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「ワーカーズ・コレクティブの法制化」はなにをめざす?

立岩 真也 19960229
千葉大学文学部社会学研究室『NPOが変える!?――非営利組織の社会学(1994年度社会調査実習報告書)』
千葉大学文学部社会学研究室&日本フィランソロピー協会,1500,第10章追記,p.198


 今回調査した限りでは、ワーカーズ・コレクティブの法制化の具体的な方向ははっきりとは見えなかった。ワーカーズ・コレクティブは一般企業と非営利(の公益)団体の中間にある。法制化と言って、具体的にどのような方向を狙おうとするのか。
 法人格がないと事務所を借りる、資金調達等々にあたっての問題が多い。そこで法人化される必要がある。企業組合が法的に規定されているが、企業組合とワーカーズ・コレクティブは完全には重なり合わない。そこで、ワーカーズ・コレクティブ独自の、あるいはワーカーズ・コレクティブという形態を包括できるようなかたちでの、法的位置づけを与えるべきであるというのであれば、これは理解できる。必要なことであると思う。考えるべきは、それにとどまらず、法制化論議において「特典」の付与が主張されていることである。とすると、その正当性がどこにあるかが問われる。
 どこにワーカーズ・コレクティブとそうでない企業との違いがあるのか。提供する「商品の質」に違いがあるだろう。しかし、よい商品を提供している株式会社もある。また個人で有機農業をやっている人もいる。もちろん、例えば「環境にやさしい」商品を提供することは、よいことではあるには違いなく、そうした活動の振興策として、政府が援助することはありうる。また、例えばリサイクルなどは、自治体が(そこから上がる収入だけではやっていけないから税金を使って)直営で行っている場合もある。ならば、同じ活動を(場合によってはより適切に)行うワーカーズ・コレクティブが援助を得ても不思議ではない。だがそれはそうした活動の振興策であって、それは「ワーカーズ・コレクティブ法」が対象とすることではない。それは、いわゆる「福祉ワーカーズ」の場合でも同じである。
 第10章でも引用されたいくつかの文書を見ると、「非営利」という条件を徐々に打出しつつあるように思える。つまり、公益的な活動を行い、なおかつ「利益の非分配」(→第1章)という条件に自らを合せていこうとしているようだ。
 こうした方向が確かにありうると思う。しかし、全てのワーカーズ・コレクティブがこのような運営の方向を目指しているのかどうか、また目指すべきなのかどうかが問われる。公益的なサービスの供給に重点を置くなら、この方向はありうる。しかし、自分達が出資し、自分達が働き、得たものを自分達が得る(平等に、あるいは働きに応じて分配する)というのが趣旨であるなら――これはまっとうな考えだと思う――、この条件を立てるべきなのかどうか。このように見ていくと、可能性として、ワーカーズ・コレクティブが2つの方向に分れていくことも考えられる。例えば福祉サービス等について、非営利で公益的なサービスの提供という側面を重視し、経費の少なくとも一部を政府から得る、税制上の特典を得ることを考えるなら、この方向が採用される。他方、新しい仕事・商売の形としてワーカーズ・コレクティブを発展させようとするなら、非分配条件をとる必要はなく、そのような組織としての法的な位置づけをめざすということである。
 他の道もまたあるのかもしれない。ただ、少なくともこれらの点について、議論を尽くす必要があるのではないかと考える。


REV: 20161031
ワーカーズ・コレクティブ  ◇『NPOが変える!?――非営利組織の社会学(1994年度社会調査実習報告書)』
立岩 真也
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