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「支援費制度」?・1

―知ってることは力になる・23―

立岩 真也 200208 『こちら”ちくま”』29:5-6(2002年3・4合併号)
発行:自立支援センター・ちくま
http://www.azumino.cnet.ne.jp/human/chikuma


 来年度(2003年度)から福祉サービスが「支援費制度」になるということで、このことについてすこし書いていこうと思います。なんだかよくわからないし、今どき(昔から)政府がなにか変えると言ってきたことでよいことはあまりないので、みなさん心配なようでよく話題になります。ただ、まだ細部が決まっていないところもあり、見えていない部分もあります――介護保険のときもそうで、実施の半年前になってもかなり重要な部分が決まっていませんでした。だからこそ不安でもあるのでしょうけれど、そこはおいおいということで、今回は、制度の具体的なところというより、その手前のこと一つと、その応用篇にあたることを一つ。
 まず一つ目から。簡単に言えば、支援費制度とは利用者が選んだ事業者(サービスの提供者)に行政からお金(支援費)がいくという仕組みです。「措置から契約へ」という標語を、何度も聞いたことのある人がいるでしょう。支援費制度への変更は、いちおうはその流れにそったものです。これまでのかたちは、基本的には、あなたはどこの施設に行きなさい(どこどこの施設に「措置する」)とか、ここから派遣されているヘルパーを利用しなさいというものでしたが、それに比べると、利用者が選べる「可能性」が出てきます。この基本的なかたちのことだけいえば、これはよいことです。
 そしてこの「措置から契約へ」という主張自体は、障害者自身の運動の中で現われてきた主張です。「自立生活運動」の中で実際にそういうシステムを提案し作っていくのは1980年代に入ってからですが、主張自体は遡れば1970年からありました。障害者の運動は、利用者側に選択の余地がないから向こうがいばっている、質も向上しない、だから他のものを購入するときと同様に選べるようにしようという消費者運動でもありました。その後、1990年代になって、中央官庁の方がそれらしいことを言い出したという順番です。(利用者側と行政、たいがい意見が一致しないこの両者がなぜ同じようなことを言うことになったのかについては拙著『弱くある自由へ』(青土社)の356頁以降で少し考えてみています。そういうことに興味のある方はご覧ください。)
 けれど、すでに公的介護保険が支援費制度のかたちをとってはいますが、あれが申し分のない制度だとは誰も思っていないでしょう。それだけを考えても、このかたちが有効なものになるのは、このかたちをとる際に必要な条件が満たされ、すべきことがなされる場合であって、と長い前置きがいりますし、また、かたちが変わるだけで量の問題が解決されるわけではありません。ただこの話は後に残しましょう。また今まで厚生労働省が言ってきていることについてはホームページを見ていただきましょう。(私のホームページ=http://www.arsvi.com、トップページから中のファイルを検索できるようになりました。御利用ください。あるいは「50音順索引」から、「支援費制度」「介助」等。)
 今回はこれらをとばして二つ目、応用篇にあたる部分について。介助・介護について大切な働きをしている団体をあげるなら、私は、運動団体では「全国障害者介護保障協議会」、情報収集・提供の組織では「障害者自立生活・介護制度相談センター」だと考えています。というか、この2つは同じ活動の2つの側面のようなものなのですが、さらにこれらと考え方そしてやっている人としてもほとんど重なっている組織として、「介護保険ヘルパー広域自薦登録保障協会」という組織がしばらく前から活動しています。長たらしく覚えにくくこんがらがる名称ですが、名称は覚えなくてもかまいません。問題は中身、何をしているのか。私のホームページからもリンクされているそのホームページには次のように書いてあります。
 「全身性障害者介護人派遣事業や自薦登録ヘルパーと同じような登録のみのシステムを介護保険利用者むけに提供しています。自分で確保した介助者を自分専用に介護保険ヘルパー(自薦の登録ヘルパー)として利用できます。介助者の人選、介助時間帯や給与も自分で決めることができます。全国の介護保険(ホームヘルプ)指定事業者を運営する障害者団体と提携し、介護保険ヘルパーの登録ができるシステムを整備しました。(2002年度までは介護保険対象者向けの制度ですが、2003年度からは障害へルパー・ガイドヘルパーも自薦登録できるようになります)」
 「自薦登録ヘルパー」についてはこの連載の第2回でもとりあげましたが、登録する先の指定事業者の選択が、支援費制度のもとではより自由になります。たとえば自分が住んでいる市町村になくてもかまわないことになります。ならば県単位ぐらいで障害者=利用者主体のそういう事業者を作ってしまおうというのがこの協会のアイディアで、実際、かなりのペースで全国に作っていっているのです。これは支援費制度の積極的な有効な使い方であり、そして介助を得て生活していく上で使えるものだと思います。注目してみてください。(続く)


◇介護保険ヘルパー広域自薦登録保障協会 http://members.jcom.home.ne.jp/ppp1/kouiki/index.htm  ◇自立支援センター・ちくま  ◇立岩 真也
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