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「NPO」のこと・2

――知ってることは力になる・12――

立岩 真也 2000
『こちら”ちくま”』17
(発行:自立支援センター・ちくま
http://www.azumino.cnet.ne.jp/human/chikuma



 この手をこれまでも何度か使っていますが、まずは弘文堂の『福祉社会事典』(1998年)から、私が担当した「NPO、[英]Nonprofit Organization」の項目の引用です。
 「非営利組織の略称。有料のサービスを行う組織であっても、利益を活動のために用い私的に分配しないならNPOである。非政府組織(NGO)と呼ばれるものも非営利組織で、また政府組織をNPOと呼ぶこともないから、その限りで両者は同じだが、NGOは海外協力を行う組織を指し、NPOはより広い意味で用いられることが多い。
 財団・社団法人、学校・宗教・社会福祉法人等の公益法人もNPOだが、1990年代初頭にこの言葉が日本で使われ始めたのは、米国のNPOの活動の多様さ活発さ、法人格取得の容易さや税制面での優遇等の社会的支援システムの充実度が注目され、日本でも従来の公益法人以外の民間組織の活動を評価し、その活動をより活発なものにしようと意図されたからだった。さらに、1995年の阪神・淡路大震災の際のNPOの活動への評価、注目がこうした気運を高めた。
 法人格をもたない任意団体では、団体としての契約や不動産登記ができない、社会的信用が得にくい等の問題があり、公益法人制度では、組織の永続性を担保するためとして資産の保有が求められる等、設立時に主務官庁による認可が必要で、設立後も監督・指導が行われ、自由な活動がしづらい。そこで新たな法律制定のための検討が進められ、1998年3月に「特定非営利活動促進法」、いわゆるNPO法が成立、税制面での優遇措置については見送られるなど課題を残したが、NPOの法人格取得が以前より容易になった。」  第二段落までは前回説明しました。つまりここまでは繰り返しです。すみません。第三段落は「特定非営利活動法人」いわゆる「NPO法人」のごくごく簡単な説明になっています。この法律ができるまでの紆余曲折はなかなかおもしろいのです。例えば、法人格の取得や法人の活動の監視に関わる行政側の権限を確保しようという側(オウム真理教が宗教法人だったこと、それに対する行政の監督が問われたこともこれに絡みました)と、あくまで民間の側の自由度を確保しようし、法人格の取得にあたっては登記所への「登記」と役所への「届け出」でよしとし、活動の評価・監視は市民への情報公開で対応すべきだとする側との対立など。結局、「認可」よりは行政による縛りの緩い、都道府県による「認証」ということになりました。
 その認証のための諸手続きは、随時、長野県内なら長野県庁で受け付けられています。法律に規定される条件を満たさないとか、書類が不備だったりすると認証されないことになりますが、少なくとも今までの法人(財団法人とか社会福祉法人とか)よりは面倒ではありません。詳しくは各都道府県の窓口まで、ということになりますが、行政の側もまだそう慣れているわけではないので、そんなことも含めてある程度の手間がかかるようです。民間の側では長野市に事務局がある「長野県NPOセンター」(ここ自体が特定非営利活動法人です、tel:(026)269-0015 fax:(026)269-0016、Email:npo@green.interq.or.jp)が情報提供等の支援活動を行なっています。
 長野県内では2000年1月現在で、特定非営利活動法人=NPO法人の数が26団体(申請中含む)、そのうち11団体が高齢者介護に関わる団体だそうで(長野県NPOセンターによる)、この3月から始まる「介護保険」の事業をしようというところが多いようです。
 さてこの法人格をとった方がよいのか。微妙なところです。具体的な利益はそうない。が、お金が関係する組織はとっておいた方がよい。仕事の委託を行政から受けようとするところも考えておいた方よい。そんなところでしょうか。たいがいの民間団体にとっては何億円の基金を積んでその運用益で活動する「財団法人」なんて夢のような話ですし、「社会福祉法人」も(徐々に条件は緩和されつつありますし、数年後にはこの法人のことを定めた「社会福祉事業法」も改訂されるでしょうが、少なくとも今のところ)取得しにくいし、活動が制約されることにもなる。法人格があった方がよいという団体にとっては、考えるだけのことはあるだろうと思います。
 法人格があれば、その法人が契約主体になることができます。賃貸の契約を結ぶにせよ、口座を開設するにせよ、人件費を払うにせよ、代表者等の個人名で行なっていたものを法人名で行なうことができます。これはメリットではあります。また、今後は、行政が委託する事業を受託して行なう場合に、この法人格があった方が便利ということになるかもしれません――これは行政側のNPO法人に関する知識、NPO法人に対する態度いかんの部分がありますが。
 今後の課題とされていることの一つは、税金、あるいは寄付金の扱いです。つまり、NPO法人に対する税金面での軽減措置、NPO法人に寄付した場合の寄付した人に対する、やはり税金の軽減をどうするか。日本人はあまり寄付をしない国民です。それに対して、例えば米国の場合、1989年の個人所得のうち平均2.19%が寄付にまわされ、75%の世帯が年間平均 978ドルを寄付しているのだそうです。米国では寄付をするとそれに応じて税金が安くなります。日本にもそういう制度がないことはないのですが、非常に限られた範囲のものです。日本でも寄付税制を変えると、民間の活動に対する寄付が活発化する。かどうか? 税金・寄付金の部分が変わるとNPO法人になる魅力が増える。かどうか?
 ただ、前回にも書きましたように、「NPO」=「NPO法人」ではありません。NPOの中で、今回の法律に規定された法人格を取得したのがいわゆる「NPO法人」、正式には「特定非営利活動法人」なのです。法人格があろうがなかろうがNPOの活動はもっと着目されてよいと思いますし、また組織の側でも運営の上でいろいろと工夫してみたらよいことがあると思います。米国のNPOのおもしろさはそういうところにもあります。今回少しふれた寄付や財源の問題もあわせて、次回に見ていこうと思います。
 *『NPOが変える!?――非営利組織の社会学』という千葉大学の学生の調査報告書があります。私が松本に来てから完成させ1996年発行、と盛られたデータは少し古いものですが、なかなかおもしろいものになっていると思います。今回(以降)に関係するところでは、第1章「アメリカのNPO活動と日本の市民活動」、第3章「人を用いる――アメリカのNPOはどうしているか」、第4章「どのようにお金の流れをつくるか」等。合わせてお読みいただければさいわいです。ただ、1000部印刷したのですが好評をいただき、もう売切れています。ホームページに全文を掲載しますので、ご覧ください(最初の頁→「NPO(非営利組織)」等で見られます。)。


  ◆NPO
  ◆『NPOが変える!?――非営利組織の社会学』
  ◆「「NPO」のこと・1――知ってることは力になる・11」
  ◆「NPO」のこと・3――知ってることは力になる・13
  ◆「お金のこと→についてのお願い(「NPO」のこと・4)――知ってることは力になる・14」
  ◆「「NPO」のこと・5――知ってることは力になる・15」
  ◆弘文堂
   http://koubundou.co.jp/


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