HOME > Tateiwa >

NPO

立岩 真也 1999/05/15
『福祉社会事典』,弘文堂


自己決定[英]self-determination,self-decision 600字

 自分に関わることを自分で決めること。思想史的な説明としては、19世紀後半、宗教的、政治的干渉を否定して個人の自由を主張したJ.S.ミル等の論から紹介が始められることが多い。社会の中で自らの存在と決定を認められてこなかった人々の権利としてこれが強く主張されるようになり、スローガンとして使用されるようになるのは第二次世界大戦以後である。医療の領域では、大戦の反省もふまえ医療行為や人体実験について本人の同意が必須とされるようになり、さらに医療の消費者運動としてこれが主張されるようになる。日本では、法学説としては1960年代、判例が1970年代以降見られるが、利用者の運動の中に自己決定の語が大きな位置を占めるのはそれより後になる。社会福祉の領域でも、クライエントが自分の判断で自らの方針を決めるというケースワーク上の原則としては以前からあったが、決定の主体たるべき人々自身が主張し出すのは1970年代、言葉として多用され出すのは1980年代に入ってからになる。社会運動の領域においては、女性の運動、例えば1970年代、1980年代の優生保護法改定への反対運動で自己決定を一つの中心に据えたのが、日本では先駆的だった。こうしてこの語は次第に様々な主張の中核に入ってきたのだが、同時に、何を自らが決定できる自らに関わることとするのか、自己決定を主張総体のどこに位置づけるのかといった問いも繰り返し問われ、議論はまだ終わっていない
山田卓生『私事と自己決定』、日本評論社、1987
立岩真也『私的所有論』、勁草書房、1997



自己決定  ◇自立  ◇立岩 真也
TOP HOME (http://www.arsvi.com)