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「札幌全身性重度障害者介護料助成試行事業」についての要望書


last update: 20160629


「札幌全身性重度障害者介護料助成試行事業」についての要望書

1992年10月1日
札幌市長
桂  信雄 様

要望者代表 (財)北海道難病連
札幌いちご会

「札幌全身性重度障害者介護料助成試行事業」についての要望書

 私たちは障害のある者,患者,高齢者等と家族の団体は,よりよい社会・医療福祉充実のため活動しております。
 市や道また町村の社会・医療福祉関係者の温かなご援助に支えられています。
 私たちの社会生活は不況の風邪が日常生活にも煽っていくなかで値上げする者は限りなく,全国の都市からも札幌の物価高は多く比較されているところであります。
 障害のある者,患者,高齢者等と家族にも,医療費等の負担,在宅介護やその介護料におわれる本人・家族がいます。


 1990年10月より実施されました「札幌全身性重度障害者介護料助成事業」試行事業も3年目を迎えて,当初は介護保障の前進ある事業のひとつでしたが,助成対象者の制限は厳しく対象者も制限されています。介護を必要とする障害のある者,患者,高齢者等に現行試行事業の制限対象や介護時間,対象者数でほとんどのひとが対象になれません。人として生きる権利を最低限切り詰めて生活しなければならない苦しさ,不自由と不安は誰もが命ある限り生きて行くためには,地域格差という理由だけではかたずけられないものがあると思います。
 例えば,制令指定都市の大阪では「全身性重度障害者介護人助成事業」の対象者に92年は月126時間,支給額162,540円で介護人派遣事業を行っています。
 障害等級1級でない障害のある者や病気や老いなどで介護が必要な状態にある障害のある者,患者,高齢者等の介護は誰にも看てもらえないのでしょうか。さらに,在宅で介護する人のほとんどは重い状態の人を看るので四六時中目が離せない介護であり,他人の介護ではできないスキンシップ,人手不足で敬遠されることもしばしば,必然的に3親等以内の家族が介護しているのが実状です。
 つきましては,障害等級の制限の廃止,非課税の制限廃止と介護時間上限の大幅な改正介護時間の単価,3親等以内の親族を介護人として認めること,祝祭日,夜間(深夜)の介護者派遣等をご検討下さいますようお願い申し上げます。


 1991年2月に上記事業の見直しを再度要望いたしました。市当局と要望者との話し合いが行われましたが,その後改善の兆しも見えていません。私たちはいまだに見直されない実態に必要な人々の早急な願いとして要望いたします。

※以上の理由により要望書を提出した結果,10月31日付で次のような回答を得た。

1.要望事項

(1)「助成対象者」について

 1)障害等級の制限を設けないこと

○理由 日常生活上介助を必要とする障害者は1級に限らない。介助の必要性を正しく認識して,必要とする者を対象者とすべきである。

回答
日常生活上,最も介護を必要とする方を対象にホームヘルプサービス事業を補完する意味で開始したものであり,身体障害者手帳1級の方に限らせていただいております。制限の撤廃については考えておりません。

2)前年分所得税の制限を「生計中心者非課税」から「本人非課税」に改めること。

○理由 家族と同居し,家族が就労しているために介助料を受けられず,その結果,日中全く介護を受けられず,家でほとんど動くこともできずに暮らしている人がいる。
介助料を受けるためには家族が仕事に就くことができないというのは全く矛盾している。

回答 本事業は低所得者もしくは所得のない方に助成することにより,事業の目的が達成されるものと考えておりますので,現行通りとさせていただきます。

3)在宅の障害者が入院した場合,入院している期間中についても助成が受けられるようにして欲しい。

○理由 在宅の障害にとって,入院は切りはなせない。「基準看護」の病院であっても看護スタッフの手がたりず,在宅時の介助者に実費で介助を受けている事例がある。上記を踏まえ,入院を在宅にふくめるよう制度内容の改善を早急に行なって欲しい。

回答 入院期間中の助成につきましては,今後,介護料助成の対象に含めるかどうか検討してまいりたいと思います。

(2)「介護人」について

1)3親等以内の親族を認めないという条件を除去すること。

○理由 在宅で生活し他人介護を受けている全身性の障害者はまだまだ少なく,家族の手に頼っているのが現状である。市として実態を十分に調査した上で,「他人介護」だけでなく,「家族介護」についても保障していくべきである。

回答 本事業は,介護の労をねぎらうための助成ではなく,他人介護を受けたときに要する費用を助成するという趣旨のものであります。
 従いまして,介護人については,現行通りとさせていただきます。

(3)「介護時間」について

1)介護時間上限は次のように改めること
「実施要項」第10条の規定の前部を必要とする場合 月165時間
    〃 の2つを必要とする場合 月105時間
     〃 の1つを必要とする場合 月 55時間

(現行) 全部を必要とする場合 月 48時間
2つを必要とする場合 月 30時間

○理由 最も重度の場合1日8時間の介助が必要であることを基本にして時間数を計算した。これはヘルパーが月あたり上限の75時間派遣されたと仮定しての必要時間数である。

※特例として山の手ケア付き住宅の入居者など,外出の介助だけを必要とする人も助成を受けられるようにすること。(最低55時間)

回答 現在の介護時間は,平成2年の事業発足当時に他都市の時間等を参考に決定したものであり,時間数については,今後の検討課題とさせていただきます。なお,要項で定める介護時間の区分につきましても,今後の検討課題とさせていただきます。

<関連>

(4)介助者の日曜,祝・祭日,夜,深夜の派遣について

1)介助者を募集,紹介,調整する事業を札幌市として取り組むとともに,日曜,祝・祭日,早朝,夜,深夜の介助を保障し,現実のものにすること。

○理由 本制度を利用するうえで,介助者の確保は障害が重くなり介助時間が長くなるほど困難となる。24時間必要なときにいつでも介助が受けられる体制が不可欠である。

(5)介助者派遣事業に助成を

 介助者を募集,紹介,調整する事業を民間で行っている団体(札幌いちご会など)の助成を行ってください。

○理由 24時間介助者を組織的に募集,紹介することで,介助者さがしの多大な労力が軽減される。また,札幌いちご会などの団体は,日曜,祝・祭日,早朝,夜,深夜の介助提供も行っている。

回答 本市のホームヘルプサービス事業は,直営のヘルパーに加え,在宅介護支援センターへの委託事業,在宅福祉サービス協会の家事援助サービス事業という体制で行っております。さらに民間サイドでは生協を始め家政婦協会などさまざまな類似事業が展開されております。
 従いまして,介助者の募集等の事業や団体への助成につきましては,こうした関連事業とも十分調整を図る必要があるため,今後の検討課題とさせていただきます。


<回答に対する小山内会長のコメント>
 この事業は,平成5年4月1日から試行という言葉を削除すると市側が決定した。
 要望事項を肯定したり,検討するというあいまいかつ否定的な回答しかないことは大変残念である。市として本格的な事業と位置づけると決定したなら,不備な点は見直すという前向きな答が欲しいものである。
 特に,全身マヒの人が入院した場合1日入院しただけで,介護料のチケットを切ってしまうという市側の態度には飽きれてしまう。
 生活保護を受けている人は入院した際すぐに市側に報告されるが,年金だけで生活している人は,短期入院は知らずにチケットがそのまま交付されていたという例もある。入院しようとしまいと病院側だけで対応しきれない介護が山ほどある。どんな環境になろうと生きているかぎり介護は必要である。
 生活保護や所得にかかわりなくするためにチケットという型をとったのである。そこで所得制限,家族と同居などとということで受られる受けられないとふるいに掛けられるのはおかしい。ぜひ前向きかつ早急に検討していただきたい。


REV: 20160629
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