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設立二年目に入った自立生活センター・立川

―自立生活運動の現在・1―

立岩 真也 19930325
『季刊福祉労働』55:150-155


 →『生の技法 第3版』

 掲載された文章とは若干の異なりがあります。
 この号の特集は「挑戦――もう一つの供給主体,もう一つの場」
 です。是非お買い求め下さい。(1200+36円)

■連載を始めるにあたって

 私達は九〇年の秋出版された『生の技法』(安積純子他、藤原書店、二五〇〇円)で、七〇年代に始まる障害者の自立生活運動の生成と展開を追った。その後、事態は予期し期待した方向に、速く進んでいる。個々の生活を支える活動、要求運動を続け、含みながら、新たな展開を見せている。その現在を伝えるために連載を始める。
 行いたいのは具体的な情報の提供である。自ら積極的な活動を展開する中では、自分で解決せねばならない問題が多くなる。交渉や要求の場面でも、対案を持ち、事実を示し、相手を論破しなければならない。ともかく当事者が力をつける必要がある。そのためには戦略、そして情報が必要だ。『福祉労働』は現場の熱気をよく伝えるが、細かな情報の提供という点ではまだなすべきことがある。そしてそれは少し外側にいる私のような者に適した仕事かもしれない。何より現場の当事者達は忙しい。
 そこで、まず注目するのは各地の活動である。具体的な活動を知ることで、自分のところでもできること、どうしたらうまく行きそうかがわかる。また昨年発足した「日本自立生活センター協議会(JIL)」のような各地域の活動をつなげる試みも報告していきたい。
 次に制度。国の制度としては生活保護、年金、自治体に多くの部分が委ねられているが家庭奉仕員制度。これらの推移、現状を報告する。「全国公的介護保障要求者組合」の活動等にも注目する。次に自治体の制度。相対的に進んでいるところの制度を知ることにより、私のところでもできないはずはないと主張していくことが出来るだろう。東京都・大阪市・札幌市・埼玉県等の介護人派遣事業、東京都の社会福祉振興財団による地域福祉振興基金、等について報告する予定である。さらに、民間の財団の助成等についての情報も掲載したいと思う。

■自立生活センター
 自立生活センターと呼ばれる機関が各地に誕生している。その活動は様々だが、その重要な一つに介助の媒介活動がある。介助を供給する民間・半民間の機関は、公社型、社会福祉協議会が運営するものなどを中心に、急速に増えているが、障害者を持つ当事者が中心となる組織がここに算入し、当事者が望む形態を作りあげようとしているのである。今回は、その一つの流れとして、公的介助保障を国・自治体に対して要求する活動を行ってきた組織の現在を報告する。彼らが自前で介助者の派遣を行う機関を作ろうと考えたのはずっと早い。北区や練馬区の在宅障害者の保障を考える会は、既に七〇年代中期に派遣センターを提起している。だが、実際に始めるのは少し遅れた(今回の立川の他、別途紹介しようと思う「練馬区介護人派遣センター」(〇三−三九二四−七七八五)が九一年、「自立生活企画」(田無市、〇四二四−六二−五九九九)が九二年)。一つに専従体制からの移行をどうするか。これは長時間の介助を保障するためにはアルバイト的な介助者ではうまくいかないことから出来たのだが、反面、組織的な形態に移行するのを難しくもした。また、やれるところからやる、可能な範囲のサービスを行うということで、労働への対価としては安い額で主婦層の空いた時間を利用するのでは、重度障害者の必要に対応できないものになってしまうのではないかという危惧、安くすませようという行政の意向に乗ってしまうことにならないかという問題を考え続けてきたのだ(以上について詳しくは『生の技法』)。しかし、いつまでも個人的な関係を脱しきらない、広がりを期待できない状態を続けられない。彼らは、重度でも切り捨てない、公的に負担すべき部分についてはそれを要求し身代わりになったりしないという立場を維持し、そこから来る問題を抱えながら、次の段階に移行しつつある。

■自立生活センター・立川(CIL立川)
 「近年、「施設で一生終わるのでなく、地域社会の中で普通に生きたい」という「障害者」の自立の動きは盛んになりつつあります。しかし国際障害者年の10年行動計画が終わろうとしている現在でも、地域社会で暮らす為にはアパートは?収入は?介助者は?様々なことが困難な状況にあります。そこで私たちは、今まで自立生活の経験をつんできた仲間と共に、今後「障害者」の生活の安定や、多くの自立を希望している仲間を迎える事が出来る『自立生活センター・立川』を作ることにしました。」(案内書)
 九一年四月、立川市で自立生活センター・立川(CIL立川)の活動が開始された。『そよ風のように街に出よう』四六号のインタヴューにその思いは多いに語られてもいるから、ここでは事実・数字の提示に徹したい。
 代表は、「三多摩自立生活センター」の活動や立川駅へのエレベーター設置を目指す運動を担い「全国公的介護保障要求者組合」の事務局長も務める高橋修、事務局長は、「立川市在宅障害者の保障を考える会」の活動の中心を担ってきた野口俊彦(『福祉労働』五二号に彼の文章がある)。三多摩自立生活センターの設立時に既にこうした構想はあったが、この組織は広い地域に渡っており、立川在障会を発展させてCIL立川を設立することにした。九〇年十二月に設立準備会が発足し、どういう体制を取るか、検討が本格的に始まった。その際、八六年設立のヒューマンケア協会(八王子市)の活動を参考にしている。野口の自宅を当初使っていたが三か月かけて事務所となる場所を探し、四月の設立となった。九二年五月には事務所を移転し、それまでの事務所は自立生活プログラムを行う場所とした。
 会員は、介助を希望する障害を持つ人、介助者として活動できる人など正会員(年会費三千円)と資金面等で協力できる賛助会員(年・一口個人三千円、団体一万円)からなる。正会員一〇六名(障害者四六名)、賛助会員四九名、五団体(以下、九二年度予算以外のデータは九一年度実績)。機関誌『CILたちかわ通信』(現在七号)が送られる。
 規約により、運営の基本的な方針を決定し監督する「運営委員会」が置かれる。十一名以下で過半数が障害を持つ委員であることが定められている。代表がここから選出される。この代表と事務局が日常業務にあたる(事務局長は運営委員会で選出される)。現在、運営委員は六名、四名が障害を持つ。事務局員は七名、このうち常勤は三名。常勤の職員の給料は月十五万円、ボーナスは年三月分が払われる。非常勤の時給は八五〇円。常時五、六名が事務にあたっている(障害者は三、四人)。
 活動内容は、@自立生活プログラムの実施、Aピア・カウンセリングの実施、B自立生活に必要な住宅、年金などの各種相談、C介助サービス、D自立生活に関するその他の必要な業務(規約第一章第四項)となっている。
 財政規模は、九二年度の予算で、総額二六六五万、うち会費一二一万(正会員三百人・賛助会員七〇人・十団体として)、事業収入は自立生活プログラム、相談、カウンセリング五〇万円、介助派遣部門一三〇万円、その他五〇万、計二三〇万、助成は東京都社会福祉振興財団の地域福祉振興基金からの助成金がA介助派遣事業に対して九〇〇万円・B自立生活プログラムに対して五二五万円。これは基準額A一二百万(人件費五百万、ただし年間利用件数三千件以上の場合コーディネーター等複数設置が認められ一千万、事業費二百万)B七百万(人件費五百万・事業費二百万)が設定されその四分の三が助成されるというもの。その他立川市からの補助(これは九二年度からの新規)が同じくA四二九万・B一八七万、民間団体百万。以上助成が総計二一三一万。寄付一三二万。八〇%が助成によることになる。支出は人件費一五九二万、維持費が自立生活体験室・事務所三二六万他で五四六万、他。部門別ではA一六八五万、B八一〇万。AとBの比率はほぼ二対一。なお九一年度の収入・支出額は年間約一二三九万円だった。

■介助サービス
 介助サービスは九一年八月までを試行期間として、理念を確認し、それを実現するシステムを練り上げた。九月から本格的に開始し、この月から地域福祉振興基金からの助成も受けている。介助料は一時間九〇〇円。CIL立川は利用者・介助者双方から事務費一時間五〇円を徴収する。つまり、利用者が支出するのは九五〇円、介助者が受け取るのは八五〇円、CIL立川に入るのが百円ということである。時間あたりの料金は、他の機関で設定されている一般的な額よりは高めだが、都内の一般のアルバイトの時給と比べれは高くない。CIL立川は人員の配置の他、介助講習会を行い、利用者と介助者間のトラブルに対応する。
 介助を利用する会員は、会員からの口コミ等によって増えている。介助時間は年間三二八五件、累計約一万六千時間。九一年四月に八七三時間だったものが、九二年三月には二一五三・五時間(依頼回数は二二九回→四〇四回)に増えている。実人数で三六名、登録数五八名。多くの機関で行われているのが高齢者に対する家事援助であるのに対して、CIL立川の場合が対象とするのは障害者であり(うち脳性麻痺者が六四%)、その多くが、家庭での介助が出来ない時間を埋めるというのではなく、地域で家族以外の介助者の介助を受けて生活する障害者である。立川市には他に、CIL立川の活動開始以前から「ケアセンターやわらぎ」(高橋が運営委員を務めていた)と社会福祉協議会が運営する介助供給サービスがある。両者とも高齢者中心で、前者の料金はCIL立川と同じ、後者は家事が中心で時給も安く設定されている。対象を特化する方が当事者の必要に答えられるとCIL立川は考えている。利用者の居住地域は立川市に限らない。隣の国立市、国分寺市、日野市、昭島市、他。また東京にやってくる人の介助も担当している。いわゆる在宅障害者の場合は、外出等の一時利用であることが多い。人数をただ増やすことを目的とはしない、百名くらいまでが適切な規模ではないかと言う。
 利用料は、CIL立川のメンバーが積極的にその獲得のための活動に参加してきた、生活保護の他人介護加算、東京都の介護人派遣事業、立川市独自の登録介護人派遣事業(九二年度の場合、一時間千五百円・週四五時間分が保障される)から支払われる。これだけのものによって払うことが可能になっている。またこれは、介助専従者と無給のボランティアという体制しかとれなかった状態から進んで、後者も有給化することを可能にしたことによって、CIL立川の活動開始を可能にした基盤でもある。
 介助者の実働数は七九名。多くの機関の場合、子育ての終わった主婦層が多いのだが、CIL立川では、男性の方が多く(男性五四名・女性二五名)、学生三三名、労働者三九名(一般二六名、福祉関係十三名)、主婦は七名。意外に女子学生・若い女性労働者が多かったという。ビラや新聞記事などを見て応募している人が多い。清瀬市にある日本社会事業大学にビラを置いたりしている。
 ただ勉学、家事、職場での仕事以外の時間に入る場合には、日中の長時間の介助は難しい(二時間おきに介助者が交代することを考えてみればよい)。特に同性による介助の場合(CIL立川は同性介助を原則としている)、日中を家事が一段落ついた主婦層でというわけにはいかない。また緊急時に対応可能な体制を取っておく必要がある。それに対応すべく「特別契約」がある。介助によって生活していける人をCIL立川に置こうというものである。専従体制を発展させ、しかも、一対一の固定された関係から来る様々な問題を解消しようとする。現在五名。一日八時間、週一回で利用者の払う額が月六二五〇〇円。平均すれば週約四日働いており、二五万円位になる。なんとかやっていける額である。ただしボーナスはなし。一名は事務局の運営にも関わっている。この特別契約の部分は月五百時間から六百時間と比較的一定しており、介助時間全体に占める割合は約六〇%から三〇%弱へと少なくなっている。

■自立生活プログラム・権利擁護
 自立生活プログラムは別の回に主題的に取り上げるとし、ここでは簡単に見よう。この、名前からしていかにもアメリカ的なものが日本の運動にどこまで乗るのかという疑問が私にはあったが、実際にはどこの機関も積極的だ。CIL立川も、自立生活への移行を可能にし、介助の場面等日常的に生ずる問題を解決し、地域の障害者の活動を活発にするものとして、この活動に非常に重要な位置を与えている。一シリーズ十回の講座を年三回、参加者は七、八人。参加費用は一万円。合宿しての夏期集中講座が一回。
 プログラム自体はいわば予行演習だが、そこで家庭からあるいは施設から出ることもできるという自信を得た人に対しては、実際に自立するまで支援する体制をとっている。思わせるだけではなく出ることを具体的に支援するのである。まず個人プログラムがある。必要に応じて長期の場合も短期の場合もある(短期二十人、長期は三人)。そして住居探し。重度であればある程これが難しい(このテーマについても連載で扱う予定)。彼らも公営・民間住宅の入居・居住条件の改善は重要な課題と捉えており、実態調査を行う企画もあるが、ともかく、このひどい現状で見つかるまでつきあう。成功して満足してもらえたら一万円。他に様々な相談も受ける。非会員の場合は一件二千円、正会員になると無料。電話での問い合せも多くあり、それらの場合にはいちいちお金をもらっていられないようだ。プログラムの中でも制度を知ることは重要な部分を占めている。
 さらにセンター設立以前からの交通機関を巡る活動がある。講演会・学習会等を主催する他、昨年・今年の全国的な集会の開催にも中心的な役割を果たしている。CIL立川は人権擁護の立場から、政治への働きかけを含め、積極的な活動を自ら行おうという姿勢を維持しているのである。

■やってやれないことではない
 東京都、立川市の支援体制は、他の地域に較べれば、確かに恵まれている。だがまず東京都では始められる。他でもできないわけではない。国でも地方自治体でも介助に取り組まざるを得ないところに来ている。そして民間機関の活動への依存は今後増えていくに違いない。ここで批判すべきは、介助利用者への介助費用を出し惜しみすることに対してであり、それを有効に利用するための機関はむしろ当事者が作ってしまうべきだ。自治体の援助体制が硬直的だとすれば、作業所やケア付住宅を組織の核、出発点としてもよいだろう。ケア付住宅だけでも作業所だけでも必要に答えることができないことは明らかだ。こうした活動が大切なこと、事業を拡張していく中で利用者は増えていくこと、人件費の補助は障害者の雇用につながること、実際にうまく運営されている機関が数多くあること、これらを主張すること。ともかく作り、その連携を図っていくこと。こうした機関が増えることによって、介助費用の必要性が明らかになる。この時、国・自治体の負担を要請する活動もまた、より広範で現実的なものになっていくと思う。

■〒一九〇立川市錦町一−二三−二一二〇三 пZ四二五−二五−〇八七九 ファックス二二−六一四四 振替・東京〇−五五四二四四 自立生活センター・立川。他の機関も含め諸資料提供可能。情報の提供熱望。立岩へ。


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