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心や精神や神経の病や障害、と社会

2009/06/07 福祉社会学会第7回大会テーマセッション 09:30〜12:00
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jwsa/taikai.html
福祉社会学会


■部会趣旨・立岩真也(コーディネイター)

 精神障害・者についての社会学の成果は、ゴフマンの古い著作を引くまでもなく、多くある。日本にも重要な業績がたくさんある。ただ、それでも、まだ行なっておいてよいことがある。一つ、比較的に少ないと思われるのが現代史に関わる部分である。フーコーの著作等があって、この領域について歴史への関心は高いのだが、意外に――むろん「発達障害」といった言葉で括られる部分もまた含まれる――例えば、日本のここ数十年を対象としたものはそう多くない。
 例えば――以下は例示である――そうした場所に存在した社会運動を対象にした研究も少ない。距離を取れるほどの離れた場所にいなかったこと、それが、保安処分、医療観察法、等々、たしかに厄介な問題に関わっていたことにもよるだろう。そこでは、当然のこと「立場」が問われてもしまう。他の障害者運動が、ときに「過激」ではあったとしても、その主張の基本に異論は出にくいのに対して、ここにはそうと言いきれない部分がある。運動そのものの内部に複雑な分岐が生じたりもする。誰かの味方になることは誰かの敵になることがある。そんなこんなで引けてしまうところがあったのかもしれない。しかし、じつはそう怖がることなく、いろいろと調べたり、考えたことを述べた方がよいのかもしれない。
 「人生物語」「歴史」「語り」を語ること、再唱するのはもちろんよいことであるのだが、多くの人は、次にどうしたものかと考えているにちがいない。ではどんな次があるのか。そんなところで考えあぐねている人もいるのかもしれない。この場が、そんな人たちにとって、いくらかの意義をもつものであったらよいと思う。

■報告

1.「アメリカにおける脱入院化――ケネディ教書以前とその後」
 三野宏治(立命館大学)
2.「精神障害者の地域生活支援の在り方の一考察――生活史聞き取り調査を通して」
 吉田幸恵(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
3.「診断名を与えること/得ることについての問題の再検討――ニキの主張を起点にして」
 山口真紀(立命館大学先端総合学術研究科)
4.「1950-60 年代のトランキライザーの隆盛」
 松枝亜希子(立命館大学大学院)
5.「「うつ」の流行をめぐるメディア作用」
 奥田祥子(慶應義塾大院政策・メディア研究科)

■cf.

ADHD/ADD
原因/帰属
抗うつ剤関連
自閉症
精神障害/精神障害者
精神障害/精神医療・本
闘病記

■報告要旨

5.「「うつ」の流行をめぐるメディア作用」
 奥田祥子(慶應義塾大院政策・メディア研究科)

 わが国で今日、うつ病患者の増加や症状・治療の長期化、それに伴う企業の対応や地域福祉のあり方などが問題となっている。
 しかし、実際には真の患者以外に、うつ病には該当しない者がそう診断されて治療を受けたり、日々の生活のなかで誤って自己を、また他者を、「うつ」であると認識している実態があるのではないか。
 「うつ」の流行、大衆化ともいえるこの現象の背景には、疾病の有無を決定づけるべき医師の診断が操作的診断導入によって揺らぐなど精神医学・医療の問題もあると考えられるが、本報告では、メディア作用に着目する。自己や他者を「うつ」であると意味づけ、また人々を受診行動に至らしめるプロセスにメディア報道が影響を及ぼしていると考え、うつ病に関する新聞・一般雑誌の報道分析から、この仮設を考察する。


UP:20090525 REV:20090530, 0914
精神障害/精神医療  ◇福祉社会学会・2009
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