HOME > Tateiwa >

介護保険的なもの・対・障害者の運動 8

―知ってることは力になる・33―

立岩真也 200409 『こちら”ちくま”』40:
発行:自立支援センター・ちくま


  介護保険への「統合」問題について、7月、国の審議会などの結果も一応出た。厚生労働省、そしてその意向を受けた審議会のまとめ役の側としては、統合という方向を明確にしたかったのだが、さまざまな反対論・慎重論があり、押し問答があって、結局は強い表現でその方向を出せなかったというところだ。これが一番短く簡単な今のところの情報。
  次にもう少し解説。上の審議会とは「社会保障審議会」なのだが、それ以外にもう一つあった。2003年1月に支援費制度のサービスに上限が設けられようとしたことがあって、その時の厚生労働省と障害者団体との交渉で設置が決まった「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」である。この検討会は昨年から今年の7月まで19回行なわれて終わった。私の知っている人も幾人か委員を務めたのだが、とくに主題を絞ったものでもなく、議論が噛み合わない部分もあり、なかなかに消耗でご苦労な検討会だった。この検討会の途中で介護保険との統合の話が、唐突に、現われた。事務局側、つまり厚労省はその方向に持って行きたかったが、結局そうならなかった。その結果が審議会に渡された。
  次に審議会だが、社会保障審議会は大きな審議会で、いくつかの部会に分かれている。関係するのは「障害者部会」と「介護保険部会」。介護保険の制度の変更が制度発足5年後の2005年となっていて、どこを変えるのかが介護保険部会の主題となった。また介護保険と支援費制度との統合となると、これは当然障害者に関わることだから、障害者部会で議論するということになる。ここでも同様に、厚労省、部会長側は統合の方にもって行きたかったのだが、意見が分かれ、障害者部会でも両論併記のかたちをとり、それを受けた介護保険部会も明確な方向は出さなかった。もちろん介護保険の制度の手直しは以上だけでない。新聞などでも報道されている。私のHPにも少し情報があるからご覧ください。
  こんなところである。2005年度の変更だから、もう具体案を出し、固める必要はある。秋には出るという。障害者運動の側でも10月に大規模な行動を行なう用意があるという。どうなるかわからない部分はある。それは随時HPに載せていくとして、以下、すこし手前のところから振り返っておこう。
  なぜ支援費制度が始まってまだ時間が経っていない時にこんな話が出たのか。どうもよくわからないところがある。ただ、より大きな要因は介護保険の側にあったのではないかと思う。介護保険のサービスが――低く見積もっていた人たちの予想より、ということだが――増えて、保険料がほしい。いま40歳以上の人からとなっているのを20歳にしたい。そのためには、サービス利用も20歳以上からとした方がよいだろう。そこで統合。そして介護保険に変更を加えるタイミングは決まっている。この後はまたしばらくない。だから2005年から。こういう筋がまずあったと思う。
  このことについて。私は、最初から若い人も保険料を払うという仕組みにすべきだったと考える。(始まる前からそう言っていた。むろん私が言ったからといって、どうなりもしない。)今からでも、払う年齢の引き下げは、それはそれとしてすればよい。このことを介護保険担当の厚生労働省の人に言ったことがあるが、「国民の理解が」、とのことだった。払うからにはもらえないと、と国民は思うだろうというのだ。わからないではない。しかし――これは本筋の理屈ではないのだが、「国民の理解」に妥協すると――年金だって、当たり前だが、払う年齢と受け取る年齢が違うではないか。そして、介護の費用を払うのは国民の義務だと、ここはきちんと言い張るべきだと、やはり私は、思う。
  ともかく介護保険の(財布を預かる)側はこういう利害で動いた。そしてこの時、それがどこまで現実的なことなのか、障害者の生活にとってどんな意味をもつのか、わかってはいなかった(今でもよくわかったいない)と思う。同じ介護なんだから、当然いっしょにできるはずだというぐらいの認識だった(認識だ)と思う。このことも、中央官庁のしかるべき責任のある人と話して感じたことだ。
  他方、障害者福祉(を担当する官庁の部署)の方はどうか。支援費の支出が予想――やはり私が思うには間違った予想――より多くなったことがよく指摘される。これ以上の増額は無理だと、また年度当初の予算の制約が厳しい現状の制度より、実績に応じて支払われる介護保険の予算からの方がよいと言う。さらにこの予算は近いうちに「一般財源化」されるだろうとも言われた。今までは事業に対して国が一定割合(例えば半分)の予算をつけていたのだが、「地方分権」の流れで、「三位一体改革」とかいうものによって、国から自治体に行くお金は、どの事業に対してと決まったものでなくなる。これが一般財源化というもので、となると自治体はこれまでより障害者福祉にお金を使わなくなるだろう。ならば、その前に介護保険の方に入っておいた方がよい、と言うのである。
  このことについて。まず地方分権ならなんでもよい、と思ってしまう人がけっこういるのだが、そうは言えない。どこで生まれ暮らしていようと、必要な水準の介助・介護は受けられてよい。もう一つ加えれば、ある地域で制度をよくすると、その制度が必要な人たちがその地域に入ってくる、そのために予算が増え、それを恐れて予算が押さえられるといったことが、たんに理論的にありうるだけでなく、現実に起こってしまっている。基本的に、介助は全国的な制度であるべきだ。そう考えるとまず、現状において、支援費制度の予算が「裁量的経費」とされていること、つまり、国の側としてはどうしても支出しなくてもよい経費になっていることがおかしい。「義務的経費」にすべきだ。そうなれば、実績が予算を超えても国は足りない分をどうのこうの言わずに出すことになる。障害者運動の側はそれを主張してきたが、実現していない。だがこれがまずするべきことだと、7月に兵庫県西宮市であったシンポジウムで同席した介護保険創設時の厚労省社会保険局長の堤さんも(むろん今は個人の立場で)でおっしゃていた。
  もちろん、そんな「筋論」を今さら言ってどうなる、というのが、介護保険に乗るしかない、という人たちの言い分である。しかしそうか。続きは次号で。

◇2003/04/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 1――知ってることは力になる・26」
 『こちら”ちくま”』32:
◇2003/06/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 2――知ってることは力になる・27」
 『こちら”ちくま”』33
◇2003/08/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 3――知ってることは力になる・28」
 『こちら”ちくま”』34
◇2003/10/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 4――知ってることは力になる・29」
 『こちら”ちくま”』35
◇2003/12/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 5――知ってることは力になる・30」
 『こちら”ちくま”』36
◇2004/02/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 6――知ってることは力になる・31」
 『こちら”ちくま”』37
◇2004/07/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 7――知ってることは力になる・32」
 『こちら”ちくま”』39


UP:20040913
介助・介護 2004  ◇介助・介護  ◇Insurance|保険  ◇自立支援センター・ちくま  ◇立岩 真也
TOP HOME (http://www.arsvi.com)