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ガイドヘルプは使える

―知ってることは力になる・5―

立岩 真也 199810 『こちら”ちくま”』10
(発行:自立支援センター・ちくま


 この連載の第2回(3月)に利用者が選んだ介助者をヘルパーとして登録する「自薦登録ヘルパー制度」のことを書きました。この方式が松本市でも導入されるようです。今,この方法は日本中で採用されつつあり,松本市もそれらの自治体と同様,理に適った決定をした(する?)ということなのですが,今回もう一つ紹介する松本市の決定,これは全国に先駆けた画期的なものです。それは「ガイドヘルプサービス」の実施方法についての決定なのですが,その説明のためにもガイドヘルプって何?,から。
 ガイドヘルプは厚生省の近年の要綱ではホームヘルプの一部をなすものですが,(普通言う)ホームヘルプがおもに居宅・居室内での援助であるのに対して,外出を支援するサービスです。国からの予算が半分,県・市から各1/4,等,制度はホームヘルプと基本的に同じで,「社会参加」を促進するものとして国としてもかなり力を入れている制度です。昔のきまりが残っている自治体には病院や官公庁への行き来以外だめとか使いづらい制約があったりしますが,現在の国の要綱では通勤・通学・営業での外出以外は可。もちろんこれだって変な制約なのですが,例えば作業所に通うにしても「社会参加」の性格の方が強いとも解せますし,実際にかなり弾力的に運用されているところもあります。そして行き帰りだけでなくて,「滞在先での援助」もガイドヘルプの中に入ります。もちろん派遣時間の上限設定や9時〜5時までしかだめ,日曜・祝日不可といった制約は,認められない。そして「自薦登録制」も認められる。以上はホームヘルプ一般と同様。そして自己負担の額が,ホームヘルプ一般のように世帯主の所得に応じてでなく本人の所得に応じて決められるというところはガイドヘルプ独自の利点です。こうして見ていくとガイドヘルプが本来かなり使えるはずの制度だということがわかると思います。現在,全国で自治体の要綱の変更や,制度運用面での改善が行なわれており,松本市もこの方向を行くことになるでしょう。
 さて,それはそれとして,松本市が新しいのは,この制度を車椅子のまま自動車に乗り移動できる移動サービスに使うことを認めたという点なのです。つまり介助者兼運転手として利用者をガイドする人をヘルパーとして認め,ガイドヘルプの予算を出すことにし,「ちくま」が今年始めた移動サービスの一部にもこの制度が適用されるようになったのです。車での送迎(+外出先での援助)も,まったくまちがいなく,外出の支援ですから,移動サービスとガイドヘルプサービスが結びついて不思議でない。はずなのに,私が知る限り,これは松本市が初めてです。どこかで話に出すと,必ず「うーん,それはいい。言われてみれば当然なのに,今までなかった。」と言われます。松本市のガイドヘルプサービス全体が使いよい制度になっていき,その中にこの先駆的な事業が位置づいて,発展していくと,障害をもった人たちの外出,というより自宅外での活動の範囲が拡大し,そしてずっと気楽なものになっていきます。まず,皆さん(や周りの人)自身が,ガイドヘルプの制度で「ちくま」の移動サービスを使う使い道はないものか,考えてみませんか。制度は使われる中で育っていきます。



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