今年度は、主に日本の映画・歌謡曲に焦点を当てる。主な研究目的は2つある。@日本の映画・歌謡曲文化にちりばめられている「抒情」をさまざまな角度からの分析ですくい上げ、広く日本の近代(以降の)思想の文脈に置き直すことで、文化の創出と表示、そして享受と解釈の体系の一つの(いくつかの)ありかたを発見してゆくこと。もちろん、「抒情の不在(化)」の意味も同時に問題としてゆく。昨年度対象とした「風景論」などはその一例である。A主に1970年代の東映・日活などの任侠/若者/暴力をテーマとした映画と、「漂泊・遍歴」のアウトローを題材にした同時代の歌謡曲(例として“怨み節”・“ジョニィへの伝言”など)をさまざまなパターンで連結させることで、<場所性−権力−共同体−性(男/女)−情念>の複合的関係性を考察してゆくこと。当然@とAは相互補完的な関係をもつ。[……]この趣旨に沿って、前期ならびに夏期休暇中に以下の活動を行なった。