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科学技術社会論研究会・2004

科学技術社会論研究会




 
 
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Date: Tue, 02 Nov 2004 10:00:58 +0900
Subject: 第44回・科学技術社会論研究会のお知らせ

皆様

「科学技術社会論研究会」では、来る2004年12月4日(土)に、以下
のワークショップを行います。
ご関心をお持ちの方にご案内いたします。

準備の都合上、参加の方はお手数でも、10日前までに下記の参加
登録用ページよりご登録ください。
http://nmasaki.com/stsws_44th.html

会の1週間前には、発表梗概などの資料をお送りします。定員が
あります。ご承知おきください。
本研究会は、焦点の特定テーマを巡るone-day workshopであり、
講演会ではありません。今回のテーマに関して、ご自身の課題、
また発言されたいことなど、一言お書き添え下さい。参加者内で
公開し、討議の際の資料にさせていただきます。

また、終了後、同会場で簡単な懇親会(会費約1000円)があります。
研究交流を深められたらと思います。参加の方はこの点も10日前
までにお知らせください。

この案内は、転送自由ですので、ご関心の向きにお知らせください。
また、この「科学技術社会論研究会」のお知らせを必要とされない
場合は、送信を解除いたしますので、お手数ですが、その旨、事務
局までお知らせください。

事務局では、随時、研究会企画の提案を受け付けています。
詳しくは、ご相談ください。
事務局

__________________________________________________________________________

第44回「科学技術社会論研究会」ワークショップ
「エミール・ゾラの自然主義 と当時の科学文化」
     2004年12月4日(土)9:45-17:30
東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室

1. ワークショップの目的
科学技術社会論が、もしほぼ同時代の科学政策的決定過程の対象化だけに専念
するようなことになれば、それは科学技術社会論にとって、マイナスにはなっ
てもプラスにはならないだろう。科学技術の社会への関わり方は、あまりに多
様で複層的なものなので、科学政策の場面で問題化・主題化されるものは、そ
れらのごく一面を切り取ったものであるにすぎない。それに特化することは
STSをむしろ貧困にするものだ。
この基本的な認識のもとで、われわれは、もちろん科学政策的志向性自体の価
値を貶めるということではなく、違う切り口を探した。そして、科学・技術が
社会、ないしは一般市民の間でどのようにイメージされ、どのように利用され
ているのかを知るということも、極めて重要な話題なのだという認識に到達し
た。それは科学的知識の科学性とは若干異なる、科学的知識の一般社会への流
通、流用、濫用、通用自体の様態を、記述的に見るという作業を基礎にしてい
る。それは一般的位相において、それ自体の興味深さをもつことは間違いない。
ただ、今回の研究会では、その種の一般的位相での議論は避ける。そしてある
特定の具体的話題に絞りながら、科学・技術的概念が、或る文化的局面に浸透
していく様態を個別的にみることを目標とした。それは主に二つの主題に分け
られる。まず一つは、小倉・金森による、十九世紀フランス自然主義の大作家、
エミール・ゾラの文学的世界の分析である。ゾラは積極的に遺伝学を援用した
ので、当時の遺伝学と、ゾラの文学的世界の間の分析を金森が行う。
小倉は、生理の描出のされ方の具体的検討の過程で、主にゾラの身体表象に注
目した分析を行う。
もう一人の、菅野は上記の二人とは若干異なるアプローチをする。そして十九
世紀に何度か見られた、測定癖に焦点を当てる。測定という、客観的作業その
ものであるかのような切り口自体が、時代・文化拘束性のなかで、どのような
形姿をもって現れるのかを具体的に論じる。
この三つの報告を通して、大きく十九世紀フランスの文化における、科学性の
表象の在処を探る。このような主題をも科学技術社会論の一環に組み込むこと
は、その射程や奥行きを広げることだ、とわれわれは信じている。


2. ワークショップの時間割

9:45-10:00 趣旨説明
10:00-11:15 話題提供1(討論35分を含む。以下同)
    小倉孝誠(慶應義塾大学・文学・文化史)
     「ゾラと身体の表象」

自然主義文学にとって、身体は特権的なテーマの一つである。そのことはとり
わけ『ルーゴン=マッカール叢書』の作者に当てはまる。ゾラは病理、遺伝、
セクシュアリティー、感覚など身体にまつわる現象を徹底的に描いた作家であ
る。そのなかで三つの主題に焦点を絞って論じることにしたい。第一に身体の
政治性。社会の諸集団の欲望と利害が衝突する空間として自分の作品を構想し、
農民、労働者、職人、商人、ブルジョワ、貴族などあらゆる階級を登場させる
ゾラは、そうした人々の営みを異なる身体文化として表象し、身体そのものが
階級性を強く刻印されていることを示した。第二に身体の生理学的な規定性。
ゾラにおいて、女性とりわけ若い女性の身体は生理学的なドラマが展開する場
にほかならず、そこではジェンダーの力学がはっきりと露呈する。そして第三
に見つめられる対象としての身体。ナナのような女優=娼婦が男によって見られ、
値踏みされることによってのみ存在しうるのは当然として、堅気の女性たちも
またしばしば裸身をさらす。そしてその時、男たちは欲望すると同時にたじろ
ぎ、不安に駆られる。


11:15-12:30 話題提供2
    金森 修(東京大学・教育・科学思想史)
     「ゾラの遺伝学」

ゾラの『ルーゴン=マッカール叢書』は、プロスペル・リュカなど、当時存在し
た遺伝学者が奉じていた遺伝学を参考に作られた一種の強い遺伝的決定論を背景
にもっていた。ただ、周知のように、1860年代に行われたメンデルの作業は
科学的に回収されることはなかったので、その後に展開された遺伝学は、現代的
な離散的な遺伝子概念にまったくかけており、遺伝の様態も、混合遺伝の伝統に
則したものだった。まずはその限界がある。にもかかわらず、ゾラの「遺伝学」
は、多くの点で興味深い。まず、遺伝学史の流れのなかで、影響遺伝のように興
味深い概念がある。それに何より、その遺伝学的前提の際どさにもかかわらず、
それを無にするほどに豊かな、彼の文学的世界がある。私は、当時の遺伝学、そ
れとの関係におけるゾラ、そして彼の文学的想像力自体を相関的に見ることで、
当時の科学文化の一端を回顧することを目指したい。


       昼食

13:30-14:45 話題提供3
 菅野賢治(都立大学・人文・文学/文化史)
     「「ものさし」の彼方――19世紀末の「測定狂」について」

なにがしかの事象を把握する目的をもって「ものさし」を持ち出す時、人間の科
学的思考の内部では一体何が起こっているか? 18世紀、ジュネーヴの自然史学
者シャルル・ボネは人間の心的事象にあてがう「ものさし」として早くも「心理
測定器」を夢想し、19世紀、ベルギーの数学者アドルフ・ケトレは「人間の知的
組織を直に測定するための手段」として「人体測定法」を提唱した。ほどなく、
パリ警察のアルフォンス・ベルティヨンの手によって「実用化」に漕ぎ着けた司
法人体測定は、ドレフュス事件のうちに途方もない錯乱ぶりを呈することとなる。
ここでは、ドレフュス事件発生前夜、医師エドゥアール・トゥールーズが作家エ
ミール・ゾラの身体にあてがった「ものさし」を検証しながら、19世紀末のヨー
ロッパを席巻した「測定狂」の実像を浮かび上がらせたい。


     休憩
15:00-15:30 レスポンス1
   菅谷憲興(立教大学・文学・文化史)
15:30-16:00  レスポンス2
   隠岐さや香(東京大学・総合文化・科学史/文化史)

       休憩
16:15-17:30 総合討議      
      司 会 金森 修

17:30-18:30 懇親会  
____________________________________________________________________________
10日前迄に以下のページより参加登録下さい。
http://nmasaki.com/stsws_44th.html

科学技術社会論研究会・事務局  
国士舘大学・木原英逸 kihara@pem.kokushikan.ac.jp
東京大学・中村征樹
  
以上。


 
 
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Date: Mon, 20 Sep 2004 10:20:35 +0900
From: Hidetoshi KIHARA
Subject: 第43回・科学技術社会論研究会のお知らせ

皆様

「科学技術社会論研究会」では、来る2004年10月16日(土)に、以下
のワークショップを行います。
ご関心をお持ちの方にご案内いたします。

なお、9月25日の第42回ワークショップは、定員を越えてすでに
締め切っています。お間違えないように願います。

準備の都合上、参加の方はお手数でも、10日前までに下記の参加
登録用ページよりご登録ください。
http://nmasaki.com/stsws_43rd.html

会の1週間前には、発表梗概などの資料をお送りします。定員が
あります。ご承知おきください。
本研究会は、焦点の特定テーマを巡るone-day workshopであり、
講演会ではありません。今回のテーマに関して、ご自身の課題、
また発言されたいことなど、一言お書き添え下さい。参加者内で
公開し、討議の際の資料にさせていただきます。

また、終了後、同会場で簡単な懇親会(会費約1000円)があります。
研究交流を深められたらと思います。参加の方はこの点も10日前
までにお知らせください。

なお、続いて以下のワークショップがあります。ご予定ください。   
44回 2004.12. 4 「エミール・ゾラの自然主義と、当時の科学文化」(仮)

この案内は、転送自由ですので、ご関心の向きにお知らせください。

事務局では、随時、研究会企画の提案を受け付けています。
詳しくは、ご相談ください。
事務局

__________________________________________________________________________

第43回「科学技術社会論研究会」ワークショップ  
      「リスク行政の現状と課題:国際的動向と日本の課題」
2004年10月16日(土)10:00-18:00
東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室


1.ワークショップの目的

本ワークショップの目的は、リスク行政をめぐる国際的な動向を踏まえながら、日
本におけるリスク行政のあり方について検討することにある。近年の原子力行政に
おける確率論的安全性評価や維持基準の導入、食品安全基本法の施行と食品安全委
員会の発足、薬事法の改正による製造承認制度から販売承認制度への移行などによ
り、日本のリスク行政は、その制度を整備しつつあると言うことができるだろう。
しかし、こうした制度が日本の製造・流通制度、消費者の行動傾向において、どの
程度有効に機能し得るかは未知数である。また、リスク評価やリスク管理の手法を
めぐっては、様々な議論が展開されてきたが、リスク-費用便益分析と環境正義の
問題や、リスクコミュニケーションの様々な手法の有効性と問題点に関して欧米で
積み上げられてきた議論が、近年の日本のリスク行政における変化において十分に
踏まえられてきたとは言いがたい。例えば、双方的なものであるべきリスクコミュ
ニケーションが、日本の行政当局では、専門家によって構築されたリスク管理シス
テムを国民に浸透させるためのツールとしてのみ捉えられる傾向がある。こうした
理解は、システムとそのシステムを支える理念との間にギャップを生み出しつつあ
るようにも思われる。本ワークショップでは、リスク評価、リスク管理、リスクコ
ミュニケーションの様々な手法とシステムの原理的な有効性と限界について検討す
るとともに、日本のリスク行政において、これらの手法とシステムが適用可能であ
るのか否かを議論していくことにしたい。


2.ワークショップの時間割

10:00-10:10 趣旨説明
10:10-11:20 話題提供1(討論30分を含む。以下同)
    石原孝二(北海道大学)
     「リスク行政は日本に根付くか?
     ――リスク評価・マネジメント・コミュニケーションをめぐる諸問題」

現在日本では、リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーション(以下RAMC)
の様々な手法とシステムが導入され、法制度も整備されつつある。こうした変化は、
1.定量的評価の導入と2.運用・流通段階でのリスク評価・リスク管理システムの構
築を目指すものであり、欧米で発展してきた様々な手法を日本の行政が取り入れつ
つあるものと考えることができるだろう。
しかし法制度の急速な整備に対して、RAMCに関する行政・企業・技術者・消費者の
理解は、それに見合うほど成熟していると言えるだろうか?日本では、欧米で論じ
られてきたRAMCにまつわる様々な問題に関する議論を十分経ることなくシステムの
みが導入されつつあるように思われる。また、文部科学省や総合科学技術会議が展
開する「安全・安心な社会」の構築のための科学技術政策はRAMCの誤用を招く要素
を孕むものである。本発表では、RAMCの様々な手法の有効性と限界および、日本に
おける適用の現状について考察し、本ワークショップの導入のための議論を提供す
ることにしたい。


11:20-12:30 話題提供2
西澤真理子(シュトゥットガルト大学)
「欧州連合における予防原則導入の政治、経済的背景
――化学物質規制案 REACH などを例に」

欧州連合はリスクが科学的に証明できない場合に警戒措置をとるという"Better
safe than sorry"の精神に則った予防原則を環境保護、食品安全の分野で積極的に
採用してきている。予防原則とは、現在確認されているリスクだけではなく、未知
のリスクを未然に防ぐための,いわば法的なバリアであると言えよう。未知のリス
クを科学的な根拠から推測し、法的な方向から抑制をかけることで、われわれの社
会、環境、健康を守るわけである。
では、実際如何にこれらの予防原則が作成され、採用されてきているのであろうか。
本報告では、欧州連合で現在審議中の化学物質規制制度(REACH),遺伝子組み換え
作物,地球温暖化政策を例に、予防原則導入の理由と過程を分析し、その問題点を
指摘する。

       昼食

13:30-14:40 話題提供3
    新山陽子(京都大学)
「日欧米の食品安全行政と人間行動・社会システム観」

食品分野では安全確保の国際規範として、FAO/WHO合同の政府間組織であるCodex委
員会において「リスクアナリシス」の手順が定められている。リスクの科学的分析
から、リスク低減のための規制・政策、リスクコミュニケーションの一連のプロセ
スからなるものであり、この規範が、日欧米の食品安全行政の考えかたや仕組みに
どのように活かされているかを検証する。
また、試論的ではあるが、日欧米の間での、食品安全行政のバックグラウンドとな
る人間行動観(経済人モデル)および社会システム観の共通性と相違について検討
し、食品安全問題の特質と行動、システムの望ましいあり方について問題提起を行
ってみたい。

     休憩

14:50-16:00 話題提供4
    川内 陽志生(東洋エンジニアリング株式会社)
「リスクとコストの最適化
――化学プラントのライフサイクルコストをめぐる国際動向を中心にして」

化学プラントの設計には納期、品質、そしてコストのバランスが必要とされる。化
学プラントはその特性上、事故が発生した場合の従業員及び周辺住民への影響が大
きい為、特に品質(リスクを含む)とコストをどうバランスさせるかは実務上重要
である。リスクとコストの評価の為には、それらの定量化が必要となり様々なアプ
ローチがなされている。本報告では現在化学プラントの設計で行われている、リス
クの定量化とコストの評価について紹介する。
リスクは事故発生による損害を致死率で定量化することが多くその基本的な考え方
は原子力発電設備の定量的リスク評価(QRA)をベースとしている。またコスト評価
についてはライフサイクルコストについて紹介する。ライフサイクルコストはその
概念は古くからあるもののその適用が難しく実用化が広まらなかった背景がある。
しかし国際規格化の流れもあり最近又注目を浴びつつある手法である。これらリス
クとコストの最適化について具体例を含め紹介する予定である。


16:00-16:40 レスポンス1  平川秀幸(京都女子大学)
 レスポンス2  鬼頭秀一(恵泉女学園大学)
   
       休憩

16:50-18:00 総合討議      
      司 会  石原孝二

18:00-19:00 懇親会
  
____________________________________________________________________________
10日前迄に以下のページより参加登録下さい。
http://nmasaki.com/stsws_43rd.html

本ワークショップは日本学術振興会科学技術研究費補助金(基盤研究B)「リスク論
を軸とした科学技術倫理の基礎研究」(蔵田伸雄代表)との共催です。

科学技術社会論研究会・事務局  
国士舘大学・木原英逸 kihara@pem.kokushikan.ac.jp
東京大学・中村征樹
  
以上。


 
 
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Date: Tue, 24 Aug 2004 13:52:51 +0900
From: Hidetoshi KIHARA
Subject: 第42回・科学技術社会論研究会のお知らせ

皆様

「科学技術社会論研究会」では、来る2004年9月25日(土)に、以下
のワークショップを行います。
ご関心をお持ちの方にご案内いたします。

準備の都合上、参加の方はお手数でも、10日前までに下記の参加
登録用ページよりご登録ください。
http://nmasaki.com/stsws_42nd.html

会の1週間前には、発表梗概などの資料をお送りします。定員が
あります。ご承知おきください。
本研究会は、焦点の特定テーマを巡るone-day workshopであり、
講演会ではありません。今回のテーマに関して、ご自身の課題、
また発言されたいことなど、一言お書き添え下さい。参加者内で
公開し、討議の際の資料にさせていただきます。

また、終了後、同会場で簡単な懇親会(会費約1000円)があります。
研究交流を深められたらと思います。参加の方はこの点も10日前
までにお知らせください。

なお、今秋には、続いて以下のワークショップがあります。ご予定
ください。
43回 2004.10.16 「リスク行政の現状と課題」(仮)   
44回 2004.12. 4 「エミール・ゾラの自然主義と、当時の科学文化」(仮)

この案内は、転送自由ですので、ご関心の向きにお知らせください。

事務局では、随時、研究会企画の提案を受け付けています。
詳しくは、ご相談ください。
事務局

____________________________________________________________________________


第42回「科学技術社会論研究会」ワークショップ  
      「戦争の日常化と科学技術」
2004年9月25日(土)9:45-17:30
東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室


1.ワークショップの目的

本ワークショップの柱は2つある。ひとつは日本の戦時下における科学技術の研究開
発の実態および科学者や技術者という、ヒトの行動を見ること。当時、社会的にはヒ
トが戦争協力するのは当然のことだった。もうひとつは、それら研究開発が実施され
てから何十年も経過した非‐戦時下の日本で、戦時下の研究活動の実態を歴史的に明
らかにする際にどんな社会的ハードルがあるかを明らかにすることである。歴史研究
者の多くは、自らの努力不足は棚に上げ、現在の日本社会は戦争の実態を暴くことに
否定的であると感じている。
話題1では、侵略戦争による領土拡大によって研究の領域が広がる学問分野が存在
し、それに対して当事者である研究者がどのように考えていたか、あるいはどう気付
いていなかったかなどが明らかにされるだろう。後者の研究者にとって戦争は日常化
しており、こうした認識はなかったかもしれない。
話題2では、兵器の開発および製造の実態と、戦後半世紀経過してもその実態が公文
書で明らかにならない現状が浮かび上がるだろう。これは、今なお日本は「戦時」中
で守るべき軍事秘密がある、と考えている人の存在を暗示しているのかも知れない。
話題3は話題1と2が明らかにした歴史的および現代的状況が、現在進行中の科学技術
開発ではどうなっているかの報告となるだろう。具体的には国際的に無理やり「平和
利用(Atoms for peace)」という図式が作られた原子力開発の、日本国にとっての意
味や、それゆえの情報操作などの実態が報告されるだろう。これはまさに「平時」に
おいて「軍事」がどのように行われているかを分かり易く示しているのではないだろ
うか。
話題1〜3で語られる科学者や技術者は、いずれも自分で直接人を殺すわけではない。
人を殺すのは良くないと誰もが知っていながらそれに直接あるいは間接に荷担する。
どうすればこの気持の負担を軽くできるだろうか?
こう逆説的に問うのは、あるべき姿を説いて終わるのではなく、科学者や技術者が人
殺しなど、やってはならないことに手を染めない、あるいはその度合を小さくする道
を現実的に考えるには、有効かもしれないからだ。必要なのは社会的制度(社会の問
題)の確立と考える人、また各自の心の持ちようだ(ヒトの問題)と突き放す人もいる
だろう。実際には多くの人はこの中間、社会とヒトとの間、で行ったり来たりしてい
るのではなかろうか。
今回のワークショップでの議論を通じてその道筋がいつくか示されることになれば幸
いである。


2.ワークショップの時間割

9:45-10:00 趣旨説明
10:00-11:15 話題提供1(討論35分を含む。以下同)
    矢島道子(科学史学会会員)
     「戦時科学として地質学を見る」

現在、地質学は地球の起源、さらには惑星の起源まで探ろうとし、防災や環境への働き
かけをして社会的に貢献しようとしている。しかし、地質学は古くから、鉱山開発、資
源開発の基礎となる学問でもある。資源調査のためには、まず地形図を作成し、その上
に地質調査をして全国の地質図をつくるという方法をとる。
地質学には、この様に、資源探査開発を目的とする側面が大きくあり、その意味で植民
地、戦争等に密接に関連してきたと言える。本報告では、このような大枠の中で、日本
の地質学(主に戦時)にはいかなる特徴があるかを検討する。
明治の初めは日本が外国人による地質調査の対象であったが、明治の中期以降(日清戦
争は1894―5[明治27-8]年である)には、朝鮮、樺太、満州、中国本土、そして南方へと
地質調査の手を伸ばしていった。朝鮮では地質調査所を1918年に創設し、1924年には地
質図を刊行してしまう。1930年代以降は鉱床調査がさかんとなる。満州は南満州鉄道株
式会社(いわゆる満鉄)地質調査所が主要機関となり、満州帝国地質調査所、旅順工科
大学、満州国立中央博物館がそれを支持した。ほぼ地質図を完成し、資源調査も学術調
査もかなり進んだ。樺太は1907年に樺太庁が設置され、油田調査はかなり進んだ。1929
年に上海自然科学研究所が設立されて積極的に中国本土に入り込んでいくことになる。
いわゆる15年戦争(1931-1945)は資源をめぐる戦争といってもいいから、好むと好まない
に関わらず、地質学は戦争の前面に直接出てくることになる。南方の調査は実際に戦争
が始まって、軍が油田を制圧し、精油所を占領し、オランダ系の研究所を接収してから
はじまり、政治的軍事的資源調査に限定されていた。
物理学を代表とする他の科学は、もともと戦争と独立であり戦時にのみ戦時科学として
存在するように認識されがちであるが、地質学は資源開発その他で、常に戦争の中心に
からめとられる。地質学は戦時?平時をこえておそらく現在も戦争の真ん中に巻き込ま
れているであろう。


11:15-12:30 話題提供2
松野誠也(駿台史学会会員)
「日本軍における化学兵器の研究・開発と実戦使用」

日本軍の毒ガス兵器は、過去の戦争中から今日に到るまで、他国民及び自国民に対して
災厄をもたらしている「負の遺産」である。本報告では、日本軍の毒ガス兵器の問題を、
以下の視点から検討し考えてみたい。
まず、毒ガス兵器開発について、外国からの技術導入の問題や、民間企業と科学者の関
与の点から検討を行い、戦争と科学・企業の問題の一端を考察したい。第2に、日本軍
の軍事思想に基づいた毒ガス兵器開発及び実戦使用の問題を検討し、毒ガス兵器から見
た戦争の諸相を検討する。
以上を通じて、日本の過去の歴史から、今なお解決していない「大量破壊兵器」の問題
を考える、一つのささやかな試みとしたい。


       昼食

13:30-14:45 話題提供3
    藤田祐幸(物理学会およびエントロピー学会会員)
「日本の原子力政策の軍事的側面」

非核三原則の下での「平和」目的の原子力開発の軍事的側面を、歴史的に検討することを
主題とする。
1958年正月に首相岸信介は年頭最初の行動として、伊勢神宮でも靖国神社でもなく、東
海村の原研を視察した。岸は回顧録の中でこのときの心境を「原子力技術はそれ自体平
和利用も兵器としての使用もともに可能である。どちらに用いるかは政策であり国家意
思の問題である。日本は国家・国民の意思として原子力を兵器として利用しないことを
決めているので、平和利用一本槍であるが、平和利用にせよその技術が進歩するにつれ
て、兵器としての可能性は自動的に高まってくる。日本は核兵器は持たないが、潜在的
可能性を高めることによって、軍縮や核実験禁止問題などについて、国際の場における
発言力を強めることが出来る」と書いている。
政治家のこの冷徹な見識に比較して、科学者あるいは市民運動側の認識は、あまりにも
貧弱であったといわざるを得ない。
いま、政府は核燃料サイクル計画の挫折を受けて、軽水炉でプルトニウム燃料を燃やす
プルサーマル計画へと重心を移しながらも、再処理工場の建設工事を継続し、「もんじ
ゅ」の再開の機会を測りつつある。技術的にも経済的にも成り立ち得ないこれらの計画
を、国策として推し進めるその背後には、一貫した核政策があることを見逃すことは出
来ない。岸信介の言う所の「国家意思」を、今こそ問い直すことが必要であろう。
核燃料サイクル計画に対し、軍事転用の技術的可能性を論ずることが、反原発運動や反
核兵器運動の内部において、タブー視される傾向があった(ある)ことも、指摘してお
かねばなるまい。
報告の概要は以下の通りである。
1.学術会議の二つの声明/2.茅・伏見提案と三村演説/3.科学技術庁構想/
4.中曽根予算/5.原子力挙国体制の成立/6.科学者の武装解除
7.岸信介の核兵器合憲論と国家意思論/8.佐藤栄作のトリレンマ/
9.日本核武装計画


     休憩

15:00-15:30 レスポンス1  川村一之(エントロピー学会会員)
15:30-16:00 レスポンス2  河村豊(科学史学会会員)
   
       休憩

16:15-17:30 総合討議      
      司 会  常石敬一(科学史学会会員)

17:30-18:30 懇親会  
     
____________________________________________________________________________
10日前迄に以下のページより参加登録下さい。http://nmasaki.com/stsws_42nd.html

科学技術社会論研究会・事務局  
国士舘大学・木原英逸 kihara@pem.kokushikan.ac.jp
東京大学・中村征樹

以上。


 

Date: Wed, 28 Jul 2004 14:39:24 +0900
Subject: 第42回科学技術社会論研究会・予告

皆様

「科学技術社会論研究会」では、来る2004年9月25日(土)に、以下の
ワークショップを行います。
ご関心をお持ちの方は、ご予定ください。

8月末になりましたら、詳しい参加要領をご案内いたします。

なお、今秋には、続いて以下のワークショップがあります。ご予定ください。

43回 2004.10.16 「リスク行政の現状と課題」(仮)   
44回 2004. 12. 4  「エミール・ゾラの自然主義と、当時の科学文化」(仮)

この案内は、転送自由ですので、ご関心の向きにお知らせください。
また、この「科学技術社会論研究会」のお知らせを必要とされない場合は、
送信を解除いたしますので、お手数ですが、その旨、事務局までお知らせください。

事務局

____________________________________________________________________________

第42回「科学技術社会論研究会」ワークショップ  
      「戦争の日常化と科学技術」
2004年9月25日(土)9:45-17:30
東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室


1.ワークショップの目的

本ワークショップの柱は2つある。ひとつは日本の戦時下における科学技術の研究開
発の実態および科学者や技術者という、ヒトの行動を見ること。当時、社会的にはヒ
トが戦争協力するのは当然のことだった。もうひとつは、それら研究開発が実施され
てから何十年も経過した非‐戦時下の日本で、戦時下の研究活動の実態を歴史的に明
らかにする際にどんな社会的ハードルがあるかを明らかにすることである。歴史研究
者の多くは、自らの努力不足は棚に上げ、現在の日本社会は戦争の実態を暴くことに
否定的であると感じている。

話題1では、侵略戦争による領土拡大によって研究の領域が広がる学問分野が存在
し、それに対して当事者である研究者がどのように考えていたか、あるいはどう気付
いていなかったかなどが明らかにされるだろう。後者の研究者にとって戦争は日常化
しており、こうした認識はなかったかもしれない。
話題2では、兵器の開発および製造の実態と、戦後半世紀経過してもその実態が公文
書で明らかにならない現状が浮かび上がるだろう。これは、今なお日本は「戦時」中
で守るべき軍事秘密がある、と考えている人の存在を暗示しているのかも知れない。
話題3は話題1と2が明らかにした歴史的および現代的状況が、現在進行中の科学技術
開発ではどうなっているかの報告となるだろう。具体的には国際的に無理やり「平和
利用(Atoms for peace)」という図式が作られた原子力開発の、日本国にとっての意
味や、それゆえの情報操作などの実態が報告されるだろう。これはまさに「平時」に
おいて「軍事」がどのように行われているかを分かり易く示しているのではないだろ
うか。

話題1〜3で語られる科学者や技術者は、いずれも自分で直接人を殺すわけではない。
人を殺すのは良くないと誰もが知っていながらそれに直接あるいは間接に荷担する。
どうすればこの気持の負担を軽くできるだろうか?
こう逆説的に問うのは、あるべき姿を説いて終わるのではなく、科学者や技術者が人
殺しなど、やってはならないことに手を染めない、あるいはその度合を小さくする道
を現実的に考えるには、有効かもしれないからだ。必要なのは社会的制度(社会の問
題)の確立と考える人、また各自の心の持ちようだ(ヒトの問題)と突き放す人もいる
だろう。実際には多くの人はこの中間、社会とヒトとの間、で行ったり来たりしてい
るのではなかろうか。
今回のワークショップでの議論を通じてその道筋がいつくか示されることになれば幸
いである。

2.ワークショップの内容

● 矢島道子(科学史学会会員)
「戦時科学として地質学を見る」

● 松野誠也(駿台史学会会員)
「日本軍の毒ガス戦の実態と資料」

● 藤田祐幸(物理学会およびエントロピー学会会員)
「日本の原子力政策の軍事的側面」

● レスポンス1 川村一之(エントロピー学会会員)
● レスポンス2 河村 豊(科学史学会会員)
 
● 総合討議・司会 常石敬一(科学史学会会員)
  
  懇親会   
____________________________________________________________________________
科学技術社会論研究会・事務局  
国士舘大学・木原英逸 kihara@pem.kokushikan.ac.jp
東京大学・中村征樹
  
以上。

 

Date: Thu, 01 Jul 2004 17:54:35 +0900
Subject: 第41回・科学技術社会論研究会のお知らせ

皆様

「科学技術社会論研究会」では、来る2004年7月24日(土)に、以下
のワークショップを行います。
ご関心をお持ちの方にご案内いたします。

準備の都合上、参加の方はお手数でも、10日前までに下記の参加
登録用ページよりご登録ください。(前回から、参加申込み手順が
変わっています) http://nmasaki.com/stsws_41st.html

会の1週間前には、発表梗概などの資料をお送りします。定員が
あります。ご承知おきください。
本研究会は、焦点の特定テーマを巡るone-day workshopであり、
講演会ではありません。今回のテーマに関して、ご自身の課題、
また発言されたいことなど、一言お書き添え下さい。参加者内で
公開し、討議の際の資料にさせていただきます。

また、終了後、同会場で簡単な懇親会(会費約1000円)があります。
研究交流を深められたらと思います。参加の方はこの点も10日前
までにお知らせください。

この案内は、転送自由ですので、ご関心の向きにお知らせください。

事務局では、随時、研究会企画の提案を受け付けています。
詳しくは、ご相談ください。
事務局

____________________________________________________________________________

第41回「科学技術社会論研究会」ワークショップ  
      「資源配分メカニズムのミクロ・ポリティクス」
2004年7月24日(土)10:20-18:00
東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室


1.ワークショップの目的

 近年、多くの途上国で行われている森林保護政策は、往々にして、その意図せざ
る結果として、特定地域の人々に負荷がかかり、場合によってはそこに住む人たち
の生活資源の収奪を正当化する結果につながっている。このような問題を、今回の
ワークショップでは、「環境」の問題の視点からではなく、「資源の配分」の「ポ
リティクス」の問題として捉え、ある種の意図的な配分行為の結果が、意図せざる
形で、人々の欲求と機会に影響を及ぼしている政治性に注目する。
 そのような資源配分のポリティクスに関しては、経済学において「資源配分メカ
ニズム」という概念として捉えられ、価格シグナルを媒介とした市場メカニズムの
機能と機能不全に高い関心が払われてきた。しかし、人々の資源や機会の配分に影
響を及ぼしてきたメカニズムは市場以外にも多く存在する。高等教育の機会の配分、
病院の臓器や薬品の配分もそうであるし、村落共同体における相互扶助、世帯内の
資源配分も、市場とは別の領域で展開する配分メカニズムであり、そこには独自の
ポリティクスが展開されており、何らかの配分の正義が存在していた。
 そこで本ワークショップでは、それらの資源配分の政治性と、配分の正義のあり
方について総括的に議論を行う。まず、この問題意識を具体的に掘り下げていく材
料として、資源を人々の福祉に転換する能力に関する理論的な位置づけを検討し、
その配分の正義の問題を哲学的な正義論に位置づける。各種の資源配分プロセスで
不利な条件におかれてきた途上国の貧困層の戦略に光を当て、グローバルな環境正
義論の視点から分析する。そして、米国のダム撤去を事例にして、人工物の配置や
設計のもたらす政治性、さらに、資源と人々との関係のあり方を、技術論の観点か
ら論じる。
 そのように、従来は資源配分メカニズムの一つとして見られることが少なかった
ものを、そう捉え直すことによって、自由や束縛、連帯や孤立、支配や従属といっ
たミクロポリティクスを規定している要因を広い視野から検証し、そこにおける配
分の正義のあり方について議論を深めたい。


2.ワークショップの時間割

10:20-10:40 問題提起
   
10:40-11:10 話題提供1
  佐藤 仁(東京大学/資源政策、環境政治・行政学)
  「資源、転換力、意図せざる配分」

人々の暮らしの向上に役立つ資源や機会はどのような力とメカニズムによって配分
されるのか。経済学は、資源配分メカニズムの研究を標榜してきたが、実際に経済
学が取り扱ってきたのは財の配分であった。財は、市場取引になじむ形で商品化さ
れたものを指すのに対して、資源は、人々の働きかけによって社会的な機能を付与
される潜在的有用物である。資源は、原料とも異なり、広い用途を想定される素材
の束であるが、それゆえに、異なるパワーをもつ人々が同じ資源に対して異なる機
能を付与し、競合の問題が生じる。この報告では、J.エルスターやA.センの議論を
援用しながら、資源や財の保有と人々による実質的な機会の獲得には距離があり、
アクセスと転換力という二つの制度的要因の考察が、公正な分配(distribution)を
議論するときに不可欠なつなぎになることを論じる。同時に、意図的な配分の枠を
超えたところで作用する配分メカニズムの重要性を喚起したい。

11:10-11:30 レスポンス1  
    川本隆史(東京大学/社会倫理学)
11:30-12:00 討議1

          昼食

13:00-13:30 話題提供2
  青山和佳(和洋女子大学/開発経済学、地域研究(フィリピン))
  「フィリピン、ダバオ市のサマ移民のキリスト教受容――生活水準
      改善への微細な企て」

開発過程を経て、フィリピン南部、ミンダナオ・スルー地域の生活利便性はマクロ
的には改善したが、人びとの間の生活水準の格差もより明白になってきた。ミンダ
ナオ問題といえば、「ムスリム対クリスチャン」の対立構造で議論されることが多
い。だが、ミンダナオにはクリスチャン以外にも多数の非イスラーム教徒マイノリ
ティが居住しており、彼らの存在が問題を複雑化していることを見逃してはならな
い。
ダバオ市のサマ移民は、そのような人びとの例である。彼らは居住地における優勢
な周辺ムスリム諸集団と政府との武装対立や治安悪化のために、出身地を離れ半ば
難民としてダバオ市に流入した。そして、政治的交換・経済的交換のいずれにおい
てもシステムから排除されているため資源配分の受益者となりえず、困窮した生活
を強いられている。本報告では、彼らが日常を生き延びるためにどのような小さな
企てを重ねているのか、彼らにおけるキリスト教受容の社会的意味を検討しながら
考えてみたい。
2002年8月から2003年3月までの期間に断続的に収集した一次資料を用いる。キリス
ト教化が進む以前のサマ移民の生活水準とその背景にある制度的条件を概観した上
で、キリスト教の受容過程を当事者であるサマ移民の視点から明らかにする。キリ
スト教受容に被差別的な地位からの脱却と社会的地位の向上という微細な企てを接
合したサマの主体的な意図を検討する。短期的にみて、これらの企てはサマ移民の
貧困脱却に結びついていないというのが報告者の見解である。

13:30-13:50 レスポンス2  
    石山徳子(明治大学/政治・人文地理学、地域研究(アメリカ))  
13:50-14:20 討議2


14:30-15:00 話題提供3
  湊 隆幸(東京大学/マネジメント,ファイナンス,リスク分析)
  「人工物の政治性:ダム撤去を事例に」

本セッションでは、「技術の多面性」と「役に立つとはどういうことか」という点
を中心に議論を展開し、荒瀬ダム撤去計画の事例を交えてさらにこの点の考察を進
める。
前半の議論においては、「役に立つとはどういうことか」に関して、例えば、従来
の工学における機能性をベースにした観点ではなく、技術に内在する便益とリスク、
その影響や因果関係に関連する問題を検討し、それを「技術の多面性」として議論
したい。また、公共物としてのインフラ構築における「価値の対立」について、そ
れを本研究が関心を持つ「資源」の特性と関連づけて検討する。さらに、資源がイ
ンフラという人工物に変換される過程を簡単なモデルで示すことにより、インフラ
構築が人々の価値や行動にどう影響するかについて事例研究を行う場合の分析視点
を示す。
後半の荒瀬ダムの事例では、「作られたモノが何の役に立ったか」という視点から、
ダム撤去に関わる、人の価値観、選択、決定規準、合意(あるいは不合意)の対象、
ジレンマ等を取り上げ、加えて、ダム撤去の経験をどのように将来のインフラ構築
に活用できるかなど、広く一般的に議論する。

15:00-15:20 レスポンス3  
    直江清隆(山形大学/技術哲学)
15:20-15:50 討議3

          休憩 

16:10-18:00 総合討議
    司 会 鬼頭秀一(恵泉女学園大学/環境倫理学、科学技術社会論)

18:00-19:00    懇親会  

____________________________________________________________________________
このワークショップは、「人文社会科学振興のためのプロジェクト研究
(資源配分メカニズムと公正)」との共催です。

10日前迄に以下のページより参加登録下さい。http://nmasaki.com/stsws_41st.html

科学技術社会論研究会・事務局  
国士舘大学・木原英逸 kihara@pem.kokushikan.ac.jp
東京大学・中村征樹

以上。


 
 

◆2004/06/03 20:41
 「科学技術社会論研究会」のお知らせ

 *事務局より

皆様

「科学技術社会論研究会」では、来る2004年7月3日(土)に、以下の
ワークショップを行います。
ご関心をお持ちの方にご案内いたします。

準備の都合上、参加の方はお手数でも、15日前までに下記の参加
登録用ページよりご登録ください。
 http://nmasaki.com/stsws_40th.html
(今回より参加申し込み手順が変わりましたので、ご注意ください。)

会の10日前には、発表梗概などの資料をお送りします。定員があります。
ご承知おきください。
本研究会は、焦点の特定テーマを巡るone-day workshopであり、
講演会ではありません。今回のテーマに関して、ご自身の課題、
また発言されたいことなど、一言お書き添え下さい。参加者内で
公開し、討議の際の資料にさせていただきます。

また、終了後、学内のゲストハウスでルノアー教授を迎えての
パーティ(会費約3000円)があります。研究交流を深められたらと
思います。参加の方はこの点も15日前までにお知らせください。

この案内は、転送自由ですので、ご関心の向きにお知らせください。

なお、以下のワークショップは「市場化のなかの生命医療」をテー
マに企画されたものを「大学の社会的機能を中心として その3」
に位置づけたものです。

事務局では、随時、研究会企画の提案を受け付けています。
詳しくは、ご相談ください。
事務局

___________________________________________________________________________

第40回「科学技術社会論研究会」ワークショップ  
     「市場と科学:大学の社会的機能を中心として その3」
2004年7月3日(土)10:45-18:45
東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室

1.ワークショップの目的

近年、大学は、私企業とのコラボレーション、大学による特許取得、大学研究者によ
るベンチャー企業の創設など、知識生産の場としての伝統的な役割を大きくかえつつ
ある。とりわけバイオテクノロジーや情報工学の現状がわれわれに突きつけているも
のは、伝統的なラボラトリーが生産する、普遍的な(それゆえ公共財としての)科学的
知識というイメージの修正である。
このプライバタイゼーションと商業化のもとでは、「市場」という新たな主体が、科
学知識と技術の生産、流通、応用を統御し、ときにはそれを左右しかねない。もちろ
ん市場性の有無はこれまでも科学と技術にとって重要なものであった。しかし市場の
力が科学の現場への滲入をますます強め、そのことが伝統的な public science と
private science の区別をより複雑なものにしているのである。
歴史的にみれば、このような「市場化」をもっとも押し進めてきたのは、アメリカの
高等教育機関であった。そこでは、コーエン・ボイヤーの遺伝子組み換えの特許や
80年のバイ・ドール法の成立が示すように、大学のラボラトリーと営利企業はより
直接的な連携を強め、長く「公共的」な知識生産のセンターであった大学が、次第に
知識の産業化の中心となってきている。
本ワークショップでは、個別ケースに関する歴史的アーカイブの調査による検証や、
日米の精密な比較による実証的な研究から、「市場化」が先行する現状での、知識生
産の場としての大学のあり方を論じ直すこと試みたい。報告者のそれぞれは、「市場
化」への評価に関して決して一枚岩ではない。だが、歴史的アプローチをとるにして
も、現状分析を行うにしても、実証的な方法を優先させた論議を行うべきだと考えて
いる。その上で、政策論を超えた、アカデミックな知識論を志向したい。
そこで、この知識生産の「市場化」のモデルともいうべき、シリコンバレーとスタン
フォード大学の連携について研究している同大学のティモシー・ルノアー教授を迎え、
同教授とデータを共有する上山隆大氏、日米の産学連携の比較研究を行っているロバ
ート・ケネラー氏、大学の研究者が知的財産権に向かうべき体制の模索を行っている
隅蔵康一氏とともに、科学の市場化の歴史的プロセスを追いながら、科学知識におけ
る「市場」と「公共性」について再検討を加えたい。
当日は通訳がつく予定である。話題提供は英語と日本語によって行われるが、短いペ
ーパーが事前に配られるので、報告の通訳は最小限としたい。ディスカッションにつ
いては、日本語・英語双方の通訳が可能である。


2.ワークショップの時間割

10:45-11:00 趣旨説明

11:00-12:15 話題提供1(討議時間30分を含む。以下同)
Timothy Lenoir (Stanford University, History of Science)
“Inventing the Entrepreneurial Region: Stanford and
the Co-Evolution of Silicon Valley”

スタンフォード大学はシリコンバレーの中心にあって、大学発イノベーションと産学
連携のモデルとされてきた。しかし逆に、シリコンバレーの企業や研究者が、スタン
フォードの研究の方向性に大きな影響を及ぼしていることも見落すべきではない。基
礎研究機関としての大学と営利に基づく企業の R & D との「共生関係」が、スタンフ
ォード大学とシリコンバレーのダイナミックな進化を形作ってきたことを、様々な学
部の歴史を通して論じる。

Stanford is typically featured as a paradigm example among universities
generating innovations that lead to new technology-based firms; and indeed,
Stanford entrepreneurial activity is often treated as virtually synonymous
with the birth of Silicon Valley. I will argue that while Stanford has
indeed played an important role in shaping the industrial economy of the
region, Silicon Valley firms and inventors have been just as important in
shaping research directions at Stanford. The key to understanding these
dynamic flows between the Valley and Stanford is the role of Federal support
of research and development at major universities as well as the stimulus
provided by federal R&D for industry in technology regions like the Silicon
Valley. Stanford has contributed to multiple waves of innovation in Silicon
Valley by successfully setting its sights on obtaining federal funding for
scientific research that is at the same time industrially relevant. Creating
and sustaining an entrepreneurial culture has been crucial to developing
this synergistic feedback between federally supported research and research
problems of industry, and it has positioned Stanford researchers to make
major advances in science and engineering. A further crucial element in this
synergism is the presence at Stanford of an engineering school, a medical
school, and an environment that encourages interdepartmental and
cross-school collaborative work. Such collaborations have been fundamental
in producing startup companies focusing on convergent technologies (such as
computing and biotechnology, or nanotechnology and communications) that have
been crucial to generating new waves of technological innovation. The cases
presented here will illustrate the emergence of a Stanford/Silicon Valley
co-evolutionary dynamic in the areas of electrical engineering, solid state
physics, and computer science.

       昼食

1:15- 2:15 話題提供2
上山隆大(上智大学、科学史/経済史)
「科学の市場化とリサーチの方向:スタンフォードのバイオメディシン」

第一報告でも示されたようにスタンフォード大学は、シリコンバレーの成功もあって、
大学と産業との幸福な連携のモデルとされ、とりわけ1980年のバイ・ドール法の
成立以降、アカデミアから産業クラスターへと先端技術が流入する、大学発産学連携
の典型と見なされている。この報告ではルノアー教授の報告をフォローアップする形
で、1950年代からのスタンフォード大学の変遷を、57年の医学部の抜本的な改
革にさかのぼりながら追い、そうしたスタンフォード神話を再検討する。
スタンフォードのメディカルセンター、とりわけそのバイオケミストリー学科と遺伝
学科は、DNAXをはじめとする多くの大学発バイオベンチャーを生み出し、70年代か
らの産学連携の中心的役割を担うことになる。しかし、68年のニールス・ライマー
によるOTL の創設とその後のIndustrial Affiliate Program によって産業界との積
極的な連携に行き着くまでには、科学者の中には、公共財としての科学研究に市場原
理を持ち込むことへの多大な抵抗が存在した。
また、バイ・ドール法の成立を産学連携への転換点とすることも正確な理解ではない。
69年の Committee on New Research Policy、いわゆるバクスター委員会の記録には
っきりと示されているように、スタンフォードでは政府資金による研究のパテント化
には、ずっと以前から肯定的な政策が取られていた。しかも、その際には、産業界と
の連携よりも、大学におけるリサーチへの必要性という視点から議論されることも多
かった。
この報告では、経済学者の中で高まっている科学知識の市場化への警鐘を紹介しつつ、
スタンフォード大学に残されているアーカイブ記録をもとに、スタンフォードにおけ
る知的財産の保護政策を振り返る。また、コーエン・ボイヤーの遺伝子組み換え特許
やChiron などのバイオベンチャーの舞台となったUCSF のケースを用いて、アメリカ
における産学連携についてアカデミックな立場から、検討を加えたい。

2:15- 3:25 話題提供3
    Robert Kneller (Research Center for Advanced Science and Technology,
    University of Tokyo, Science and Public Policy/Intellectual Property)

“Autarkic Drug Discovery in Japanese Pharmaceutical Companies: Insights into
National Differences in Early Stage Industrial Innovation−a 2nd look”

日本における製薬産業は、その製薬開発において極度に企業内の知識生産に依存する
傾向をもち、産学の積極的な連携によるバイオテクノロジー技術の開発にしのぎを削
る欧米の製薬業界と大きな違いを見せている。また、その開発が大手の製薬会社に集
中しており、大学と産業界のオープンな情報交換の中で行われていない。製薬産業に
おけるR & D に関する日米の比較調査を通じて、大学からの科学知識波及のあり方を、
知的財産権の問題を含めて検討する。

Industry data and structured interviews with eight leading Japanese
pharmaceutical companies show that drug discovery in the Japanese companies
occurs predominantly in-house. In contrast, European and US pharmaceutical
companies rely more on biotechnology companies for drug discovery.
Personnel policies in the Japanese companies are still geared to on-the-job
training for lifetime employment and the accumulation of company-specific
tacit knowledge. Despite government policies that discouraged innovative
drug development, Japanese companies are discovering innovative drugs at
rates comparable to those of overseas rivals of comparable size.
However, in view of the explosion of new biomedical knowledge, autarkic
innovation may no longer be compatible with global competitiveness.
Analysis of FDA approvals of new drugs substantiates this concern. The
share of newly approved drugs that are Japanese origin fell in 2001-2003
compared to 1998-2000. Whether it is now substantially lower than would be
expected on the basis of Japan’s share of the world pharmaceutical market
depends upon whether drugs originating in universities and biotechnology
companies are included in the comparison. Only if they are, does Japan’s
drug discovery capability appear much less than expected. In other words,
at least in pharmaceuticals, the innovative predominance of US industry
might be attributed mainly to drugs discovered in biotechnology companies
and universities. Data with respect to other technologies also suggest that
innovation in the US occurs to a significant extent in new companies and
universities, whereas almost all Japanese innovation occurs in large
companies. The competitive advantage of Japanese companies may be greatest
in industries where innovation does not rely upon inputs from universities
and independent companies.

       休憩

3:45- 4:45 話題提供4
    隅蔵康一(政策研究大学院大学、科学技術政策)
「大学は知的財産とどう向き合うべきか」

現在我が国においては、知的財産の創造、保護、活用が政策的課題として重視されて
おり、その中で、大学の研究成果を産業に結びつけるための制度設計が進められてい
る。とくに、医薬品開発に代表されるように、一社が市場のニーズを満たすことがで
き、研究開発に巨額の投資が必要な分野では、大学の研究成果を特許権にして産業界
に効率よく技術移転をすることが、イノベーション・システムの構築において重要で
ある。
筆者らが東京大学の研究者1700人以上に対して行ったアンケート調査によると、現在
の研究者の大多数は、「いかなる理由であれ、研究者間の情報交換は制約を受けるべ
きではなく、特許取得に関しても例外ではない」と考える一方で、「機会があれば、
研究成果を特許化したい」と考えている。これからの制度設計においては、このよう
なマインドセットを持つ研究者の要請に応えることが求められる。
大学が研究成果に基づく特許取得を強化することは、科学研究に対してどのような影
響を及ぼすのだろうか。「産業応用できない研究が廃れるのではないか」「学術研究
の成果発表が抑制されるのではないか」「研究者の間に秘密主義が蔓延するのではな
いか」といったことを危惧する声があるが、研究の現場でどのようなことが生じつつ
あるのかを踏まえ、弊害を最小限に抑えるためにはどうしたらよいのかを、考察する。

4:55- 5:25 レスポンス
山中浩司(大阪大学、医療社会学)

5:25- 6:45 総合討議
司 会 山中浩司

7:00- 8:30 懇親会
____________________________________________________________________________
なお、今回のワークショップは、上智大学「医療・技術・社会研究会」との共催です。

科学技術社会論研究会・事務局  
東京大学・中村征樹 nakamura.masaki@nifty.ne.jp
国士舘大学・木原英逸

 

◆科学技術社会論研究会事務局より

Date: Sat, 10 Apr 2004 18:13:40 +0900
From: Hidetoshi KIHARA
Subject: 第39回「科学技術社会論研究会」予告

皆様

「科学技術社会論研究会」では、来る2004年5月22日(土)に、以下の
ワークショップを行います。
ご関心をお持ちの方は、ご予定ください。

一月前になりましたら、詳しい参加要領をご案内いたします。

なお、この夏前には、以下の2つのワークショップがあります。
ご予定ください。
40回 2004. 7.3 「市場の衝撃――現代医療における市場と公共性」
41回 2004.7.24 「環境と開発と公正」(仮)  

この案内は、転送自由ですので、ご関心の向きにお知らせください。
事務局

____________________________________________________________________________

第39回「科学技術社会論研究会」ワークショップ
「産学連携政策の行方を問う―大学の社会的機能を中心として:その2」
     2004年5月22日(土)10:00-18:00
東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室


1.ワークショップの目的
先の、第38回研究会では大学の多様な社会的機能を「ナショナル・イノベーション・
システム」の観点から理解するべく、特に産学連携政策に焦点をあてて批判的検討を
行なった。議論においてはわが国で現在進行中の産学連携政策がアメリカ型システム
の直輸入ではないかという問題提起があり、日米それぞれの産学連携の歴史に遡って
あらためてこの10年来の政策の意味を捉え直す必要が主張された。また、大学の
「多様な」社会的機能の検討を目指しながら、議論が大学のもつ研究機能、知識生産
機能に引きずられ、その視点からの産業との連携に偏りがちだったのではないかとの
指摘もあった。
そこで今回は、産学連携が注目される背景にさかのぼり、産学連携の意義と問題性を
討議する。澤田報告は日本の産学連携史をふまえ、「産のシステム」「学のシステム」
という2つの大学モデル、「研究管理型」「研究支援型」という産学連携の2つのモ
ードの関係から、産学連携の現場で生じる問題を取り扱う。宮田報告はバイドール法
を1980年代の産業政策論争の中で位置付け、さらに戦後50年のアメリカが大学
をナショナル・イノベーション・システムの中でどう扱ってきたのかについて考察し、
アメリカの政策が実は場当たり的であることを明らかにする。西村報告は産学連携政
策の意味を主として「産」の関心の側から捉え直す。中央研究所に象徴される研究開
発のリニア・モデルが有効性を減少させる中で、産学連携が中小、ベンチャー企業と
の関係で有効になってきたという。
大学の社会的機能をどうとらえ、社会制度としてどのように維持するかは、科学や技
術を深く内在させた現代社会にとって本質的な問題である。桑原・後藤報告は、20
世紀における社会-経済システムと高等教育システムの相互に連関した変貌を歴史的
に考察する中で、80ー90年代の大学主導の地域活性化アメリカンモデルを紹介し、
それと対比しながらわが国の場合を考え、将来のあるべき大学像を提示する。三宅報
告は、人材流動化の進行により、必要な技術・知識を既に身につけた新卒者を求める
企業も増えるなど、「教育」という大学の社会的機能に対する学生、産業界の要求が
変化する中で、産業界と大学の教育面における「産学連携」の現状を報告する。
ワークショップでは、可能なかぎり産−官−学関係や高等教育政策も展望しながら、
わが国の産学連携政策を考え直したい。


2.ワークショップの内容

● 桑原雅子・後藤邦夫 (NPO法人/学術研究ネット)
   「知識社会における大学のあり方」
● 西村吉雄 (大阪大学)
   「いまなぜ産学連携か──企業の研究開発の視点から」
● 三宅満紀子 (麗澤大学)
   「大学の教育的機能から見る産学連携――産業界の求める大学における
    情報教育に関する調査より」
● 澤田芳郎(京都大学)
   「大学モデルと産学連携――日本の産学連携史のなかで」
● 宮田由紀夫 (大阪府立大学)
   「産業政策としての産学連携――アメリカに見る可能性と限界」
● レスポンス 永田晃也(九州大学)
● 総合討議・司会 澤田芳郎(京都大学)  
____________________________________________________________________________
科学技術社会論研究会・事務局  
東京大学・中村征樹 nakamura.masaki@nifty.ne.jp
国士舘大学・木原英逸  
以上。


 

◆科学技術社会論研究会事務局より

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皆様

「科学技術社会論研究会」では、来る2004年2月28日(土)に、以下の
ワークショップを行います。
ご関心をお持ちの方にご案内いたします。

準備の都合上、参加の方はお手数でも、10日前までに下記事務局
(担当木原)までその旨ご連絡願います。会の1週間前には、発表梗
概などの資料をお送りします。定員があります。ご承知おきくだ
さい。
本研究会は、焦点の特定テーマを巡るone-day workshopであり、
講演会ではありません。今回のテーマに関して、ご自身の課題、
また発言されたいことなど、一言お書き添え下さい。討議の際の
資料にさせていただきます。

また、終了後、同会場で簡単な懇親会(会費約1000円)があります。
研究交流を深められたらと思います。参加の方はこの点も10日前
までにお知らせください。

この案内は、転送自由ですので、ご関心の向きにお知らせください。

事務局では、随時、研究会企画の提案を受け付けています。
詳しくは、ご相談ください。
事務局

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第38回「科学技術社会論研究会」ワークショップ
「産学連携政策の行方を問う―大学の社会的機能を中心として」
     2004年2月28日(土)13:00-17:30
東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室


1.ワークショップの目的
90年代半ば以降、日本においては産業競争力を回復させる方法として産学連携に
対する期待が高まってきた。大学等技術移転促進法の施行(98年)、日本版バイ=
ドール法と呼ばれる産業活力再生特別措置法の制定(99年)に見られる法制度整備
や、産学官連携システム改革プランなどに伴う予算措置は、大学の研究成果を新規事
業の創出に結び付け、経済活性化のトリガーとして活用すべしとの政策論議を背景と
している。あたかも産学連携推進政策は国家戦略として位置づけられ、「産学連携バ
ブル」とも呼ばれる状況が立ち現れるに至った。
かかる状況において、教育、研究および問題解決のための知識の蓄積に亘る多様な
機能を持つ大学は、専ら新規事業創出のための技術シーズの供給源として位置づけら
れ、その位置づけに沿った研究評価や資源配分のシステムを導入されつつある。本ワ
ークショップは、このように著しく矮小化された機能を意味するものとして用いられ
つつある「大学の社会貢献」「研究成果の社会的還元」などのスローガンを問い直す
ことを目的とする。その際、われわれは、大学の多様な機能を他のアクターとの相互
作用において理解するための枠組みとして「ナショナル・イノベーション・システム
」の概念を共有することからはじめてみたい。いわゆるイノベーションのリニアモデ
ルを否定すると同時に、他ならぬリニアモデルを前提とした「死の谷」のメタファー
を平然と使用するような杜撰な議論が横行する中にあって、これにevidence basedな
政策論議を対峙させ、ナショナル・イノベーション・システムにおける大学の役割に
ついて再検討を試みることが、本ワークショップの狙いである。
本ワークショップは、産学連携の現状と課題を多様な観点から展望するための4つ
の報告を含む。小林報告では、産学連携への取り組みにおける先進事例と目されてい
る東京大学先端科学技術研究センターの試みが紹介される。伊地知報告では、連携に
伴って生じる産学間のコンフリクトに関する分析が行われるとともに、いわゆる利益
相反マネジメントのあり方を客観的に論じる上での課題が提起される。長谷川報告で
は、技術移転機関(TLO)の現状に関する概観が与えられ、その公共機関としての側
面を評価する上での課題が論じられる。篠崎報告では、地域における大学の役割とい
う側面が取り上げられ、大学との共同研究において地域の企業が直面している問題点
が分析される。
これらの報告に含まれる問題提起は、いずれも具体的なデータに基づくものであり、
産学連携政策の評価方法に関する議論のプラットフォームを提供するであろう。その
プラットフォームを出発点として、討論者および全ての参加者の方々とともに議論を
深めてみたい。

2.ワークショップの時間割

13:00-13:30 問題提起
    永田 晃也(北陸先端科学技術大学院大学)

13:30-14:15 話題提供1(討論15分を含む)
  小林 俊哉(東京大学)
「東京大学先端科学技術研究センターにおける産学連携の現状と課題」

東京大学先端科学技術研究センターは、1987年の設立以来、流動性、学際性、国際
性、
公開性という4つの基本理念を掲げ、先端的科学技術分野の開拓と大学システム改革
への果敢な挑戦をその使命としてこれまで様々な先駆的試みを展開してきた。我が国
の大学として初めて知的財産権大部門を設置するとともに、産学連携の重要性を早く
から認識し、承認TLO第1号となったCASTI(先端科学技術インキュベーションセンタ
ー)を株式会社として設立した。このCASTIは現在TLO機関として全国でも数少ない成
功例にあげられるようになっている。またCASTIが承認TLOであるがゆえに手がけられ
ない、インキュベーション、あるいはファンディングなどの事業を担当する別の株式
会社ASTEC(先端科学技術エンタープライズ株式会社)も教員有志の出資で設立して
いる。
先端研はこれらの実績を踏まえ、総合科学技術会議の方針で2001年10月から実施され
ることになった科学技術振興調整費による「戦略的研究拠点」プログラムの最初の対
象に選ばれた。2006年3月までの5ヵ年計画で、国際的に魅力ある卓越した研究拠点構
築に向けて組織運営の改革に着手したところである。「人間と社会に向かう」をスロ
ーガンに大胆な大学改革の試みを推進している。そこに含まれる種々の狙いを達成す
るための仕掛けの一つとして、a) 社会連携/産学連携を推進するオフキャンパス拠
点の設置、b)それ自体では産業移転の困難な大学の研究成果を移転可能な形態にする
「テクノロジー・ビジネス・インキュベーション・プログラム」(TBI)を進めてい
る。本話題提供においてはその実像と成果、展望について紹介を行う。


14:15-15:00 話題提供2(討論15分を含む)
  伊地知 寛博(一橋大学)
「利益相反のマネジメント」

日本でも,「知識基盤経済」の掛け声のなか,主として米国での経験から,大学の知

を活用することに急速に関心が寄せられ,最近では,組織的な産学連携が推進され,
またそのための政策も展開されてきている.しかし,産学連携は,大学の教員・研究
者に,本来なら新たな知識の生産など公益に資する行動を取るべきところを,学外と
のさまざまな関係に起因してコンフリクトをも生じさせてきている.大学での研究か
ら多大な私的利益を得たり,研究やその成果の普及に重点を置くあまり人体に危害を
及ぼしたりしているという事例がすでに生じていることもあり,とくに米国では,産
学連携の振興とともに,この利益相反マネジメントについて,制度においても実践に
おいても先進的な取り組みがなされている.日本でもにわかに関心が寄せられきてい
る.
本報告では,まず,利益相反のマネジメントに関する概念や諸制度に言及したのち,
特許等から得られる公開情報を基にして大学の中で行われている産学連携やその成果
の技術移転について,外(社会)からも観察できることを示す.そして,大学におけ
る研究活動にまつわる問題が生じる可能性についてケース・スタディを通じて提起す
る.
利益相反のマネジメントというのは,まさに,科学的客観性にバイアスをかけないよ
うにして, 大学界・科学界の活動が社会的信頼を確保し,あるいは信託を受けるよう
にするという,科学技術と社会の接点に位置する課題である。が,他方,その関係
(interests)に起因する問題は,事実(fact)ではなく外観(appearance)によって判断
され生起されるものであり,事実を捉えようとする研究の枠組みとは相容れがたい.
実際に,現状では,多様な制度・経験に関する“疫学的”調査・分析による研究がほ
とんどであり,まだ社会論の観点からの検討はほとんど進んでいないのではないかと
思われる.そこで,どのような含意の導出をめざし,どのような研究方法論の展開が
可能か,といった議論につなげたい.


15:15-15:45 話題提供3(討論10分を含む)
  長谷川 光一(未来工学研究所)
「技術移転機関(TLO)の現状と課題」
 
1998年に大学等技術移転促進法が施行され、技術移転機関、いわゆるTLOが設立さ
れ始めた。2003年10月31日現在で、承認TLO36機関、認定TLO5機関が設立さ
れ、
大学や国研の研究成果を民間企業に移転するための活動を行っている。本格的な技術
移転活動が始まってから5年が経過したが、これまでのTLOに関するわが国での議
論は、その経営組織としての健全性を担保しつつ、技術移転活動の阻害要因を如何に
排除するかというものであった。しかし、米国の事例を見ると、TLOの多くは財務
的な健全性を維持していないにもかかわらず、その公的意義を認められ、活動を継続
している。
技術移転活動は、公的機関と民間企業を橋渡しするという役割を担っているが故に、
公的機関としての性格も有している。現在の日本のTLOには、株式会社、有限会社
といった形態をとっているTLOもあるため、財務上の健全性が同時に重視されてき
たと言えるであろう。
TLOの評価は、それほど明確な形では行われていないが、主として財務状況や技術
移転の件数等で行われてきている。社会に対するTLOのインパクトが拡大しつつあ
る現在、TLOの評価をどのように行うかが、本格的に議論されるべきであろう。
TLOの現在の活動およびTLOの効率性に関する、既存の議論について整理し、今
後のTLOの活動を評価する際に、考慮すべき要因について話題提供を行う。


15:45-16:15 話題提供4(討論10分を含む)
  篠崎 香織(北陸先端科学技術大学院大学)
「地域における大学の役割―北陸地域における産業競争力調査の分析結果よ
り」

産学連携の「産」の側の担い手が、大企業中心から地域密着の中小企業中心に変化し
てきているといわれている。本報告では、北陸地域における製造業に属する企業を対
象に実施した質問票調査から得られたデータを統計的に分析することを通して、産学
連携の実態を明らかにするとともに、そこにおける問題点を提起する。
まず、北陸地域産業の属性を概観する。ついで、大学との共同研究を行った経験があ
る企業の特徴を、共同研究未経験の企業との差において明らかにする。大学における
研究成果の社会への還元が期待される中、地域企業は大学に対してどのような機能を
求めて連携しているのだろうか。また、連携した結果としてどのような問題があると
認識しているのだろうか。連携の目的と結果の間に生じている矛盾から、共同研究に
伴う問題点を示し、ディスカッション・ポイントとする。


16:15-17:30 総合討議
      討論者 木場 隆夫(筑波大学)
      司 会 永田 晃也(北陸先端科学技術大学院大学)

17:30-18:30    懇親会  
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科学技術社会論研究会・事務局  
国士舘大学・木原英逸 kihara@pem.kokushikan.ac.jp 
東京大学・中村征樹 
以上。