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書評:本田由紀編『若者の労働と生活世界――彼らはどんな現実を生きているか』

立岩 真也 2007/07/
共同通信配信記事
共同通信社:http://www.kyodo.co.jp/


  コンビニの店長、副店長、ケアの仕事、高校生の進路選択、大学生の就職活動、ストリートダンス、過食症、援助交際、若年ホームレス。若者はどんな場所に身を置いて何をしているのか、編者含む六〇年代生まれ三人、七〇年代十人、八〇年代一人の十四人が十章を書いている。
  大勢の寄せ集めの本は普通つまらない。だがこの本はおもしろい。伝えたいことがあって書かれている。それでこの本は熱をもっている。
  若者のことは様々言われるが、たいてい知らないで言っている。知っているつもりの人、本人が若者の人もいるが、知っているのは自分のまわりのことだ。そしてたくさんの嘘が出回っている。それは腹の立つことでもある。自分らとしても、いい加減なことは書かれたくない。なら、きちんと調べて自分たちが書くことだ。そんな本だ。
  明るい話はほぼ出てこない。描かれるのはむしろ苦いできごとである。文章の多くはインタビュー調査をもとにして書かれているが、おせっかいな共感や騒々しい感動がないから、苦痛を感じずに読み進められる。
  端的な生活の苦しさもある。そして、かなりうまくできてしまっているこの社会の中で、損をするはめになっている、その仕組みが描かれる。敵にまわすべき相手を間違えて、自分たちを苦しめているものを支持してしまったり、自分が苦しんでしまったりする。それはよくない。だからその仕組みを書き出そうとする。どこまでうまくいっているかは様々だが、調査報告から踏み出し、社会を捉え、理屈を言う。このままでは損だからやめた方がよい。別のものに変えた方がよい。そういうメッセージを発している。全体として、著者たちは気味わるく活気に満ちたりしてはいないが、すこし攻撃的だ。
  いったい若者は何を考えているのかとまじめに悩む人のために、たんなる口癖としてそう言う人のためにもこの本はあるが、当の「若者」自身が読んで、この世への文句の言い方を磨く一助にしたらよいと思う。

◆本田 由紀 編 20070518 『若者の労働と生活世界――彼らはどんな現実を生きているか』,大月書店,365p. ISBN-10: 4272350250 ISBN-13: 978-4272350254 2520 [amazon][kinokuniya] ※ w01


UP:20070621 REV:20070627
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