「ケア」についてのコメント
立岩 真也 『朝日新聞』2004/11/30夕刊
(総前文)
医学書院の「シリーズ ケアをひらく」が、今月出た立岩真也氏の『ALS 不動の身体と息する機械』で10冊になった。高齢社会や阪神大震災、少年事件を機にケアという言葉が一般にも浸透をみせる中で、多彩な論者による問題提起が注目を集めている。
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「現代思想」11月号では、哲学者の小泉義之氏と立岩氏が対談で、「おびただしい言葉が重ねられてきた死生学や臨床××、そしてケアという言葉への不全感」を語っている。病気の人にやさしくといった当たり前のことばかりが語られ、病人の立場に立っていない。あるいは背景に働く政治を見ていない、と。
「シリーズ ケアをひらく」の新刊で、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者たち自身が書いた文章をもとに、他者による安楽死の発想を否定した立岩氏は、最近のケアをめぐる風潮について厄介さを口にする。
「多くの人々にとって受け入れやすいだけに、ケアする人との個人的な距離によってケアが左右される場合が少なくない。現場に横たわる普遍的な問題を見えなくさせる危険性もはらんでいる。『その先』が重要なのです」
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(少し変更)「口あたりのよい言葉として受け入れられるが、ケアする側とされる側の間にある差異や力関係があいまいにされることがある。現場に横たわる普遍的な問題を見えなくさせる危険性もはらんでいる。『その先』が重要なのです」
◇『ALS 不動の身体と息する機械』
◇『現代思想』2004年11月号 特集:生存の争い
◇白石正明(「シリーズ ケアをひらく」の担当編集者)