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医療従事者の良心的行動を支援する会(Some-CA)

http://www.some-ca.org/



日本医大と執刀医のG医師提訴に対するSome-CAの声明

良心的医師に対する日本医大の提訴に関する声明

              2002年1月7日

         医療者の良心的行動を支援する会

 さる2001年12月26日、日本医大と主治医はG医師を名誉毀損で訴え、
損害賠償金として計1億3千万円を請求しました。これは、当該医療機関の
旧態然とした専横体質を露わにする暴挙だと言わざるをえません。

 問題となった事件は、密室で行われた医療行為における重大なミスに
ついて、その場にいた郡家医師が指摘し、患者の死亡後2年あまりを経て
ミスの内容を被害者の遺族に説明しかつ手術に関わった一人として謝罪した
というものでした。
 G医師によれば、20歳の女性の下顎骨骨折整復手術でKワイヤーが
脳内に入ったことを指摘し、その結果X線撮影が行われました。しかし、
主治医はその他には特別の処置を取らずに手術を続行したとのことです。
 この患者は適切な治療を受けることなく2日後に亡くなりました。
この死亡から2年の月日が経過した後、G医師は、医師としてかつ
人間としての良心から、報道機関の仲介を得て遺族に接触し「事実」を
説明しました。そして、日本医大と遺族それぞれの記者会見の後に記者
会見をして、「事実」を公表したわけです。

 確かに日本医大側は医療事故の存在そのものがなかったと主張して
おり、その認識に立てば今回の提訴は首尾一貫しているとは言えます。
しかし、こうした場合に医療機関としてまずなすべきことは事件の
全容の解明であって、「内部告発」をした医師個人を攻撃すること
ではありません。

 周知のように、いまだに上意下達の階層組織を色濃く残している
大学医学部・大学病院の医局体制のもとで、このような内部告発を
することは非常な困難をともないます。個人にとっては、重大な
ミスを素直に認めることだけでもとても難しいうえに、組織からの
圧力で真実を言えないこともよくあることです。この種の内部告発は、
まさに自らの医師としての栄達の道を閉ざすという意味を持つのです。
ところが、日本医大の訴状は、G医師がこのような危険をおかして
「内部告発」に踏み切るに至った動機について、何も語りません。
G医師が一人の真摯な医師および人間として現れているのに比べ、
この訴状には医療に携わるものとして医療事故の根絶をめざして
行動するという責任感がみじんもうかがえないのです。むしろこの
提訴は、大組織が個人に対して過剰な非難と攻撃を行い、医療者の
良心に基づく行為を封殺しようとの意図をもつものにみえます。

 医療従事者の医療上の事故やミスなどにまつわる事実を正しく
告げる行為は「良心的行動」として高く評価されるべきです。
多くは密室で行われる診療行為について患者に真実を告げ、謝罪
するという医療従事者の良心的な行動は、医療の質を改善し、
信頼を高めてゆくために大きな役割を果たします。このような
行為を支援し、促進するために、私たちはこの「医療従事者の
良心的行動を支援する会」を作りました。
 この立場から、私たちは、日本医大が医療従事者としての真摯な
反省の上に立ち、実際に起きたことは何かを患者遺族の納得する
かたちで解明することを期待し、求めます。今回の提訴は、医療
行為の透明性を高めて密室性を改善するどころか、真実を語ろうと
する良心的医師に対する個人攻撃を行うものであり、日本医大は
直ちにこの提訴を撤回すべきです。

 また私たちは、裁判所が、このような両者の道義性の落差に
鑑みて、真の問題を隠蔽する意図をもつこの提訴には厳しく対処し、
被告とされたG医師の精神的・経済的・社会的保護に留意するよう、
期待します。それが、医療の現場でともすれば弱者の立場に置かれる
患者を、医療行為による被害と医療機関の専横から守ることになる
からです。

 私たち「医療従事者の良心的行動を支援する会」は、以上の
趣旨から全力でG医師を支援いたします。


REV: 20160629
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