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「都市−文化−記憶」研究会

立命館大学大学院先端総合学術研究科公募研究会 2006年度〜2008年度

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last update: 20160403

*本ページは、先端総合学術研究科の旧サイト内にあったファイル
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/g/ucms.htm を編集し再掲したものである。
*以下の内容における人の所属の記載は、当時の時点でのものである。

*立命館大学大学院先端総合学術研究科公募研究会(現:院生プロジェクト)
 http://www.r-gscefs.jp/?p=917


■2008年度の活動

 「都市−文化−記憶」研究会は、村上潔が代表者となり、公共・生命・共生・表象領域の院生計8名を構成員とする研究会である。2006年に始動し、今年度は3年目にあたる。
 今年度の活動は、以下の2つの企画の開催に集約される。

◆『暗くなるまで待てない!』上映 & 大森一樹監督+村上知彦氏トーク
【日時】2008年10月25日(土) 14:00〜17:00
【会場】立命館大学衣笠キャンパス洋洋館3階962号教室
【タイムテーブル】
 14:00〜15:10 『暗くなるまで待てない!』(オリジナル版)上映
 15:20〜16:20 大森一樹監督+村上知彦氏トーク
 16:20〜17:00 質疑応答
【上映作品】
 大森一樹監督『暗くなるまで待てない!』(1975年・16ミリ)
 *オリジナル版をDVDで上映
【ゲスト】
 大森 一樹(映画監督/大阪芸術大学芸術学部映像学科・同大学院教授)
 村上 知彦(漫画評論家/神戸松蔭女子学院大学文学部講師)
【企画概要】
 日本自主映画シーンの金字塔的作品である『暗くなるまで待てない!』(1975年)のオリジナル版を鑑賞し、この作品を共同制作された大森一樹監督・村上知彦さんから、@作品に関するエピソード、A神戸を中心とした「街の記憶」、B当時の関西若者文化シーン、などについてお話しいただきます。
【企画報告】
 トーク・質疑応答では、主に@作品制作時の時代状況・認識について、A当時の京阪神間文化の特質について、B「街」をフィールドとした情報の発信・共有のあり方、Cそれによる人的ネットワークの生成、が話題となった。ゲストのお二人からは示唆に富んだご指摘が絶え間なく発せられ、参加者に資するところ大であった。

◆[研究会]テーマ:「都市空間と臨海開発――高度成長期横浜の場合」
【日時】2009年3月27日(金) 14:00〜17:30
【会場】立命館大学衣笠キャンパス学而館2F 先端総合学術研究科院生共同研究室201
【報告者】小堀 聡(名古屋大学大学院経済学研究科講師)


■2007年度の活動

 「都市−文化−記憶」研究会は、村上潔が代表者となり、公共・生命・共生・表象領域の院生計7名を構成員とする研究会である。2006年に始動し、今年度は2年目にあたる。
 初めに、今年度の研究会企画の目的・実施計画の概要(2007年5月時点)を再確認する。
 今年度は、主に日本の映画・歌謡曲に焦点を当てる。主な研究目的は2つある。@日本の映画・歌謡曲文化にちりばめられている「抒情」をさまざまな角度からの分析ですくい上げ、広く日本の近代(以降の)思想の文脈に置き直すことで、文化の創出と表示、そして享受と解釈の体系の一つの(いくつかの)ありかたを発見してゆくこと。もちろん、「抒情の不在(化)」の意味も同時に問題としてゆく。昨年度対象とした「風景論」などはその一例である。A主に1970年代の東映・日活などの任侠/若者/暴力をテーマとした映画と、「漂泊・遍歴」のアウトローを題材にした同時代の歌謡曲(例として“怨み節”・“ジョニィへの伝言”など)をさまざまなパターンで連結させることで、<場所性−権力−共同体−性(男/女)−情念>の複合的関係性を考察してゆくこと。当然@とAは相互補完的な関係をもつ。[……]
 この趣旨に沿って、前期ならびに夏期休暇中に以下の活動を行なった。

◆2007年6月16日(土) 14:00〜16:00 於:学而館先端研院生共同研究室201
「植民地化と民族文化を巡って――竹中労『完本 美空ひばり』を読む」
報告者:宇野 善幸(先端総合学術研究科)
◆2007年6月30日(土) 14:30〜17:30 於:創思館401+402号室
「社会運動・ヤクザ・映画のなかの反/差別を考えるために」
報告者:山本 崇記(先端総合学術研究科)
コメンテーター:酒井 隆史(大阪府立大学人間社会学部准教授/先端総合学術研究科非常勤講師)
◆2007年7月28日(土) 18:00〜20:30 於:創思館403+404号室
「阪田三吉と「ディープサウス」の誕生」
報告者:酒井 隆史(大阪府立大学人間社会学部准教授/先端総合学術研究科非常勤講師)
◆2007年8月18日(土) 14:00〜18:30 於:創思館401+402号室
「阿久悠とその時代――昭和における抒情の変容」
パネラー:酒井 隆史(大阪府立大学人間社会学部准教授/先端総合学術研究科非常勤講師)・村上 潔(先端総合学術研究科)・山本 崇記(先端総合学術研究科)

 以降、このテーマでの研究活動は個人単位で各々課題を設定し、進めてゆくこととした。その成果はなるべく早い段階でまとめて公表できるよう、今後計画を練ってゆく。
 そして、以下のイベントの開催をもって今年度の研究会活動を終了する。

◆2008年3月22日(土) 14:00〜17:00 於:創思館403+404号室
「都市」を着る――ラディカル・ストリート・ファッションのすすめ☆
【トークセッション】 バンブー + NOZZY COZZY (ホー娘。) × 五所 純子 (ライター)


■2006年度の活動

■研究会企画の目的・実施計画の概要(2006年5月)
@研究会企画の目的
 現在は、世界的に見て「都市(空間)」をめぐる問題が緊迫した情勢にある。グローバル化と連動した大規模な都市再編、「治安」対策を掲げるジェントリフィケーション、移民や都市下層のコミュニティの分断、といった状況が顕著である。そうしたなか、「都市性」を取り戻すための運動や、アーバン・カルチャーとしての対抗文化の創出、といった実践事例も確認できる。これらの動きを、「都市の表象」・「都市の記憶」を大きな切り口とすることで解析し、いま改めて「都市的なるもの」を問い直す契機としたい。
A実施計画の概要
 主に戦後日本を題材として、以下の要領で検討する。(a)「都市の表象」について映画研究者の平沢剛氏から、(b)「都市の記憶」について広島在住の東琢磨氏から、それぞれ論点を提起してもらい、それらを(c)運動・文化と絡めた形で道場親信氏・酒井隆史氏と共に検討することで、総合的な視座を設定する。

■第1回企画:2006年12月16日(土)
「1980年の広島に戻って――音楽・身体・都市」〜〜東琢磨氏を招いて
【開催報告】
内容(講演会等のテーマ・報告者・プログラム・参加人数等)
◆テーマ:「1980年の広島に戻って――音楽・身体・都市」
◆報告者:東 琢磨(音楽・文化批評/大学非常勤講師)
◆参加人数:21人
◆使用機材:プロジェクター、スクリーン、小型スピーカー
 報告は、音楽を多く紹介しながら、配布資料(報告者の過去の原稿など)・スクリーンに映写した文字資料を参照しつつ、行なわれた。
 広島という「土地」をめぐる様々なポリティクス、そこから敷衍して地理的・時間的にも離れた「出来事」(光州事件など)の記憶へのアプローチ、ニューヨークにおけるプエルトリカンのアイデンティティ、いま強まっている「女性の身体」に対する(管理の)「政治」……、そうしたテーマを音楽・音声・詩・条例の条文などを媒介としつつ、ゆるやかに連結して話を展開してゆく報告者の独特な「語り」に、参加者一同は圧倒された。
 広く「文化」に関わる研究を指向する(もしくは「研究」の外側にあって「文化」を実践しようとする)者たちにとって、自らの思考と志向をいかに(立場性を確定しつつ)表明していくか、という大きな課題に立ち向かう際に、今回の体験は非常に有効なものとして活かされることだろう。

■第2回企画:2007年3月30日(金)
「風景(論)と都市をめぐって――来るべき民衆=人民のために」
【開催報告】
内容(講演会等のテーマ・報告者・プログラム・参加人数等)
◆企画テーマ:「風景(論)と都市をめぐって――来るべき民衆=人民のために」
◆講師:平沢 剛(映画研究/明治学院大学非常勤講師/『VOL』編集委員)
◆参加人数:23人
◆使用機材:プロジェクター、スクリーン
◆報告趣旨:「1970年前後に、『略称・連続射殺魔』(69)という映画作品を契機に運動的理論として提唱された風景論の検証を中心に、ドゥルーズの『シネマ』の諸概念を導入しながら、映画の可能性、潜在性について議論していきたい。」(平沢)
 報告では、「風景論」についての簡単な概説のあと、『略称・連続射殺魔』をはじめ若松(孝二)プロの諸作品をハイライトで鑑賞し、それらに刻印されている「風景論」を導き出す描写/表象の問題系を確認した。その後、ドゥルーズ『シネマ2』で展開されている諸概念を確認したうえで、ジガ・ヴェルトフ集団『東風』などを鑑賞し、映画そのものの構造的問題系と第三世界人民の視点へと向かう方向性との間の関係軸を見い出し、最終的にそれを「風景論」へと再接続することで、<映画>=<世界>そして<人民>への視点を改めて模索するという、極めて刺激的な試みであった。議論では、日本において「風景」という言葉が不可避に抱え持つある種の独特な叙情性が、いかに運動論的に作用し得るのか、また逆にどのような危うさを持っているのかについて、活発に意見交換がなされた。

■2006年度活動報告書(2007年3月)
 「都市−文化−記憶」研究会は、村上潔が代表者となり、公共・生命・共生領域の院生計6名を主な構成員とする研究会である。まず、改めて、その趣旨を再確認しておこう。
[……]
……以上は、2006年5月の申請時点での趣旨説明である。結果を先にいえば、Aの(c)は実現できなかったが、それ以外はほぼこの通りに活動することができた。
 まず、「広島から音楽評論家の東琢磨氏を招く。現在、東氏は、自らの住む広島という地について、歴史−記憶を媒介とした文化的アプローチを不断に試みている。広島=ヒロシマという場所性に徹底的にこだわり、ひたすら「おちこち歩む」ことから場所の記憶をあぶり出すその実践を学ぶ」(申請書)という趣旨で、第1回企画を開催した。
◆2006年12月16日(土) 於:創思館403+404号教室
「1980年の広島に戻って――音楽・身体・都市」〜〜東琢磨氏を招いて
講師:東 琢磨(音楽・文化批評/大学非常勤講師)
 実施要項は http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/2006/1216a.htm を、結果については開催報告書(提出済み)を参照していただきたい。まさに企画の意図通り、いやそれ以上に、東氏の「語り」そのものが氏の彷徨の記録/記憶として(会場の)「場」に表出してゆく過程と空気の蠢きは、われわれ(聴衆/「研究者」/もしくはその「場」に「付き添う」人々)に確かな意識変革をもたらし、自らの(研究/運動といった)「実践」へのヒントとなった。「都市的なるもの」を感受する/表象することの意味を共有した貴重な場であった。
 第2回企画は2007年3月30日(金)、映画研究者の平沢剛氏を講師に招いて行なう。実施要項は http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/2007/0330.htm 参照。映画を題材にして、<風景−都市−文化−表象−記憶−政治−運動>を鮮やかに連結する、氏ならではの手法をダイナミックに提示してくれるに違いない。なお、開催報告書は実施後早急に提出する。*→開催報告


*作成:村上 潔
UP: 20160403(元ファイル作成日:20070411) REV:
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