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介護保険的なもの・対・障害者の運動 6

―知ってることは力になる・31―

立岩真也 200402 『こちら”ちくま”』37:



■すこし復習

  『月刊総合ケア』に載ったものを少しだけ変えて続けて載せてもらっています。以下のような見出しの順序になっていました。
  ・予告〜公的・在宅サービスだけで暮らす(前々々々々回)
  ・生活保護他人介護加算(略)
  ・介護人派遣事業/ホームヘルプ〜情報が制度を拡大させた(前々々々回)
  ・供給・利用のかたちを変えた〜介護保険には乗れない(前々々回)
  ・事業者にはなっておく〜1月に起こったこと(前々回)
  ・支援費制度の位置〜介護保険への吸収という意図〜「保険」という機構(前回)
  当然、以前書いたことは忘れているはずです。関連情報も含め、ホームページからご覧になれますので、関心のある方はどうぞ。その粗筋は以下。
  1)障害者の介助(介護)制度は障害者の運動があって、作られて拡大してきた。そして自らがサービスの提供に関わる動きがでてきた。2)それに比べ介護保険でのサービス供給量は少ないので障害者側はその制度への吸収に反対し、2000年4月から始まったこの制度には基本的には組み込まれなかった。ただ、事業者になることがより容易になり経営基盤もより安定するので、介護保険を使う障害者を対象とした事業体を障害者自身が作っていく動きは進んだ。3)昨年=2003年4月からの支援費制度は、障害者たちが主張してきた「契約」という形態を形の上では一部取り入れたが、これまでのサービスの実質を大きく変えるものではなかった。また、この変更に合わせ、サービス供給に上限を設ける意向が同年1月に明らかになり、大きな反対運動が起こり、ひとまずその案は取り下げられることになった。そして「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」を置いて議論することになった(この検討会についての情報もホームページにあります)。4)2003年12月末、障害者の介助政策の介護保険への統合の方向があることを各新聞がいっせいに報道。少なくとも私が知っている障害者団体はこれに反対している。
  こうして見てくると、基本的に、介護保険的な制度にし、そして介護保険に統合していくという線があることがわかる。その理由として言われることの一つは、介護保険でのサービス利用者が増えていることもあって――「予想以上」に増えたと言われるが、それは予想が間違っていたということだと私は思う――介護保険の保険料を払う人の年齢を現在の45歳から引き下げようという意向があり、そのためには若い人でも介護保険のサービスを受けられるようにした方が納得を得られやすいということだ。保険料徴収年齢を20歳に引き下げたいとの意向は、上記3)で厚生労働省が上限案をひとまず取り下げた昨年1月28日の3日後、1月31日の新聞にもう載っている。また上記の「検討会」では9月に、介護保険との統合が話題として出ている。
  この方向は、契約という形がとられ、自らが事業者にもなれるという点で、障害者側の主張に合致する部分がある(ただそれは今までの制度においてもすでに可能とされてきたものでもある)。しかし、決まった規準により供給量が決定されるかたちになっており、そして何よりの問題はそこで決まるサービスの供給量である。以下、『総合ケア』に昨年書いた原稿の続き。

■すくなくとも量は介護保険に合わせられない

  繰り返すが、最も大きな点は、そして利用者の側が引き下がらないだろう点は、必要な人は必要なだけのサービスが得られる水準を可能にすることだ。そんなことは不可能だと思ってしまう人がいる。今回の出来事について、利用者側の肩を持ちつつもなにか及び腰の報道機関の姿勢にもそれは現われていた。だがそう思う必要はない。
  まず多くはないにしても長い時間の介助が必要な人がおり、そしてその中に現に福祉サービスを使い例えば一人で暮らしている人がいるということ、その人の暮らしは介助がなければ成り立たないことをまず事実として知ることだ。そうして暮らしている人がいることを思ってみることのなかったらしい官僚でも、その現場に連れていって見ればわかるものだと、最近その機会があった人が言っていた。そこが出発点になるし、出発点としなければならない。
  しかし次に、財政的に不可能ではないかと言われる。多くの人は非現実的だと思っているのかもしれない。しかし可能であり十分に現実的である。簡単には『生の技法』(藤原書店)の第8章に記した。また、少し理屈っぽい言い方では、雑誌『思想』の2000年2・3月号に書いた「選好・生産・国境」という論文で述べた。
  まず家族やあるいはボランティアがしてきた介助を「社会化」し、公的な制度のもとに置くことにしても、それは担い手が変わるだけで、社会的な負担は増えもしないが減りもしない。それだけのことだ。まずこのことを確認しておく。
  次に、高齢化で介助を必要とする人が増える、少子化で介助する人は少なくなると言う。少子・高齢化は事実だとしよう。しかし、ごくごく簡単に言い切ってしまえば、働ける人は現在も余っており、将来も足りないということはない。
  そして現在の介護保険の機構では、短時間の訪問介護を巡回して行なうことが前提になっている。だから月30万円以上のお金も1日2〜3時間にしかならない。その時間単価をそのまま積算し24時間にすればそれはたしかに相当の額になるが、長時間の滞在型の場合には、計算も異なってくる。

  抽象的な話ですみません。これから事態が動いていくでしょう。2月には堂本千葉都県知事等も招いたシンボジウムがあり私も出ます(→中止になりました 0130記)。随時報告します。またこの主題については、そしてそれだけに限らず、中西正司・上野千鶴子『当事者主権』(岩波新書、2003年10月、700円)が役に立ちます。それから理屈っぽい話がきらいでない方には、私の3冊目の単著『自由の平等――簡単で別な姿の世界』(岩波書店、2004年1月、3100円)が最近出ました。私のHPから注文すると少し安くお頒けできます。よろしかったらどうぞ。


◇2003/04/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 1――知ってることは力になる・26」
 『こちら”ちくま”』32:
◇2003/06/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 2――知ってることは力になる・27」
 『こちら”ちくま”』33
◇2003/08/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 3――知ってることは力になる・28」
 『こちら”ちくま”』34
◇2003/10/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 4――知ってることは力になる・29」
 『こちら”ちくま”』35
◇2003/12/00「介護保険的なもの・対・障害者の運動 5――知ってることは力になる・30」
 『こちら”ちくま”』36

◇2003/05/15「介護保険的なもの・対・障害者の運動 1」
 『月刊総合ケア』13-05:(医歯薬出版)
◇2003/07/15「介護保険的なもの・対・障害者の運動 2」
 『月刊総合ケア』13-07:46-51(医歯薬出版)


UP:20040121
介助・介護 2004  ◇支援費・ホームヘルプサービス上限問題  ◇障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会  ◇自立支援センター・ちくま  ◇立岩 真也 
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