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ワーカーズ・コレクティブ アンティ


last update: 20160629


■ワーカーズ・コレクティブ アンティ

※池田佳鈴 19960229 「ワーカーズ・コレクティブ──主婦たちの新しい働き場所」
 (千葉大学文学部社会学研究室『NPOが変える!? ─非営利組織の社会学』,第9章)より

 「アンティ」は主に仕出し弁当と惣材,喫茶を中心としたワーカーズ・コレクティブであり,店は千葉市美浜区の大規模な団地のそばにある生活クラブ生協の店舗(デポー)の一角にある。
 店の中は,座席数こそ多くはないが,手作りの洋服の販売を行っていたり,いろいろな情報のポスターが貼ってあったりと,にぎやかな様子である。アンティで作られている手作り弁当は,素材の確かなものを使用し,化学調味料などは一切使わない安全なものである。お弁当のほかにもケーキやジュースなども扱っているが,それらもすべてその信念を守っている。実際,わたしも食べてみたが,家庭の味をそのままといった感じで,野菜もふんだんに使われており,なかなか外では見つからないものだと感じた。仕出しが主ではあるが,2個から出前もしてくれるので,手軽に利用できる。客層も,会社員の昼食はもちろん,家庭の主婦も子供との昼食に利用しているとのことである。
 このワーカーズ・コレクティブは,千葉県で最初に設立されたワーカーズ・コレクティブ「かい」から1985年に独立して設立された。「かい」は全県で様々な事業を行う,ワーカーズ・コレクティブとしては大きな組織(1991年に 150名ほど,横浜女性フォーラム編[1991:162])で,その中の一つ一つの事業を独立させていこうとしており,その第一号が「アンティ」なのである。ただ経済的なこともあって,その後「かい」から独立したワーカーズは今のところない。独立したことの利点は,決定が近くでできるようになったことだという。「かい」に所属している時には,「かい」の会議に行ってから決定,またもって来て,というように何段階かあったが,独立してからはここだけで決定できる。
 組織としては「かい」と同じく,企業組合の形をとっている。これについては,「肩書きがね,一応… わたしたち企業組合って名乗っていけますもんね。なんだかわかんないけど,そうですかってうなずいてはくださる」,「でもまわりは関係ない。企業組合なんですって言っても,企業組合って言葉をまだ知らないでしょ,一般人が。だからそうですかって言うだけで,企業組合じゃないアンティに企業組合をつけただけでどう違うかっていう差はわからない。まあ正式なところにいくと(わかってはもらえる)… パートですって言うにはちょっとそうじゃないと思うし。ワーカーズって言っても,ワーカーズって何ですかって,そこからくまた説明が始まるから,もうまわりくどくなっちゃって。やっぱりまだ市民権得られてないからね,ワーカーズって。」(田中さん)
 場所のことなどで生活クラブ生協の支援があったこと,そして経営上のことなどで「かい」にいつでも相談できたことで,立ち上げについては恵まれていたという。出資金も,最初に1万円,あとは毎月働いた中から3000円ずつ出していくという形をとれた。
 現在のメンバーは11人。他にアルバイトで来ている人が3人いる。全員が女性,主婦である。営業時間は午前11時から午後5時までで,定休日は日曜日,土曜日は午後2時まで。仕事は交替,分担制で,店にいるのは5〜6人ほどになる。1人平均して週に3〜4日働いている。お弁当は(自動車の免許をもっている人がいないので)自転車で運んでいる。取りにきてくれる人もいる。単発の大口の注文の時は,知っている人に頼んで,「微々たるもんですけど」お金を払って,自動車で運んでもらう。
 月々の売上を単純に割って分配してるとばらつきが出てしまうので,開設当初から1年間の時給は固定し,それで過不足が出た場合には年度末に調整している。1993年は業績がよかったこともあって,4人の年収が 100万円を(しかし 130万円には行かないくらいのところで)超えたが,1994年は「幸か不幸か,今売上が伸び悩んでいるから (100万円以内に)収まりそう」だという。


REV: 20160629
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