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天田城介の本・1

医療と社会ブックガイド・58)

立岩 真也 2006/03/25 『看護教育』47-03(2006-03):
http://www.igaku-shoin.co.jp
http://www.igaku-shoin.co.jp/mag/kyouiku/


※全文は以下の本に収録されました。
◇立岩 真也 201510 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』,青土社 ISBN-10: 4791768884 ISBN-13: 978-4791768882 [amazon][kinokuniya] ※ m.


 紹介しようと思ってずっとできなかった天田城介の本を紹介する。天田は1972年生まれの社会学者。立教大学の大学院を出て現在は熊本学園大学助教授。単著が2冊。1冊が今回紹介を始める『<老い衰えゆくこと>の社会学』、もう1冊が『老い衰えゆく自己の/と自由――高齢者ケアの社会学的実践論・当事者論』(2004、ハーベスト社、394p. 3800)。最初の本は博士論文を本にしたもので、第3回日本社会学会奨励賞(著書の部)を受賞。他に医学書院から刊行予定の著書もあると聞く。
 前回も紹介したが、2003年の何冊かの1冊にこの本をあげたことがある。次のように書いた。「とても大きな本で、もとは博士論文だが、退屈な本ではなく、気合が入っていて、私ら(以下)の世代ががんばって書いて、この辺りまで。だがそれは、これ以外の書きようがあるということか、ないということか。多分ある、と言いたいが、それがどういうものかは私にはまだよく見えない。」
 「私ら(以下)の世代ががんばって書いて、この辺りまで」、つまり(今の私らがやれる)限界あたりまで行っているということ、その今の私らを基準にすれば、これは優れた本であるということ、しかし、「これ以外の書きよう」というより、ここに書かれたことが書かれた後で何を考えたり書いたりするのか、ということ、それが「まだよく見えない」という感じがあり、それは私に限っては、それから2年経っても変わらず、どうしたものかと今でも思っている。むろん天田にはたくさん書きたいことがあって、自身は困っていないと思う。だが、例えば私だったらこの本の続きに何を書くことになるのだろう、と考えてしまう。そんなことを考えたりしながら書こうと思うのでこの度の紹介はすこし長くなり、今回はその1回目ということになる。

◇◇◇

 『<老い衰えゆくこと>の社会学』は大きな本だが、筋は通っていて、その筋は単純にすると単純なものだ。その手前には天田に確信がある。彼は怒っているのだが、その場から退けないと思っている。あとはそれをどう書いていくか。本には様々な本があるが、この本もそんなでき方の本だと思う。

 […]

 こんなふうに考えていくこと、それは天田一人の道行きではなかった。他の人たちはまた別の機会に紹介するとして、とくに社会学の同年代の研究者としては第18回(2002年7月号)で紹介した出口泰靖の仕事がまず注目される。
 そして小澤勲の本がある。小澤は1938年生まれの精神科医。長く京都府立洛南病院に勤めた。今回検索して初めて知ったのも含め、知らない間に多くの本が出ている。学術書として『痴呆老人からみた世界――老年期痴呆の精神病理』(1998、岩崎学術出版社、258p.、3000+)は出ていたのだが、これは知っている人が知っているという本だった。その後「瀬戸内寂聴氏絶賛!!「痴呆への恐怖からの救いの福音書」老いも死も受容する覚悟はついている。ただ痴呆になるのだけが怖い。この世の最後に残った恐怖を、この書は一掃してくれた。」という「帯」がついている『痴呆を生きるということ』(2003、岩波新書、223p.、740+)が出て、多くの人に読まれることになった。たしかによい本だと思う。さらに小澤勲・土本亜理子『物語としての痴呆ケア』(2004、三輪書店、309p.、1890)、単著の『認知症とは何か』(2005、岩波新書、208p.、735)と出ている。
 私はこの人の名を1970年前後からしばらくの精神医療改革運動に関わった人として知った。ただ、その人が「痴呆」の本を書いた時不思議には思わなかった。この人はずっとやってきて、ここに立つことになったのだと思った。
 彼自身はこのところそういったことは語らないようだ。天田が小澤にインタビューしたものも近く刊行されると聞くが、そこでも小澤は昔話を語らなかったという。わかる気もする。その羞恥のようなもの、一人の臨床医として知っていることを書くのだという構えと、例えば天田がせねばならないと思う話とはどこが同じでどこが違うのか。そんなところから、だんだんと考えていこう。(続く)


■表紙写真を載せた本

天田 城介 20030228 『<老い衰えゆくこと>の社会学』,多賀出版,595p. ISBN:4-8115-6361-1 8925 [amazon][kinokuniya] ※ a06.

■取り上げた本

◆天田 城介 20040330 『老い衰えゆく自己の/と自由――高齢者ケアの社会学的実践論・当事者論』,ハーベスト社,394p. ISBN:4-938551-68-3 3800 [amazon][kinokuniya] ※ a06.
◆小沢 勲 19980630 『痴呆老人からみた世界――老年期痴呆の精神病理』,岩崎学術出版社,258p. ISBN-10: 4753398072 ISBN-13: 978-4753398072 3150 [amazon][kinokuniya] ※ a06. m.
◆小澤 勲 20030718 『痴呆を生きるということ』,岩波新書,223p. ISBN:4-00-430847-X 777 [amazon][kinokuniya]> ※ a06.
◆小澤 勲 20050318 『認知症とは何か』,岩波新書・新赤版942,208p. ISBN4-00-430942-5 C0247 735(700+) [amazon][kinokuniya] ※ a06
◆小澤 勲・土本 亜理子 200409 『物語としての痴呆ケア』,三輪書店,309p. ISBN: 4895902153 [amazon][kinokuniya] ※ a06.

■再録

◆立岩 真也 201510 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』,青土社 ISBN-10: 4791768884 ISBN-13: 978-4791768882 [amazon][kinokuniya] ※ m.


UP:20060108 REV:20151007
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