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二〇〇六年読書アンケート

立岩 真也 2007/02/01
『みすず』49-1(2007-1・2 no.546):75-76 http://www.msz.co.jp



 3冊をという『週刊読書人』からの依頼であげたのは、@マーフィー&ネーゲル『税と正義』(名古屋大学出版会)。AG・A・コーエン『あなたが平等主義者なら、どうしてそんなにお金持ちなのですか』(こぶし書房)。B香川知晶『死ぬ権利――カレン・クインラン事件と生命倫理の転回』(勁草書房)の三冊、に加えてC「生きる力」編集委員会編『生きる力――神経難病ALS患者たちからのメッセージ』(岩波ブックレット)。
  @の訳書名は原書では副題。もとの題は「所有権の神話」。税引き前の所得を自分のものだと思うことから間違いが始まるといったことが書かれている。おっしゃるとおりである。Aは分析的マルキシズムの論者コーエンの本。昨年の本誌の同じ企画では『自己所有権・自由・平等』(青木書店)をあげた。今度のが邦訳二冊目。なんとなく気を引かれる題だが、この主題はこの本の最後で取り上げられていて、その部分は、私自身はそれほどおもしろいとは思わなかった。
  Bは一九七六年ニュージャージー州際高裁判決が出て三〇年を経へての、ようやくの本格的な研究書。苦しいのさえなんとかなるのなら、死ぬのが早くなってよいことがあると思えない。ならば、そのことについて、知るべきことをみな知った上で、ゆっくり考えても遅すぎるということはない。Cは、D『やさしさの連鎖――難病ALSと生きる』(ひとなる書房)を出した佐々木公一さんたちが呼びかけてできた本。長い人で発症三〇年を超えた人など、三六人の、各々の文章を収録。
  本についてなにか書くことが私にはほとんどないのだが、その中で、昨年たくさん書いて、危うくもとの本よりも長くなりそうになり、しかもその文章が終わっていないのはE小泉義之『病いの哲学』(ちくま新書)。筑摩書房の「ウェブちくま」に「よい死」という連載を書かせてもらっているのだが、そこで取り上げた。同じ著者のさらに無茶な本だが、「好意的」な書評を書いた本に、F『「負け組」の哲学』(人文書院)。
(題名含め800字)

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◆Cohen, Gerald Allan 2000 If you're an Egalitarian, How Come you're So Rich?, Harvard University Press, 256p.(Hardcover: 256 pages June 3, 2000)  ISBN: 0674002180 [amazon]=20061031 渡辺 雅男・佐山 圭司 訳,『あなたが平等主義者なら、どうしてそんなにお金持ちなのですか』,こぶし書房,409p. ASIN: 4875592116 4830 [amazon][kinokuniya] ※,
◆Murphy, Liam B. and Thomas Nagel 2002 The Myth of Ownership: Taxes and Justice, Oxford Univ Pr, 228p. ASIN: 0195176561 (pb 2004/12/9)  [amazon]=20061110 伊藤恭彦訳,『税と正義』,名古屋大学出版会,255p. ASIN: 4815805482 4725 [amazon][kinokuniya] ※,

◆香川 知晶 20061010 『死ぬ権利――カレン・クインラン事件と生命倫理の転回』,勁草書房,440p. ASIN: 432615389X 3465 [amazon][kinokuniya] ※, b d
◆「生きる力」編集委員会編 20061128 『生きる力――神経難病ALS患者たちからのメッセージ』,岩波書店,岩波ブックレットNo.689,144p. ASIN: 4000093894 840 [amazon][kinokuniya] ※ als


UP:20070105 REV:0216
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