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体外受精 in vitro fertilization(IVF)

立岩 真也 19960228
比較家族史学会編『事典・家族』,弘文堂
http://koubundou.co.jp/


  体の外で卵子と精子を出会わせ受精させること。この受精卵(胚)を子宮に戻し(胚移植 embryo transfer)着床させる。試験官ベビーと呼ばれるのは体外受精・杯移植(IVF−ET)の過程を経て誕生した子供である。1978年、英国で初めての体外受精児が生まれた(日本では1983年、東北大学産婦人科での出産例が最初)。一度に移植する受精卵が多い方が妊娠の可能性が高いので、排卵誘発剤を用いて過排卵を起こさせ複数の受精卵を採り出す。受精卵を凍結させ妊娠しやすい時期に解凍して子宮内に戻す技術、卵に直接精子を入れる等の顕微授精の技術も実際に用いられている。他に、体外で精子と卵子を混ぜ合わせ受精は体内で行わせるギフト法(配偶子卵管内移植法、GIFT)等の方法がある。成功率の低さ(1990年の日本での治療周期当たりの生産分娩率は 9.4%)、女性の身体・生活に対する負担の重さ、危険性等が指摘される。また、排卵誘発剤の利用による「余剰胚」の廃棄や実験利用に関わる問題、冷凍胚の保存期間の問題、胚を巡って夫婦間に対立が生じた場合の問題等が指摘され、既に海外では裁判例もある。一般には卵管性不妊症、乏精子症等の不妊症に用いられるが、どのような場合に、誰に認めるのかが問題になり、各国で法的な規制が、その内容は一様でないが、行われている。日本には法的な規制はない。日本産科婦人科学会の倫理基準は、これ以外の医療行為によっては妊娠成立の見込みがない場合で、法律上正式の夫婦である場合に限って認めるとしているが、大学によっては内縁の夫婦に認めているところもある。(立岩真也)

[参考文献]William A. Walters & Peter Singer eds. Test-Tube Babies: A Guide to Moral Questions, Present Techniques and Future Possibilities, Oxford University Press, 1982(坂本正一・多賀理吉訳『試験官ベビー』,岩波書店、1983).大田静雄『試験官の中の子どもたち』1983,三一書房.斎藤隆雄『試験官ベビーを考える』1985、岩波書店.


REV: 20161031
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