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紹介:倉本智明編『セクシュアリティの障害学』

立岩 真也 2005/07/**
共同通信配信記事


  *11字×75行

  全部で八章からなる。おもしろそうな題を拾っていくと「性的弱者論」「戦略、あるいは呪縛としてのロマンチックラブ・イデオロギー」「自分のセクシュアリティについて語ってみる」「パンツ一枚の攻防――介助現場における身体距離とセクシュアリティー」「介助と秘めごと――マスターベーション介助をめぐる介助者の語り」、等。
  「障害者と性」というのはじつは近頃少しはやりのテーマで、きっとそれはよいことなのだろうと思いつつ、すこしうんざりな感じはないではなかった。まず「タブー」ではもはやないと言われて、それはけっこうと思いながらも、かまわないでほっといてくれ、勝手にさせてくれと思うところがある。また「啓蒙」も必要なことだろうとは思いながら、なんだか悲しく、ようやくそのような段階に至ったと人々に思われるのも、なんだかいやな感じがする。そして「弱者」に対する(無償の)サービスとしての性というものも、そんなことがあってよいのではあろうが、人々の少しきわどく怪しい興味とある種の哀れみの感じが喚起され、そのために、けっしてそんなつもりで書かれたのではないだろう本が売れるというのはいやだ、と思う。
  比べてこの本はよい。書き手は「障害学」というものをやっている人たちなのだが、それ以前に障害のある御当人だったり、その人たちを介護してきた人たちであったりする。実際自分の人生をやっていく上で、あるいはその脇にいて暮らしを手伝ったりする上で、様々に起こること、起こってしまうこと、また起こらないでしまうことがどんな具合になっているのか。それをどう料理したら論文や本になるのか、どう書いたらよいものかと思いながらも、書いてみた。そんな本だ。
  また、黙っていたら現状維持、けれどただ「暴露」しても得なことはなく、おもしろくない。そのことをもう知っているから、どうにかしてその先へ行ってみたいという思いがここにはある。
  うまく先に行けたか。読んでみてください。

◆倉本 智明 編 20050620 『セクシュアリティの障害学』,明石書店,301p. ISBN: 4750321362 2940 [amazon] ※


UP:20050711
書評・本の紹介 by 立岩  ◇立岩 真也
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