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「NPO」のこと・3

―知ってることは力になる・13―

立岩 真也
『こちら”ちくま”』17
(発行:自立支援センター・ちくま
http://www.azumino.cnet.ne.jp/human/chikuma


 長くなってますね。NPOについて3回目です。やはり先立つものは、の「お金」のことについて、少し考えてみます。今回は「公的なお金」の方です。
 NPOはボランティア団体を含むけれど、それと同じではないことはもう書きました。それにボランティア団体だって、なにかを無償で提供するその活動を維持・発展させるためにお金がいることはあります。お金がないと活動できない、お金が(たくさん)あった方が活動がより有効にできることはあります。ここまでは認めてもらえると思います。
 次に民間団体なのだから、基本的には、資金も民間から得るのが「本筋」だという考え方があるけれども、それはちがうと思います。「行政のお金」(ではなくて、行政が出し入れに関わる仕事を担当しているお金、ですが)を使うということは、「税金」を使うということです。税金は、出したくない人も義務として出さなくてはならないお金です(公的な保険の「保険料」にもそういう性格があります)。つまり、負担できる人が義務として負担すべき対象が、税金を使うべき対象です。私はそんなことに金を出したくないと言えばそれまでなのが「寄付」です。出したくなくても出すべきものが税金です。だから問題は、義務の履行を強制してよいその義務とは何かという問題です。こうやって考えていくと、そんなことに税金使ってよいのかということがけっこうたくさんあるように私は思います。他方、自分の稼ぎでは生活するのに足りない、障害があったりして人より余計にお金がかかるといった場合に、その人が生活するに足るだけの負担をすることは、人の、社会の義務であり、それは税金使って当然、税金払わせて当然と考えます。
 ただ、その生活を支える仕事自体は、役所がやるより民間がやる方がよい場合が、かなりたくさん、ある。だから、民間(の必ずしも非営利に限らない)組織が提供するサービスに税金使っても問題はないし、むしろ積極的にそうすべき場合がある、こういうことになります。
 ただ問題はさらにあります。今のところ、「公的なお金」は多くの場合、「事業委託」というかたちで民間団体に流れます(あるいは「措置制度」における「措置費」の支給)。そうすると、サービスを利用する人たちにとって必要な仕事、サービスを受けたい組織にお金が流れるとは限らないことになります。そしてそういう仕事を委託された(受託した)組織は、そのお金が役所から来る限り、役所のことは気にしても、お客さん=利用者のことは気にしなくてよい、ということになりがちです。
 そこで、そのために迷惑を被ってきた利用者・障害者たちの運動の中で主張されたのが、税金を使いながら、しかしそのお金を使ってどこから、誰から、どういうサービスを受けるかは、本人が決められるようにしたらよいということでした。この連載の第2回に書いた「自分が選んだ人をヘルパーにする」という「自薦登録ヘルパー制度」というのもそういうシステムです。(ところで、昨年12月の障害者週間のシンポジウム「この街が好き〜自立生活奮闘中〜」で、「日本一の福祉都市」をめざす(市長挨拶)松本市の担当者が来年度(つまり今年度)実施を明言したこのシステムの実施は、どうなっているんでしょう?)私は、できる限り、そういう方式でやっていくのがよいと考えます。自分のお金を使う時には、自分の選んだお店で自分の好みのものを買ってよいのに、そうでない時にはいけないという理由はないのですから。介護保険にしても、一つの大手企業が仕事を独占するというより、いろいろなところが参入した方がよいと思います。また、前回「特定非営利活動法人」のことを紹介しましたが、長野県内でもこの法人格をとったあるいはとろうしている組織の中に介護保険の事業を行なおうとしている組織がいくつもあります。それらが今後どういう仕事をしていくか、注目されるところです。
 ただ、組織にお金をおろさざるをえず、そしてその組織は一つだけ、ということは今のところの現実の中では、そして仕事の性格によっては、なかなかなくせないところがあり、そこには、先に記したような危険、つまり利用者のことを気にしない仕事、他にお金を使った方が有効だと思えるような事業、お客さんに歓迎されない組織が続いてしまう危険性が残ります。だから、そういう場合にこそ、どういう組織に仕事をやってもらうのかが大切になりますし、選ばれた組織の側は、どういうふうに仕事をやっていくかについて常に自覚的にならないとならないのです。
 既に本誌で紹介があったように、この連載の第4回でも取り上げた「市町村障害者生活支援事業」が、昨年秋から松本市でも始まりました。「松本市障害者自立支援センター・ぴあねっと21」が事業を委託されています。どういう組織にという点では、少なくとも既存の大きな組織に「丸投げ」とはならず、とくに障害をもつ本人、そのさらにいろんな人がいろんなことを主張し、その中から出きてきた組織が行なうことになったことは評価されてよいでしょう。この組織がこれから、「行政からの委託事業ってなんかたるいんだよね」「役所仕事とおんなじ、親方日の丸」というような、今まで言われてきた悪口を言われず、民間であることをどう生かしてやっていくのか。事業が始まって半年、そろそろ「試運転です」とは言えなくなってきて、これからが正念場です。
 以上のようなことも含め、「介助(介護)」について『現代思想』(青土社)3月号からの連載(6月号で終わる予定)「遠離・遭遇――介助について」で書いています。よろしかったらどうぞ。次回は「民間にある資源(お金・人)」の話、のつもりです。


  ◆NPO
  ◆松本市障害者自立支援センター・ぴあねっと21
  ◆「「NPO」のこと・1――知ってることは力になる・11」
  ◆「「NPO」のこと・2――知ってることは力になる・12」
  ◆「お金のこと→についてのお願い(「NPO」のこと・4)――知ってることは力になる・14」
  ◆「「NPO」のこと・5――知ってることは力になる・15」
  ◆お金のこと



立岩 真也
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