HOME > Tateiwa >

メモ・2[案・ver.1]

立岩 真也 19981117  東京都障害者ケア・サービス体制整備検討委員会 於:東京都庁


◆1 原則

・利用者本人が決められる
・社会活動が当然保証される〜上限を設けない
・家族負担はみとめない〜家族の収入に応じた(自己負担という名の家族)負担をやめる。

 +介助サービスとその他の方法との整合性・バランス 〜総合的な施策の推進
  (電動車椅子一人で行けるなら,それはそれでよい。)

◆2 なぜ新しいシステムなのか

 介護保険の何が問題なのか?
  滞在型の介助,社会活動の支援がほとんど不可能
 (行うとすれば費用が嵩む=上記を想定していない費用設定になってしまっている)
  であるからには(少なくとも当面)別立てでいくしかない
 &現在の障害者介助制度にも改善・改革の必要がある。

 →◇1の条件を満たす新しい制度を

◆3 供給(媒介)組織

 「試行事業」においては,費用は
α行政機関→(委託先の)組織→介助者 という流れとする。
 あるいは
β組織がチケット(あるいは保険医療におけるレセプトのようなもの)を
 行政に渡し,行政機関が介助者の口座に振込むというかたちにする
γ利用者個人が受け取り それを介助者に払うというシステム(の併用)も検討の要
 はある。だが下記する理由で,「試行事業」では,αあるいはβでいってよいので
 はないか。

 選べること
  供給組織を選べること
  人を選べること
  →委託先を複数化し,利用者が選べるようにする。

 そのためには 当然 複数を認める
 規模も問わない 組合形式も認める 一定の要件を満たすのであれば拒んではならない
 (社会福祉)法人格を要求しない NPO法人は積極的に認める
 (+法人格取得の要件を緩和する。)
 ただし情報開示は要求する 会計報告・会計監査が義務づけられる。
 このことによってアカウンタビリティを確保する。

 利用者は利用する機関を変更することができる。
 (&複数と契約することができる?)
 実施主体が仮に区市町村となるとしても,この組織自体は,区市町村にまたがって
 活動している組織であってよい。
 (例えば新宿区の住人が中野区に本部のある組織と契約してもよい。新宿区は
 その利用者の利用に応じて,その中野区に本部のある組織に費用を払うことに
 なる。こうした形式を否定する理由はないし,また組織の複数性〜利用者によ
 る選択可能性を確保する上で必要。)

◆4 量の決定

a特に社会活動について
 実績に基づいた支給 という方法もありうる
  なぜか。まじめに申告(に基づいたアセスメント)をしようとすれば
   来週映画に行くとか,デイトをするとか,申告することになる…
   こういうことを当然,としてよいか。→よくない
  医療保険(レセプト→支払い)に似ている。
  月々の変動はある(その方が当然ではある)。
  可能か? 
   例えば 「試行事業」においては
    1人1日(例えば)8時間分の券を渡してしまう
     これをその年度の上限とする(見直しは行う)
     使いきれなかった場合
      予算の執行上,返還は難しいだろうから
      予算は支給する それを実質的には次年度使うようにするといった工夫
      で対応できるならそうする。

bその他(比較的恒常的な部分 食事・家事・…等)
  原則的には申告を尊重
   &申告について話しあう ピア・レヴュー?
   そこから(生活保護の)介護加算分などを差し引き供給量を決定

  aとbとで分けるかどうかも含めて検討の必要あり

 単純に多い方がよいと考えるのではない
  ・一つには 外出等について
   自立生活プログラム等による 慣れ
   &アクセスの整備 等で 1人での外出が選ばれるようになればそれはそれ
   でよい。
  ・一つには
   泊まり
   不安感のようなものによる部分があるのかもしれない
    一つには じょじょに慣れてもらうことによって
    一つには 対応システムをとることによって
    少なくしていくことができるかもしれない。
   あるいは,就寝時,起床時の介助のことを考えるとかえって,泊まりを前提して考
   えた方がよいのかもしれない(&睡眠時の介助が必要でない場合には,単価を少し
   低めにしてもよいかもしれない。)

 →「試行事業」においてこれらについて調査・検討する

◆5 支払い方式

 (利用者自身への直接給付という手もあるが)
 委託された組織に対して払う方法を 「試行事業」では採用する
  ひとつは現行の制度との整合性から
  ひとつはどの方法がよいかを調べ,最適の方法を見出すという「試行事業」
  の性格から,お金の流れ方や利用者の受け止め方などを把握するために,
  組織に払う方法をひとまず採用し,その上で,多様性をもった供給形態を試し
  比較・検討するために

 完全な自己管理型も想定する(自分が推薦する介助者を形式的に登録。管理も自分で。)
 利用者は(委託された)組織と契約する。
  契約の内容はさまざま(2種類か それ以上設定する)
   完全おまかせコース
   〜
   自己管理コース 〜 この場合には,組織は介助者の管理経費を利用者に支払う
   (ダイレクト・ペイメント的要素がここに取り入れられる。)

◆6 料金

A介助者に払われるのは 1500(〜2000円)/時くらいを考える
 (現状では,年末・年始や,泊まりでない深夜・早朝の介助を除き,上記の価格
 で人は集まってくる,集まっているのではないか?)
  これは1案 検討の要あり 時間帯などによって格差をつけるのがよいかも
   例えば 夜間のこと:11時〜7時 1500×8 =12000円
   睡眠時の介助が必要でない場合には,単価を少し低めにしてもよいかもしれない。)
   (深夜・早朝の1〜2時間ずつに対して割増料金を設定するのに比べてどうか)

 →「試行事業」の中でどんな場合にどの程度が妥当なのか,検討する。

B介助者の調達・調整に関する経費について
 500〜1000円/時
  下記するのと同様の理由で
  時間に完全に比例させるのでない方がよいかもしれない

  AとBとのバランスを考える。Aに比してBがあまり高いのはよくないかもしれない
  (介護保険ではそういうことになってしまっている)

  (自薦登録ヘルパー方式はよい方法である。しかし,登録先が何も仕事をしていない
  のに,マージンが登録先の家政婦協会に入っていくのは不合理)

 本人がこれを行う場合
  200円/時(1日10時間の人,月60000円)といった方法・支払いも
  考えられるが
  (何段階かに分けた,月あたりの)定額制の方がよいかもしれない
  (時間に比例するようにすると,時間を増やす方向にいくかもしれないで)
 ダイレクト・ペイメント的要素がここに取り入れられる。
 「試行事業」でこれがうまくいくなら,本格的な導入も考えられる。

 「介護人派遣事業」が実質的に一律支給であったこと,ある種の所得保障的機能
 を果たしてきたこと。これは,所得保障がきちんとなされてこなかったから,あ
 る意味で仕方なかった。そして所得保障が抜本的に改善される見込が今はない。
 とすると,従来の派遣事業との連続性という意味でも,介護者をコントロールし
 つつ暮らす人に対して,その費用を払うというかたちを採用してもよいのではな
 いか。

  従来:
  年3000件以上の場合:500+500+200×3/4=900万円が
  地域福祉振財団からの支出 仮に1件=3時間→9000時間とすると
  1000円/時
  実質的に支出が増えるわけではないし,本人がこれを行えばさらに「合理化」
  事業費補助で上限近くまで出す場合&介護保険の場合より(格段に)安くなる。
  ※介護保険の単価は高すぎる。厚生省が設定した事業費補助の上限も
   (当事者がコントロールし,比較的長い時間の介助を利用する場合には)
  特にBの部分が高すぎる。
  これが,新しいシステムを採用すべき ひとつのポイントになる。
  (利用者にとっては長時間の介助を確保できる。)
  (4000円×24時間 1日10万円近くというのはやはり現実的ではない。)

◆7 組織の(供給・媒介以外の)仕事

 ◆夜間・緊急時への対応
  夜間・緊急時などの対応を試験的に行う。
  費用・対・効果を検討する。
  寝返り介助等を必要とする人,緊急の連絡が不可能である人は別だが,
  必ずしも夜間の介助だというわけではない。とすると,緊急時の介助があれば…
  費用/便益を調査する。有効であると考えられるなら導入する。
  具体的にどのような方法で……。
  (ただ就寝時・起床時の介助のことを考えると,いちがいに泊まり介助を減らす
  ことが合理的であるとも言えないかもしれない。泊まり込みの介助と緊急対応と
  の併用ということになるだろうが)

 ◆支援・相談・教育プログラム
  ここに「ケアコンサルタント」が位置づく。
  「生活支援事業」の延長上に行うことはできないか
  最初に述べたことはここでも。すなわち
  利用者がコンサルタント…(機関)を選択できるものとする。
  ということはすなわち,組織が同一地域内に複数あることを認めるということ。
  (少なくとも制度上,その可能性を残しておく。)

◆8 権利擁護〜評価・フィードバック

  どのようなシステムが合理的,効果的か。
  これは試行事業だけで評価,決定しつくせるものではない。
  再評価機構をしっかりと組込む。

  個別のクレームについても対応可能な権利擁護機構を

  上記では 供給・媒介機能と相談機能とを同一の場所で行ってよいことにしてい
  る。この弊害はありうる。:自分のところを優先させる,供給増加に向かう傾向
  がある(もちろん必要に応じた増加は当然のことであるが),権利擁護的な機能
  が不十分になる可能性がある。

  そこで,例えば都を単位として,介助サービス等についての苦情を電話等で受け
  付け,調査し,勧告・制裁等をおこなう機関を設ける。

■「試行」事業について

 どういう方式,方式の組み合わせを採用するのか。
  簡単なシステムでいけるならその方がよい。手続き的な面も含めどういう
  システムがよいか。

 さまざまなものをいくらに設定するのか
  介助費用 媒介費用



……以下はメモ・1と大部分重複しますが……

■減らすことが得になるようなシステム。

  代替的手段を積極的にとる。

 特に外出時。一人で外出でき,行った場所で介助者を調達できればそれでよい。
 そういう方向での整備を唱う。

■[補]アセスメントの極小化&アカウンタビリティの確保

 アセスメントすることのマイナス面はたくさんある。
 アセスメントしないことのプラス面はたくさんある。
 だが問題は申告制,出来高払いで無駄使いが生じないかということである。これ
に対して答える必要がある。

 1介助サービスはあればあるほどよいといったものではない。
 2将来への不安が(その時の必要より以上に)多くとろうとさせている。
  必要に応じた供給が確保されればとりすぎたりしない(かもしれない)。
 3一人でいることの不安感による部分もある。それを軽減する。
 4不正に使用してならないことを規定(契約)にもりこむ。
  &罰則規定を設ける?
 5監査,調査は行うことができるものとする。
 6(ここでは証明をはぶくが…)むだ使いではない。
 7供給サイドが供給を増やそうとする場合。たしかに医療サービスにおいて供給
  過剰という問題が生じていないのではない。しかしこれは供給サイドが決定の
  実質的なところを握っていることによる。この問題が生じにくいような工夫を
  することは可能である。


(以上)

 

1998年度東京都障害者ケアサービス体制整備検討委員会

身体障害者部会

市橋 博  ◆障害者と家族の権利を守る都民連絡会 事務局長
太田 修平 ◆障害者の生活保障を要求する連絡会議 事務局長
久保田 直子 板橋区健康生きがい部おとしより保健福祉センター所長
塩野 敬祐  淑徳短期大学助教授
高橋 修  ◆自立生活センター立川 代表
田幸 勇二 ◆東京盲ろう友の会
立岩 真也  信州大学医療技術短期大学部助教授
手塚 直樹 ◎静岡県立大学教授
中西 正司 ◆ヒューマンケア協会事務局長
藤村 和子 ◆HANDS世田谷利用者
守屋 和夫  青梅市福祉部障害者福祉課長
吉田 行  〇淑徳短期大学教授
伊丹 宏人  福祉局障害福祉部身体障害者福祉課長
相楽 多恵子 心身障害者福祉センター技術援助科長

 ◎座長兼部会長 〇部会長代行
 ◆障害者委員

知的障害者部会

阿部 敏哉  武蔵野市障害者総合センター地域生活援助センターびーと
石井 隆  ◆東京都知的障害者育成会本人部会ゆうあい会悩みごと相談員
石渡 和実  東洋英和女学院大学助教授
桑田 顕宏  荒川区福祉部障害者福祉課長
佐々木 信行◆ピープルファーストはなしあおう会事務局長
末永 弘   自立生活企画介護コーディネーター
永島 亨  ◆生活寮ホームラン利用者
中野 敏子 〇明治学院大学教授
中村 修子  自立生活センターグッドライフ介助コーディネーター
矢部 進   大田幸陽会さわやかワークセンター副所長
伊丹 宏人  福祉局障害福祉部身体障害者福祉課長
田中 藤太郎 福祉局障害福祉部精神薄弱者福祉課長
大津 佳子  心身障害者福祉センター知的発達障害相談課長
猪俣 謙作  心身障害者福祉センター知的発達障害相談課医師

 〇部会長
 ◆障害者委員


UP:1998 REV:
立岩 真也 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)