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二〇〇八年読書アンケート

立岩 真也 2009/02/01
『みすず』51-1(2009-1・2 no.568):57-58 http://www.msz.co.jp


  @吉原直毅『労働搾取の厚生理論序説』(岩波書店)。ここではまだ何事かが積極的に言われているわけではない。また、著者が進もうという道がはたしてどこまで行ける道なのかについては留保するとしよう。数式もたくさん載っている。しかし、書かれて刊行されるべきはこのような本だと思う。幾つか、確認されるべきことが確認される。「搾取」について、なにかの客観的事実を述べていると考えることはないこと、だから、それをそうした事実を記述する概念だとした上で、この概念が無効であると言うこともないこと、最初から規範的含意を含んだ概念と考えるなら、この語が持っている直観的な説得力を保持し、使っていけるものになりうること。
  A荻野美穂『「家族計画」への道――近代日本の生殖をめぐる政治』(岩波書店)。何十年も仕事をしないと書けない本があって、そして、長い論文であっても論文ではよくなく、やはり本にされるべき本があって、そんな本もあまり多くはない。これはそんな本だ。そしてその仕事は終わらない。一九八〇年代より後のことについては次の本に書かれるという。
  あとは、僭越ながら、単著というわけではないにしても、私も関わった本になる。(単著では、『良い死』(筑摩書房)に続く二〇〇八年に刊行されるはずだった『唯の生』は編集側の事情で二〇〇九年初等の刊行ということになってしまった。お詫びする。)それほどの時間がかけられて作られたわけではないが――それでも、相対的には、相当の手間はかかっている――その時々に出されねばならない本もあって、二冊はそんな本になる。
  B上野千鶴子・中西正司編『ニーズ中心の福祉社会へ――当事者主権の次世代福祉戦略』(医学書院)。無駄に暗くならずに、これからをどうするかを考えて言わねばと考えた中西が発案し、『当事者主権』(岩波新書)で共著者になった上野が応じて、実現した。現在起こっている様々についての報告とともに、金のこと費用のことをどうするか等々についての案が示されている。
  C稲場雅紀・山田真・立岩真也『流儀――アフリカと世界に向い我が邦の来し方を振り返り今後を考える二つの対話』(生活書院)。一つに歴史について(→本誌に「身体の現代」という連載をさせてもらっている)、一つに戦略と戦術について。『現代思想』二〇〇七年九月号(特集:社会の貧困/貧困の社会)に掲載された稲場雅紀(アフリカ日本協議会)へのインタビューと、 同誌二〇〇八年二月号(特集:医療崩壊――生命をめぐるエコノミー)に掲載された山田真(小児科医)へのインタビューの完全版に、稲場が書いてきた文章と、山田が語る歴史に関わる長い註(おもしろい人にはきっとおもしろいと思う)を置いた。

◆荻野 美穂 20081030 『「家族計画」への道――近代日本の生殖をめぐる政治』,岩波書店,362p. ISBN-10: 4000224883 ISBN-13: 978-4000224888 \3570 [amazon][kinokuniya] ※ r01 a08
◆上野 千鶴子・中西 正司 編 20081001 『ニーズ中心の福祉社会へ――当事者主権の次世代福祉戦略』,医学書院,296p. ISBN-10: 4260006436 ISBN-13: 9784260006439 2310 [amazon][kinokuniya] ※ a02. a06. d00. t07. [了:20071022],
◆稲場 雅紀・山田 真・立岩 真也 2008/11/30 『流儀――アフリカと世界に向い我が邦の来し方を振り返り今後を考える二つの対話』 ,生活書院,272p. ISBN:10 490369030X ISBN:13 9784903690308 2310 [amazon][kinokuniya] ※,
◆吉原 直毅 20080228 『労働搾取の厚生理論序説』, 岩波書店, ISBN:4000099140 5460 [amazon][kinokuniya] ※ e05.


UP:20090106 REV:
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