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残された部分の方がずっと大きい

立岩 真也 2001
『支援費制度とは〜障害者福祉はどう変わる??』(仮題),東京都社会福祉協議会


 政策側が言い出す前から利用者=障害者側は「措置から契約へ」を主張してきた。今回の変化は、基本的には、肯定的に評価されよう(たいがい意見が一致しない両者がなぜ同じことを言うことになったのかについては青土社刊の拙著『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』の356頁以下)。ただもちろん、利用者=障害者の側は、もっと大きな改革の中に「契約」や「自己決定」といった言葉を位置づけてきた。その差は依然として大きい。まったく当たり前のことだが、サービスを必要とする人にとって必要なものを、本当にその人が選べ、使えるようにするためには、その必要なものを供給できなくてはならないのである。
 例えば、施設を選ぶかそれとも在宅でサービスを受けられるかが、本当に、同じ自己負担で同じ量のサービスを得られるという前提で選べるのでなければ、それは意味のある選択とは言えない。量が足りない部分は増やさなくてはならないのだし、ないものは作らなくてはならない。従来の一つ一つのサービスはそのままでそれを「契約」という形にしようというだけに止まってはならないのである。これから具体的なところがどう決まっていくか、変わっていくのか。どんなサービスにどれだけの「支援費」が設定されるのか。それによって生活は大きく変わってくる。それに注目して、意見していく必要、よい方向にもっていく必要がある。
 そして選択と契約は、供給主体が複数あってそこから利用者が選べることにより、そして供給側=事業者は互いに競い合うことにより、意味をもつ。これまで制度の外でサービスを提供してきた組織にとっては、参入や事業拡大のチャンスともなりうるが、それも、質の悪い事業者の排除など利用者=消費者保護が必要な場面ではそれを行いつつ、どこまで参入の自由と供給主体の複数性とを実際に大切にするかにかかっている。そしてもちろんここでも、どんなサービスを公的なサービスとして認め、支援費を出していくのかが重要なのである。これらがまだすべて残されている。ここまで明らかにされている範囲で「改革」が終わったら、それはかなりむなしいものだから、さらに先に行こうとするしかない。
 *ホームページ(http://ehrlich.shinshu-u.ac.jp/tateiwa/1.htm→「50音順索引」→「支援費制度」)に資料等を掲載したのでご覧ください。

 

 cf.第2稿(さらなる助言を受け、第1段落を上記のように変更しました。)

 この変化は形の変化の一部であり、何をどれだけ行うかの変化ではない。かけるお金は同じで、「自己決定」とか今ふうの形になる。これは政策側にとっては痛くなく、わるくない改革だ。実は「措置から契約へ」は、政策側が言い出す前から利用者=障害者側が主張してきた――たいがい意見が一致しない両者がなぜ同じことを言うことになったのかについては拙著『弱くある自由へ』(青土社)の356頁以下――ことなのだが、もちろん、利用者=障害者の側は、もっと大きな改革の中に「契約」や「自己決定」という言葉を位置づけてきた。その差は大きい。その差を今後どうしていくかの方が大きな問題だ。
 例えば、施設を選ぶかそれとも在宅でサービスを受けられるかが、本当に、同じ自己負担で同じ量のサービスを得られるという前提で選べるのでなければ、それは意味のある選択とは言えない。量が足りない部分は増やさなくてはならないのだし、ないものは作らなくてはならない。だが、今のところあるのは、従来の一つ一つのサービスはそのままでそれを「契約」という形にしようというだけのことである。ただ、これから具体的なところがどう決まっていくか、変わっていくのか。どんなサービスにどれだけの「支援費」が設定されるのか。それによって生活は大きく変わってくる。それに注目して、意見していく必要、よい方向にもっていく必要がある。
 そして選択と契約は、供給主体が複数あってそこから利用者が選べることにより、そして供給側=事業者は互いに競い合うことにより、意味をもつ。これまで制度の外でサービスを提供してきた組織にとっては、参入や事業拡大のチャンスともなりうるが、それも、質の悪い事業者の排除など利用者=消費者保護が必要な場面ではそれを行いつつ、どこまで参入の自由と供給主体の複数性とを実際に大切にするかにかかっている。そしてもちろんここでも、どんなサービスを公的なサービスとして認め、支援費を出していくのかが重要なのである。これらがまだすべて残されている。ここまで明らかにされている範囲で「改革」が終わったら、それはかなりむなしいものだから、さらに先に行こうとするしかない。
 *ホームページ(http://www.arsvi.com→「50音順索引」→「介助・介護」〜「支援費制度」)に資料等を掲載したのでご覧ください。


* 当初第2段落の終わりは以下でした。

 「……「契約」という形にしようというだけのことである。ただ、これから具体的なところがどう決まっていくか、変わっていくのか。どんなサービスにどれだけの「支援費」が設定されるのか。それによって生活は大きく変わってくる。それに注目して、意見していく必要、よい方向にもっていく必要がある。」

 が、助言をいただき以下のように変更しました。

 「……「契約」という形にしようというだけのことである。それだけではだめで、中身とその量を変えないとならない。地域で、家族に頼らず暮らすことを実際に選べ、実際に実現できる条件が必要なのである。だから、それに必要なサービスを増やし、かけるお金を増やさないとならない。逆に、生活する人に歓迎されないものは減らさなくてはならない。」


UP:2001
社会福祉基礎構造改革/支援費制度 〜2002  ◇社会福祉協議会  ◇立岩 真也
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