者への聞き取りや3)の調査の中で、支援者とくに専門職たちが何を知り、何を知らないののか、どんなことに困難を感じているのかを明らかにする。
 5)以上の調査・研究をもとに、具体的で実現可能な仕組みを提案する。1)〜4)で明らかにされるだろう地域・組織・人による差異・格差を受け止め、全国どこでも使えるものとして、それを示す。

(3)助成金で行う「事業」又は「調査研究」の概要 (具体的内容とスケジュール等)
 1)長期入院中の筋ジストロフィーの人たちに、また退院した人に聞き取りを行う(主担当:伊藤)。全国で在宅生活をするALSの人たちについて聞き取り等を行う(主担当:川口・井口)。その結果に、既に私たちが有する、在宅、在施設・病院の暮らしについての調査結果を加え、その生活と生活に伴う困難を明らかにする。とくに、病院・施設から在宅への移行が、なぜ、どのようにしてなされたのか、誰の支援があったのか、なかったのか、誰からどんなことを知らされ、知らされなかったのかを明らかにする。
 2)とくに病院について、例えばALSでは退院を促さざるをえない事情があり、他方筋ジストロフィーについては事情が異なる。そしてそれは、この数十年の間にずいぶん変化もしてきている。在院日数の短縮等に関わる政策の推移をまとめる。脱施設化、社会的入院等に関わる言論・言説の普及、変遷についても検証する(主担当:天田・立岩)。病院や施設の運営に関わる人たちからも協力を得て研究を進める(主担当:伊藤・河原)
 3)これまで担当者・スタッフは、2人の単身のALSの人の病院からの移行過程を、支援してきた。2人の筋ジストロフィーの人の移行、以降後の支援も続けている。それを記録してきた。その一部は学会報告、論文にまとめられているが、まだ発表されていない部分が多くある。そしてその人たちの生活は続いている。記録を取り、分析し、発表することを続ける。さらに、新たに移ろうとする人、移るざるをえない人は多くいる。それに、部分的に、あるいは時には相当に長く細かに関わりながら、そこにどんな問題が起こってしまうのか、何があれば、時に何がなければ、あまり消耗せずにすむのかを明らかにする。その支援の全体を細かに記録することによって、必要なものとその量を明らかにする。それはたんに増やすべきことを示すことにならないははずである。無知に起因する、また支援者の連携の不在や仕事の受け渡しにおける不適切さに由来する、膨大な無駄を省くべきでありまた省くことが可能であることを示すことができるはずである。(主担当:伊藤・川口・西田)
 4)多くの場合には3)の支援・調査と並行し、その中で、支援に関わることになった看護師、保健師、医師、医療ソーシャルワーカー、ヘルパー、ケアマネージャー、ケースワーカー、行政官、そして家族、等が、どんな困難を抱えることになったのか、それにどのように対したのかを調査する。そして、その困難に対し、その人自身が知識・技術を得て自ら担うのがよいのか、難病者本人も含む他の人に仕事を渡すのがよいのか、どのような選択肢があり、その組み合わせがあるのかを明らかにする。医療的ケアを巡る、支援者間の綱引きあるいは譲り合い、その打開の試みも調査する。(主担当:佐藤・西田・武藤)
 5)以上をまとめ、報告書を作成する。以上の研究は既に開始されているものではあるが、さらに長い時間の丹念な調査・研究を必要とする。そこで研究期間を2年間とする。その期間内、随時、公表可能なすべてをHPに掲載していく。すくなくとも、研究期間内に1冊、終了後に1冊、書籍を刊行する。それらにおいて、具体的で実現可能な仕組みを提案する(主担当:立岩・武藤)。

■(4)特筆すべきポイント等

 @実践者でもあること:本研究実施担当者・スタッフは、この約2年、4人の地域移行を支援し、その後も関与を継続し、同時に調査を行ってきた(→(3)の3))。例えば西田は、看護師としてその一人に偶然関わることになり、以後、支援を続けている。その支援を支援することになった川口は、日本ALS協会の理事を勤め、在宅介護サービスを提供をする組織を運営している。佐藤は、中野区区議会議員として特に医療的ケアを必要とする在宅療養患者の支援を続けてきた実績と経験を有する。伊藤は病院の難病者の病棟で働いた経験から筋ジストロフィーの人の支援を始め、川口らの経験も参考に、自ら事業所を立ち上げた。「関係スタッフ」に名の連なっている人たちも、長い人では数十年、短い人ではここ一・二年、住居探し、居室の改造、介護、等々、様々な形で支援に関わってきた。本研究はその実践(苦労・消耗…)から発している。多彩・多様なかたちで、しかし多くは相当に深く、関わってきたことから、どうしてもこの研究が必要であると感じ、企画した。まずその強い気持ちがある。そしてその「素材」をすぐには処理しきれないほど既に有し、調査に協力してくれる全国各地の多くの人たちとのつながりを有している。また本調査研究は、京都における医師や看護師、保健師、難病支援相談員等が加わった地域医療福祉ネットワーク構築の実践と並行して遂行される。2008年には、調査研究代表者・実施担当者にも呼びかけ、在宅生活支援に関する勉強会・シンポジウムを開催した。今後このネットワークをさらに広く強いものにしていく。

 A研究者でもあること:そしてその人たちは、研究者でもある。川口は、介護制度に関わる厚生労働省との折衝・交渉に関わるなかで、そのサービス提供の実績が評価されることにもなり、2006年〜2007年の厚生労働省事業助成金を受けて、全国のALS患者の生活状況と制度利用状況を詳しく調査し、障害者自立支援法における重度包括支援制度の活用可能性に関して具体的提言をまとめている。この調査には、実施担当者・スタッフの数人も関わり、制度的な諸問題についての分析はすでに第一段階を終えている(☆添付文献)。また川口を含む多くの実施担当者・スタッフは、同じ大学院の同じ研究科の大学院生でもあり、その研究科が主体となっている研究プロジェクト・グローバルCOE「〈生存学〉創生拠点」のメンバーでもある。そして、その研究科の教員であり、COEのプログラムリーダーであり、『ALS――不動の身体と息する機会』(☆添付文献)等の著書のある立岩と、同じ研究科の教員であり、『〈老い衰えゆくこと〉の社会学』(日本社会学会奨励賞[著書の部]受賞)等の著作のある天田が、研究に参画しつつ、全体を統括する。また、『認知症家族介護を生きる』『病いと〈つながり〉の場の民族誌』等の著書・編書のある井口(信州大学)が、東京や京都と異なる地域の状況を調査し報告しつつ、研究全体に対する助言をも行う。武藤(東京大学)が、ハンチントン病者の生活と支援についての研究蓄積から提言を行う。河原(八雲病院)は医療者の立場から病院と地域との関わりについて報告する。

 B実績があること:そして、既に研究の実績はある。上記した著作、報告書の他、2008年1年だけをとっても、担当者・スタッフは、関連する学会報告等を40以上行なっている(http://www.arsvi.com/d/als2008.htmにその一覧がある。)この2年間で、一般報告を行った学会大会、あるいはシンポジスト・講演者として招かれ報告した学会大会として、福祉社会学会大会、日本地域福祉学会大会、日本難病看護学会大会、日本保健医療社会学会、障害学会大会、日本心理臨床学会大会、日本臨床死生学会大会、韓中居住問題国際会議、他に全国的な集会として、在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク”全国の集い”in 京都、他。また2009年に創刊されるCOEの雑誌『生存学』にも、実施担当者の西田と研究スタッフの3人による論文の掲載が決定している。それには、大学院という仕組みと、その教員と大学院生の協働と、さらにCOE(卓越した研究拠点)に選定されたことが関わってはいる。ただ、研究科自体に予算はなく、少ないCOEの予算は数多くの研究企画、とくに国際的な企画――難病の関連では、2009年2月に、韓国・中国・台湾・モンゴルからALSの人やその関係者を招聘してシンポジウムを開催、等――に費やされているから、それらによってはこの企画を遂行することができない。研究科・COEの有する資産・資源――資料室があり、難病関連の手記の類はどこよりも多く収集され整理されてある、等――を利用しつつ、新たな財源を得ることによって、この研究は実現される。

 C媒体があること:現在はCOEのウェブサイトになっているarsvi.com(http://www.arsvi.com)がある。このサイトに収録されているすべてのファイル(ページ)へのアクセスの累計は1年に800万件を超える。もちろん研究倫理を遵守しつつ、公開できまた公開すべきもののすべては、ここに掲載していくものとする。ALSや筋ジストロフィーの人にとって厚みのある本は扱いにくい。身体の小さな動きを使ってコンピュータを使い、文字を読み書きし、言葉を発する人たち――スタッフの幾人かはその支援にもあたっている――にとってホームページは便利な媒体である。また、事実上研究者しか読む機会のない媒体も不便なことがある。そして、情報の多くはできれば無料で提供したい。そんな理由もあり、ウェブサイトからの発信を強化していく。と同時に、数年の間に複数の書籍を刊行する――同時に、上記の理由により、ディジタルデータでの提供を行う――ことを目指す。まとまったものを通して読んでいこうとする時、書籍の有効性はいまだ失われてはいない。既に書籍の公刊に積極的な出版社が複数ある。

■前年度までの助成応募・決定実績(別紙補足も可)

A 当財団助成応募実績(年度・テーマ・採否等)
B 他財団・機関よりの助成実績(年度・テーマ・金額等)
平成19年度 厚生労働省障害者自立支援調査研究プロジェクト、NPO法人さくら会(代表:川口有美子) 1320万円 
 平成20年度 厚生労働省障害者自立支援調査研究プロジェクト、NPO法人さくら会(代表:川口有美子) 510万円

■連絡責任者

立岩真也
立命館大学大学院先端総合学術研究科
603-8577
京都市北区等持院北町56-1
075-465-8475(内線4725)
fax : 075-465-8371

自宅
603-8047
京都市北区上賀茂本山258-21
075-703-2121
075-703-2121
TAE01303@nifty.ne.jp


UP:20080608 REV:20080708,0805,0810,0908,1014, 1210, 20090303, 08, 0401, 24, 0504, 0615, 0914, 201003
「難病」  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa
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