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ピア・カウンセラーへのアンケートの結果・2 <日本>

立岩 真也 1992/09/25
『自立生活への鍵――ピア・カウンセリングの研究』,ヒューマンケア協会


 次に,ヒューマンケア協会が主催し,既にピア・カウンセリング講座を受講するなどある程度知識・経験のある人を対象として1991年12月13日〜15日に行われた「第4回ピア・カウンセリング集中講座」の参加者にアンケートした結果を報告する。先の米国でのアンケートについてと同じく,似た回答を列挙するといった操作にとどめてある。文意が損われない範囲で,文章の一部を省略したりしているものがある。
 回答を寄せたのは15名,障害の種別では脳性マヒ者8人,その他が7人,性別では女性12名と女性が多かった。平均年齢は33.9歳。内訳は,20〜24歳が1人,25〜29歳が4人,30〜34歳が2人,35〜39歳:4人,40〜44歳が4人。

■01 これまで何時間位(又は何年位)ピア・カウンセリングを勉強しましたか。
 回答の方法が一定でないが,集中講座を2回という人が6人と多く,他の数人もそれを時間に換算して答えているようだ。ヒューマンケア協会の集中講座が88年に初めて行われたことを考えれば当然である。他にコウ・カウンセリングも受けてきたと答えた人が2人,集中講座1回と長期講座を1シリーズと答えた人1人等。

■02 なぜピア・カウンセリングを勉強しようと思いましたか。
 @「自分をかえたかったから」「障害を持った仲間のためというより,自分のために勉強したいと思った」「いつも自分の感情(とくに苦しい,とにかくやしい,怒りたいetc.)をストレートに出すことが出来ず,悩み苦しみそこから開放されたかったから」「どうしたら抑圧された感情を開放させていけるか知りたかったから」「私の解放と自己変革につながる」等,自分に引き付けた回答が11人と目立った。
 A他にカウンセリングをする立場からの回答が4人(1人は@の回答も)。「障害をもった立場からできる仕事であるように思った」「仲間同士でサポートしあえるこつのようなものを勉強できればと思って」「障害者でなければできない仕事(職業?)と知ったから」「今後の福祉相談を受ける仕事に役立てようと」。
 また,はじめは何だかわからなかったが,あるいは気軽な気持ちで受けてみて,参加してみてその効果を認めたという回答が5人。

■03「なぜピア・カウンセラーになろうと思いましたか」 回答数14
 問2の回答が自己のこととして語っていたものが多かったのに対して,この問の回答はそれを受けて,「他の人が」「他の人にも」「他の人も」という回答になっている(13人)「今どんな立場であっても自分らしく各人が生きていくためにはサポートが必要で私もサポートしあえる1人になりたかったから」「他の障害者もどんどんパワフルになって,共に社会を変える一員として育ってほしいと思ったから」「なろうとは思っていないが,苦しんでいる人の話を聞くぐらいだったらやれるんじゃないかと思う」「心身とくに身体に対して今のままでいいんだよ,在りのままのあなたで充分で,あなたのことはあなたが一番よく知っている,あなただからうまくやれてこれた,あなたの人生はあなたがリーダーシップをとっている,などのことばがけにどれほどのピア(私も含めて)がうえているか,そんなあつい想いをかなえあって行きたい」「自分も元気になりたいし,多くの人間に広めたいと思います」「あらゆる障害者がありのままの自分を肯定し,自由になれるよう手助けをしたい」「みんな素晴らしいものを持っているのに,その人の傷が邪魔をして,その素晴らしいものを出せないと感じていたので,みんなの素晴らしいものをひき出せる事ができたらなあと思いました。自分も含めて…」「自分の生き方を肯定し,前向きに生きたいと思い,また,そういう生き方があることを多くの仲間たちへ伝えたいという,気持ちから…」
 他に「新しい職業の一つになる可能性があり,職に就きたいという希望があったので」他,仕事として,自立生活プログラムの担当者になったので,といった回答が3(うち2は同時に上段の回答と併記)。

■04「他のカウンセリングの勉強をしたことがありますか。それはどんな手法ですか」
 回答数15。@「なし」とした人が9人。Aコウ・カウンセリングの経験があるとした人が3人。B他には「ケースワーク論を少し」「心理学全般を広く浅く」「応用心理学を通信教育で」「社会教育団体のやっているカウンセリング」,以上4人(1人はAと併記)。

■05「どのような状況の下でピア・カウンセリングは有効でしょうか」
 質問の意図が伝わりにくかったようだ。@わからない,が2人,他にも2人が質問の意味がわからないが,と答えている。A「どんな状況下でも有効」といった回答が3人,うち1人は「傷をもっていないピアなんていないから」。
 B多く(9人)は,クライエント側の置かれた状況として答えた(アンケート依頼者の意図もここにあるのだろう)。「助けを必要としているとき」「勇気が欲しいとき,壁を越えたいとき」「自分に自信が持てない障害者や誰か話を聞いてくれる人を求めている障害者に有効」「・障害者が自分の障害を否定しているとき/・障害者が一般常識にかんじがらめになっているとき」「同じ障害者の意見を聞きたい時」「信頼して話す相手が見つかりにくい状況」「自分がどうにもならないとき」「・思いなやみ苦しんでいる時。・自分の話をゆっくり聞いてもらいたい時(言語障害等を含む)」「自分の生き方を見つめる時」。状況の厳しさを答えるものが多いが,同時に事態の打開に向かう能動性も指摘されている。もちろん,両者は矛盾しない。
 C他には,カウンセリングが行われる状況設定を答えた回答が2(うち1つは@Aを併記)。「落ち着ける状況」「安心できる状況」。

■06「どのようなクライエントに対してピア・カウンセリングはより効果的でしょうか」
 回答数14。2通りの回答があった。
 @「自分で感情をおさえている人」「・自分の感情を正直に出せずにいる人達。・自分自身のかかえている問題に対し解決策を見い出せずにいる人。」「自分を信頼できない人」「心に深い傷を持っている人」「「心」病んでいる人」「・障害者が自分の障害を否定しているとき/・障害者が一般常識にかんじがらめになっているとき」(問05と同じ)。以上6。
 A他方で,「現在の人を何とかしたいと考えているクライエント」「自分の感情を出せる人」という2つの回答。一見反対のことを述べているようだが,問05への回答と同様,そう違ったことを述べているわけではない。これは次の4つの回答に現れている。
 B「自分をとり戻したいと思いながら一人ではそれができない人」「自分の悩みをみつめて乗り越えようとする勇気があるけれど,サポートを必要としているクライエント」「すなおな人が有効的だと思うのですが,すなおでない人も時間をかければ有効になるのでは」「悩んでいる人。求めている人」
 他には,「コミニュケーションに障害をもつ人に対して」「この様な質問はしない方がよいと思います。私は良いクライエントではないので」といった回答があった。

■07「ピア・カウンセリングをするとき一番気をつけることは何ですか」
 カウンセラーとして:回答数15
 @まず「まきこまれないこと」とした回答がAの最初のものを含め5つ。「相手のパターンにまきこまれないこと。自分のパターンを出さないこと」「相手の感情に巻きこまれないことです。自分の意見や感情を出さないことです」「相手にまきこまれずにていねいに相手の話を聞く」「相手の感情にまきこまれず,どこが,その人のターニング・ポイントになるかを注意しながら,感情の解放を促す。終わったら忘れるよう努力する」
 A次に以上を含め,「聞くこと」,それによってクライエントの感情の解放(discharge)を容易にすることがあげられる。「クライエントをしっかりみつめること。相手のコトバの内容を理解しようとするのでなく感情の起状をみつめること。巻き込まれないようにすること」「愛をもって,話をよく聞いて上げること」「クライエントの話を妨げない」「クライエントの言いたい思いをききとる。ディスチャージをしやすい環境にする」「相手の感情を楽に(自然に)出させてあげられるようしっかりサポートする。※言語障害の重い人の(話をきく)カウンセリングを行う時には,しっかり聞いている,理解しているということを復唱することで示してあげる。大きくうなずく」「クライエントを認め,その人の本質をひき出すこと」「安心させること」「クライエントの話を傾聴し,励ましながら肯定する」「カウンセラーに徹する。問題点(解放点)を見つける。パターンを見つける。」「クライエントをホジティブな発想にみちびく」「クライエントの話は絶対口外しないこと。この時間はクライエントが自由に使えるように配慮すること」

 クライエントとして:回答数14
 @カウンセラーを信頼することが4。A自分の感情を出すことが11。このうち,両者を併記したものが2つ…B。
 @「カウンセラーを信頼すること」(2)
 A「感情を出して話をする」「一番気にしていることをぶちまける」「自分の歴史を遡って,本来の自分をみつけるために時間を使う」「自分の心にすなおになること」「感情を押えない」「自分に集中して感情をみつめ,その時のおもいをコトバにすること(カナしいとかヤメロとかあっちいけとか)」「自分を見つめ,ありのままの感情を表現する」「思いのままの自分を示す」「自分に正直になる」「話したいことを話す」
 B「カウンセラーを信頼すること。何が傷になっているかに気付き,早くディスチャージ出来るようになること」「相手を信頼し,思いのままの自分を示す」
 他に,「気をつけることなど基本的にはないはずですが…。私はカウンセラーに色々と気を使ってしまうので,まだまだだめですね」

■08「感情の解放ができましたか。そのときどんな気持ちになりましたか」
 ちょっと,を含めて14名ができたと答えた。「最初はとまどいがあった。今までよそおってきた自分の方が楽だったので,自分を変えることに意味が見出せるまで,クライエントの時間が苦痛だった」「他人のデモンストレーションを見ているうちに,だんだん感情が自然にわいていて,体,全体で泣いていました。その人達のデモンストレーションが自分の人生とダブって見えました。そして,なぜ,自分が泣いたのか,何が負担になっていたか,その後,わかりました。その後,あの時のような,号泣きがないので,どんな気持ちになりましたかといわれてもよくわかりません」「疲れたような,すっきりしたような」「気持ちはすっきりした。ホッとした」「きもちいい。もっももっとわめきたい。頭の中がかるくなる(おわったあと)」「これが本当の自分なのだと感じ,リラックスした気分になりました。でも,その後,ひどく疲れ,頭痛がすることもあります」「笑いの解放……最高 泣く……3回くらいできたが,いまだに変な気分です 怒りの解放……いい気分 ☆怒りやおそれを思いきり出すことで,ウソのようにそのことに対する自分のこだわりが消え,新しい気持ちで同じ相手や状況に接することができます」「素直になれた気がした」「すっきりする」「きもちがらくになった」「スッキリとした。とても良い気持。・自分に勇気と自信がわいてくるような感じになる」「ディスチャージした時は,堰をきってという感じで感情が溢れ出し,その後は眠りからさめた時のような,まどろんでいるみたいな状態になる」「まだ難しいです。でも,なんとなく気が楽になってきました。自分は自分だから,無理して人のペースに合せなくて良いんだと思えるようになってきたこと」
 他方,「解放はまだできていません。しかし,無理に解放しなくてはと思わなくなりました」

■09「ピア・カウンセリングを受けて自分が変わったと思いますか。どのように変わりましたか」
 「そんなに変わらないと思うが,ちょっと自信がでてきた」を含めれば全てが「変わった」と答えている。以下は全ての回答(文章の一部を省略した)。
 まず,自信,言いたいことが言えるようになったという回答が多い。「自分に自信が持てるようになってきました」「カウンセリングに少し自信がついた。次に進める気がした」「自分に自信をもち,肯定できるようになった。物事を前向きに考えられるようになった」「気持ちが大きくなり,自分自身に自信が持てるようになった。少しずつではあるがやさしいだけではなく,”怒る”ことも出来るようになった」「底にあった大きな傷が見えた時,傷の原因を掘り下げようという勇気が湧いてきました」。「ステレオタイプ的な発想がへった」といったものもあった。
 次に上記(の少なくともいくつか)も含め対人関係について記したもの。「前は感じることができなかった人の「心(気持ち)」が,今は感じるとることができるようになりました。(まだほんの少しですが)。今も,悩まされている職場の人間関係がうまくやってゆけそうな気持ちになってきています」「人の話をよくきけるようになった。勇気をもてるようになった。自分の気持ちを大切にするようになった」「思っていることが話せるようになった」「確かに自分の言いたい事を言えるようになって来たと思います。勿論,完全ではありません」「人間関係の作り方。外側から見ても変わっていないかもしれないが,自分ではずい分楽になった。相手に求められていることが判っても自分がそうしたくなければ断っても人間関係がまずくなるということはないということがわかったし,自分らしさを保つことができるようになった」「つれあいの様々な傷などにまきこまれないようにするようになってきた。私は私,とおもえ,少しずつうごけるようになってきた。少しずつだったけどイヤなものは嫌といえるよになってきた。どんなことが主体的に生きることだか少しわかってきた」「☆自分が直接の手助けやアドバイスができなくても,安心して「聞く」ことができるようになった。☆他人が泣くことがこわくなくなった。☆自分を楽しませることにうしろめたさがなくなった」

■10「ピア・カウンセリングが単なる相談と違う点はどこですか」 回答数15
 @クライエントが自分で解決を見出す点をあげたものが7。「解決方法を自分で発見していくこと」「カウンセラーの力だけではなく,その手助けで,自分から自信をつけていくところ」「☆問題を解決するのはあくまでクライエントであり,クライエントを信頼すればいいということ。☆カウンセラーとクライエントが対等だということ」「アドバイスをしない。答は自分で見つける」09「自分から問題を解決していけるようにする」「自分の問題点や方向性を,自ら見いだしていくこと」14「カウンセリングは自分の意見を言わないこと」
 A感情の解放をあげたものが5。「「心」の解放が目的」「言いたいことを吐き出し感情を解放するところ」「すなおになれるところ」「一定のわくにとらわれずたとえ解決策が見い出せなくとも親身になって聞いてあげる,あげられる関係が作れるという点」「自分を解放していく事によって,他の人も解放できる原動力となります」
 Bクライエントとカウンセラーとの対等性をあげたものが3。「クライエントとカウンセラーは対等で,問題を解決するのはクライエント」「同じ立場でものを考えられる事」「自分の中にある問題をさぐり解決する力をクライエントが持っている」

■11「ピア・カウンセリングとピア・サポートを貴方はどのように区別していますか」
 回答数13。わからない3(うち,ピア・サポートがわからないが1)。
 @ピア・カウンセリングを心理的な側面を中心とするものとして,ピア・サポートを情報・行動面を重視するものとして捉えた回答が5。「Cは心理的なところから,Sは肉体的かつ制度的なところから助け合う」「情報サービスはPS」「心理的な援助と制度とか介助の援助(ソフトとハードの違いだと思います)」「Cは自分をとりもどすこと。PSはやりたいことをやること」「PCは自分を見つめ直すため。PSは自分の時と同様に他者のカウンセリングを補っていくこと(かな?)」
 @個人と集団という違いとして捉えたものが4。「PCは個人と個人のカウンセリングだけど,PSは複数によって助け合ってのカウンセリング」「PCはクライエント自身が自分の問題と向い合う場。PSはお互いが問題を共有する場」「私にとってPCはワンウェイでカウンセラーをすることを意味し,PSはそんな中で疲れた自分を仲間の中におき,リラックスし,また仕事PCへ向う力を養うところ」「PCは,傷や問題点を捜し出して具体的にする。PSは,同じような傷や悩みを持っている人達が互いに励まし合う」
 A他に「現時点で違うものと思っていなかったのだが,Cのほうがその気でやらなければ出来にくいかな,かまえる様な感じ」といった回答。@の回答でもこれと近いことが述べられている。

■12「ピア・カウンセリングはなぜ障害者に効果的なのだと思いますか」
 障害者に対する抑圧の大きさ,それによって感情を表わすのが難しいことを述べた回答が多い。「抑圧があまりにも大きいから」「障害者だけではないと思うが,共通して差別されてきた経験というものを持っているから」「障害者は常に差別され,抑圧され健常な人々に比べより多くの痛み苦しみをかかえているから」「心の「キズ」や「パターン」が多いから」「感情をあらわすことができない」「障害」というものに対しての否定的な人間関係の中で,周囲の考え方に惑わされずに生きていくのに,効果があるのではないかと思います」「障害者は長年家族や社会に遠慮しながら生きてきたので,自分の意志を出せない人が多いと思います。ピア・カウンセリングを受けることで,障害がある自分を素敵な人間だと思えるようになってくるから」「「生まれてきたこと」を含め,その存在自体あまりにも否定され続けてきたから。そしてまた健常者がどれほど理想的なことを言っても,しょせん「健常者のいうこと」としか思えない現実があまりにも多いから」。以上8。
 また同じ障害を持つピアという点で答えた回答が2。「障害者が持つ傷は,障害のない人の傷に比べて特殊性があるので」「障害者の持っている傷は,他の人達の傷に比べて独自性を持った傷だから」
 他に,「ディスチャージしやすい人が多い」「「「心」の自由が目的だから。自縛しない,自由な心が,心の中にこだわりのない人であり,こだわりのない人生が送れるから」「特に障害者に効果的というわけではなく,同じような社会的抑圧の中にいた人たちが,互いに助けあえるカウンセリングの方法だと思う。But あえて言うなら,人間の本質は生まれた瞬間の自分だということ・・障害はその後作られたきたもので,人間の価値に違いはない。」「ピアだから。時間をわけあうことで対等だから」「相手への安心感と同じ立場でものを考えられる」

■13「貴方はピア・カウンセリングを将来,給料のとれる仕事としていきたいですか」
 回答数14。すでに仕事の一部としている人が1人,「はい」「出来れば…」と答えた人は5人,(自分はともかく)一般論として肯定した人が2人だった。否定的な意見はない。 他方,「わからない」「(今は)何とも言えない」が4人,「(今は)その気はない」と答えた人が2人。

■14「ピア・カウンセラーとしてふさわしい人とはどのような(経験,経歴,人柄など)人だと思いますか。」回答数13。
 @「どんな人でもなれると思う」「経験はある程度必要ですが,あとは,そのクライエントの人格に合った人格の人だと思うので,どんな人がふさわしいとは言えません」。
以上2。
 A自立した生活を送っている人と答えたのが2。「障害をもち家族から独立し,自立的に生活している人」「地域の中で,自分なりの生活を送っている人」
 B他は,カウンセラーの人柄あるいは他者に対する態度として答えた人。「人生を積極的に生き,自分の体験を大切にしていける人」「人間のすばらしさを実感できる人で,相手の話を誠実に受けとめられる人」「人間を愛せる人」「心の「いたみ」を知っている人。愛することのすばらしさを知っている人」「自由で柔軟な人。自身を否定しない人」「話を聞いていられる人で感じがよく的確にものをとらえられる? でも何よりものんびりした人かな,ホッとできる」「自己をおさえられる以外は適性なし」「一つのものごとにとらわれない幅広い心と経験を持った人。気持ちのおおらかな人」「経験は勿論のこと,人柄だと思いますが,まず,クライエントを裏切らない人」「自分の気持ちに余裕があり,相手を受けとめることが出来る人」

■15「自立生活においてピア・カウンセリングの果たす役割についてお答えください。」
 回答数14。@13の回答が「自信」「自己確信」(それによって自立生活が実現できる)といった方向のものだった。「☆ひとひとつの場面でできないことはあっても,精神的な強さを身につけられるから困難にむかっての解決法も見い出す力を備えられる。☆自分がありのままで常に賢明に生きているという自己信頼が持てる」「発想をポジティブにして生活へむかう」「私自身は,自信がない人間でしたので,自信をつけるのに役立てています」「自己を出させてくれる」「ロールプレイなどにより,自己の可能性・能力を再認識することが出来,自分自身に自信がもてる」「自信を持つ事によって,自立心を深める役割を果たします」「自己確信を各自の中に生じさせていく」「自信をもたせること」「・地域で生きていく上でかなり有効である。何故なら自分で自分に自信をもつことができるものだから…。/・絶対にお互いに否定しない,意見を言わないそんな場がとても大切だと思います」「☆周囲の考えや様式にとらわれることなく,自身のライフスタイルを作るエネルギーになる。☆日常生活にさまざまにキズついたりつまづいたりしても,セッションを通じて解放している」「自分の進む道を見付けやすくなる。出てくる問題点の解決の糸口が見つかる。生活の支え」「精神面の充実」「今の日本で障害者が自立生活を実現させるには,設備や周囲の人達の理解の面で不備な点が多く,それに対抗するには心身共にエネルギーを消耗し疲れてしまいます。疲労した心を回復させ,いつもパワフルな状態を保てるように,ピア・カウンセリングの役割があると思います」
 A他に「体験のわかち合い。知恵,情報の提供。ロールプレイの場の設定」

■16「どのようにして日常ピア・カウンセラーとしてのトレーニングをしていますか。又,今後どのようにしていきたいですか。」回答数15
 @セッションの機会を持ちたい,増やしたいなどという回答が10。「@週1回以上セッションの機会をもつ。Aピアサポートの集まりの中で積極的にデモセッションをする。Bコウ・カウンセリングのワークショップに参加する」「今後,定期的にセッションの時間を持ちたい」「サポートクループに参加したい」「常に色々な経験を持つ人と数多くのセッションをすることを心がけ実行する」「もっともっと回数を重ねたい」「ピア・サポート・グループ(月1回)継続クラス(月1回)月1〜2回のセッション」「☆今後,セッションを週1〜2回にふやしていきたい」「時間をみつけながら極力,カウンセリングを受けるようにしている。できれば定期的にカウンセリングを続けたい」「最近は夫婦間でセッションをし合ったり,ハグをしたりしております。今後は友人間でも,日常的にセッションできような場を作れたらよいと思います」「時には,人の話をきく時にカウンセラーのつもりになって聞くようにしています。最近は夫とセッションをし合ったり,ハグをしたりしています。今後,日常的にも友達同士で気軽にセッションをできる場を作れたらなあと思っています」
 A日常の生活の中でといった回答が3。「自分のパターンがだいぶ見えてきたので,この自分のパターンを少しでもこわせたらと日常の生活の中でも意識して行動したいと思っています。また意識して人の話を聞きとること」「具体的にはしてませんが,出来るだけアサーティブな自己主張を心がけています」「これといって日常的にはしていません。子供を相手に何かやれたらいいナァと考えています」
 B「特にしていない」「していない」。以上2。

■17「貴方はどのような頻度で,他のピア・カウンラーからピア・カウンセリングを受けていますか。」回答数11
 @集中講座でと答えたのが3。「集中講座で」「集中講座の時以外受けていない」「今までは講座の時しか受けなかった」
 A現在受けていると答えたのが2。「月1〜2回」「度々」「頻度は決まっていないが,精神的にしんどくなってきたら,受けるようにしている」
 B今後のこととして答えたのが2。「月1回のカウンセリングの時間を持ちたい。今,思案中」「ピア・サポートにはなるべく出るようにする。今後レギュラーセッションをくんで行きたい」
 C受けていないと答えたのが3。「3,4年に一度にこれからなるかもしれないが,今特に受けていない」「あまりない」「まだない」

……

 アンケートの結果は以上である。ピア・カウンセリングに参加した人達が何を思っているか,ピア・カウンセリングがどのように受け止められているかを知る参考にはなると思う。また,ピア・カウンセリングを行うあるいは受ける際の,講座を受講するあるいは開催する際の参考にしていただければと思う。
 質問項目が同じではないことを考慮しても,米国での結果と比較すると,日本でのピア・カウンセリングが,心理的な側面,とりわけ感情の解放という点を強調したものであること,集中講座の受講者もそのようなものとして受け止めていることがわかる。また,まず自分自身の解放の手法としてこれが捉えられていることもわかる。
 これは,第一に,このアンケートが,ピア・カウンセリングの手法のデモンストレーションを行う,体験する集中講座の際に行われたということにもよろう。というより,今までのところ,日本でピア・カウンセリングが体験されるのは,日常的な業務の中でよりもむしろこうした集中講座においてであるということであろう。
 そして第二に,むしろこちらが大きな理由だろうが,これまでの章で何度も述べられているように,ヒューマンケア協会他におけるピア・カウンセリングが,コウ・カウンセリング,再評価のカウンセリングという手法を取っていることにもよると思う。米国でのピア・カウンセリング,とりわけ障害者のピア・カウンセリングは,その基本的な姿勢として再評価のカウンセリングと共通するものを持っていることは認められよう。それにしても,米国において,ピア・カウンセリングは,障害という体験の共有,ロールモデルとしてのピア・カウンセラー,クライエントに対する傾聴といった,よりシンプルな要素によって定義づけられるものだというなのだと思う。さらにそれは,具体的な情報の提供や問題解決への支援といった,より広い活動を包摂するものである。このことは次の章での文献の検討によってもある程度確かめられることである。
 これから時間が経過し,さらに自立生活運動が展開していく中で,ピア・カウンセリングは,ピア・カウンセリングのオリエンテーションとしてだけではなく,実際に,自立生活センター等の日常的な活動で行われていくようになるだろう。この時,それは当然,各人の必要を把握し,資源の配分についての助言や,権利の擁護の活動といった側面を合わせもっていくものになる。自立生活プログラムがグループに対するものだとすると,より個別的な援助活動として利用されるようになるだろう。その時に,カウンセラーの養成に何が必要とされるか,あるいは,ピア・カウンセリングがピア・カウンセリングであるための最少限の条件として何が共有されることになるか。これは,確かにこうしたカウンセリングを必要とする人達,ピアであるクライエントとカウンセラーが,自立生活運動とピア・カウンセリングが拡大していく中で,見出していくことだろうと思う。

※回答の全て(及びヒューマンケア協会主催の第3回・第4回集中講座の感想を求めたアンケート結果)はコンピュータのファイル化(MS-DOS TEXTFILE)されているので,要望があればお送りする(ただし,個人名は伏せてある)。また米国でのアンケートの回答に同封されてきたいくつかの資料(今のところ翻訳はされていない)もある。これも求めがあれば提供する。


REV: 20161031
ピア・カウンセリング  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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