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「グランドデザイン」について・1

―知ってることは力になる・35―

立岩真也 2005 『こちら”ちくま”』42:


  「1」とか番号ふって、続きもののつもりで書いていると、「2」が出る前に決まってしまいそうな勢いで、どうもここ数年、動きがあまりにあわただしくて、よくない。2003年4月からの「支援費制度」開始、その前の2003年1月のサービスの「上限設定」騒動、そしてもう同じ年の秋には持ち上がった介護保険との「統合」論。障害者の側は、この間ずっとこうした動きへの――疲れるし、楽しくない――対応で忙しかったし、私もこの欄でずっとこれまで続けて書いてきたけれど楽しくなかった。障害者の介助・介護の制度と介護保険とを統合しようというこの案はとりあえず見送りになった。障害者側の反対のためにという部分もあるはあるが、それだけでなく、またまったく別の理由から、つまり保険料の負担を気にする経済界等の思惑などもあってのことである。そうしたら、今度はこれである。なんでこうなのか。その分析は後まわしにして、今回は概略だけ。
  「グランドデザイン」とこのごろ呼ばれているもの、長く言うと「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」が、昨年の秋、2004年の10月になって急に厚生労働省の側から示され、もう来年度から、つまり今年からそれでいこうという話が進められている。「社会保障審議会」の「障害者部会」がこれを審議する場だが、きちんとした議論をする時間もなく、もう、こんどの通常国会に法案を出して「障害者自立支援給付法」という法律を通そうということである。(最初は「障害福祉サービス法」という仮称だったが、途中からこうなった。とにかく介護を受けずにすむようにすることが「自立支援」だといった、以前からある話がまた蒸し返され強調されるようになっているこの状況では、この名称も、誤解を招くというか、財務省に誤解させて予算を通そうとしているというか、気持ちがよくない。)ホームページでも関連する情報を載せているから、まずはそれをご覧いただきたい。私の名前で検索→http://www.arsvi.com→トップページから「病・障害があって暮らす/ために」、と辿っていくと、昨年の動きについてのファイルと今年になってからについてのファイルと、あります。
  さて「グランドデザイン」とはいったい何か。もちろん、ありとあらゆる政策、法案がそうであるように、それなりにもっともなことも書いてはある。それは読んでもらえばよい。もっと言えば、読み飛ばしてもらってもよい。ようするに、それはよいものなのか。よくないと多くの人が感じていて、言っている。介護保険では意見の割れた組織も含め、言い方の差はあるが、各種の全国的な組織が、このままで受け入れ難いとして意見書や要望書を出している。ほぼもっともなことを言っているので、読んでください。なかでも一番みなが問題にしているのは、「利用者負担」――というか、より正確には利用関係者負担――のことである。
  まず負担を求められるサービスの範囲が、「就労移行支援事業」、「要支援障害者雇用事業」、「生活福祉事業」といったところにまで拡大されようとしている。作業所に行って働いて、月なにがしかをもらうより、高い額を払うといったことにもなる。  そして「応能負担」から「応益負担」に変えるという。応能負担とは、お金をたくさんもっている人は多く負担するという方法だが、応益負担とは、受けるサービスに比例した負担ということである。介護保険と同じく、原則1割負担が言われている。(それにサービス支給決定にあたっては「認定審査会」を置くとしているから、ここのところも介護保険と同様のシステムにしようということである。)
  多くの人がこのことを心配し、怒っている。まず、お金のない人は制度を使えないではないか。むろん、政策側もそれに「はいその通り」、とはさすがに答えられないから、負担の上限を設定するとか、収入に応じて減額措置を講ずるとは言っている。そして行政側は、利用者側の批判を、負担をさしあたりどの程度の額にするのかという金額の調整の問題として受け止め、そのレベルでことを収めたいだろう。だから、月額で42000円が上限と報じられたりするが、上限とか減額だとかをどの程度にすると言ってくるかはまだ不定の部分がある。
  そして、払うのか、払うとしていくらなのかとともに、またその一部として、大きな問題は、上限の設定も減額措置も世帯収入を基準とするとされていることだ。つまり、本人に収入がなくとも、家族に収入があれば、利用者負担――利用者本人の負担ではないのだから、そもそもこの表現はおかしいのだが――の額が増えていくことになる。
  これが「利用者負担」に限った問題点の概略である。それで当然反対の動きがあって、さらにこの2月、3月、続くだろう。それについても私が受け取った情報はホームページに載せていくから、どうぞ。寒いし、わざわざ東京に行くのは大変だが、様々に意思表示することはできる。また、私がまだ松本にいた2001年12月、「ぴあねっと21」主催の講演会にお呼びした福島智さん――なんとご苦労なことに、彼は社会保障審議会障害者部会の委員なのだ――がこの問題について審議会に提出した文書、「生存と魂の自由を――障害者福祉への応益負担導入は、「保釈金」の徴収だ」も載せている。読んでください。次回は、まだこの件についてお知らせすることに意味があれば、福島さんのこの文章にもふれながら、では「負担」のことをどう考えたらよいのかについて、そしてなんでこのごろこんなことになってしまっているのかについて、書いてみたい。


UP:20050123 
障害者自立支援法、最初っからやり直すべし!  ◇自立支援センター・ちくま  ◇立岩 真也 
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