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二〇〇二年読書アンケート

立岩 真也 2003/02/01
『みすず』45-1(502)(2003-1・2):56-57 http://www.msz.co.jp



  「現代思想」関係の本をずっと読まずに仕事をしてきて、それは有限な時間の使い方としては悪くなかったかもと思いながら、そしてこれからもそうならざるをえないだろうと思いながら、しかし気になる部分はあって、せっかちでまともに読めてなどいないのだが、ジジェク『全体主義――観念の(誤)使用について』(青土社)、そして竹村和子『愛について――アイデンティティと欲望の政治学』(岩波書店)。ジジェク+バトラー+ジジェク『偶発性・ヘゲモニー・普遍性』(青土社)も出ている。例えばジジェクはいかにも胡散臭いが、慎重であるふりをして言えばよいことを自らに禁じてしまう言論は私も嫌だと思うし、この人の妙な元気さをまずは支持しようと思う。
  たいてい「共同作業」はうまくいかない。うまくいかないようにやっているのだから当然だと思う。ただ、いくつかの思考の流儀の可能性が、それらの間においてもっと討議され争われてよいだろうとは思う。例えば、二〇〇二年はノージックロールズも亡くなった年だったのだが、おおいに対立しつつしかしひとまとまりの中にもいるこれらと、それとはまた別系列のやんちゃなまた怒りっぽい諸思想との間はどうなっているのだろう、等。そして、一人ではどうにもひとまとまりまでも行かなそうな仕事もいくつか見えてくる。以下は、すべて私が仕事の場――四月から立命館大学で先端総合学術研究科なる好きになれない名称の大学院が始まる――を同じくすることになった人たちの著作で、いっしょに仕事ができるようになったことをまずは喜びたいと思うし、そしてそれらの間の差異がこれからどのように議論されていくのか、観客としても楽しみたいと思っている。岡野八代『法の政治学』(青土社)。後藤玲子『正義の経済哲学――ロールズとセン』(東洋経済新報社)。西川長夫『戦争の世紀を越えて』(平凡社)。松原洋子『日本の優生政策』(勁草書房――これは近刊)。


UP:20030113
書評・本の紹介 by 立岩  ◇立岩 真也
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