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生存の争い――医療の現代史のために・9

立岩 真也 2003/01/01 『現代思想』31-1(2003-1)


 *資料
 *『みすず』連載「身体の現代」

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裏切ることについて

  このようになし崩しの連載が許されるのだろうかと思いながら書いているこの文章は、昨年の二月号の特集「先端医療」のために書かれ始めた。四月号・六月号とその続きが書かれ、さらに八月号からは、毎月、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という全身の筋肉が徐々に動かなくなる病気にかかった人たちに起こったことを書いてしまっている。その人たちが書いたものから引用を連ねている。[それは『ALS』という本になった]
 許されれば、ただそれを続けていければよいと思っているのだが、ここでは、既に書いてあった分を後にまわして、すこし別のこと、記述することの位置について書く。
 それは直接には、締切を過ぎた二〇〇二年十二月五日の朝、十二月三日に長野英子が衆議院法務委員会の参考人質疑に参考人として呼ばれ、一〇分と決められたところを二三分話した、しかし原稿だけ読めば一〇分に収まっただろう参考人意見の原稿(長野[2002])が送られてきたことによる。冒頭だけ引用する。

 […]

様々な場での争い

争いを誘発するもの

危険/確率

適度な距離にある無知と歪曲

この年と近過去



★01 ゾーエ/ビオスといった括り方についての少しばかりの違和感をまだ言葉にすることができない。ところで、注08に記す大学院に、二〇〇三年のたぶん五月頃、ジョルジョ・アガンベンが集中講義にやってくる。すこし勉強しておいた方がよいように思うので、勉強会のようなものを行なうかもしない。関心のある方は立岩(TAE01303@nifty.ne.jp")まで。[この集中講義は実現しなかった。]
★02 しかしこのことは精神障害に限らないかもしれない。障害は「ないにこしたことはない」のかについて、それは誰にとって言えることなのかについて立岩[2002]で考えた。また立岩[2001b]は、「なおす」ことを巡る現代史を調べて書いたらおもしろい、書くたらよいという、本稿と同趣旨の呼びかけの文書である。
★03 ここまでに紹介した二人が関わる組織他の活動を裏切りとして告発するより原理主義的?な部分からの批判は、「病」者の本出版委員会[1995](それにつながる動きについては、品切で書店での購入はできないが「精神病」者グループごかい[1984])等に見られる。『看護教育』(医学書院)に連載しているブックガイド(立岩[2001-]――最近のものを除いてホームページに掲載)で何回か、なにも知らないにもかかわらず精神病・精神障害についての本をとりあげた。これらの本も、内容に立ち入ることはできていないのだが、そこで紹介した。本稿で言及した吉田おさみの著書なども取り上げている。
★04 主には分配の問題に即しておおまかなことを述べたにすぎないが国境について立岩[2000a][2001a]。それとなんの関係があるのかと思うかもしれないが、浦河べてるの家[2002]という本がある。実際に危険ではあるとき、それはそうだとした上で、どうやってやっていけるかを考えるときの手がかりがいくつかあるように思う。右記した立岩[2001-]でこの本のことを二回に渡って紹介した。
★05 安積他[1990→1995]、立岩[1998][1999]が書かれたのにはそうした意図がある。
★06 注03にあげた本に描かれる場でもつねに破裂しそうな出来事は起こっているのではあるが、それでも「運動」としてなされてきたものと異なった力の抜け方がそこにはある。この本の編集を担当した白石正明はこれは反精神医学でなくて「非精神医学」だと言う。その異同について考えてみることはおもしろいことだと思う。思うに、楽ができる条件があるから楽ができているのであって、別の場面ではまた事情は異なる。例えばこの度の法案のようなものに関わってしまえば、どうしようもなく面倒事はついて来る。ただもちろん、楽しめる場面では楽しんだ方がよいのではあって、それがどんな条件のあるときに可能なのか、容易なのか、それを調べて考えてみることができるはずだ。
★07 「構築(主義)」「原因(論)」については立岩[2003]でも少しふれた。
★08 ALSと二〇〇二年について。その人たちが選挙で投票することができないことを不当と訴えた裁判の判決が十二月に出た。またそして痰の吸引などが「医療」行為とされ、「福祉」の業界のヘルルパーは行なうことができないとされ、ゆえに在宅で暮らすことが不可能であるが、あるいは重い負担が家族にかかってしまう(家族はその同じ行為を行なっていても問題にされない)ことになってしまってるという事態について、医療職につかない人も行なうことを認めさせるための署名活動等が行なわれた。これらについて、またHIV・エイズをめぐる動向についてhttp://www.arsvi.com。
★09 立命館大学大学院・先端総合学術研究科(二〇〇三年四月開設)で「争点としての生命」という研究プロジェクトが松原洋子(科学史)、小泉義之(哲学)、遠藤彰(生態学)らによって進められ、私もすこし手伝うことになるかもしれない。その一部には、本稿で呼びかけた類いの仕事が含まれるだろう。

■文献(著者名五〇音順)

安積 純子・尾中 文哉・岡原 正幸・立岩 真也 1990 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』、藤原書店→ 1995 増補改訂版
石川 准・長瀬 修 1999 『障害学への招待――社会文化ディスアビリティ』、明石書店
石川 准・倉本 智明 編 2002 『障害学の主張』、明石書店
浦河べてるの家 2002 『べてるの家の「非」援助論――そのままでいいと思えるための25章』、医学書院
小倉 利丸・立岩 真也 2002 「情報は誰のものか」(対談)、『現代思想』30-11(2002-09):66-79
小沢 牧子  2002 『「心の専門家」はいらない』、洋泉社
加藤 真規子 2001 「YES。セルフヘルプを生きる――ぜんせいれんの歩みを振り返って」、全国自立生活センター協議会編[2001:123-132]
「精神病」者グループごかい 1984 『わしらの街じゃあ!――「精神病」者が立ちあがりはじめた』、社会評論社
全国自立生活センター協議会 編 2001 自立生活運動と障害文化』、現代書館
立岩 真也  1998 「一九七〇年」、『現代思想』26-2(1998-2):216-233→立岩[2000b:87-118]
―――――  1999 「自己決定する自立――なにより、でないが、とても、大切なもの」、石川・長瀬編[1999:21-44]
―――――  2000a 「選好・生産・国境――分配の制約について」(上・下),『思想』908(2000-2):65-88,909(2000-3):122-149
―――――  2000b 『弱くある自由へ』、青土社
―――――  2001- 「医療と社会ブッグガイド」(連載)、『看護教育』(医学書院)
―――――  2001a 「国家と国境について」(1〜3)、『環』5:153-164,6:153-161,7::286-295
―――――  2001b 「なおすことについて」、野口・大村編[2001:171-196]
―――――  2002 「ないにこしたことはない、か・1」、石川・倉本編[2002:47-87]
―――――  2003 「<ジェンダー論>中級問題」、『環』12(藤原書店・近刊・特集:ジェンダー)
長野 英子  2002 「参考人意見」、衆議院法務委員会「心神喪失者等医療観察法案」参考人質疑 http://www.geocities.jp/jngmdp/sankou.htm[変更→http://nagano.dee.cc/sankou.htm
野口 裕二・大村 英昭 編 2001 『臨床社会学の実践』、有斐閣
「病」者の本出版委員会 編 1995 『天上天下「病」者反撃――地を這う「精神病」者運動』、社会評論社
吉田おさみ  1974 「”病識”欠如の意味するもの――患者の立場から」、『臨床心理学研究』13-3
―――――  1983 『「精神障害者」の解放と連帯』、新泉社

■言及

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.


UP:20090304 REV:20160811
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