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死の決定について・2
医療と社会ブックガイド・5)
『看護教育』連載

立岩 真也 2001/05/25 『看護教育』42-5(2001-5):378-379
http://www.igaku-shoin.co.jp
http://www.igaku-shoin.co.jp/mag/kyouiku/

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 この回(他)は註を追加したうえで以下の本に収録されました。お求めください。
◆立岩 真也・有馬斉 2012/10/31 『生死の語り行い・1――尊厳死法案・抵抗・生命倫理学』,生活書院,241p. ISBN-10: 4865000003 ISBN-13: 978-4865000009 [amazon][kinokuniya] ※ et. et-2012.
『生死の語り行い・1』表紙
[表紙写真を載せた本]

◆生井 久美子 199903 『人間らしい死をもとめて――ホスピス・「安楽死」・在宅死』
 岩波書店,289p.,ISBN:4-00-001750-0 2310 [amazon][kinokuniya][bk1] ※
 http://www.iwanami.co.jp/

[ほかにとりあげた本・文献]

◆黒田浩一郎「ホスピス」(佐藤純一・黒田編『医療神話の社会学』,世界思想社,1998年)
◆ジャネット・あかね・シャボット『自ら死を選ぶ権利――オランダ安楽死のすべて』(徳間書店,1995年)
◆NHK人体プロジェクト編『安楽死――生と死をみつめる』(1996年,日本放送出版協会)
◆平沢一郎『麻薬・安楽死の最前線――挑戦するオランダ』(東京書籍,1996年)
◆ベルト・カイゼル『死を求める人々』(畔上司訳,角川春樹事務所,1998年)
◆ジョナサン・D・モレノ編『死ぬ権利と生かす義務――安楽死をめぐる19の見解』(金城千佳子訳,三田出版会,1997年)
ヘルガ・クーゼ『尊厳死を選んだ人びと』(吉田純子訳,講談社,1996年)
◆宮野彬『オランダ安楽死政策――カナダとの比較』(成文堂,1997年)


 今回調べたら、まだ出版されて数年しかたっていない本のほとんどが品切・再版未定だった。出た時にすぐ買っておかないとなくなってしまう。ただこのテーマはそれなりに関心があるのか、地域の図書館などに所蔵されて場合もあるようだ。一人で買おうと思っても予算の制約があるから、図書館や図書室できちんと購入していくしかないということか。
 前回が米国で今回はオランダにおける安楽死をと思ったのだが、購入可能なことを確認できたのは1冊だけ(訂正があれば次回に)。それで表紙写真も今回は1点。生井久美子『人間らしい死をもとめて』。著者は朝日新聞の記者だが、この本は1998年、この新聞社の総合研究センターの研究員としてしばらく新聞の仕事を離れ、各国を5週間取材して書いた本である。英国、ドイツ、デンマークのホスピス、そして在宅死の援助を取材して書かれたのがI〜V。
 そしてVIが、積極的安楽死を助けた医師に刑を課さない法をもつ唯一の国ということになるオランダについての報告。(ややこしいが、この本に書かれているように、これは安楽死を合法としているということではない。ただ昨年の11月、安楽死を合法化する法案が国会の下院を通過。これら最近の事情はホームページに少し掲載。)後で紹介する本の著者でもあるオランダ在住のジャネットさんの協力も得て、安楽死の援助、自殺幇助を実際に行なっている人、今はやめているが過去に行なった人、安楽死した人に付き添った家族、反対の立場をとる人、オランダ自発的安楽死協会で活動する人などへのインタビューがまとめられている。
 本全体の序は日本の現状から始まり、「日本ホスピス・在宅ケア研究会」の総会での議論が紹介される。そして各国での取材の成果が記され、「終章に代えて」で、ふたたび「ヤミ付き添い」「チューブ」「抑制」という日本の現状に戻る。それに比べて、取材した各国での様子ははるかにましであり、「先進国」である。だから安楽死についても、疼痛緩和とインフォームド・コンセントがきちんとなされていない日本の状況で、「安心して安楽死のことは考えらない」(p.264)という、まずはその通り、と私も思う文で結ばれる。
 もちろん、なんでも斜に構えて見ることはできる。一度つき離して論じようとした黒田浩一郎の「ホスピス」(佐藤純一・黒田編『医療神話の社会学』、世界思想社、1998年)といった文章もある。この文章については、誤解と曲解にもとづく大変こまった文章だという評価を、当時このテーマで修士論文を書いていて、その後またターナミナル・ケアの現場に戻った看護婦の人から聞いたことがある。その評価もわかるように私は思ったのだが、そんなこまった「医療社会学」のことについてはそのうち紹介し考えてみるとして、またよろしければ、生井の本、さまざまな「死生学」の本と合せて読んでおいていただくとして、まず、この生井の本は一読に値する。
 もちろん軽いテーマではないが、文章そのものはとても読みやすい。高校生ぐらいでも十分読み進めていける。まとまった文献紹介の部分はないが、それは直接取材に基づくこの本には必須ではない。紙数もいる。そうした情報は、例えばこの連載のような別のところから得るとして、演習などでまず読んでみる本としても勧めることができる。
◇◇◇
 さてそのオランダ安楽死関連本情報。以下ざっと並べていく。それにどれだけ意味があるか正直わからない。だが、意外にも多くの本がここ数年の間に出され、そしてそのほとんどが今は買えないということを知っていただいてよいようにも思う。
 […]
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 ここは本を紹介するコーナーだが、すこしテレビのことを。「にんげんゆうゆう」という番組がNHK教育で午後7時半からある。2月21日がこのテーマだった。私は編集され放映されるテープを見てコメントするという役を仰せつかった。番組では米国での賛否両派のテレビ広告がさっと流され、そしてオランダに移り住み結婚して暮らしていてがんにかかって長い闘病の後、安楽死を選んだ日本人女性のことが紹介され、そこでコメント。そして「東海大学事件」、日本尊厳死協会のことが紹介され、そしてまたコメント。おわり。
 収録が終わってとても疲れた。重い主題だからだったのではない。まず時間的にきつかった。最低言わなくてはならないことが時間の中に収められない。けれど切り詰めて言ったらわからない。結局後者の方になってしまったのだろう。放映のしばらく後、今すぐにということではなさそうだったが、安楽死をしたいと思うという、十数年前事故で頚椎を損傷した、私と同年輩の人から電話があってしばらく話したりした。
 さて、その番組前半のオランダ在住だった女性のこと。その人は自ら納得してはっきりした意志のもとりっぱに死んだ。家族の人も友人もよい人のようだった。これはたぶん本当だ。ただまず一つ、オランダではみんなそうなのか。前号で紹介した本でヘンディンが問題にしていた一つはそのことだ。今回紹介した本にしても、それなりに考え悩み、その上で自らの主張と実践を語ることのできる人が、つまりりっぱな人が、本を書き、取材に応える。ホスピスだって、医療・看護の実践全般だってそうだ。しかしそれはみんながそうで、社会全般の状況がそうなっていることを意味しない。まずこのことを言わないとならないから少し言った。それから…。(続く)


「死の決定について・1」
「死の決定について・3」
「死の決定について・4――松田道雄のこと」
「死の決定について・5:クーゼ」


UP:2001 REV:20140615
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