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紹介『国際的障害者運動の誕生:障害者インターナショナル・DPI』

立岩 真也 2000/12/25 『季刊福祉労働』89


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■Driedger, Diane 1988 The Last Civil Rights Movement, Hurst & Company, London ; St.Martin's Press, New York=200010 長瀬 修 訳,『国際的障害者運動の誕生――障害者インターナショナル・DPI』,エンパワメント研究所,発売:筒井書房,245p. ISBN: 488720292X [amazon][kinokuniya] ※

 DPI日本会議の活躍などもあるから、本誌の読者の多くは、DPIという世界組織があることは知っているだろう。そして、「障害者インターナショナル」って名前がけっこうよいと感じたり、RI(Rはリハビリテーション)から分離独立して成立したという話は聞いたことがあって、なんか勇ましくてよいなと思っているかもしれない。しかしそれ以上のことはあまり知らない。私も知らなかった。
 けれども二〇〇二年にはそのDPIの世界会議が札幌で開催されるのだ。
 原題は「最後の市民権(公民権)運動」で、原著の出版は一九八九年。著者は当時カナダで暮らし、DPIで働いた女性で、本を書いた時は障害者ではなかった(書いた後になった)。一九八一年の結成前後から一九八九年までの活動を辿っている。だからここ十年分がないのだが、編訳者の長瀬修がある程度を補っている(もっと長い方がよかった)。また本の冒頭に中西由起子の「障害者インターナショナルの設立とアジア障害者運動の萠芽」があり、日本・アジア側から見たDPIについて書かれている。そして規約・声明・宣言・決議の日本語訳がついている。それで、全部合わせて、総合的には、「買い」です。  組織の歴史を書いたものはたいていおもしろくない。だんだん立派になりましたとしか書いてないからである。だがそこで働き内部を知る筆者が、さらに調査して書いたこの本では、初期の「先進国」同士の主導権争いとか様々なごたごたや対立が描かれている。こんなことで安心してはいけないのだが、どこも同じだなと思う。そしてこんなスタイルの本がもっとあってよいと思う(この本のもとは大学院の修士論文だそうだ)。
 もちろん内輪もめだけでない。強力な母体・支援組織もない民間組織の資金集め。障害種別を越えた、国際組織。少し考えただけで頭がくらくらしそうだ。それをなんとかやりくりして、国連などで相当の影響力を行使するに至る。「障害者の十年」やWHOの「障害の定義」等への関与について書かれる後半は、知ってはいる出来事の知らなかった背後の動きが書かれてありやはりおもしろい。「宇都宮病院」が取り上げられたくだりもある。対・日本政府戦略として「国際舞台で恥をかかせる」という手法はやはりありだなと思ったりする。国際組織にどう参画しどう利用していくか、これからの大切なテーマだ。
 それにしても世界は広く、状況には、幾多の共通点とともに、差異がある。一方で予防やリハビリテーションが掲げられ、他方にそれらへの懐疑がある。絶対的な対立ではないかもしれない。だがどう考えるか。そこにこの本は踏み込まず、何も書かない。だが読み進んでいく人はそんなことも考え始めてしまう。


UP:2000 
『国際的障害者運動の誕生:障害者インターナショナル・DPI』  ◇DPI  ◇書評・本の紹介 by 立岩立岩 真也
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