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サバイバーたちの本の続き・3

医療と社会ブックガイド・23)

立岩 真也  2003/01/25 『看護教育』44-01(2003-01):48-49
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※全文(にいくらか捕捉を加えたもの)は以下の本に収録されました。
◇立岩 真也 201510 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』,青土社 ISBN-10: 4791768884 ISBN-13: 978-4791768882 [amazon][kinokuniya] ※ m.

立岩真也『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙

◆全国自立生活センター協議会 編 20010501 『自立生活運動と障害文化――当事者からの福祉論』,現代書館,480p. ISBN:4-7684-3426-6 3675 [kinokuniya][bk1] ※ b
◆「病」者の本出版委員会 編 19950430 『天上天下「病」者反撃!――地を這う「精神」者運動』,社会評論社,230p. ISBN-10: 4784501398 ISBN-13: 978-4784501397 2100 [amazon][kinokuniya] ※ m. [品切]

他にとりあげた本

◇半澤 節子 20011201 『当事者から学ぶ精神障害者のセルフヘルプグループ』,やどかり出版,277p. ISBN-10: 4946498516 ISBN-13: 978-4946498510 2500 [amazon][kinokuniya] ※ m. s02.
◇「精神病」者グループごかい 19840731 『わしらの街じゃあ!――「精神病」者が立ちあがりはじめた』,社会評論社,238p. 1600 [品切]
◇「精神病」者グループごかい編 199009 『わしらの街じゃあ!――「精神病」者が立ちあがりはじめた 増補改訂版』,社会評論社,254p. ISBN13:0030-90124-3351 ISBN10:990056751X [amazon][kinokuniya] ※ m.(200206品切)
◇月崎 時央 20020325 『精神障害者サバイバー物語――8人の隣人・友達が教えてくれた大切なこと』,中央法規出版,255p.ISBN-10:4805821841 ISBN-13: 978-4805821848 1800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

 前回は吉田おさみの本をとりあげたが、ディープなところに一直線というのも刺激が強すぎるかもしれない。今回はすこし普通の感じのものから。月崎時央『精神障害者サバイバー物語――8人の隣人・友達が教えてくれた大切なこと』(中央法規,2002年,255p.,1800円)。近年は精神障害に関わる領域での仕事が多いフリーのジャーナリストが8人にインタビューして書いた。「「サバイバー」という隣人」という前書きから読み出した人は、どんどん読んでいってすぐに最後まで読んでしまうだろう。登場するのは名前・写真掲載OKという人たちで、書かれたものを読んだことはあるがどんな人なのかなと思っていた私のような者には、顔写真を拝見できたりするだけでうれしかったりする。
 べてるの家の早坂潔が最初に登場して、べてるの家の本(→昨年10・11月号)を読んで写真も見た人は、またこの人だ、と思うはずだ。そして埼玉県の宇田川健、奈良県の菊井俊行、大阪府の夢村、新潟県の小島康。「運動」している人ばかりではないが、全国精神障害者団体連合会(全精連)事務局長の有村律子(埼玉県)、大阪精神医療人権センターの山本深雪、そして個人として様々に活動・発言している神奈川県の広田和子も出てきて、精神障害者による精神障害者のための運動のこと、それに関わっている人のことを知るという意味でもおもしろい。
 例えば山本深雪の章は著者が病院訪問に連れて行かれるところから始まる。NPO法人大阪精神医療人権センターは精神病院を――書かれている例では前日夕方の予告で――訪問し、その情報をまとめて報告する活動をしている。その報告書がこの連載の第2回(2001年2月号)で紹介した『扉よひらけ――大阪精神病院事情ありのまま』。そしてこの活動は、大阪府から財政支援を受けながら、予告なしの訪問調査等、独立した活動を行う「精神保健福祉オンブズマン制度」の開始につながった。これは昨年開始され新聞等でも報道されたからご存知の方も多いだろう。なぜその活動をどのように行っているのかがはっきりわかる。
 もう一冊、『自立生活運動と障害文化』。「20世紀の終わりにこれまでの障害当事者たちの社会変革運動の歴史を、何らかの形で残しておきたい」という思いで、全国自立生活センター協議会が企画・編集した。キリン福祉財団の助成を受け、原稿を依頼したり、インタビューしたものをまとめたりして作った。
 「団体篇」の第I部に15、第II部は「個人篇」に28の文章があるが、精神障害の人はとても少なく、第T部に2つだけ。これが現実を反映しているかは判断が難しい。本を編集した組織が今のところは身体障害の人の多い組織だからということもあるだろう。ただ、以前から注目されるべき活動は様々ありながら、大きな組織は家族の組織という状態が長く続いてきたのも事実だ。そこは身体障害の人たちの運動が本人主導のものになって久しいのと事情が異なる。その中で、少数派を自他ともに認めながら長く続いてきた小さな組織と、わりあい新しいそれほど小さくない組織と2つとりあげられている。1つは全国「精神病」者集団。長野英子が書いた。この組織は1974年に結成され、前回紹介した吉田おさみもその会員だった。1つはさきの本にも出てきた全精連。1993年結成。加藤真規子が、地域の組織、精神障害者ピア・サポートセンターこらーる・たいとう等のことも含めて書いている。この2本と他の多くの文章と込みで、この厚くて安くない本がお勧めになる。私も1999年に死去した高橋修の章を、生前のインタビュー記録等を使って、彼のことを思い出しながら、まとめた。
◇◇◇
 前々回はセルフヘルプ・グループの本だった。半澤節子『当事者から学ぶ精神障害者のセルフヘルプグループと専門職の支援』(やどかり出版,2001年,277p.,2500円)がある。現在は長崎大学医学部保健学科で精神看護と精神保健を教えている著者が大正大学大学院に提出した修士論文を単行書にしたものだ。
 第3章の冒頭、著者は3つの流れを分ける。「第1の流れは

[…]

 ただ、ここで第1の流れとされているもの――私は、「院内患者自治会の活動に始まり」「病院を退院した回復者による」「あくまで精神病院に入院経験を持つがゆえの苦しみを動機とし」「反精神医学的な思想を持つ運動」という記述のすべてが少しずつ違うと思うのだが――も、私はやはりおもしろいと思う。それはつまりは個人的な好みによるところがあることを否定しない。けれどそれを差し引いてもおもしろい。その一つは、前々回紹介した「外国」の人たちの本にもあった多面性、困難そして同時に強い解放感が共存するところにある。それは紹介してきた本でも、みな一つ一つが短いから、十分には描かれてはいない。
◇◇◇
 第1グループの中でも最も嫌われそうな「「精神病」者グループごかい」という集団がある。1981年に始まった愛媛県松山市の集まりで、ビルのたまり場のような場所が5階にあったから(に加えて「互会」)から「ごかい」。やがてその周辺に人が住んだり自分たちの建物をもったりして活動しながら、「政治闘争」を展開する。そうしていく中で人は次々と脱落し入れ替わり、しかし細々とながら存続している。本に『わしらの街じゃあ!――「精神病」者が立ちあがりはじめた』(社会評論社,1984年,増補改訂版1990年)があるが、既に品切れ。ただこの本の反響を受けて出た『天上天下「病」者反撃!』はまだ買える。この本では、ごかいだけでなく、全国のさまざまなマイナーな集まりの人たちが自分たちのことを書いている。
 ごかいにはホームページもあって、私のところからもhttp://www.enjoy.ne.jp/~gokaino1/index.htmリンクされている。見ると、ここまで紹介した人や組織を含めほとんどすべてが槍玉に上がっている。私はその主張と主張の方法を全部支持したりはしない――こんなところでアリバイを主張しても仕方ないが。ただ、そういう消耗な争い、内輪もめに巻き込まれないことに決めてしまうというのもどうかなと思うのだ。とくに精神障害に関わると、自明に正しく皆が一致する要求、というのですまない部分がある。それは外部からの攻撃だけでなく、内部分裂や仲間からの突き上げを食うことになり、とくに後者は辛いものだとさきに紹介した本の中で加藤真規子も書いている。しかしそれでもその人たちはやっている。苦しいことは確かにあるのだが、しかしそれだけでやれるものではない。やはり仕方なく必要だと思うから、それだけでなく自らにとって解放的だから、やっている。
 一つには(狭い意味での)「政治活動」と「自分のこと」との関係である。

 […]

 そして「社会との付き合い方」について。べてるの家は多くの人に好かれるが、ごかいはそうではない。私は、やはり好かれた方がよかろうと思いつつ、考えてしまう。『天上天下』の表紙写真には「働かない権利を!」という垂れ幕が下がっている。それとべてるの家の「病気を商売にする」との間に実はさほどの距離はないはずだが、さて少しの距離とはどんな距離か。そんなことも考えたくなるのだ。

■言及

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

 序章・註「☆01 知らないから、ほとんど書いたことがなかった。書いたのは『看護教育』での本を紹介する連載の一部(立岩[2001-2009])で何冊かを取り上げものと、依頼された短文ばかりである。連載では、第2回で大阪医療人権センター[2000]、第15回でGoffman[1961=1984][1963=1970, 1980, 2001]、第16回で大熊一夫[1973][1985]、第19・20回で浦河べてるの家[2002](たくさん出た「べてるの家」関係の本の最初の本の最初の紹介だったかもしれない)、第21回でChamberlin[1977=1996]、O'Hagan[1991=1999]、「精神障害者の主張」編集委員会編[1994]、第22回で日本臨床心理学会編[1979][1990]、吉田おさみ[1983]、小沢牧子[2002]、日本社会臨床学会編[2000a][2000b]、第23回で「精神病」者グループごかい編[1984][1990]、「病」者の本出版委員会編[1995]、半澤節子[2001]、月崎時央[2002]、第35回でYoung[1995=2001]、第36回でKutchins & Kirk[1997=2002]、塚本千秋[1999]。他に、(自閉症は発達障害ということになっていて精神障害とは区別されるのだが)『自閉症裁判――レッサーパンダ帽男の「罪と罰」』(佐藤幹夫[2005])の紹介(立岩[2005b])、想田和弘監督の映画『精神』について立岩[2012b]。」


UP:200212 REV:1216,20030102(誤字訂正),0205(リンク追加)
◇「精神病」者グループごかい http://www.enjoy.ne.jp/~gokaino1/index.htm  ◇精神障害  ◇セルフヘルプグループ  ◇医療と社会ブックガイド  ◇医学書院の本より  ◇身体×世界:関連書籍  ◇病者障害者運動史研究  ◇書評・本の紹介 by 立岩  ◇立岩 真也
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