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『べてるの家の「非」援助論』・1

医療と社会ブックガイド・19)

立岩 真也 2002/08/25 『看護教育』43-08(2002-08):
http://www.igaku-shoin.co.jp
http://www.igaku-shoin.co.jp/mag/kyouiku/

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※全文は以下の本に収録されました。
◇立岩 真也 201510 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』,青土社 ISBN-10: 4791768884 ISBN-13: 978-4791768882 [amazon][kinokuniya] ※ m.


 北海道の浦河町にある<べてるの家>とは何かはなかなか説明しがたいのだが、ホームページには「小規模授産施設、作業所、有限会社、共同住居の4つの柱からなる共同体の総称です」とあった。ここ2週間ほど時々開いているのに、さっき初めて組織図と地図が巻末に折り畳まれているのに気がついた。特に地図を見るとなんとなく感じがつかめる。そしてひどく存在感のある人々の写真、おもしろいと言うほかないイラストというか漫画(鈴木裕子・作)があってなんだかわかるような気がしてくる。この<ケアをひらく>シリーズの本は使っている紙が軽く、それで本も軽いのだが、その軽さがそうやってぱらぱら漫画を見ながら読むのに適してもいる。
 これから書くように、ここで行われていることは理にかなったことだから、どこでもいろいろと使える技が入っていて参考になるかもしれない。しかしそれだけならいやだ、と私は思ってしまう。ここにあるのは「私は病気、はいそうです」みたいな乗りだ。そこがやはり大切なのであって、この乗りを外して、部分を取り入れたらかえって気持ち悪いことになるのではないかと思う(が、そんな半端なことはできないに違いない、とも思いなおす)。

 […]

 では、そうしてなぜ会社を作ってやっていくのか。これは愚問なのだろう。商売は、お金を儲けることは、苦労することも含めて、おもしろいことでもある。私たちの多くは、資金集めのための廃品回収やバザーや模擬店に熱中できる。それは稼ぎにもならない単調な仕事をさせられ、それが「訓練」だとされ儲からないことの言い訳にされることと違う。
 同時に商売は難しい。とくに人間関係が難しい。けれど関係には否応なくそうであるしかない部分もある。人と関係していく以上はきつさはなくせないし、また完全になくしてしまってもつまらない。だが他方で、そのきつさを緩められる部分も、一人ではできないが、ある。両方を知り、両方でやっていく。やはりこれは正解だと思う。(続く)

●表紙写真を載せた1冊

◆浦河べてるの家 20020601 『べてるの家の「非」援助論――そのままでいいと思えるための25章』 ,医学書院,256p.,2000円+税

●載せられなかった本

◆「精神病」者グループごかい 編 19840731 『わしらの街じゃあ!――「精神病」者が立ちあがりはじめた』
 社会評論社,238p. 1600 ※
◆「精神病」者グループごかい 編 199009 『わしらの街じゃあ!――「精神病」者が立ちあがりはじめた 増補改訂版』
 社会評論社,254p. 1700 (200206品切) ※
◆「病」者の本出版委員会 編 19950430 『天上天下「病」者反撃!』
 社会評論社,230p. 2000+税 (200206有)※
 http://www.shahyo.com
 (目次等紹介なし、ホームページから注文可)

20020804:誤字・誤記を訂正

●cf.

◆立岩 真也 2002/10/25 「『べてるの家の「非」援助論』・2」(医療と社会ブックガイド・20)
 『看護教育』43-09(2002-10):782-783(医学書院)
◆立岩 真也 2001/12/25「できない・と・はたらけない――障害者の労働と雇用の基本問題」
 『季刊社会保障研究』37-3:208-217(国立社会保障・人口問題研究所)



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