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資料:新聞紙上のNPO/NPO法制化を巡る動向

立岩 真也 19960229
千葉大学文学部社会学研究室『NPOが変える!?――非営利組織の社会学(1994年度社会調査実習報告書)』
千葉大学文学部社会学研究室&日本フィランソロピー協会,1500,第1章追記,pp.32-39


新聞紙上のNPO
 NPOという語が記事中にある記事を検索した結果★01を以下にまとめる(NPOが非営利組織を意味しない無関係の記事は除外した。また『毎日新聞』の1995年の37件のうち10件は「阪神大震災の人々を応援する市民の会」(略称:NPO応援団)をとりあげたもの)。いうまでもなくNPOという語を使わずに非営利民間組織について報道するあるいは論評する記事は他にも多数ある。だが,一つの参考にはなるだろう。
 なお,次頁に付した年表(のようなもの)を併せて見ていただきたい。

1990 1991 1992 1993 1994 1995 計
朝日     3   1   5  62  71
毎日     2   2   4  37  45
読売   1   1   1   2   2  21  28
計    1   1   6   5  11 120 144

 以上の3紙では,アメリカのNPO(非営利機構と訳されている)で市民グループの依頼を受けて広告キャンペーンを展開する「パブリック・メディア・センター」と「FCT/子どものテレビの会・市民のテレビの会」との交流会について伝える1990年4月16日の『読売新聞』の記事に,NPOという語が最初に現れている。また91年の記事はドラッカー(Peter F. Drucker)の著書の紹介である。
 92年から94年の記事は,集会やシンポジウムの案内・紹介が多い。中でも比較的大きく扱われているのは,92年10月31日から11月8日にかけて川崎・大阪・名古屋で開催された日本ネットワーク会議主催のフォーラム「ネットワーキングを形に!――個人と社会の新しいあり方を考える」,そして94年4月23日のシンポジウム「市民活動を支える制度を考える」(→第1章)である。政府関係の記事としては94年7月の国民生活審議会の総合政策部会市民意識と社会参加活動委員会の報告「自覚と責任ある社会へ」(→第1章,次頁年表)の内容を伝えるものがある。
 新聞(記者)側の意見を表明しているものとしては,
 94年1月23日の『読売』の「異見小見」に「論議深めたい「公益法人」」:「… 市民活動先進国である米国では,公益型法人(NPO)が財政基盤の確立を狙って多彩な有料イベントを催しているが,収益を公益活動に使うなら一切非課税。法人の設立自体が,州政府への届け出だけで済む。/わが国でも,公益法人の課税見直しと同時に,制度の在り方も含めた論議を深めたらいい。それは,行政改革にもつながる道だ。」
 94年10月30日『読売』社説「さらに広がれボランティア」:「… アメリカには,NPO(非営利民間法人)の制度があって,税の減免や寄付金の税控除などの優遇措置がある。直輸入はできまいが,何らかの形で法人化のための条件を緩和する工夫が求められる。」
 95年1月16日『毎日』社説「NPO「草の根組織」の法人化を」:「… 当然ながら,米国の制度をそのまま直輸入するだけで問題の解決にはならない。もとより市民団体も社会的責任をより自覚して行政の下請け的な存在から脱皮して政策提案を行う組織力の強化も必要である。/しかし,住民参加なくして近未来に迫った高齢化社会は成立し得ないことを十分に認識し,政策の根本的な転換がより重要である。/株式会社などの営利組織よりも,善意の非営利団体の方が法人格の取得が困難である矛盾は,一日も早く解消しなければならない。」他に同紙では社説「ボランティア 震災直後の熱意はどこへ」(95年9月18日),中村啓三編集委員の[望雲観風]として,「非営利団体が育つ社会に」(95年1月26日),「再開発で文化の創造を」(95年2月2日),「ボランティアの原点」(95年2月9日)。
 95年11月26日『朝日』社説「市民が活動しやすい法案を」:「ボランティア運動などをしている市民団体の活動をしやすくするための法案づくりが難航している。/当事者である市民団体は,一定の条件を満たせばだれでも法人格を得られる登録制を求めているのに対して,認可制にして役所の権限の及ぶところに置いておきたいという考え方が,法制化を進めている政党のなかに根強いからだ。… 」

年表?
 新聞(上記の3紙),及び「インターVネット」(→第1章付論2)中の会議室【市民活動を支える制度】(シーズが情報を提供→第1章)に掲載されている情報★02等をもとに,ここ数年,特に1995年になってからの動向を簡単にまとめた。なおいくつかの法案等はこの会議室に全文が収録されている。後で法案の内容を少し紹介するが十分なものではない。収録先を注に記したので参考にしていただきたい。

9004  「パブリック・メディア・センター」(米国のNPO)との交流会
    (『読売』0416)

920413 NGO広場「日本のNPO,その発展条件を考える――USA・欧州NPOの調    査報告と,意見交換」(『毎日』0413)
921031〜第2回ネットワーカーズ・フォーラム「ネットワーキングを形に!――個人と社    会の新しいあり方を考える」(『毎日』1015『朝日』1104,栗原[1992],丸山    [1993])

9402  ニッセイ基礎研究所「市民活動に対する支援実態に関する調査」発行
940326 総合研究開発機構(NIRA)「市民公益活動基盤整備に関する調査研究」報告    書を出版 (『朝日』0723「窓」欄に紹介)
940414 講演「もうひとつの「日本改造」論――新しい日本社会は企業とNPOの協働で    生まれる」(播磨靖夫)日本フィランソロピー協会(『毎日』0408)
940423 シンポジウム「市民活動を支える制度を考える」開催(同実行委員会)(『朝日』    0503『毎日』0516)「市民活動推進法・試案」(東京ランポ・バージョン),     「公益寄付金税制の改善に関する提言・骨子案」(自由人権協会)を発表。
    →「市民活動を支える制度をつくる会」(シーズ)結成へ
940701 国民生活審議会(首相の諮問機関,会長・加藤一郎成城学園長)の総合政策部会    市民意識と社会参加活動委員会報告「自覚と責任ある社会へ」。重要さを増す社    会参加活動を中心的に担う非営利組織(NPO),非政府組織(NGO)への支    援策として,法人格を取りやすい「中間法人」制度の創設を提唱しているのが最    大の特徴。(『毎日』0702)
940715 NPO研究会(宮城県)主催の集い(『朝日』0713宮城版)
941030 『読売』社説「さらに広がれボランティア」
941105 市民活動を支える制度をつくる会シーズ結成(同日,発足記念イベント開催)
    (『朝日』1028)
941115 『朝日』社説「善意が根づく社会にするには」
941129 経済企画庁第14次国民生活審議会総合政策部会「個人の自立と社会参加」
941205 社会党が有志で「NPO推進のための作業委員会」発足(峰崎直樹参議院議員ら)
941212 新党さきがけ「NPS研究会報告書」発表
941214 新党さきがけが「NPS(ノン・プロフィット・セクター)支援問題検討プロジ    ェクト」を発足(座長:梁瀬進)
941216 大磯研究会「日米交流の活性化のために:要望書」発表(日米交流を進めている    NGO代表12人が政府に要望書を提出)
94???? 総合研究開発機構(NIRA)が市民公益活動団体に関する法案の作成プロジェ    クトを発足(95年秋をめどに)

950116 『毎日』社説「NPO「草の根組織」の法人化を」
950117 阪神・淡路大震災
950120 大阪ボランティア協会と大阪YMCAなど「兵庫県南部地震・被災地の人々を応    援する市民の会(略称:NPO応援団)」発足させる(『毎日』0121大阪本紙,    同0215他)
950121 とよなか国際交流協会 国際シンポジウム「新しい私が新しい社会をつくる―参    加と行動,共感と共生,育てNPO!」講演:レスター・サラモン他
    (『毎日』0114『朝日』0114大阪版)
950127 衆議院予算委員会の質問に対して五十嵐官房長官がボランティア支援立法の用意    があることを回答
950203 18関係省庁による「ボランティア問題に関する関係省庁連絡会議」設置
    (座長:総務庁,事務局:経済企画庁)★03
950208 シーズ「ボランティア支援立法措置に関する要望書」を村山首相に提出
950215 連立与党NPOプロジェクトチーム結成,第1回会合を開く(座長:熊代昭彦衆    議院議員=自民党)(『朝日』0216『毎日』0217)
950224 NPO研究フォーラム「NPO制度改革に関する緊急提言」発表★04(『朝日』    0225夕刊)
950301 市民公益活動の基盤整備を考える会(NIRA調査研究関係者)「市民団体の法    人化などに関する超党派的なとりくみに対する要望書」を各党に,「市民団体の    法人化などの検討に対する要望」を首相に提出
950303 新進党の「明日の内閣」で「ボランティア基本法案」をとりまとめる。
    議員立法として参議院に提出へ。
950304 「震災復興支援・京都NPO連絡会」発足(『毎日』0307京都版,同0317京都版    :0318シンポジウム,同0414京都版:0416コンサート)
950308 新進党「ボランティア基本法」を国会に提出(廃案となる)
950314 環境庁「法人格の取得方策など環境NGOの支援に関する研究会」発足
950315 シーズ,「市民活動を推進する2つの法律に関する提言・案」発表。
950317 自由人権協会「公益法人寄付金税制の改革に関する提言」を大蔵大臣に提出
9503  新進党NPOパートナーズ結成
950331 経済企画庁「社会参加活動推進システムについての調査研究」まとまる
950415 「市民活動を支える制度をつくる会シーズ」,「NPO研究フォーラム」,「市    民公益活動の基盤整備を考える会」が集まり「市民活動の制度に関する連絡会」    を発足させる(『朝日』0424)
950426 「ボランティア問題に関する関係省庁連絡会議」,法人制度について,民間3団    体(NPO研究フォーラム,シーズ,考える会)にヒヤリング
950513 シーズ「シンポジウム:政治は市民活動推進のために何をすべきか」を開催
950518 新進党「民間非営利公益活動法人格付与法案」(略称:NPO法案)をまとめる    (『朝日』0519)→0627
950524 全国社会福祉協議会全国ボランティア活動振興センター「ボランティア活動支援    に関する提言」を発表
9505  社会党「95年宣言」要旨「[政策目標」…NGO,非営利組織(NPO),環境    保護,生活協同組合運動などと連帯。…」(『朝日』0528)
950612 18省庁「ボランティア問題に関する関係省庁連絡会議」第4回
950620 青島幸男東京都知事姿勢方針演説「…ボランティア,NPO(民間の非営利団体)    などと,どう連携すべきかを検討する。…」(要旨)(『朝日』0618 0620 0621)
950624 「市民活動の制度に関する連絡会」他諸団体「公開フォーラム:市民活動の制度    を考える」開催(大阪) NPO研究フォーラム,シーズ,市民活動の基盤整備    を考える会(代表:木原勝彬)が各々の試案発表(『朝日』0623大阪版)
950627 新進党のNPO(市民公益団体)議員立法専門委員会(座長:河本たかし)「市    民公益活動を行う団体に対する法人格の付与等に関する法案(骨子)」★05と税    制上の優遇措置を講じる法案を発表(『読売』0628)
950628 与党3党のNPOプロジェクトチームが記者会見 「市民活動促進法案(仮称)」
    に関する合意内容を発表(『朝日』0629『毎日』0629『読売』0629)
950630 与党3党による「3党合意の検証に立って新たに付け加えるべき当面の重点政策」    に「非政府組織・非営利団体への法人格付与法の早期制定」を謳う。
950701 大阪青年会議所(JC)が「21世紀地球市民社会フォーラム」開催
    (『朝日』大阪0628夕刊,0711夕刊)
950704 与党NPOプロジェクトチームが市民団体6団体と意見交換会
950709 「市民活動推進センター設立委員会」(代表幹事:リングホーファー・マンフレ    ッド,木原勝彬)発足記念シンポジウム(『朝日』0701奈良版)
950718 阪神・淡路復興委員会が村山首相に提出する「兵庫県,神戸市の復興計画に関す    る意見書」案(全11項目)要旨の9「…ボランティア活動にも大きな役割があり,    NPO(非営利市民団体)・NGOによる新しい秩序の形成を期待したい。」
    (『読売』大阪0718)
950724 与党党首会談 行革に関し予算措置も含めて年内に方針を固めることで合意した    5点中に,NGO(非政府組織)やNPO(非営利組織)の活動を支援する立法    (『朝日』0725)
950804 シーズ月例フォーラムで新進党案を河村たかし議員が説明
950821 シーズ「市民活動推進法(試案)」発表
950918 『毎日』[社説]ボランティア 震災直後の熱意はどこへ
950926 さきがけ案骨子が公表される。★06
951016 シーズ・法案検討委員会,「市民活動推進法・試案」発表★07 経済企画庁に提    出(『読売』東京1019)
951020 与党税調で公益法人課税強化が浮上(『朝日』1021)
951020 「NPO連絡会(仮称)」の準備会発足(『朝日』1015)
951102 シーズ・緊急フォーラム『市民活動の制度』の争点を問う〜立法上のポイントと    今後の見通し パネラー:河村たかし(新進党)・堂本暁子(さきがけ)・伊藤    道雄(NGO活動推進センター)・福島瑞穂(弁護士)他 ★08
951104 NPO連絡会 サンフランシスコで第1回日米NPO市民会議開催
    (『朝日』1015,1102「山岸秀雄さん 日米NPO市民会議を開く(ひと))
951107 新進党「市民公益法人格付与法案」国会に提出(『朝日』1108)
951117 連立与党の非営利民間組織(NPO)プロジェクトチーム「市民活動促進法案」    (仮称)の原案と税制面での優遇措置を適用する「税制改正要望」を決定(『毎    日』1118『朝日』1118) 1121の与党税制改革プロジェクトに報告(『読売』東    京1121)
951123 「市民活動の発展を考える討論会」(名古屋)(『朝日』名古屋1108,1117愛知版)
951126 『朝日』社説「市民が活動しやすい法案を」
951205 シーズ主催のシンポジウム『与党3党「NPO法案」の目指すもの』★09
    ゲスト 熊代昭彦議員(自民党),五島正規議員(社会党),堂本暁子議員(さ    きがけ),他
951226 連立与党の「市民活動推進法案」明らかになる(『朝日』1227)

法制化を巡る動向・政党
 上に年表とした情報を別様に整理しながら,法制化を巡る動向を簡単にまとめる。
 見てきたように,ここ数年,主に民間の側でNPOに対する関心が高まっていた。また政府・政党による検討も始まっていた(→第1章)。1994年の12月5日には,社会党が有志で「NPO推進のための作業委員会」(峰崎直樹参議院議員ら)を発足させている。12月12日には,新党さきがけが「NPS研究会報告書」を発表,同14日には,「NPS(ノン・プロフィット・セクター)支援問題検討プロジェクト」を発足(座長:梁瀬進)させていた。
 1995年1月17日の関西大震災は各政党・政府においてその動きを加速させた。
 政府の対応については第1章と年表。現在は経済企画庁がNPOの法制化の必要性についての調査を進めている。法案の提出・審議については,各政党案の方が先行しそうな情勢のようだ。
 連立与党(自由民主党・日本社会党(1996年に社会民主党と改称)・新党さきがけ)は,95年2月に与党NPOプロジェクトチームを結成,15日に初会合,6月28日には記者会見し,そこまでの合意内容を発表した。それによると,「市民活動促進法案」(仮称)の内容は,法人制度の改善を主眼にしたもので,議員立法で,秋の臨時国会かその後の通常国会に提出をめざすとした(『毎日』0629,『朝日』0629)。また6月30日の与党3党による「3党合意の検証に立って新たに付け加えるべき当面の重点政策」でも「非政府組織・非営利団体への法人格付与法の早期制定」が謳われた。7月24日,24日の与党党首会談で行革に関し予算措置も含めて年内に方針を固めることで合意した5つの事項の5番目として,NGO(非政府組織)やNPO(非営利組織)の活動を支援する立法があげられた。(『朝日』0725)
 また,新党さきがけの政策調査会NGO支援検討部会が,9月26日に市民活動法人法案(堂本暁子部会長試案)を発表した。以下のような内容になっている。主務官庁は置かず,10人の会員と 100万円の設立準備金があれば登記によって法人となれる(第11条)。「公益」といった表現は用いず,非営利性,会員制,特定の政党又は宗教のために利用しない,といった要件だけで「市民活動法人」を規定している(第6条)。市民活動推進委員会を都道府県ごとに設置して監督を行う(第30〜34条)。この委員会は行政機関ではあるが,委員は市民活動法人の代表理事や有識者から選ぶことにし,市民活動法人の自主性を保てるようにする。
 一方,新進党は,95年3月に「NPOパートナーズ」(河村たかし座長)という委員会を結成し,6月27日には「市民公益活動を行う団体に対する法人格の付与等に関する法律案(骨子)」を発表,11月7日には法案を臨時国会に提出した。一定の地域を基盤に教育や社会福祉,環境保全,国際理解の増進などを行う「市民公益法人」を新設。@社員10人以上,A基本基金として50万円以上の財産を保有,B「会員の過半数及び役員の3分の2以上が,同一都道府県に住所地をもつこと」「主たる活動地域が同一都道府県内であること」――などの条件を満たした公益団体に,都道府県知事が法人格取得を「認可」するという案になっている。
 他方,連立与党のNPO(非営利組織)プロジェクトチームは,11月17日,「市民活動促進法案」(仮称)の骨子・税制面での優遇措置を適用する「税制改正要望」をまとめた。週明けの与党政策調整会議と与党税制改革プロジェクトにはかり,次の通常国会への提出をめざす方針だという。
 法案は,対象となる団体を環境,国際協力,福祉など市民生活や福祉向上の事業を行う「市民活動団体」と定義。税制面では原則非課税とし,収益事業のみを課税対象としている。さらに,一定の活動実績を見て,当局と協議のうえ公益性が高いと認定した「特定市民活動法人」(仮称)については,寄付金に対する税控除措置を講じるとしている。
 すでに国会に提出されている新進党の案と比べると,法人格の取得要件を2つの側面で緩和しているのが特徴。第一に,数人のメンバーがそろえば資金要件は問わないことにした。第二に,都道府県知事が法人格の取得を「認証」するとした。これは,資格審査がより厳重な「認可」では,行政の介入につながるとして,市民団体などから反発が強いことから,定款について書類上不備がなければ認められる「認証」にしたもの。ただ,歯止めとして,事業報告,財務諸表などについて届け出るよう「情報開示」を義務づけ,情報開示が3年間なかった場合や,定款に違反があった場合には認証の取り消し,裁判所による解散命令ができるようにした。(『毎日』1117,『朝日』1118)

法制化を巡る動向・シーズ
 シーズ(→第1章)は,1995年2月8日に「ボランティア支援立法措置に関する要望書」を村山首相に提出,3月15日に「市民活動を推進する2つの法律に関する提言・案」を発表。4月15日には,シーズ,NPO研究フォーラム(会長:本間正明),市民公益活動の基盤整備を考える会(代表:木原勝彬)の3団体が呼びかけて,「市民活動の制度に関する連絡会」を結成。個別の団体を超えた意見交換の場も作られた。その後も,シーズは各政党の担当者を招いてのシンポジウムなどを積極的に開催していくと同時に,法案検討委員会が独自の法案を作成する作業を進めてきた。シーズ案の理念・原則は「私的自治の原則」「情報公開の原則」「公平な社会的分担の原則」の3つ。民法の公益法人とは別に,特殊な非営利法人としての「市民活動法人」を規定する特別法を作るべきだとしている。法人格を取得させるための「市民活動推進法」と税制上の優遇措置に関わる「市民活動推進のための租税制度の整備をする法律」の2つからなる。後者の具体案は,95年3月の要綱発表後,現在検討中。前者について,95年10月16日の「市民活動推進法(試案)」(改訂第3版)では手続きは以下のようだ。「会員になろうとする者10名以上又は2以上の法人が発起人となり,規約を作成」(第13条),「規約は,公証人の認証を受けなければその効力をもたない」(第15条)→創立総会(第16条)→「主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立」(第17条)→「市民活動法人は,成立した日から2週間以内に,その登記簿謄本及び規約の写しを添えて,主たる事務所の所在地を管轄する都道府県に届け出なければならない」(第18条)。また,裁判所が解散を命ずることができるとしている(第71条)。

争点
 第一に,どのような団体に法人格を認めるかという問題,これに関連して,法人格の付与等における行政府との関係,行政による規制のあり方。オウム真理教の一件などもあり,一部では「行政の監督責任」がまた云々されることにもなって,法制化の論議にも影響が出ていないとは言えない。
 新進党案が想定しているのは,いわゆる「地域のボランティア団体」であり,全国的にあるいは海外で活動を行い,ゆえに法人格をより必要としている団体が入らない。あるいはかなり無理をして体裁を整えないといけない。ゆえに,この案には強い批判がある。
 手続きについては,シーズ案では登記所への「登記」と届け出。連立与党案は都道府県知事による「認証」。新進党案は都道府県知事による「認可」。順に行政による縛りが強くなる。
 シーズは,そもそも行政による数多くの団体の活動の事前評価と常時の監督は不可能であり,また活動の自由を保障する上で問題があるとしている。監査役の設置,構成員への情報公開,市民への情報公開により,すなわち基本的には「市民自治」によって,活動を監視すべきだとし,政治による関与としては,裁判所に解散命令の権限を付与している他,犯罪行為については刑法と税法によって対処すればよいとしている。筋が通った,現実的な考え方である。民間団体の多くもこうした主張に同意している。「お墨つき」を政府からもらうことによって「社会的信用」を得ようという方向もありうるだろうが,多くの組織はこのような考え方をしていないし,またそのために払う代償が大きいとも考えている。まずは,営利法人と同等に,簡易に法人格を取得する道が開かれればよいと考えている。
 第二は,収益事業や寄付金に関わる税制,より広くお金を巡る問題。非営利法人制度を「悪用」しようとするとすれば,それはまずお金に絡んだものだろう(だから,法人格の付与自体についての細かな規制は不要だとも言える)。非営利=利益の非分配が規定されたとしても,それに抵触しない方法での特典の「私的」利用法,例えば寄付がなされ(免税され),それが理事への報酬として家族・親族に払われるといったことは考えうる。たとえばこうした問題をどう処理するか。多くの団体は,法人格を取得したすべての団体が税制上の特典を受けられるというのではなく,その資格はより限定されたものとしてよいと考えている。ただ,その具体的な条件となるとまだ詰められてはいないようだ。
 他にも,民法(における公益法人の規定)との整合性をどうとるかといった問題がある。今ある組織は,様々の不都合を抱えながらもなんとかやっていて,今すぐに法人格がないと活動が立ちいかないということではない。急いでしまって,これなら大丈夫と(行政府に)思われる団体しか使えないような窮屈な法律が作られるよりは,慎重な検討と討議を積み重ねていく方がよいと思う。


★01 NIFTY-Serve の新聞記事データベースを使用。『日本経済新聞』が抜けているのは使用料金が高かったためである。
★02 特に【市民活動を支える制度】00006「市民活動を支える制度をめぐる状況・年表」(95/09/16)。この活動を伝える記事として,『読売』東京951019「ボランティア支援法制定を パソコン通信で市民の意見集約/市民団体シーズ」。
★03「ボランティア問題に関する関係省庁連絡会議の設置について」は【市民活動を支える制度】【市民活動を支える制度】00039「C'S AND VOLUNTEERS ACT(1)」(田中治彦 95/03/06)に掲載されている。
★04 【市民活動を支える制度】【市民活動を支える制度】00059「NPOの制度改革に関する緊急提言」(大田弘子 95/03/08)に全文掲載。
★05 【市民活動を支える制度】00012「新進党案骨子」(95/10/04)に全文掲載。
★06 【市民活動を支える制度】00013「さきがけ案骨子」(95/10/04)に全文掲載。
★07 【市民活動を支える制度】00014「シーズ「市民活動推進法・試案」」(95/10/17)に全文掲載。【市民活動を支える制度】00015「「市民活動推進法・試案」Q&A」(95/10/17),【市民活動を支える制度】00018「試案に対する意見・批判」(95/11/01)。
★08 【市民活動を支える制度】00016「シンポジウム11/2」(95/10/23)に案内。
★09 【市民活動を支える制度】00026「12/5シンポジウム」(95/12/06)に案内。


REV: 20161031
『NPOが変える!?――非営利組織の社会学(1994年度社会調査実習報告書)』
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa
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