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税金の本義

立岩真也 2008/11/29 『朝日新聞』2008-11-29朝刊・京都:31 コラム「風知草」4
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[English]



  前回の続き。この国の政府にはお金がないと言われる。しかし、税金を上げる前に、無駄使いを減らそうということになる。たしかに不正な使用はなくすべきではある。ただ冷静に考えるなら、それで節約できるのはたかがしれている。次に、私自身は、支出しなくてもよいあるいは減らしてよい費目が多々あると考えるが、そこは意見が分かれるところだろう。そして、みなが知っているように、削るべきでない社会保障・医療に手がつけられてしまっている。
  そこで、仕方ない、消費税を上げるしかないということになる。所得税等では現実には取りはぐれが出てしまうのに対し、金を使えば自動的に支払うことになるから、この税の利点はある。私は絶対反対という立場には立たない。
  けれどもそれよりすべきこと、できることがある。つまり、課税の累進性、つまりたくさん持っている人がたくさん税を出す仕組みをきちんとさせればよい。多くの人が忘れているが、そして少なからぬ人が知らないことなのだが、この国はしばらく前に累進性を緩めてしまい、そしてずっとそのままにしてきた。さしあたり課税の仕方をもとに戻すだけでもかなりのことができる。だからそうすればよいと思う。
  すると、きまって言われることがいくつかある。その一つが、そんなことをすると、労働意欲を減らしてしまってよくないということである。それに一理ないわけではない。しかしやはり冷静に考えると、そうかなと思う。
  みなが知っているように、仕事をして得られる収入にとても大きな差がある。その差がこのように大きいことは、人をやる気にさせているだろうか。
  仕事の苦労に見合った差については認めてよいという人も多いだろう。ただその人は、自分もがんばっているが今ある差はその苦労に見合っていないと感じている。またその人は、多くを得ている人の中に、ずいぶん努力をし特別な能力を得た人がいることを認めるが、そうでもない人も多くいることを知っている。ただ、働かざるをえないから働いている。
  そんなところが現実だと思う。ただ市場ではそんな差は生じてしまう。それを調整するのが政府の役目でもある。そのことをすればよい。高額所得者がそれでやる気を失って仕事をしなくなるとは思えない。がんばっているが生活が厳しい人の生活はよくなる。それでその人たちの働く気が少なくなるとも思えない。

 新聞社による変更:
 自動的に支払うことにはなるから→ 自動的に支払うことになるから
 絶対反対という立場には立たない。→私は絶対反対という立場には立たない。

◆2008/10/04 「社会経験生かす大学院」
 『朝日新聞』2008-10-11朝刊・京都:31 コラム「風知草」1
◆2008/10/11 「「障老病異」個々で探究」
 『朝日新聞』2008-10-11朝刊・京都:31 コラム「風知草」2
◆2008/10/18 「良い死?」
 『朝日新聞』2008-10-18朝刊・京都:31 コラム「風知草」3
◆2008/11/08 「経済を素朴に考えてみる」
 『朝日新聞』2008-11-8朝刊・京都:31 コラム「風知草」4,
◆2008/11/29 「税金の本義」
 『朝日新聞』2008-11-29朝刊・京都:31 コラム「風知草」5
◆2008/12/13 「「税制改革」がもたらしたもの」
 『朝日新聞』2008-12-13朝刊・京都:31 コラム「風知草」6,
◆2008/12/20 「愚かでない「景気対策」」
 『朝日新聞』2008-12-20朝刊・京都:31 コラム「風知草」7,
◆2009/01/10 「前に行くために穿り返す」
 『朝日新聞』2008-1-10朝刊・京都:31 コラム「風知草」8

◆立岩 真也・村上 慎司・橋口 昌治 2009/09/10 『税を直す』,青土社,350p. ISBN-10: 4791764935 ISBN-13: 978-4791764938 2310 [amazon][kinokuniya] ※ t07,


UP:20081115 REV:20140901
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