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>HOME 優生思想を問うネットワーク ◆200601 呼びかけ文 学会、習慣流産への受精卵診断実施について意見募集中(締め切り1月31日まで) みなさん、絶対反対!!の声を学会へとどけましょう 日本産科婦人科学会(学会)では、昨年7月から、受精卵の着床前診断(受 精卵診断)の適応拡大についてワーキンググループ(WG)を設置して検討して いましたが、12月初旬、「習慣流産(反復流産を含む)の染色体転座保因者 を着床前診断の適応として認める」というワーキンググループ答申(以下、答 申)をまとめました。 これまで、「重篤な遺伝性疾患」に限定していた受精卵診断の適応を、カップ ルのいずれかに染色体の相互転座(染色体の一部が入れ替わっている状態。本 人は全体として染色体に過不足がなく遺伝子量に変化はないが、卵子や精子が 作られるときに染色体の過不足が発生する可能性がある)がみられ、それが原 因で2回以上の流産を経験した症例にも拡大しようというのです。 これを受けて倫理委員会で協議したが、「命の選別につながりうる問題」とす る慎重な意見も出て結論に達しなかったという。そこで、広く意見を聞いた上 で2月の理事会で検討するとして、現在、意見を募集しています。(詳しく は、学会ホームページ http://www.jsog.or.jp/kaiin/html/Rinri/announce_19dec2005.html参照) 私たちは、これまで一貫して、「受精卵診断は女性のからだを操作していのち の選別を進めるものであり、障害者と女性どちらをも抑圧する」としてその実 施に強く反対してきました。が、学会は、2004年7月に国内第一例目として、 慶応大学が申請していたデュシャンヌ型筋ジストロフィーを対象とした受精卵 診断を承認、ついに臨床実施が始まりました。2005年6月には、筋強直性ジス トロフィー(名古屋市立大学が申請)への実施が認められるなど徐々に症例を 重ねています。 これらの動きと相前後して、2004年2月に大谷徹郎医師(大谷産婦人科・神戸 市)が男女産み分けと高齢出産による染色体異数性を避ける目的で、独断で受 精卵診断を実施していた事実が発覚。学会から除名処分を受けた後も、同年秋 以降、「流産防止のため」としながら、カップルのいずれかに相互転座がある 場合、受精卵に染色体「異常」がおきて流産をくりかえすと考えられる場合、 高齢妊娠、さらには体外受精の妊娠率アップを目的に、次々と受精卵診断を実 施し、複数の子どもの誕生が報じられています。 今回の学会の動きは、このような学会の規制外の行為が社会問題化しているこ とに対応したものと説明されていますが、実質的には、むしろ大谷医師の暴走 を利用し、これに追随する形で受精卵診断の適用範囲を拡大しようとするもの です。 「優生思想を問うネットワーク」では、今回の習慣流産への適応拡大には、以 下のような重大な問題があると考えています。 ぜひとも多くの団体・個人の方に、学会に向けた意見を集中していただき、な んとか受精卵診断の拡大・普及をくいとめたいと切望しています。もしも意見 書をまとめる時間がない場合には、「ネット」の意見に賛同していただければ このままの形で利用してもらっても、あるいは、一部のみ利用していただいて も結構です。1月末までにできるだけ多くの意見を学会に届けましょう。 優生思想を問うネットワーク TEL/FAX 06-6965-7399 E-mail yunet@cat.zero.ad.jp URL http://cat.zero.ad.jp/yunet/index.html 1.習慣流産への受精卵診断実施は「いのちの選別」にほかなりません ワーキンググループ(WG)の議論の中でも、流産の転座保因者を対象とする 受精卵診断は、子どもを生むために、「出生不可能な受精卵」を調べて流産を 回避するだけで、「優生思想との関わりが薄い」とされています。 しかしながら、本当に「出生不可能」なのかは誰にも判断できず、実際に行う 行為は、受精卵の染色体の構造や数を調べて、「異常」と判断した受精卵を排 除し「正常」とされた受精卵のみを子宮に戻しているのであり、いのちの選別 以外なにものでもありません。しかも、WGの議事録をみれば、排除の対象とし て21番染色体のトリソミー(ダウン症)も想定されているのは明らかです。 「流産回避」の名のもと、受精卵の段階で、これら「障害」や「病気」をもっ て生まれる可能性のあるものを、根こそぎ排除しようというものであり、絶対 に認めることはできません。 2.習慣流産への適応承認は、受精卵診断の歯止めなき拡大をまねく 今回の習慣流産の染色体転座保因者への適応拡大は、染色体検査を用いた受 精卵診断を認めること、不妊「治療」目的での受精卵診断を認めるという二つ の意味で、歯止めなき拡大にむけた大きな契機となるものです。 「疾患遺伝子の遺伝子診断が基本」との従来の方針をくつがえし染色体検査 の導入を認めるならば、診断の簡便さとも相まって、大小を問わず多くの医療 機関で実施可能となります。しかも、最初は転座保因者から始めるとしても、 時をおかずして、あらゆる受精卵の染色体検査(染色体の異数性診断)開始に 直結するのは火を見るより明らかです。 また、今回の適応拡大は、受精卵診断を、流産を防ぐために「妊娠しやすい 胚を選択する技術」として使うことであり、習慣流産の大半を占める原因不明 の患者にも、さらには、体外受精・胚移植の成功率を上げるためとして、受精 卵スクリーニング開始につながります。 そして、これら受精卵診断の拡大・普及が、「あらゆる医療技術を駆使しても 子どもをもつこと、しかも、障害児を避けて子どもを生むこと」を良しとする 価値観をさらに強固なものにしていくに違いありません。 3.受精卵診断実施は、習慣流産の女性をさらに苦しめる可能性があります 「答申」では、生児獲得率は同じなど子どもを望む当事者にとって有効かどう かは定かでないとしながらも、流産の反復による身体的・精神的苦痛の回避の ために、受精卵診断を選択肢の一つとして認めるとしています。 しかしながら、「答申」も認めている体外受精・胚移植に伴う心身の負担や危 険性に加えて、検査によって子宮に戻す受精卵がないとされたときの精神的シ ョック、移植したものの着床に至らなかったときや着床した胚が流産したとき の落胆など、診断実施にともなう「身体的・精神的苦痛」は非常に大きいもの です。 これでは、苦痛回避のために「新たな苦痛の選択肢」を差し出しているに過ぎません。 しかしながら、習慣流産はそもそも「病気」ではないし、まして、それへの 受精卵診断の適用は「治療」とはいえません。習慣流産は「妊娠しにくい」 「流産しやすい」体質を持っているとしても、当人のいのちを脅かすものでも ないし、妊娠・出産に直面しない限り何の不都合もないのですから。 子どもを産まない・産めないものに対する根強い差別・偏見の中で、習慣流産の 女性(カップル)は、苦しい立場に追い込まれています。その女性(カップ ル)を「患者」の位置に据え、「治療」と称して、危険や苦痛を伴う上に「い のちの選別」につながる医療技術を差し出して更なる苦悩や負担を強いるより も、なぜ不妊がそれほど切実なのか、不妊の患者を追い詰めている社会のあり ように変革を求めたい。 4.受精卵診断は「子宮に戻さない胚」を作り出し、受精卵の研究利用・遺伝 子操作に結びつく 受精卵診断は、あらかじめ、遺伝子や染色体の違いをもった受精卵の「廃 棄」を予定しています。言いかえれば、「子宮にもどさない受精胚」を作り出 す技術ともいえます。 現在、ES細胞、クローン胚などを用いた再生医療研究が進められており、こ れら研究者にとって、「子宮に戻さない受精胚」は垂涎の的です。事実、アメ リカでは、受精卵診断の結果、遺伝子変異ありとして子宮に戻されなかった受 精卵をもとに18種類ものES細胞を作成したと報じられています。受精卵診断に 伴って生じる受精胚が、研究や産業に利用されることで新たな問題をうみだす 可能性があります。 5.ワーキンググループでの審議は全く不十分、構成メンバーにも大きな問題 があります 今回の習慣流産への適用拡大は、会告、2004年4月の学会倫理審議会答 申、あるいは私たち市民へのこれまでの説明を根底から覆すものです。しかし ながら、答申には、習慣流産への適用拡大の確たる根拠が示されていないばか りか、どのような社会的・倫理的問題があるのかについての言及もなく、議事 録を見ても全く検討されていません。 さらに、WG構成員のひとり杉浦真弓委員(名古屋市立大学生殖・発生医学 助教授)は、なんと、WGの審議が始まったのと同時期に、自らが申請者となっ て「染色体均衡型相互転座が原因の習慣流産患者の着床前診断に関する臨床研 究」の実施を大学の倫理審査委員会に申請しておられます。臨床研究の申請を 行っている本人が、同時に、学会のWGメンバーとして議論をリードし、習慣性 流産への適用拡大の答申に関与した事実は異様というほかなく、このような WGで得られた結論は断じて認めることはできません。また、WGの人選に当たっ た学会理事会、倫理委員会の責任も問われるべきです。 6・まとめ 技術を利用しようとする人は「本人や家族の幸せを思えば、健康な子どもを願 うのは当然の気持ち」という言葉で、技術を正当化しようとします。しかしな がら、「出産」とは今も昔もかわらず、危険も含んでさまざまな出来事が伴い ます。 子どもを産んでも、産まなくても、産めなくても、障害のある子どもを産ん でも、障害を持っていても、病気になっても、元気でも、生物として当然なこ とです。そして、それぞれに苦楽があり、醍醐味があります。 技術の適応拡大が、このような生きるものとして当然の「多様な豊かさ」を 「健康な子どもを産む」ことだけに矮小化させ、同時に、さまざまな有り様を 認めない社会構造構築の後押しをしてしまっています。 私たちはこのような状況を生み出す技術を認めることはできません。断固、 受精卵診断に反対します。 http://www.arsvi.com/o/y012006.htm REV: ◇優生(学) (eugenics) |