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軸を速く直す
立岩 真也
2009/11/28
シンポジウム「当事者主権によるニーズ中心の福祉社会に向けて」
於:TKP大阪梅田ビジネスセンター 3階 ホール3A
■資料
◆立岩 真也・村上 慎司・橋口 昌治 2009/09/10
『税を直す』
,青土社,350p. ISBN-10: 4791764935 ISBN-13: 978-4791764938 2310
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※ t07,
■■2009/09/05 「選挙はあった。しかし」
時事通信配信 *以下は草稿で、掲載されたものは少し違います。
選挙は終わった。変化があった。ただ、この何十年もの間に、いつのまにかできてしまったものの上に、勝った方も負けた方も乗っていた。そこがつまらなかった。とくに今度与党になる側は、もっと勉強して、もっとまともなことを言えばよいのに、と思う。
この国は、税金という仕組みを使って、多いところから得て、少ないところに、必要なところにお金を渡すことをだんだんしなくなった。今度議員になった人は、いや前からの人も、このことをたぶん知らない。
消費税を巡る騒ぎの裏で、幾度も高所得者への税金を安くした。高くすると高所得者が働かなくなるとか、海外逃避が起こるとか、そして経済が悪くなるとか、理由は付けられ、繰り返された。しかしそれらは、考えてみるとあまり説得力がない。またこの政策は、レーガンのアメリカやサッチャーのイギリスのまねという面もあったが、それらの国が方針を変えた後も、日本は続けた。
こうしてじり貧になってきた予算の枠を前提にして、節約して財源を確保するのだと言う。たしかに無駄遣いはよくはない。私自身はたくさん削れると思う。だが実際にはなかなか難しい。そのお金で暮らしてきた人たちがどうなるかという問題もある。消費税はたしかに取りやすい税だが、多いところから高い割合で取る機能はない。
収入も資産も含め、多くあるところから多く得る。そして少ない人、また医療や介護など多く必要な人に渡す。税金はそのためにある。貯金や保険のようなものなら、わざわざ政府が担う必要はそうない。この基本が取り外された。外しても、合理化したり競争したり成長したら、結果的にはみなの生活がよくなるといった宣伝がなされ、信じてしまった人もいた。そして結果はひどいことになってしまった。
政府や税の存在意義の基本を是認するか、それともそうでないか。本当の対立軸はそこにあったはずだ。だが、今度の選挙ではそうはならなかった。これまでがあんまりだったから選挙の結果はこうなったが、民主党に投票した人の多くも、その公約が「ずれている」と思ったはずだ。
対立軸は基本的ではっきりしている方がよい。立ち位置がしっかりしていれば、個々の政策遂行の手際が少し悪くても冷静に見ていられる。そのためにも、歴史を知り、理屈を吟味し、あの時こうすればよかったのにと振り返り、これからはこうすればよいと思えたらよい。それが学者の仕事だとも思うから、私もその仕事をしてみている。
■■2009/09/17 「政権交代について」
『京都新聞』2009-9-17
政権交代が実現したのには、変化を求める思いと、交代しても大きく変わらないだろうという読みと両方の要素があった。
変わらないだろうという面では、防衛や外交で、結局自民とそう差はないだろうと受け止めた上で、これまでよりはすこし自主性を重んじ、アメリカに文句を言うぐらいはいいだろうといった気分があった。国際競争下の経済運営についても、そう大きくは変わらないと思われた。選挙を受けた今度の組閣でも知られている顔が並んでいる。
他方、変化は求められたが、選挙の時点では、政党も国民も、どちらに向かうか、はっきりしなかった。
自営業・農業・土建業等の人たちが自民を支持してきた。他方、正規雇用の労働者の組合は野党を支持してきた。雇用が流動化する中で、既存の枠組みで保護されず不安定な状況で苦労している人たちが、政治や組織に守られていると見える人たちに反感を抱き、小泉改革を支持した。その改革では、自由化し合理化し競争し成長したら、結果的にみなの生活がよくなるという宣伝もされた。だが貧困がさらに広がった。支持した人たちは自分の首を絞めることになった。
自民は改革の宣伝で一つ前の選挙に勝ったが、結果はよくない。旧来の支持層もいる。揺れるのは当然だった。それに対し、業種や雇用形態に関係なく誰もが生活できる政策をとると言えば、はっきりした。だがそれで多数派をとれるか、民主もためらったかもしれない。それ以前に、事態をどう捉え何を言うか、わからなかったところがある。これまでがあまりだったから選挙の結果はこうなったが、民主に投票した人も、何がどう違うのか、よくわからなかったはずだ。
障害者自立支援法や後期高齢者医療などは大きな反対に会ったが、決めた自民は引っ込められなかった。新政権の公約が実現して、いくらか生活がよくなる人は出るだろう。また年金制度の一本化はより大きな改革だ。基本的に一本化はよい。だが所得比例で「たくさん払った人がより多くを受け取る」という路線は従来と変わらない。
貯金や保険なら政府が担う必要はそうない。たくさんある方から少ない方へ、医療や福祉が多く必要な人へ、渡す。民間でできず政府しかできないのはこの仕事だ。例えば税の累進性を直す。それで経済はわるくならない。むしろよくする方向に働くだろう。
厚労大臣に年金問題で名をはせた長妻氏がなった。役人と摩擦があっても、それなりに筋は通すだろう。ただ大切なのは、制度の無駄を省き明朗にすることだけではない。基本は予算全体の組み方だ。政治全体をどちちに持っていくかだ。
民主のマニフェストは全部できないだろう。むしろ実行しなくてよいと思うものもある。高速道路の無料化もそうだ。マニフェスト通りかどうかという観点で新政権を評価する必要は必ずしもない。きちんと説明できれば取り下げてよい。国民はそれを許すべきだ。
対立軸ははっきりしている方がよい。立ち位置がしっかりしていれば、個々の政策遂行の手際が少し悪くても冷静に見ていられる。
今度の大臣には古くからの人たちもいる。事情通の強みはあるが、様々なしがらみもある。他方に、今回初めて議員になった人がたくさんいる。真面目さは評価するが、社会も政党もぐちゃぐちゃになった後に出てきた人たちで、何が政治の基本的な争点なのか、見当がついていない感がある。勉強の必要がある。それはこれからのことになる。
■■2009/11/08 「これからのことについて」
『atプラス』2:80-90(特集:21世紀の市民社会)
■「市民社会」についてのおことわり
[略]
■繰り返しになってしまうこと
……『atプラス』2 をご覧ください。
UP:20091027 REV:20091117
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