福祉・医療等の社会サービスの領域で活動する多様な非営利民間組織がある。法人格をもつ組織としては,社会福祉法人・医療法人があり,また財団法人・社団法人として活動する様々な組織があるが,それ以外にも法人格を持たずに活動する民間組織は多く,むしろこれら任意団体の活動が近年特に活発なものになり,重要性を増している。様々なボランティア団体があり,活動に参加する人が増加している。また1980年代以降は,有償で家事援助等,主に在宅の高齢者に対する家事援助等の支援を行なう民間組織が急激に増加した。この中には,社会福祉協議会が運営するもの,市町村等が出資する福祉公社の他に,数多くの任意団体が含まれる。さらに,各種の患者会や同じ障害をもつ人達の会,あるいはその家族の会があり,当事者による支え合い,医療・福祉に関する情報の提供や,障害者や病者の権利の擁護を目的とする活動が拡大している。
これらの中に,1980年代後半から現れてきた民間組織として「自立生活センター」(以下,CIL= Center for Independent Livingと略記)がある。この組織の活動はその一部を上に記した様々な組織のもつ様々な要素を合わせもっており,社会サービスに関わる非営利民間組織の活動の現況を捉え,組織に関わる法制度のあり方を探っていく上で格好の対象であるので,本稿はこれをとりあげる。インタヴュー調査を行ったのは,その中の一団体であるA協会(東京都八王子市,1986年発足)であるが,その他の団体の活動も一部含めて報告する。
CILの全国的な連絡組織,「全国自立生活センター協議会」(Japan Council on Independent Living Center→JIL=ジル)(1991年結成)は,CILを次のような条件を満たす組織と定義している。
1 所長(運営責任者)と事務局長(実施責任者)は障害者。
2 運営委員の過半数は障害者。
3 権利擁護と情報提供の基本サービスの他に介助,住宅,ピアカウンセリング,自立 生活技能プログラムの中から2つ以上のサービスを不特定多数に提供している。
4 障害種別を問わないサービスの提供。