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「医療・技術の現代史のために」

(読者のための資料)

立岩 真也 2004
今田高俊編『産業化と環境共生』(講座社会変動2),ミネルヴァ書房
http://www.minervashobo.co.jp/


医療と社会

[目次]

■序 現代史のために
■1 医療化
■2 批判
■3 批判の普及
■4 新しい技術?
■5 優生思想という理解の仕方
■6 技術の所有形態の変更

[付記] 本稿は『現代思想』に連載した立岩[2002-2003]等の記述の一部を、その順序を変えて一部はそのまま使っている(本稿で他で発表していないのはほぼ第1節の記述に限られる)。この連載の第1〜3、9回と、本章と同様の目的をもって書かれた立岩[2003]]とにさらに書き足して一冊の本とする。また医療と社会に関わる書籍を連載で紹介している立岩[2001-]も本にする。とくに第2〜4節の記述は本稿では大幅に圧縮せざるをえない。より詳しくはそれらをご覧いただきたい。なお本稿は、立岩[1989][1996]等を継ぎ、科学研究費・基盤研究(C)12610172の研究助成を受けてなされている仕事の中間的な報告の一部でもある。

■注
★01 立岩[2000b][2000c][2000e]。「規範的な問題」が社会科学で正面から語られなくなり、そしてまた語られるべき状態になったということもまた社会変動の一部をなしている。
★02 本稿でも事実や関連文献にほとんど言及できない。文献表に私の書きものだけ多く掲載されまったく均衡を欠いているのは、本稿の論旨を理解してもらうために私自身の書いたものを列挙したからであり、他の文献についてはあまりに多いので、かえって他にまとめた方がよいと判断したからである。そこでいくつかの事項についての年表、文献リスト等をホームページ(http://www.arsvi.com)に置いてある。その「50音順索引」→「医療と社会」から関連する各ファイルにリンクされている。たとえば関係する単行書を発行年順に約六〇〇冊並べたリストがあり、その一部については目次等の紹介がある。そこからある程度、言論の傾向、その推移、趨勢を知ることができる。また生殖技術、優生保護法(〜母体保護法)、障害者についての政策・運動、等についての年表、クローン、ES細胞等についての近年の報道を単に羅列したファイル、等。
★03 立岩[2001a]も同様の趣旨で書かれている。そこでは、なおそうとしたがなおらなかったことについての歴史を調べてみることを提案している。
★04 佐藤[2001]。他に注7に記す大林[2001]等。
★05 Friedson[1970=1992]。米国の医療社会学の紹介としては進藤[1990]。以上の紹介として立岩[2001-(14)]。専門性と資格についての基本的なことがらの確認として立岩[1999]。
★06 大林[1989]は医療の現代史についての数少ない重要な業績の一つである。安全性と出産の病院化に関連が見出されないという報告は大林[2001]にある。これらの紹介として立岩[2001-(8)]。
★07 米国の生命倫理の歴史については、Rothman[1991=2000]、香川[2000]があり、立岩[2001-(1)]で紹介した。優生学に関する文献の紹介として立岩[2001-(9)〜(12)]、その中でナチスによる「安楽死」関連の書籍も取り上げた。優生学、そしてその戦後との関係については立岩[1997:228ff]でもふれた。なお日本でも、小児病棟内で行なわれた人体実験を告発した本が1964年に出ている(清水[1964]、紹介として立岩[2001-(6)])。それと米国におけるバイオエシックスという学問との連続、日本での非連続がどのような要因によるのか、それとして考えておいてよい課題である。
★08 米国の消費者運動の主張についてはInlander et al eds.[1988=1997]等があり、立岩[2001-(2)]で紹介した。
★09 もっともよく知られた著作としてIllich[1976=1979]。以下については立岩[2002(1)]でもう少し詳しく論じた。
★10 以上に記した思考を受けて私の基本的な考え、いくつかの技術についての見解を立岩[1997](生殖技術、出生前診断について、他)[2000d](自己決定、安楽死について、等)で述べた。
★11 以下に述べることについて、立岩[1997]に基本的な考えを記した。その延長上に科学技術と所有のあり方について考えた文章として[2000d]所収の「生命の科学・技術と社会:覚え書き」、[2001b]。
★12 [2000a]で分配のための資源の不足という理解について検討し、批判した後、では何が分配を妨げることになるかを考えて、国家・国境の編成のされ方が関わっていることを示した。

■文献表(*のあるものは、全文あるいはその一部をホームページで読むことができる)

Friedson, Eliot 1970 Professional Dominance : The Social Structure of Medical Care, Atherton Press=1992 『医療と専門家支配』,進藤雄三・宝月誠訳,恒星社厚生閣
Illich, Ivan 1976 Limits to Medicine Medical Nemesis: The Expropriation of Health=1979 金子嗣郎訳,『脱病院化社会――医療の限界』,晶文社
Inlander, Charles B. & Levin, Lowell S.; Weiner 1988 Medical on Trial: The Appalling of Medical Ineptitude and the Arrogance That Overlooks It, People's Medical Society=1997 佐久間充・木之下徹・八藤後忠夫・木之下明美訳 『アメリカの医療告発――市民による医療改革案』,勁草書房
香川 知晶  2000 『生命倫理の成立――人体実験・臓器移植・治療停止』,勁草書房
黒田 浩一郎 編 2001 『医療社会学のフロンティア――現代医療と社会』,世界思想社
野口 裕二・大村 英昭 編 2001 『臨床社会学の実践』,有斐閣
大林 道子  1989 『助産婦の戦後』,勁草書房
―――――  2001 『出産と助産婦の展望――男性助産婦問題への提言』,メディカ出版
Rothman, David J. 1991 Strangers at the Bedside: A History of How Law and Bioehtics Transformed, Basic Books=2000 酒井忠昭監訳,『医療倫理の夜明け――臓器移植・延命治療・死ぬ権利をめぐって』,晶文社
佐藤 純一  2001 「抗生物質という神話」,黒田編[2001:82-110]
佐藤 純一・黒田 浩一郎 編 1998 『医療神話の社会学』,世界思想社
清水 昭美  1964 『生体実験』,三一書房→1979 『増補 生体実験――安楽死法制化の危険』,三一書房
進藤 雄三  1990 『医療の社会学』,世界思想社
進藤 雄三・黒田 浩一郎 編 1999 『医療社会学を学ぶ人のために』,世界思想社
立岩 真也  1989 「生命工学への社会学的視座」*,日本社会学会第62回大会報告
―――――  1996 「医療に介入する社会学・序説」,『病と医療の社会学』(岩波講座 現代社会学14),pp.93-108
―――――  1997 『私的所有論』,勁草書房
―――――  1999 「資格職と専門性」,進藤・黒田編[1999:139-156]
―――――  2000a 「選好・生産・国境――分配の制約について」(上・下),『思想』908(2000-2):65-88,909(2000-3):122-149
―――――  2000b 「正しい制度とは,どのような制度か?」,大澤真幸編『社会学の知33』,新書館,pp.232-237
―――――  2000c 「こうもあれることのりくつをいう――という社会学の計画」,『理論と方法』27:101-116(日本数理社会学会、特集:変貌する社会学理論)
―――――  2000d 『弱くある自由へ』,青土社
―――――  2000e 「たぶんこれからおもしろくなる」*,『創文』426(2000-11):1-5
―――――  2001a 「なおすことについて」,野口・大村編[2001:171-196]
―――――  2001b 「所有と流通の様式の変更」*,『科学』71-12(2001-12 832):1543-1546
―――――  2001- 「医療と社会ブックガイド」*,『看護教育』(医学書院)42-1(2001-1)から毎月連載
―――――  2002-2003 「生存の争い――医療の現代史のために」,『現代思想』30-2(2002-2)から31-12(2003-10)まで14回連載
―――――  2003 「現代史へ――勧誘のための試論」,『現代思想』31-13(2003-11)
山崎 章郎  1990 『病院で死ぬということ』,主婦の友社


【了:20020414 校正:200307 再校:200309 3校:200310】 3500×1800


UP:20031019
立岩 真也
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