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MLに配信したメール

立岩 真也 2009/01/29


 *[mlst-ars-vive]はCOE生存学創生拠点に関わる院生・教員他のメーリングリスト(2008年4月開設)。立岩がたこのMLに出したメールはeMAILsでご覧になれる。

From: "立岩真也"
Sent: Monday, January 26, 2009 7:52 PM
Subject: [mlst-ars-vive 2904] 説明というより私の見解

> 今日、片山さん・イダさんからメールいただいた件について
> ちかく、HPに私としての見解を掲載しますが、まず以下。
>
> この件については展示初日(19日・月曜)の18時すぎ、外出中に事務方から連絡がはいった。
> その夜に、まず少数の関係教員、大学事務方、COE事務局に送ったのが■1。
> (その後、別の教員数名に転送)
> その全文を引用し、若干の補足を加え、主催側の院生に送ったのが■2。
>
>  *ここでは、この企画の本体としてなされた以学館の展示について述べている。
>  *以下は事実経過を説明するものでなく、(COE拠点リーダーとしての+私としての)
>    私の立ち位置を説明するものである。
>
> あわてて短時間で書いたものであり、説明不足なところがあり、また私が伝えられた内容
> に誤りがある(この時点では具体的な学生側のクレームは寄せられて
> いなかった)が、基本的に、私は以下のように考えており、その考えは
> 今も変わっていない。
> ↓
> @(マイナス評価)を勘案してなおA(プラス)を説明することが求められる。
> 「問題提起する」「意識を喚起する」という表現では、説明として十分でないと私は考える。
> このことについては、25日のシンポジウムにおいても述べ、
> どのような(より積極的な)言い方があるのかと質問した。
> そして@について考慮すべきは、GIDの身体(裸体に近い身体)、あるいは傷ついた身体
> を見せることでは「ない」と私は考えている。
> それがある人に不快であったとして、だからその展示はいけないとはならないと考える。
>
> GIDの人に与えられる否定、否定的身体観に対して、別のものを対置する、…A
> そのために写真表現を用いること、写真に身体を提示することについて、たとえそれがある人に
> 不快を与えるとしても(@)、否定するべきではない。しかしその目的によっては十全には
> 正当化されず、かつ、@について、自ら積極的に見ようとは思わない人がいる場において
> 提示される表現、この場合には、具体的には「性的表現」についてはその限りでないことが
> ありうると考える。
> (以下にも書かれるように、その上で私はなお、今回の表現は許容されうると考えているが
> それは私の見解であって、そのようには考えない人の判断を理解する。)
>
>  *このように微妙でない場合、表現の提示を妨げる積極的な理由がない場合、
>   提示に意義があると判断した場合には、たとえ建物の管理権限がどこにあったとしても
>   積極的に主張すべきを主張するだろう。
>
> なお、この点については人の受け取り方はそれぞれ、様々であるという
> 言い方がなされる。私はそれが事実であることは認めるが、ゆえになんでも許容されるとも、
> 逆に、不快と思う人が一人でもいたらだめであるとも、考えない。
>
> 以上について当然異論はありうる。しかし、今回の件については、説得的な論を私は
> 聞いていない。
> 以上については今後説明を足していくつもりであり、また議論していくつもりである。
>
> それはこのCOEにおいてとりくんでよい主題、とりくみたい人がいればおおいに
> とりくまれるべき主題でもあると考えている。またその過程、結果を公表していきたい
> とも思う。この企画がそのきっかけとなるならよいと思う。
>
> その後、主催側院生は、学生に直接に説明するという機会はなかった
> (与えられなかった)が、求めに応じ、写真展示についての文章による説明の紙を
> 大きくし、多くして、学生の理解が得られるようつとめた。
>
> 学校側との折衝は持たれたが、双方の主張は平行線を辿った。
> (私は出張中で欠席している。)その際COEの教員は、常識はずれと思われるかも
> しれないが、そのことは承知の上で、だからこそ展示することの意義(A)を
> るる説明するという態度で臨んだと聞いている。
> それに対して、学校・建物側は、基本的に@を繰り返した。
> (最初の時点で具体的に苦情を述べた人はいなかったというのが事実であった。
> ただこのことは@を主張する場合の決定的な弱点ではないと考える。)
>
> 以下の4)の説明が不足している。あらゆることについて施設側が権限をもつとは
> 考えていない。この件についてはということである。
>
> そのほか様々があったが、23日金曜に写真は撤去された。
> このことについて本COEは同意はしていない。
>
> では1週間前のメールを、以下。
>
> ■2----- Original Message -----
> From: "立岩真也"
> Sent: Monday, January 19, 2009 9:07 PM
> Subject: Fw: 展示の件
>
> […主催側院生…]様
>
> […]
>
> 以下には、@とAを勘案し、どちらを優先させるかについての
> 権限は、結局、建物の管理者にあるということが書いてあります。
> COEの立ち位置についても以下に記してあります。
>
> 立岩
>
> ■1----- Original Message -----
>
> From: "立岩真也"
> Sent: Monday, January 19, 2009 8:28 PM
> Subject: 展示の件
>
>
>> […関係教員他…]様
>>
>> […]までお電話ありがとう
>> ございました。また[…]さんからも留守中お電話
>> いただいたようで、このメールにて返信させて
>> いただきます。私が5時40分に学校を出た直後の
>> ことであったようで、ぎりぎりまにあわない
>> ということであったようです。
>>
>> さっき(19時すぎ)帰ってきて、留守中、[…院生…]さんから
>> 電話があったとのことで、電話をかけ、
>> […院生…]さんと25分話しました。
>>
>> 1)まず私の予定から。[…]
>>
>> 2)次に本題。今回の企画の主催はCOEということであります。
>> 正確にはCOEの中での院生プロジェクトの企画ですが、
>> COEの催にはちがいありません。
>> その企画の趣旨について理解し、承認し、それが
>> シンポジウム(私も出ます)と写真展示によって構成される
>> むねの連絡・説明を受けてもいます。そしてその写真が
>> 「性同一性障害」の「身体」にかかわるものであることも説明され
>> 理解しております。ただ、その写真を事前に見ることはして
>> おりません。数枚、HP掲載
>> http://www.arsvi.com/a/20090125.htm
>> 等にあたり見たものはありますが。
>> (問題は感じませんでした。だからどう、ということはない
>> ですが。)
>> COEが組織としてかかわるのはここまでであり、あとは
>> 個々の研究者・表現者に委ねるべき(委ねるしかない)
>> ものであると考えます。
>>
>> 3)その上で、[院生]と話したのは次のことです。
>> 「公共」のスペースでの展示であり、そこにいる人、往来する人
>> にたいして不快感を与えることがよくないというのは一般論
>> としては認める。そのことは否定しない。
>> (私が言い、このことについて、[院生]は同意。)
>> そのことを認めたうえで、今回の展示は、
>> なお、展示する意義があると考えた上で、展示したものである。
>> このことは理解してもらいたい。
>> ([院生])
>> この展示の趣旨については(誤解されないよう)
>> ポスターなどで説明してきたが、このたび、苦情を言ってきたという
>> 学生に対しては、その思いをわかっていただけるよう
>> 高圧的でなく、誠実に
>> いっしょうけんめいご説明したい、話をしたいということです。
>> ([院生])
>> ということです。ですので、そのような方向で対応していただく
>> のがよいと思います。
>> 繰り返しになりますが、不快なものを晒すことはよくないという
>> ことに同意しつつ、そのすべての場合について、だからだめだと
>> いうことにはならないということであろうと。
>> @不快に思った方々の不快さと、にもかかわらずというか
>> A展示することの意義、展示したいと思った人たちの思いを
>> 考量してどうか、ということになるかと思います。
>> という意味で、不快であるという当事者がすでにいてしまっている
>> わけですから、まずは、双方が互いの考えを言う
>> というのがよいだろうと。
>>
>> (そもそもこの件について、当方に、@とAについて裁定する
>> 権限はないと思いますが)@とAとどちらが正しいのか、どちらをとるべき
>> なのかは、あらかじめは決まっていないでしょう。
>> (私自身の意見としては、この程度の「不快表現」は
>> 許容されてよかろうという意見でもあります。)
>>
>> 4)あとは「施設の管理者」としての決定というのが、おそらく
>> あるのだろうと思います。
>> それに対して、手続き論として
>> 「展示を認めたでしょ」→
>> 「しかし事前に見てない」→
>> 「それは求められませんでした…」
>> というやりとりが予想され、このたびのことがどうなるにせよ
>> 「では今度からは、すべて展示内容を見た上で、ということにします」
>> というふうになるのだとすれば、それはまったく望ましいことではない
>> と思います。
>>
>> ひとまず以上です。
>>
>> 立岩 真也

2009/01/25シンポジウム「ナルシストランス宣言」/同時開催写真展「身体と性――この曖昧な点と線
 於:立命館大学衣笠キャンパス
◆立岩 真也 2009/01/29 「「ナルシストランス宣言」同時開催写真展「身体と性――この曖昧な点と線」についての見解」


UP:20090129 REV:
立岩 真也
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