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パターナリズムについて

立岩 真也(信州大学医療技術短期大学部) 2001
日本法社会学会大会シンポジウム 報告要旨?


  基本的には、だれがなにをするのか、という所有についての問いがある。その中の個々の主題、様々な技術については、他の論者が論じ、それに私が言及させていただくというかたちでなにかを述べることがあるかもしれない。ここでは関連する一つのことについて。
  近代的な意味での所有権は、その権利の対象について「なにをしてもよい」権利であるとされる。しかし、歴史的には、例えば「もっていてもよいが捨ててはならない」とか、「使ってもよいが売り払ってはならない」とか、さまざまな制限つきの権利があったのだし、実は、いまでもそんなことがなくなったわけではない。「それはあなたのもの(こと)であるが、しかし…」。そこにどういうことがあるのかを考えてみてよいと思う。
  それはパターナリズムのことを考えることでもある。そしてパターナリズムのことを考えることは、社会、社会規範をどう考えるかということでもある。なにも教えないことはできないし、代わりに決めることから逃れることもできない。だからみな各自に決めてもらうことなどできない。だが同時に、自分で決めてもらうことは、もちろん、空言ではない。私たちは「本人のために」(〜パターナリズム)か「公序良俗」ぐらいの言葉しかもちあわせていない。どちらも退屈な言葉である。
  「自己決定の承認と、パターナリズムによる行いは、少なくとも時に、同じところから発している。したがって、同じ人がどちらを採ろうと思って悩んでも、それは不思議なことではないし、その思い自体は矛盾しているのでもない。さてどう考えるか。」


  そして、動機としても、

「公序良俗」を対置するというあり方でなく語ることである。

cf.
立岩 真也  1997 『私的所有論』,勁草書房
―――――  1999 「子どもと自己決定・自律――パターナリズムも自己決定と同郷でありうる、けれども」,後藤弘子編『少年非行と子どもたち』,明石書店,子どもの人権双書5,pp.21-44
―――――  2000 『弱くある自由へ』,青土社
ホームページ http://ehrlich.shinshu-u.ac.jp/tateiwa/1.htm
本報告関連  http://ehrlich.shinshu-u.ac.jp/tateiwa/0w/ts02/2001070.htm

  

パターナリズム (paternalism)
医療と法(学)
自己決定

  

◆立岩 真也 2002/**/** 「パターナリズムについて――覚え書き」
  『法社会学誌』(日本法社会学会)

  

◆200010131 →法社会学会

立岩です。たいへんおそくなってもうしわけありません。以下
「メモ」です。

   ……以下……


……?……(タイトル未定)

立岩 真也(信州大学医療技術短期大学部)

テーマが『生命の自己所有、性の自己決定』ということですが、なにをお話
したらよいでしょう?

拙著『私的所有論』(勁草書房)で「生殖」に関わる技術のいくつかについ
て考え、また『弱くある自由へ』(青土社)に「安楽死」について文章を書
いてはいます。
(「性の商品化」についてもかつて一つ。)
個別の主題のどれかについて話しても時間はそれなりにかかります。

どれにするかと考えて、いまひとつ思ったのは、
「パターナリズム」について話してみるという方向です。
「パターナリズムも自己決定と同郷でありうる、けれども」という文章を書
いたことがあります。(掲載時の題は「子どもと自己決定・自律――「パタ
ーナリズムも自己決定と同郷でありうる、けれども」、後藤弘子編『少年非
行と子どもたち』、1999年、明石書店、子どもの人権双書5、pp.21-44)
&『弱くある自由へ』の第7章等でも少し。)
御参考までに「…ありうる、けれども」の目次他を以下にあげます。


□はじめに
□1 教えないことはできない
□2 問1:「迷惑をかけなければ」について・1
□3 問2:「迷惑をかけなければ」について・2
□4 問3・「迷惑をかけなければ」について・3
□5 問4・自己決定とパターナリズムの同根性?

「自己決定の承認と、パターナリズムによる行いは、少なくとも時に、同じ
ところから発している。したがって、同じ人がどちらを採ろうと思って悩ん
でも、それは不思議なことではないし、その思い自体は矛盾しているのでも
ない。さてどう考えるか。」

□6 答1・自己決定について
□7 答2・教えることと与えることについて
□8 答3・願うことと伝えること
□9 答4・変えること省くこと

   ……以上……

  cf.
  ◇『私的所有論』
  ◇『弱くある自由へ』

  

◆2001年度法社会学会全体シンポジウム

(1)日時 2001年5月13日(日)
(2)場所 お茶の水女子大学
(3)テーマ 『法と倫理』
(4)当日のスケジュール

〔午前の部〕 全体会
1)テーマ 『法と倫理』
2)司会 佐藤岩夫(東京大学)、もう一人を交渉中
3)報告(いずれも仮題)
・中野敏男(東京外国語大学)「法と倫理――基調報告」
・高橋哲哉(東京大学)「倫理の責任、法の裁き――哲学からのアプローチ」
・馬場健一(神戸大学)「倫理化と法化――法社会学からのアプローチ」

〔午後の部〕 分科会
[第一分科会]
1)テーマ 『国家の責任、成員の責任』
2)司会・コーディネーター 森英樹(名古屋大学)
3)報告者
・大越愛子(近畿大学)
・阿部浩己(神奈川大学)
・岡野八代(立命館大学)

[第二分科会]
1) テーマ 『生活世界の倫理、市場の倫理』
2)司会・コーディネーター 林田清明(北海道大学)
3)報告者
斎藤純一(横浜国立大学)
・浜田道代(名古屋大学)
・丸山 茂(神奈川大学)

[第三分科会]
1)テーマ 『生命の自己所有、性の自己決定』
2)司会・コーディネーター 原田純孝(東京大学)
3)報告者
江原由美子(東京都立大学)
・立岩真也(信州大学)
・大村敦志(東京大学)



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