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障害者総合情報ネットワーク・他

―自立生活運動の現在・7―

立岩 真也 19921225 『季刊福祉労働』61:153-158


 →『生の技法 第3版』


■資源としての情報
 ホームヘルプサービス事業についての情報を紹介しようと思っていたのだが、登録ヘルパー制度(利用者が介助者をヘルパーとして登録できるようにする)の導入が微妙な状況にあるということで、これはまた別の機会に紹介することにし、今回は、情報提供(この連載自体がもっぱら情報の提供を目的としているのだが)のあり方について、最近発足した組織の注目すべき活動の紹介を中心に報告する。
 その「障害者総合情報ネットーワーク」の機関紙『BEGIN』(Basic Essential & Genuine Information Network)の創刊号で、(この時点では準備委員会の)代表の二日市安さんは次のように述べる。「人権の基本は、自分に関連することがらを自分で決めることにあるといいます。/私たちはかなり遠い昔から「お上」に決めてもらうことに慣れてきました。どこに住み、どんなふうに暮らすか、そしてどんなふうに暮らしてはいけないかまで、文字どおり箸の上げ下ろしにまで「お上」の意見が入るという生活を長い間続けてきたわけです。/「お上」にとって都合のいいそういう生活形態が持続したのは、私たちに情報が不足していたのが大きな原因でした。昔の「お上」は「よらしむべし、知らしむべからず」という原則で政治をしていたそうです。情報を独占し、「お上」に都合のいいように情報を操作するというのが、上手な政治のやり方だと信じていたのは別にヒトラーばかりではありません。そう、「お上」に情報を独占され操作されるのは、もう願い下げにしましょう。」
 つけ加えることはあまりないが、以前に述べたことを繰り返すと、一つに、上から降りてくるものにある場合には反対、ある場合には増額の要求というのでは人は満足しなくなっているし、実際それでは済まなくなってきている。「政権交代」も一応あったわけだし、それ以前に「当事者主体」を本当に考えるなら、例えば「障害者対策基本法」に対する対案提出の運動のように、最初の基本的なところから対抗的な提案を行う必要がでてくる。そして例えば民間組織が福祉にどう関わるかにしても、負担のあり方にしても、そう単純に片付く話ではない。使いたくなくても頭を使わねばならず、情報を仕入れねばならない。一つに、地方分権が好きでも嫌いでも地域間格差は現実にある。同時に(日本的な?)横並び意識もある(自由競争が好きな人には競争意識と言ってあげてもよい)。財政規模なりがそう変わらない隣の自治体がやっていることを我が自治体がやれないことの言い訳は難しい。情報は武器になる。逆に情報を持っていないことは損失になる。

■障害者総合情報ネットワーク
 今年五月の準備会結成集会から半年、十一月二八日に「障害者総合情報ネットワーク」が正式に結成された(事務局は東京都文京区関口一−十六−一−七〇一 電話・ファックスは〇三−五二二八−三四八四)。今ちょうど立ち上げの時期で、具体的な活動の報告はもう少し後の方がよいかとも思うが、非常に大切な試みだから、それまで待っていられない。
 五月に示された「設立趣意書」は、これまでの政策・運動の推移を振り返った後、以下のように続く。
 「…私たちはいっそう恒常的な連携、迅速で正確な情報の収集および伝達、さらには私たち自らが政策を立案し積極的提起をしうる実力の必要性を痛感させられました。
 このネットワークは、このような私たちの共通認識の上にたって設立されるものです。今後より多くの障害当事者や障害児(者)の親、現場の労働者、研究者らの支持と参加を得るべく活動を展開しなければなりません。私たち障害者自らが政府行政の政策決定過程に関与する上で正確な情報の獲得はもっとも不可欠な課題であり、さらにそれらを的確に分析し系統的に論議する場も準備されなければなりません。多くの皆様のご参加を切望するものです。」
 主な活動は、会員に対して情報の提供を行うことだ。会員には四種類ある。▼A会員の年会費は三万円。@『月刊ビギン』の送付。A季刊の情報・研究誌の送付、B希望する資料の提供(年間B4で三千枚、郵送料三千円までは無料)これを越える場合は、一枚あたり三十円と郵送料実費。C速報紙の送付。D研究集会・シンポジウム等への参加等への参加費の割引きなど、ネットワークの活動への優先参加。▼B会員の年会費は一万円。@Aの送付。BCについては一枚あたり三十円と郵送料実費。▼賛助会員(団体募集のみ)の年会費は一口年額一万円。B会員に準ずるが、機関誌は加入した口数の範囲で相談、月刊誌は一部。▼講読会員は年会費六千円。Aを送付。資料の提供は、一枚あたり四十円と郵送料実費。
 @『月刊ビギン』は、(十月の時点で)第一号(八月)と第二号(九月)が発行されている。A四で八頁ほどのものだが、例えば第二号では「一九九四年度障害者関係の各省概算要求の内容分析」といった速報の特集がある。「所蔵文書リスト」は、第二号までの時点で一三○点に達している。国会・国の行政、そして東京都の資料に関しては、堀参議院議員の事務所からの提供が多い。各政党が出している文書、各省庁の文書、議会の議事録など、他ではそう簡単に手に入らないものがかなり含まれている。他にこのネットワークに参加している人や団体が提供している情報がある。運動体の要望書・質問状や各自治体の条例・要綱等。地域レベルの情報源はまだ限られている。情報の提供者の拡大が望まれるところだ。先に最初の部分を引用した二日市さんの「発刊の言葉」の続き→「…情報は一方的なものだけでなく双方から流れてこそ本物です。しっかりと知り、しっかりと考え、しっかりと話し合い、そしてしっかりと判断する――それこそが人権の基礎であり基本であると確信します。この小さな月刊誌をどうか暖かく見守りそして参加してください。」
 こういう仕事は絶対に必要だと思う。例えば『障害者の福祉』(日本リハビリテーション協会発行)を一年とるだけでも五四〇〇円かかる。あれはあれで意義があるにしても、ここで提供されるのは皆新鮮な情報であり、政策決定に直接に関わるその過程の情報が大きな部分を占めている。国の政策に関与しようとする運動体にとって必須だし、各地域の組織にとっても必要性は高い。第一に、上意下達と言いながら、その水準にまで達していない、つまり中央政府の指示を意図してか単なる勉強不足なのか、実施しようとしない自治体の担当者に、政府の指示を示してその実施を求めることもできるからだし、第二に、各地域の先進的な試みを知り、それを参考にして提言や要求を行っていくことができるからである。
 そして、特に公的な機関、大学等の研究・教育機関にとっての意義があると思う。それらの機関の資料室は概して貧弱で、人手不足もあって十分に整理されてはいない。個別の研究者が必要なものを手元においておく(そのうち所在がわからなくなる)という場合が多い。例えば(会費の支払いという形態は無理だろうから)雑誌の定期購入という形式で、A・B会員に準ずるサービスを受けることができるはずだ。『月刊ビギン』を毎月とり、その中のものを自動的に発送してもらい、送られてきた順にファイルしておくなら、それだけでかなりの量・質の資料を、早く、しかも文書のリスト付き(『ビギン』が一覧になる)で収集・整理できることになる。このネットワークの財政基盤(これはどう考えても苦しい)の安定化にも寄与することになるだろうと思う。購入図書(雑誌)・資料の選定に関わることの出来る読者には是非検討してもらいたい。資料費・図書費、等の費目で受け入れるための方法は、機関によって異なるだろう。この点は、ネットワークの事務局と相談したらよいと思う。
 さらにこのネットワークはA:季刊の情報・研究誌の発行まで行う。お金はともかくとしても、その仕事量の多さを思い人手のことを考えるとに私などはめまいがしてしまうが(事務局の専従は鎌田真和さん一人)、既にある情報の収集と配付というだけではカバーできない部分、例えば各地が何が行われつつあるのか、自分達が何を提起できるのかを知らせるために必要だと考えてのことだと思う。研究誌といっても文字だけが並ぶ論文集というものではなく、毎回特集を組みオリジナルの記事を集めた読みやすい雑誌になるようだ。

■私のところにあるもの
 もう三年前に『生の技法:家と施設出て暮らす障害者の社会学』(藤原書店)を安積純子らと書いた時、データを収集した。一冊書いて終わりというものではなく、随時情報を提供する意味があると思ったから、また、あの時資料の収集にはかなり苦労したし、今盛り上がっているこの運動の資料がどこにも集められていないというのはくやしいから、合間合間に少し仕事をするというような感じで資料の収集を細々と続けてきた。ただ、「障害者福祉」の専門家ではない私は他にしたい仕事がいつも山のようにあって、時間を十分にかけることができず、以前は自分でやっていた書誌データベースの作成をアルバイトの人にお願いし、この連載の締切りの度に関連のデータを少し追加して整理するというぐらいのことをなんとかやれているに過ぎない。(あまりに一貫性がないので覚えている人もいないこの連載で過去に取上げたのは以下の通り。1:自立生活センター立川、2:自立生活プログラム、3:東京都地域福祉振興基金、4:全国自立生活センター協議会(JIL)、5:東京都重度脳性麻痺者介護人派遣事業、6:生活保護他人介護加算。)先のネットワークが収集・提供する新鮮な情報とは異なり、悪く言うとコレクター?用の資料という部分もあるが、この連載でも何度かやったように、例えば受給額の推移を一覧の形で整理してみることも時には必要だ、ということにしよう。そういうものでしかないが、提供可能なものもあることはあるので紹介する。
 T:機関誌の収集。専門誌の類いは、やはり社会福祉協議会等の資料室ということになるだろう(関東だと神奈川県社協の資料室はかなりよい、東京都(飯田橋)は歴史が浅いせいもあってそうでもない)。大学の紀要の論文の類い(たまに使えるものがある)は国立大学の図書館の間で相互貸借というシステムがあるので、私の方でかなり取り寄せ可能。各地域の団体の機関紙等については、JILの事務局に加盟団体の機関紙があるのと、港区三田にある東京都障害者福祉会館にまあまあある他は、まとまって収集しているところはそうない。その代わりにというのではないが、以下の雑誌を取っている(以下五十音順)。『I.L.EXPRESS』(国自立生活センター協議会)『アナザボイス』(札幌ベンチレーター使用者ネットワーク)『いちご通信』(札幌いちご会)『SSTK通信』(埼玉障害者自立生活協会)『共同連』(差別とたたかう共同体全国連合)『CILたちかわ通信』『障害者事業団だより』(箕輪市障害者事業団)『障害者の福祉』『障害の地平』(視覚障害者労働問題協議会)『自立生活企画つうしん』(田無市の自立生活企画)『自立への願い』(長野ヒューマンネットワーク)『そよ風のように街に出よう』『全障連』『ネットワーク情報』(埼玉県障害者市民ネットワーク)『ネットワークBOX』(ヒューマンネットワーク・熊本)『派遣センター通信』(練馬区介護人派遣センター)『HANDS通信』(HANDS世田谷)『BEGIN』(障害者総合情報ネッントーク)『ヒューマンケアニュース』(ヒューマンケア協会・八王子市)『福祉労働』『町田ヒューマンネットワークニュース』『要求者組合通信』(全国公的介護保障要求者組合)『われら人間』…。他に今はもう出ていないいくつかの雑誌のバックナンバー、等。自宅に置き場がないので、今勤めている千葉大学の私のいる部屋に置いてある。きちんと整理されてはいないが、閲覧可能。問合せ、入手不能なものについては複写にも応じられます。また、私費で購入しているので買えるお金に限りがありますが、とった方がよいというものがあったら、お知らせ下さい。
 U:コンピューターで読める(印刷できる)ファイル。@法律の全文収録が二十弱。別段この形式で保存する必要もないかもしれない(『六法』を見ればよい)が、こうしておくと、視覚障害を持つ人も、機器を揃えれば(無論お金がかかる)、拡大文字や音で読むことができるわけで、一定の意味はあるかもしれない。A各地の自立生活センターの活動の概要(規約、等)をおさめたもの。B特に介助に関係する国及び各地の自治体の制度(要綱等)。大阪・兵庫の「まちづくり条例」も収録済み。これまでの連載分+α(掲載しなかったデータ等)も収められている。現在七〇程のファイルがあり、計三メガバイト位。印刷物としても提供可能。
 V:書誌データベース。図書カード(ただ個々の記事単位のカードがあるところはまずない)みたいなものがコンピュータのファイルになっていると考えてくださればよい。
 今のところ、この国で外国語文献以外、医学・理工系以外の書誌データベースで使えるのは次の二つだが、いずれも福祉関係で十分に使用に足るものではない。@ニフティ・サーブ他からアクセスできる「日外アソシエーツ」が提供するデータベースで「BOOKS」「MAGAZINE」。『月刊福祉』(全国社会福祉協議会)というこの業界ではメジャーな雑誌は、後者で(お金を払えば)検索することが出来る。しかしそれ以外、例えば『福祉労働』は、収録されていない。A文部省が設置した「学術情報センター」のデータベース。困ったことに大学関係者しかアクセスできないし、国会図書館所蔵の図書(これはかなり網羅的に検索できる)の他は、専門誌(障害者関係の雑誌は入っていないと思う)や大学の紀要と言った専門的な雑誌の論文しか収録していない(それでも必要があれば、私が代わりに検索することはできます。料金は他のデータベースに比べれば非常に安い)。
 そういうわけである程度は自前で入力しないとならず、作成している書誌データベースがある。ソフトとして『桐(V4』)を使用。項目は、筆者のふりがな、筆者、発行年月日、題名、ソース(書物であれば発行所、頁数、雑誌論文であれば何という雑誌の何号の何頁にあるか)、価格、所在(私の手元にあるかないか)、キーワード(不十分だが)…。別のデータベース・ソフトで読める形で提供することも可能。テキスト・ファイルの形にしてワープロ・ソフトで読む(+印刷する)ことも出来なくはないが、分量ばかり多くあまり能率的ではないと思う。障害者・福祉関係(他に医療・生命倫理、家族・女性関係がある)では以下の三種。@単行書。A機関誌(主に先に挙げた私のところにある機関誌についてのデータを収録)。B専門誌。『福祉労働』は、創刊以来のほぼ全てが収録されている(約千五百件)。他に『われら人間』『障害者の福祉』等。これらは比較的最近のものだけ。
 アルバイトの人にお願いしてデータの入力をしてもらっている手前もあるので、公的機関・報道機関(に勤める人)、研究者に対する提供の場合は有料(U・Vを全て含み、フロッピー八枚で送料・実費含めて五千円)。それ以外、活動のために必要とする場合には、実費(千円くらい)。Vの大きいファイルだと二メガバイトを超えるので、ハードディスクは必須。U・Vについては前述のネットワークのコンピュータにも入っていますが、問い合せはまずは立岩まで(〒一八一東京都三鷹市上連雀四−二−十九 電話・ファックス〇四二二−四五−二九四七 ファックスでのやりとりが私にとっては一番便利です)。リスト等お送り出来ます。
※追記 定藤丈弘・北野誠一・中西正司編『障害者の自立生活センター』が朝日新聞厚生文化事業団から九月に刊行されました。この種のものとしては異例の情報量の多さ、コスト・パフォーマンスの高さです。定価五百円・送料二四〇円。問合せ・注文は〒一〇四−一一東京都中央区築地五−三−二電話〇三−三五四五−〇三五三 振替東京三−九一六六。
 連絡先が変更になりました。
 東京都新宿区山吹町354番地トライポート101
 tel/fax 03-5228-3484


REV: 20161031
障害者総合情報ネットワーク  ◇『季刊福祉労働』  ◇病者障害者運動史研究  ◇立岩 真也
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