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全国自立生活センター協議会(JIL)

―自立生活運動の現在・4―

立岩 真也 19930325
『季刊福祉労働』58号(現代書館)


※その後のことも含め『生の技法 第3版』をお読みください。

『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙

■目的
 九一年十一月、全国自立生活センター協議会(JIL=ジルと読んで下さい)が結成されて活動を始めた。新聞やテレビ等でも報道されるなど、かなりの話題になったことでもあり、多くの方は御存知のことと思う。本誌には、事務局長の中西正司さんが、昨年夏の五五号にその結成について書いている。また、第3回自立生活問題研究全国集会実行委員会『自立生活NOW1992』(問い合せは八王子市の「第一若駒の家」0426-42-5617へ)にかなりの分量の記載があって参考になる(毎年一回開催されている自立生活問題研究全国集会は、九二年から各年の実行委員会とJILとの共催になった。九二年は名古屋での開催だったが、第五回の今年は札幌での開催だそうだ)。今回は、いくつかの文書と事務局での聞き取りをもとに、結成後一年を経たJILが、何をし、何をしようとしているのかを追う。
 JILが定義する自立生活センターとは、1運営責任者と実施責任者がともに障害者、2運営委員の過半数が障害者、3権利擁護と情報提供を基本サービスとし、@介助サービス・A住宅サービス・Bピア・カウンセリング・C自立生活技能プログラム(→連載第2回参照)のうち二つ以上を不特定多数に提供、4障害の種別を越えサービスを提供している組織を指す。定義は大切だと思う。名前自体がどうだというのではない。こういうものを私達は作っていくのだということをアピールし、似ているようで全く非なるものが出来ていくことに対抗する必要があるからだ。
 JILが具体的に目指すのは、その「自立生活センターの設立、提携、制度化」(規約第三条「目的」)である。日々の生活、介助を得ることを含めて、障害者の権利擁護に関わることを行政にまかせていてはだめで、当事者が積極的に実質的に関わってこそうまくいく。だが個人の力には限界があって、組織的に行った方がよい。とりわけ具体的な生活に関わる部分は各地域に当事者主体の組織が必要だ。そしてそれは障害者に自信を獲得させ、雇用の創出にもつながる。といっても、最初から完全に自前で始めるのは難しい。事務処理に関わる書類の書式からしてそうだ。似たような活動を行っているところからノウハウの提供を受けることができれば、その分をひとまず省くことができる。もちろんその地域地域に応じた実情があるから、その部分は各自で工夫して、実情に合わせて変えていけばよい。そして既に活動を始めている場合でも、相互の情報の交換等は有益だ。
 無論、そうした状況を当事者側の「自助努力」だけで作れるとはJILは考えない。それが可能になるための基本的な条件は、第一に介助に関わる費用が個人に対して支給されること、第二にセンターの運営に公的な援助が行われることである。この場面でJILが何をすることができるか。これについては後に触れる。(基本的に有償介助を採用した方がよいという認識を含め、いろいろと考えた末、私自身も、以上と同じことを思っている。なんでか。安積他『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』藤原書店、九一年、第八章あたりを見て下さい。)

■組織
 JILは団体を構成員とする協議会である。会員は正会員と準会員と未来会員からなる。正会員とは先にあげた四条件を満たす団体で九三年初めに十四団体、年会費五万円だが、公的な助成を受けていない団体については減額される。準会員は3の@〜C中一つ以上のサービスを現に行っているか近々行う具体的な計画がある団体で五団体、年会費は一万円。未来会員は、将来自立生活センターの活動を行うことを志向する団体で、十団体。年会費は三千円。この基準をもとに各団体がどれを選ぶか自己申告することになっており、実質的には正会員の要件を満たしていても未来会員になっているところもある。計二九加盟団体がある。こうして三種あるのは、目指すところをはっきりさせながらも、構成団体を出来るだけ広げ、これからという団体に対して積極的な支援を行おうという意図からだ。総会での議決権等には差はない。自立生活センターは約三十、会員は約三十団体だと、JILは答え、自らを宣伝する。
 会員となっている各団体の住所等を最後の頁に一覧表にしておいたから、近くに住んでいて利用できそうだったら(高齢者がサービスの対象に含まれている機関も多い)、あるいは協力できそうだったら、介助のアルバイトでもしてみようかと思ったら、是非問い合せてみてください。
 協議員は加盟団体から一名、年に一回協議員総会がある(昨年は六月)。常任委員は十五名以内、一般常任委員は正会員の推薦する者の中から協議員総会によって選任されるが、一般常任委員の多数決で二名以内の特別常任委員を委嘱することが認められる。常任委員会により、代表一名、副代表二名、事務局長一名、監査役一名の役員が選出される。常任委員会は三月に一回程度開催されている。初代=現在の会長はAJU車いすセンターの山田昭義さんである。
 賛助会員はJILの主旨に賛同して財政的な支援を行う個人または団体からなり、個人(現在約八〇人)会費は年間一口五千円、団体は三ランクあって、一口年三十万円・五万円・一万円である。企業などに団体会員になってもらって財政基盤を安定させたいところだが、増やすのはこれからの課題だ(まず案内パンフレットを作らないといけない)。会員には機関紙『I.L.EXPRESS』(一部七五〇円)が送付される(購読料だけだと年三千円)。新聞形式のもので、これからJILの活動を支援してくれる(して欲しい)この「業界」に詳しくない人にも読ませる紙面を狙って工夫をこらし、かなりデザインにも凝っている。
 JILの予算は年間約四百万円、会員からの会費は百万円、にはとても達しない。賛助会費もこれからというところで、寄付をもらったりいろいろとやりくりしてやっている。それにしても、正会員の会費は安くない気はするが、これには、遠いところから常任委員会等にやってくる場合に交通費を支給しているといった事情もある。

■活動
 加盟している各センターの活動内容は当然のことながら様々で、先にあげた『自立生活NOW』掲載の斎藤・糸賀の十団体に対する調査によれば、年間予算も、多いところでは一千万円を超えるところが三箇所、二千万円を超えるところが三箇所だが、百万円に満たないところもある。介助者派遣時間も、月に千五百時間以上が二箇所、千時間以上が一箇所あるが、五百時間に満たないところもある。スタッフの有給化についても当然のことながら予算規模に左右されている。活動歴と制度の差から当然出てくる、しかし、大きな差がある。無論、時間や回数が多ければ多いほどよいというものではないが、安定した運営のためにはそれなりの資金が必要だし、そのためにも一定の実績をあげていく必要はある。しかし、まず始めないことにはどうにもならない。トヨタ財団の地域活動助成によって、東北地方にセンターを作るプロジェクトも進められている。
 九二年二月に所長セミナーが行われ、センターの設立・運営を巡っての情報提供と議論が交わされたのに続き、六月十三・四日には協議員総会が開かれた(名古屋市)。予算・規約等々を決定する総会(二日目午後)の他に、パネルディスカッションが二回行われた。一日目午前に「公的な援助はゼロだけどがんばって始めたセンターの話」、二日目午前に「年間予算一千〜二千万円のセンターはどうやっているか」。せっかく集まる機会には、役に立つことをやろうではないかという姿勢だ。
 前者の一部は『I.L.EXPRESS』第二号(九二年十一月)に掲載されている(後者は次号以降)。準備万端ととのえてというのではいつまでたっても始まらないから、ともかく始めてしまうのがよいこと、最初から利用者がたくさんいてということには必ずしもならず、始めることによって家族による介助以外の道があることを当事者が認識していくこと、マスコミ等をおおいに利用すべきこと等々が語られている。もっと大切で現実的で深刻なお金のことは、微妙なところもあるから、活字にはなっていないが、ディスカッショッンでは当然大きなテーマになった。
 さらに、この時の総会で小委員会を置くことが決定され、活動が夏以降開始された。現在、「介助サービス」「自立生活プログラム」「ピア・カウンセリング」「自立生活センターとその他のサービス」「権利擁護活動」の五つがある。実質的な活動のかなりの部分がこの小委員会によって行われている。例えば、介助サービス小委員会は、介助サービスを開始しようとする団体に対して、講師の派遣から始まり、サービスの開始と運営を具体的に支援する活動を行っている。
 日常的な事務処理の他、問い合せへの応対、広報・宣伝活動は、事務局が対応している。常任委員でもあり、この世界では有名人?の斎藤明子さん(現代書館発行の『アメリカ障害者法』の訳者でもある)の事務所が事務局になっていて、彼女を中心に、週一日の常勤スタッフである糸賀美賀子さん(CILわらじ)、他に四人の不定期の非常勤のスタッフが仕事に携わっている(時給七百円)。
 各所で報道されたこともあって、個人・行政機関・企業等から、月に十数件から数十件の問い合せがある。話を聞いていくと、「自立生活センター」という言葉は知っていても、その当事者主体性がよくわかっていないこと、@行政が直接やる(良い)、A(有償というと)営利企業=金儲け(悪い)、Bでなければ「ボランティア」(良い)という発想が根強くあることがわかるという。ここのところを再考してもらうためだけでも問い合せに答える意義はある。利用できるセンターはないかという障害者からの問い合せには、近くに何もない時もあって(その方が多くて)、その時には希望に沿えず無念、となる。意外に県の障害福祉課など行政機関からの問い合せが多い。障害者からの問い合せがあっても、行政は把握していないから、ここに聞いてくる。また、自立生活センターを作るためにはどうすればよいのかといった問い合せもあったりする。ここにはセンターについての誤解も混じっているのだが、ただ、自治体がいろいろなことをせねばならなくなるという時世で、何かしようかという意識が高まっていることは感じるという。だから、こうした情報があった場合、事務局はその地域の障害者に対して、その情報を提供している。

■今後
 先に述べた介助費用・運営資金についての二つの条件が満たされていないこと、特にそこで地域間格差が決定的な問題であること、これは疑いない。全国公的介護保障要求者組合等が取り組んできた生活保護の他人介護加算を別とすれば、介助に関わる費用の支給には大きな格差があるし、また助成をどこからも受けられないセンターにとっては、活動資金が年間一千万円だとか二千万円だとかいうのは夢のような話である。無論JILもこのことを自覚しているのだが、どのような方向を考えているのか。
 第一に、介助費用については、国のレベルでの制度化が必要であり、そのための包括的なプランを自らが提起していくことが必要だと考えている。基本的には、介助費用は個人に支給されるべきであり、その方式として、例えば国民健康保険の一部に組込むのか、あるいは(現在の障害基礎年金の特別障害者手当はその性格としても支給水準としても論外だが)年金保険の中に組込むのか、それとも独立した制度がよいのか、等々を検討し、ビジョンを提出することである。今まで、やむをえない部分もあったのだが、対抗的で包括的なプランを示すことが出来なかったことが運動の大きな弱点だったと捉え、それを組み立てていくことが課題だと、それが具体的な行動の第一歩だと考え、検討が始められている。これには少しばかり私も関わっているので、ある程度まで検討が進んだら報告したいと思う。
 第二に、そう簡単にはいかない現状での策として、また単にそういう消極的な理由だけからでなく、全国的な制度と別に地方自治体で取り組むべき部分があると考えている。
 権利擁護のための条例、まずは一致点の得られやすい、実現可能性の高い部分として、交通機関・建造物へのアクセスに関する条例を各自治体に制定させ(神奈川などでは制定された)、それが波及していくように支援することがあげられる。また、自治体の介助料の制度も札幌市・千葉県(の一部の市)・東京都・大阪市等にあることはあり、これが兵庫県等にも広がってきてはいる。自立生活センターへの助成についても、東京都については既に一定のものがあるわけだが(→連載第三回)、自治体から事務局への問い合せをみても、同じ水準のものとはいかないにせよ、横並び意識はある各自治体が一応のものを作っていく可能性はある。そうした要求行動自体が各地の障害者運動を強くしていくのだから、それゆえに上意下達式の組織ではなく、協議会というネットワーク組織の形態をとったのだから、JILは、「要求案」「対案」作りに協力したり、交渉に一緒に出ていって、他の自治体での実情を提示するといった役割を担うなど、側面的な支援というかたちで参加していくことになる。
 JILの強みは、直接サービス提供を行っている、あるいは行う意思がある団体の組織だということである(無論過去・現在のあらゆる当事者組織が当事者に「サービス」を提供してきたのだが、それをことさらにサービスだとかシステムだとか言って提示していく戦略的な意味は確実にあると思う)。結成呼び掛け団体は十だった。現在、正・準・未来会員含めて二九、九三年中には四十くらいになるかもしれない。こういう組織は米国には四百くらいある。これから単純に考えれば、日本に二百あってもよい。というのは、ひとまず「取らぬ狸…」としても、例えば加盟団体が各都道府県一つくらいになれば、介助サービスの利用会員五千人、介助を提供する側の会員を含めれば一万人、時間的にも年間百万時間といったレベルに達することにもなりうる。この時には、この組織は強力な「圧力団体」となる可能性がある。それは先の話としても、何より、各センターの活動自体が、介助費用支給とセンターへの助成の制度化の必要性を現に示すものだということ、そしてこの活動の場に、まず参入してしまうことの意義を私達は確認しておきたい。出来合いのものが出来てしまったところに割り込むのは難しい。
 以上全てに関わり、一つに、各センターの活動、国・自治体の動向を把握し、情報を流通させるとともに、外部に向かっても、意義・有効性と実績をアピールしていく活動の強化が必要だ。例えば、各センターの活動実態が定期的に集約されるシステムを作っていくことが今後の課題とされている。朝日厚生文化事業団から寄贈されて事務局にパソコンも入ったし、私自身もデータをやりとりして、協力したいと思っている。そういうわけですから御協力下さい。私の書いている範囲も今のところ東京近くに限られてますが、これは単に時間とお金がないからです。特に各自治体の介助制度についての、可能な限り詳しい資料を集めています。三鷹市上連雀4-2-19・0422-45-2947(〜1995年まで)へ。

 ※ ふるいはなしです。『生の技法 増補改訂版』第9章をご覧下さい。


UP:1996
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