HOME > 組織 > 障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連) >

障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連)・2003

Liaison Council for Guaranteed Livelihood of Disabled People
http://www9.plala.or.jp/shogairen/

障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連)

Tweet
last update: 20180806


◆2003/03/19 障害者の生活保障を要求する連絡会議→厚生労働大臣
 「支援費の居宅生活支援に関する要望」
◆2003/04/03 『障害連事務局FAXレター』35号
 支援費問題で厚労省から回答を受ける
◆2003/04/22 『障害連事務局FAXレター』36号
 「DPI東京、交渉と委員会報告――研修問題で「半歩」前進か?」
◆2003/05/06 『障害連事務局FAXレター』37号
 障害連・DPI、メーデーに参加/JD正会員懇談会(第二回)行われる
◆2003/05/12 『障害連事務局FAXレター』38号
◆2003/05/29 『障害連事務局FAXレター』39号
 第1回「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」報告
◆2003/05/30 『障害連事務局FAXレター』40号
 DPI東京、居宅生活支援サービスで再び要望書を提出
◆2003/06/03 『障害連事務局FAXレター』41号
 「心神喪失医療観察法案」でJD緊急要望メールを参議院法務委員と厚生労働委員に送る
◆2003/06/04 『障害連事務局FAXレター』42号
 「心神喪失医療観察法案」参議院法務委員会で強行採決
◆2003/06/10 『障害連事務局FAXレター』43号
 障害者(児)の地域生活支援の在り方検討会(第2回)開かれる
◆2003/06/25 『障害連事務局FAXレター』44号
 知的当事者オブザーバーで発言する −第3回検討会開かれる−
◆2003/06/26 『障害連事務局FAXレター』45号
◆2003/07/02 『障害連事務局FAXレター』46号
◆2003/07/03 『障害連事務局FAXレター』47号
 「心神喪失法案」で、要望書ならびに声明を出す−JD、DPI、衆議院法務委員会に対して−
◆2003/07/18 『障害連事務局FAXレター』49号
 第4回地域生活支援検討会行なわれる〜知的当事者などからヒアリング〜
◆2003/07/31 『障害連事務局FAXレター』50号
 第5回地域生活支援検討会行われる−自閉症関係者などからのヒアリング等−
◆2003/08/08 『障害連事務局FAXレター』52号
 JD・日身連など4団体で、厚労省と交渉をもつ
◆2003/09/08 『障害連事務局FAXレター』54号
 「介護保険との統合」話題に出る〜第7回地域生活支援検討会行われる〜
◆2003/09/30 『障害連事務局FAXレター』54号
 "経営優先"か"ニード優先"か、議論のとば口に入る〜第8回地域生活支援在り方検討会行われる〜
◆2003/10/16 『障害連事務局FAXレター』56号
 ホームヘルプサービス事業について論議を深める〜第9回地域生活支援検討会行なわれる
◆2003/10/28 『障害連事務局FAXレター』57号
 財源論議を早急に行うよう当事者委員求める〜第10回地域生活生活検討会行われる〜
◆2003/11/06 『障害連事務局FAXレター』58号
 2003年度障害連総会(拡大役員会)行われる
◆2003/11/14 『障害連事務局FAXレター』60号
 ホームヘルプ予算今年度2割強不足する見通し〜第11回地域生活支援検討会おこなわれる〜
◆2003/12/12 『障害連事務局FAXレター』64号
 「ホームヘルプ予算今年度メドついた」塩田部長語る
 〜第13回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会開かれる〜
◆2003/12/18 『障害連事務局FAXレター』65号
 厚労省、ホームヘルプ等の事業運営の見直し、白紙に戻す
◆2003/12/22 『障害連事務局FAXレター』66号
 DPI東京、ホームヘルプで都福祉局と意見交換する


 
 
>TOP

◆2003/04/03 『障害連事務局FAXレター』35号
 支援費問題で厚労省から回答を受ける

 3月19日(水)太田・伊藤・三澤の3役員は厚生労働省・障害保健福祉部障害福祉課の国松厚生労働事務官を訪ね、下記の要望書について回答を受けた。
 国松事務官は「移動介護と日常生活支援を統合させた全身性障害者に対するトータルな介護サービスについては、検討会の中での今後の課題である」としながらも、現時点では「事業者の問題もあり別々で行っていく」とした。
 また、「通年・長期にわたる外出の除外については、これまでの方針を受け継いだものであり、これも今後の課題である」と平行線をたどった。
 研修問題については、「税によるサービスであり、責任の問題もあり、研修を受けてから、介護に従事してもらわなければならない」と原則論に終始した。
 このままでは、障害の重い人たちが地域社会の中で自立生活をしていく上で支援費はとても使い勝手が悪いものとなってしまう。今後さまざまな取り組みが求められる。

2003年3月19日
厚生労働大臣
坂口 力 様
障害者の生活保障を要求する連絡会議
代  表 太田 修平
事務局長 伊藤 雅文

支援費の居宅生活支援に関する要望

 貴職におかれましては、日頃より障害者施策の充実にご尽力されていることに心より敬意を表する次第です。
 4月の支援費制度実施に伴って、補助金の交付基準の設定をめぐり、多くの仲間たちが動揺しましたが、貴省に対し強い働きかけを行い、その結果「現行のサービス水準の維持」ということが表明され、一応安堵しています。
 ところで、その支援費制度の居宅生活支援サービスの「日常生活支援」と身辺介助を伴う「移動介護」がそれぞれ独立した類型となっていることに対し、全身性障害者の社会参加と社会的自立の確立に向けた介護サービスの必要性を訴える立場から考えたとき、大きな問題を感じています。
 外出や社会参加に関して、計画的におこなえる場合とは限りません。日常生活の延長として外出や社会参加があると捉えていくことの方が自然といえましょう。
 新障害者基本計画の中心理念は「施設から地域社会へ」というものです。「地域社会」とは、単に在宅で暮らすことを意味しないはずです。日常生活の中で様々な社会関係を取り結んでいくことが、「地域社会で暮らす」ことといえます。
 外出や社会参加を容易に可能とさせる総合的な介護サービスが、特に全身性障害者には求められています。
 また「移動介護」について、「通年かつ長期にわたる外出」を除外しているのは、全身性障害者の社会参加、市民としての活動を阻害しているものであり、根本的な見直しが求められます。「家にいるならば介護者を派遣するが、社会参加ならば派遣しない」という発想になりかねません。新障害者基本計画の理念とは相容れないものです。
 気がかりなことがもうひとつあります。それはこの3月までに介護に従事した人については、都道府県が認めれば「みなし登録」として研修の必要がありません。ところが、4月以降については、一定の研修を受けなければ、介護に従事することができなくなります。介護人の不足が懸念され、全身性障害者の社会参加や社会的自立がこのままでは危ぶまれ、何らかの工夫が求められます。
 以上の認識の下、居宅生活支援サービスのあり方について、特に下記の事項について要望させて頂きます。

1. 今年4月に実施される支援費制度を、全身性障害者の社会参加と社会的自立を実現させていくものとしていくため、居宅生活支援サービスの「日常生活支援」と身体介護を伴う「移動介護」を区分けせず、一つの類型とすること。
2. 「移動介護」について「通年長期にわたる外出」を除外する規定を削除すること。
3. 今年4月以降新しく介護に従事する者の研修のあり方については、研修を受けることを前提に介護に従事することを認めるなど、現実的な工夫を行ない、全身性障害者の社会参加と社会的自立を可能とさせること。
以上

【事務局】千代田区神田駿河台3-2-11総評会館内
tel 03-5296-8028
fax 03-5256-0414

 
 
>TOP

◆2003/04/22 『障害連事務局FAXレター』36号
 「DPI東京、交渉と委員会報告――研修問題で「半歩」前進か?」

DPI東京行動委員会事務局
 去る4月18日(金)DPI東京行動委員会とTIL(東京都自立生活センター協議会)は、支援費問題で、東京都福祉局在宅福祉課との交渉を持ちました。午前10時から、東京都障害者総合スポーツセンターで行われ、DPI東京・TIL合せて約40名が参加、福祉局からは高原在宅福祉課長と小川係長など4名が出席しました。
 交渉ではこちら側が要望を出し、福祉局からも「全身性障害者に関するホームへルプサービス取扱要領(案)」が示されました。
 要望項目の3、の研修問題で大半の時間が割かれました。当初高原課長は「柔軟的な対応」は無理との回答を繰り返していましたが、「どうやって介護を確保していくのか、行政として責任を持って考えてほしい」という鋭い追及をする中で、「皆さんの意見を踏まえて検討したい」との回答を何とか引き出すことができました。
 交渉後、行動委員会を持ち、福祉局が示した取扱要領(案)についても意見を出していくことになりました。
 この意見については早急に出していく必要があり、今週前半に、DPI東京の太田まで意見を送ってもらうことになっています。よろしくお願いします。
 なお、要望と回答を下記に示しました。また取扱要領(案)はその次に示してありますのでご参考にして下さい。

【要望と回答】
1、 従来の「全身性障害者介護人派遣事業」を継承するような、社会参加・身辺介護・家事援助など、類型に分けない全身性障害者に対するトータルな介護サービスを施策化(制度化)すること
回答−都としては、同じ考え方に立っており、国に対して同様の要求をしている。ただ、団体によっては、類型をきちんと区別してほしいという要求もある。

2、 このサービスは、必要があれば、身体介護、移動介護などの他のサービスを組み合わせて利用することを可能にし、居宅生活支援全体の上限を設けないこと。
回答−居宅生活支援全体の上限は定めていない。ただ日常生活支援がつくられた経過から、身体介護と日常生活支援を組み合わせての利用は、原則的にできない。
 
3、 この4月以降の新規の介護人の資格要件については、都が「全身性障害者介護人派遣事業」をつくった当初の原点に立ち返り、柔軟な対応をし、研修を受けていないという理由で、介護人を推薦できないという事態がおきないようにすること。
回答−税を使ったサービスであるので、研修を受けてからでないと、介護に従事することは難しい。「研修を受けることを前提に登録がされたときの柔軟的対応」については、事業者等との協議を行うなど、検討をしていきたい→(「このままだと介助に空きがあいてしまう」とのDPI東京の指摘を受けて)見なし登録については今年度も行い、活動内容は有償無償を問わない。

4、 このトータルな介護サービスの中に、社会参加の支援という観点から、就学の支援、旅行などを含め社会参加を総合的に支援する内容とすること。
全身性障害者の現在の生活状況、社会参加、エンパワーメントなどという様々な側面から、地域社会での自立生活センターでの活動が重要な役割を果たしていることは、見逃すことはできない。したがって自立生活センターを含めたNPO等社会貢献を目的とした市民団体で活動する障害者の社会参加支援は必要不可欠なものといえ、「通年・長期にわたる」の解釈に検討を加え、このサービスによる介護を受けられるようにすること。
なお、医療類似行為や入院時の派遣についてもこれまでどおり認めること。
回答−都として新しい実施要領を出し、社会奉仕活動や、宿泊旅行もできるようにした。報酬を受けている場合は無理。医療行為についてはこれまで通り。

5. 障害の状況が旧制度の「全身性障害者介護人派遣事業」のサービスの対象となる、地域社会での自立生活を営んでいる全身性障害者、あるいはこれから営もうとする全身性障害者の介護サービスについて、2003年4月以降も現状に比べ同程度以上の保障がなされるようにしていき、必要であれば、都として財政支援をおこなうこと。
回答−サービス水準が落ちないように指示している。

6、全身性障害者に対するトータルな介護サービス施策、あるいは、「日常生活支援」「移動介護」等の資格要件を満たした自薦介護人の登録に際して、利用者が希望する指定事業者が存在しない場合は、従来どおり、利用者が居住する区市町村に登録を行うことができるようにすること。
回答−サービス提供事業者がない場合は、市区や社協が事業を行うように指示している。具体的な問題があれば出してほしい。


全身性障害者に関するホームへルプサービス取扱要領(案)
1 目的
 この取扱要領は、「心身障害者(児)ホームヘルプサービス事業等運営要綱」に規定するもののほか、全身性障害者に対するホームヘルプサービスを円滑に実施するために必要な事項を定め、もって、全身性障害者の自立と社会参加を支援することを目的とする。

2 実施主体の責務
(1) 事業の実施主体である区市町村は、予算の範囲内において、全身性障害者が地域社会で自立した生活を送ることができるよう、必要かつ適切なホームヘルプサービスを提供する。
(2) 区市町村は、サービスの内容及び支給量を決定するに当たっては、全身性障害者の心身の状況、生活状況等を十分に勘案して決定する。

3 外出時における移動の介護
(1) 余暇活動等社会参加のための外出には、教養、娯楽等の余暇活動のほか、福祉その他の社会奉仕活動を含む。
(2) サービスの提供は、原則として1日の範囲内で用務を終えるものとするが、用務の性質、内容に鑑み、区市町村長が必要と認める場合においてはその限りではない。

4 日常生活支援と他のサービス区分との関係
(1)日常生活支援については、身体介護や家事援助等の援助が継続的に行われることを総合的に評価して設定しており、原則としては、これに加えて身体介護及び家事援助を利用することはできない。
ただし、全身性障害者が希望する時間帯に、事業者から日常生活支援としてのサービスを受けることが困難な場合には、その範囲内において身体介護等のサービスを利用できる。なお、その場合は、同一の事業者からのサービスの提供を受けることはできない。
(2)また、全身性障害者であっても、日常生活支援に代えて、食事や入浴等の時間帯に身体介護を、調理や洗濯等の時間帯に家事援助サービスを希望する場合には、それぞれ必要な時間内について、身体介助と家事援助の支援費を算定できる。

5 通院、入院治療時における介護
日常生活支援には、通院時の介助を含むものとする。
 また、全身性障害者が入院治療を要する場合において、コミュニケーションや介護方法に起因し、入院継続に著しい支障があるときは、当該医療機関が付き添いを拒まない場合、日常生活支援としての派遣をすることができる。

6 痰の吸引その他の医療行為
 全身性障害者の状態に急変が生じた場合等で、医師又は看護師等による速やかな対応が困難であるとき等において、ホームヘルパーが緊急かつ止むを得ない措置として、痰の吸引その他の医療行為を行うことは、それが反復継続する意思をもって行われたものでない限り、医師法に違反するものではない。

 
 
>TOP

◆2003/05/06 『障害連事務局FAXレター』37号

障害連・DPI、メーデーに参加

 今年のゴールデンウィークは、イラク戦争やSARSなどの影響により海外に出る人も少なかったようです。
 さて、障害連とDPI日本会議は、労働者の祭典、連合主催のメーデーに今年も参加しました。
 今年のメーデーは、「平和、人権、環境、労働、共生」をテーマに、NGOやNPOとの連携が掲げられ、各NGO・NPOはテントを出し、自分たちの活動紹介や、販売活動を行いました。
障害連は「おからクッキー」の販売活動を行いました。売れ行きの方はまあまあというところでしたが、快晴に恵まれ、気持ちの良い1日でした。
 4月22日に行われたメーデー前夜祭では、アフガニスタンなどに対する支援活動を行っている市民団体の活動などが紹介されました。

JD正会員懇談会(第二回)行われる

 4月25日(金)、JD正会員懇談会の二回目が行われました。出席者は20名を越え活発な議論が交わされました。「あり方検討委員会」の報告の中では、"行動するJD"の継承、赤字財政などの改革問題、さらに国際フォーラムの成功を踏まえた新しい障害者運動の枠組みの構築が訴えられました。また、委員会活動の活性化と日常活動の重要性が指摘されていきました。これらの提起と参加者の議論を踏まえての、6月7日(土)の協議員総会は重要な場となるであろう。

 
 
>TOP

 DPI全国行動委員会行われ、発展的解消となる
 去る5月10日(土)、新宿区戸山社会教育会館でDPI全国行動委員会が行われた。
 障害連からは春田副代表と丸山幹事が出席した。委員会では、全国68ヶ所で集会が行われ、どの地域での集会でも予想以上の参加者があり成功に終わったとの報告があった。
 このDPI全国行動委員会は、昨年札幌で行われた「DPI世界会議」を成功させる目的で、委員が分担し、各地をまわり、当事者運動の活性化させようと集会を行い意見交流を交わしてきた。特に支援費制度問題の関心はどこでも高かった。
 10日(土)の委員会では、この活動の成功を確認し、ひとまず会計等をDPI日本会議に委譲し、DPI日本会議として地域活動を新たに繰り広げていくということになった。DPI日本会議の地域ブロック化を図っていくことや、支援費制度の全国的なアンケートを行っていく等の意見が出され、方向性が確認された。


JD、基本法改正問題で八代英太議員(自民)に申し入れ
−福島豊議員(公明)にも申し入れる−
 新聞報道で、自民党など与党間で障害者基本法の改正の議論がはじまり、今国会での提出をめざしているということがつい最近明らかにされた。JDとしては基本法の改正に留まるのではなく、障害者差別禁止法を制定すべきであるという方向で、政策委員会・理事会の考え方がまとまっている。
 そのことを踏まえ別紙の要望書をまとめ、5月12日(月)八代英太衆議院議員、福島豊衆議院議員(急用で田島秘書が対応)に、河端代表、藤井常務理事、太田政策委員長が申し入れた。
 八代議員は「考え方はよくわかるが、与野党の議員や関係者の理解を得なくてはならない。基本法の理念の中で"障害者を差別してはいけない"という文言を入れ、差別禁止法についてはコンセンサスの動向を見つつ、次の機会で行うことになるだろう。しかしJDの要望の主旨は基本法の改正の中で出来る限り活かしていきたい」と述べた。
 一方、基本法改正問題自体、その行方は不透明で、与党間の調整も早期には難しいという情報も流れている。いずれにしてもJDとしては障害者差別禁止法の制定を最終目標に他団体との共同行動を考えている。



(別  紙)   
JD発 第03−8号
2003年5月12日
自由民主党 障害者に関する特別委員会 
委員長  八代 英太 様

                                                    日本障害者協議会     
             代表  河端 静子

障害者差別禁止法につながる条項の新設を含む
障害者基本法の改正に関する意見

 障害者の完全参加と平等のための取り組みに敬意を表します。
 2002年11月の貴職からの障害者基本法の改正に関する問い合わせに対して、本会の考えは以下の通りでありますので、よろしくお願いいたします。
 なお、本協議会をはじめとする障害者団体に進行状況を知らせ、その意見を反映させつつこの取り組みを進められるようお願いいたします。

1 障害者基本法に障害者差別禁止に関する規定を設け、それに対応する実体法を新たに制定すること
 1993年の障害者基本法改正の際大きな議論となったことで、その後、同年の国連決議「障害者の機会均等化に関する標準規則」の採択がなされ、過去10年に世界各国で障害者差別禁止法が制定されてきたことや、現在国連で障害者差別禁止を含む障害者権利条約制定の準備が進んでいること、また日本政府も障害者差別の禁止を含む人権擁護法案を準備するなどその必要性を認めていること、そして昨年10月のビワコ・ミレーニアム・フレームワークにおいても障害者差別禁止の法的整備が強調されていることなど、すでに十分すぎるほどの条件が整っています。日本における障害者の現実は、その多くが未だに無権利状態と差別の中に置かれており、この問題を解決しえる新たな法的な枠組みが急務です。それには、障害者差別や障害(者)の定義、対象となる分野(雇用、教育等々)の規定、障害者差別が生じた場合の是正や救済の手続き規定、障害者差別を行った者への罰則規定など、詳しい具体的な条項が多数必要となります。
 障害者基本法に「差別禁止条項」の挿入の議論もあるようですが、同法は、文字通り障害者施策に関する基本的な理念や国等の基本的な責務および各分野の施策の方向を定めるものであり、基本法に障害者差別の禁止を盛り込むだけでは具体的な効果は期待できません。

2 障害者団体への支援と政策決定へのその参加を位置づけること
 1993年の障害者基本法改正で中央障害者施策推進協議会に障害者の参加が規定されたものの、その後の審議会等の統廃合により同協議会自体が廃止されてしまいました。国連の諸決議が各国に促しているように、国・地方の政策の立案・決定と評価の過程に障害者団体が参加することは、効果的な政策の不可欠の前提であり、すでに多くの先進国・発展途上国を問わず実施されています。わが国でも多くの場合に実施されるようになりましたが、このことをより明確に位置づけるためにも基本法で、障害者基本計画策定時だけでなくより一般的な形での明記が必要です。
 同時に、障害者団体が全国の障害者・関係者の要求と意見をまとめ、質の高い政策提言を行い、かつ広く国民全体にその内容を理解してもらうためには、障害者団体に対する活動費用の助成や十分な情報の提供が必要です。この点についても障害者基本法に規定する必要があります。なお、障害者団体の活動費の公的助成は以前から国連が呼びかけ、すでに多くの国で実施されています。
 加えて、障害者の完全参加と平等の実現を推進する中心機関として、内閣府に男女共同参画会議に準じた「障害者平等参画会議」(仮称)を設置することが望まれます。
                                      
3 社会参加の権利の明記と努力義務の削除
 さらに、1993年以降の障害者施策をめぐる理念の進展を反映して次の改正が必要です。
 第1に、第3条2項「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」は「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する権利を有する。」との内容にするべきです。
 第2に、同じく第3条1項「すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。」の「処遇」を「環境と支援」というように改める必要があります。
第3に、障害者に社会参加努力義務、その家族に障害者の自立促進努力義務を課している第6条は削除されるべきです。障害者は一市民としての通常の義務と権利を持つものであり、障害者であるが故の特別の法的な義務を定めるべきではありません。
第4に、必要な施策を利用する障害者の権利を明確にするために、「第二章 障害者の福祉に関する基本的施策」の各条項に、「障害者は・・・の施策を受ける権利を有する」という内容の項を追加することが望まれます。
要するに権利主体としての法的な位置付けを強化し、明確にしていく必要があります。 

4 「親亡き後対策」の発想の終結
 第24条の、父母などが自分たちの死亡後の障害者の生活を懸念する必要がないように配慮する旨の規定を削除すべきであると考えます。これは親・兄弟が生きている間は家族扶養義務にもとづいて世話をするべきだという古い時代の考えによるものです。これを根本的に転換して、成人になった障害者は、親が生きていてもいなくても、ひとりの独立した市民として生きていくことができるように、経済的・社会的支援の施策の整備こそが重要です。

5 障害者の定義を見直すこと
 現在の障害者の定義(第2条)は「精神障害」を明確に位置づけた点で旧法より進んだものですが、依然として問題があります。
 いかなる種類であれ、障害にともなって日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者のすべてを包括的に対象とするべきです。

6 入所型施設・病院から地域への施策の促すこと
 新しい障害者基本計画では、ノーマライゼーションの理念のもと、施設から地域への移行の推進を強調していますが、その基本的な考え方を本法の総則部分に盛り込む必要があります。
 また、第11条の「自立することの著しく困難な障害者について、終生にわたり必要な保護等を行う」などの表現を改めるとともに、「どんなに重い障害をもっていても、人権が守られ、自己選択が尊重され、生き生きと社会参加できるように可能な限りの支援を保障しなければならない」などの内容を規定することが望まれます。

7 支援費制度への対応
 第17条(措置後の指導助言等)は、このままでは支援費制度の時代にふさわしくないものとなっています。措置も一部残っていることも考慮しつつ、国と地方公共団体が福祉サービスの利用を開始した障害者に対して、開始後も継続的に責任を持って支援をするように、新しい規定が必要です。

8 都道府県・市町村障害者計画の義務化
 障害者施策においても地方分権化が進む今日、地方自治体がニーズを調査し、障害者・関係者の意見を聞きつつ社会資源を計画的に整備することはますます重要となっており、これらの計画を義務化すべきです。

9 地域格差の縮小
 地域による障害者施策の質と量の格差が問題となっています。このため人口移動も珍しくありません。福祉用具の給付率も数倍から10倍の都道府県・市町村格差が報告されています。同じ制度でも認定と適用をめぐるばらつきが指摘されています。支援費制度の導入とともにこれが拡大する可能性も強まっています。
 したがって、国の責任で障害者施策に関する地方格差について総合的にモニターし、その情報を公開する等、極端な格差については、当事者の意向を反映したミニマム保障プランを示し是正につとめる、旨の規定を設けるべきです。          

以 上


【事務局】〒162-0052  東京都新宿区戸山1-22-1
(財)日本障害者リハビリテーション協会内
TEL 03(5278)2346  FAX 03(5278)2347
URL:http://www.jdnet.gr.jp E-mail:office@jdnet.gr.jp
(担当 小野、中島)

(なお公明党にも同主旨の要望書を提出した)

 
 
>TOP

◆2003/05/29 『障害連事務局FAXレター』39号

 第1回「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」報告

                           太田 修平

 1月のホームヘルプサービス上限設定問題を解決するにあたり、厚生労働省と障害者4団体の間で確認されたこととして、利用者を交えたかたちで、ホームヘルプサービスなど、地域生活支援の在り方についての検討会を設置することがあった。
 5月26日(月)その第1回目の検討会が行われた。日本障害者協議会からは、政策委員長の太田が検討委員に、DPI日本会議から中西正司氏が加わった。

 この検討会はこれまでに類をみない障害者運動の盛り上がりと連帯、それに基づく厚生労働省との合意から誕生した経緯もあり、関係者の注目度も特別に高い。検討会は公開されることになり、この日も約70名の傍聴者があり、入れない人たちもいたくらいである。

 さてこの日はまず座長に江草安彦氏((福)旭川荘理事長)、座長代理に板山賢治氏((福)浴風会理事長)を選出した。事務局には社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課があたる。
 板山座長代理から「今後議論となるので、この検討会で精神障害者の施策についてどのように取り扱っていくか確認した方がよい」との提起があった。これに対して事務局は「精神障害者に対する地域支援については、別の場で検討しているので、ここでは身体障害者・知的障害者を対象にし、相互連絡・情報交換をしながら行なっていきたい」と答えた。これに対して太田や中西委員は「精神障害者についても、本来は対象に加えられるべきである」と発言した。
 さらに中西委員は今後の検討会の進め方について提起し、特に「知的障害者本人が委員として参加していないのは問題であり、委員に加えるように」と要望した。事務局は「委員人数上の問題がある」としたが、検討過程において「当事者からのヒアリングは考えていきたい」とし、中西委員の提案は座長と事務局で協議することになった。

 検討会の今後の進め方について事務局は「2年間くらいかけて幅広い立場から障害者の地域生活支援のあり方について議論をしてほしい」とした。今後1ヶ月に1〜2回のペースで開催される予定となっている。6月〜8月は、委員の意見交換、先進事例のヒアリング、
関係者からのヒアリングなどが行なわれ、9月に各論に入る予定となっている。

 なおこの検討会の委員は次の通りである。
・ 有留武司(東京都福祉局障害福祉部長)・安藤豊喜((財)全日本聾唖連盟理事長)・板山賢治((福)浴風会理事長)・江草安彦((福)旭川荘理事長)・大熊由紀子(大阪大学人間科学部教授)・太田修平(日本障害者協議会理事・政策委員長)・大谷強(関西学院大学経済学部教授)・大濱眞((社)全国脊椎損傷者連合会理事)・大森彌(千葉大学法経学部教授)・京極高宣(日本社会事業大学学長)・笹川吉彦((福)日本盲人会連合会長)・佐藤進((福)昴理事長)・高橋紘士(立教大学コミュニティ福祉学部教授)・竹中ナミ((福)プロップ・ステーション理事長)・谷口明広(自立生活支援センターきらリンク事務局長)・中西正司((NPO)DPI日本会議常任委員、全国自立生活センター協議会代表)
・ 早崎正人(大垣市社会福祉協議会在宅福祉サービス推進室長)・村上和子((福)シンフォニー理事長)・室崎富恵((福)全日本手をつなぐ育成会副理事長・地域生活支援委員会委員長)・森貞述(高浜市長)・森祐司((福)日本身体障害者団体連合会事務局長)・渡辺俊介(日本経済新聞社論説委員)【五十音順、敬称略】

 ところでこの日の検討会に先だって、1月のホームヘルプサービス上限設定問題からの懸案事項であった、日本障害者協議会やDPI日本会議などをはじめとする、主要障害者団体と坂口厚生労働大臣との会見が実現した。坂口厚労大臣は「障害者の介護サービスの介護保険への統合については白紙の状態」とし、「検討会で幅広く議論してほしい」と語った。


 cf.「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」

 
 
>TOP

◆2003/05/30 『障害連事務局FAXレター』40号

DPI東京、居宅生活支援サービスで再び要望書を提出

 支援費問題で、混乱が続いているが、国レベルでは障害者団体の代表者が参加するかたちで、懸案事項の「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」が5月26日(月)スタートした。
 さて、DPI東京行動委員会が東京都福祉局とこの間数度にわたり協議・交渉を重ねている。さる5月21日、DPI東京行動委員会は、東京都自立生活センター協議会との連名で下記の通り要望書を提出し、現在交渉日程を調整している。

                                2003年5月21日
東京都福祉局     
局長    川 崎  裕 康  様

DPI東京行動委員会       
代表 横山 晃久     
東京都自立生活センター協議会
代表 中西 正司     

全身性障害者の居宅生活支援サービスについての要望

 貴職におかれましては日頃より東京都の障害者施策の向上にご尽力されていることに、心より敬意を表する次第です。
 さて去る4月18日貴職から提示された「全身性障害者に関するホームヘルプサービス取扱要領(案)」に関しまして、意見を申し上げると同時に、重要事項について再度要望させていただきます。
 まず私たちが問題と捉え、指摘させていただきたいことは、支援費制度が実施され1ヶ月以上の月日が経ちましたが、区市町村によって運用に大きなばらつきがあることです。私たちが都の「全身性障害者ホームヘルプサービス取扱要領」に期待するところは、全身性障害者の社会参加・社会的自立の観点に立った、必要なサービスをきちんと受けられるようにするための指針的役割です。それはどの区市町村に住んでいようと保障されなければなりません。今回の「取扱要領(案)」が、この問題を解決しえる指針であるかは疑問の多いところです。
 都におかれましては旧来の「全身性障害者介護人派遣事業」にみられるように、全身性障害者の介護施策については、国及び他の自治体をリードされ、国の制度や他の自治体の施策に大きな影響を与えられてきました。今回につきましても従来通りの指導力を発揮されることが強く求められています。
 この間数度にわたり全身性障害の居宅生活支援サービスのあり方について、交渉を持たせていただきましたが、介護人の研修問題など重要な問題について合意をみるに至っていません。
 つきましては、上記の認識のもと、「取扱要領(案)」に関する意見と、重要課題について、下記の通り再度要望させていただきます。



T.「全身性障害者ホームヘルプサービス取扱要領(案)」について

1.「2 実施主体の責務」という項に、「予算の範囲内において」とありますが、これは敢えて明記するまでもないことで削除すること。

2.「3 外出時における移動の介護」の(1)の項では、「福祉その他の社会奉仕活動を含む」とあるが、明確に例示として「自立生活センター等での活動など」を入れること。

3.同じく「3 外出時における移動の介護」の(2)の項で、宿泊を伴う介護が可能であることを示唆しているが、これをより明確にさせていくとともに、現実的には"移動介護"は単価が高く、区市町村においては認め難いと考えられるので、「移動」という表現を削除すること。

4.「6 痰の吸引その他の医療行為」の項で、「それが反復継続する意思をもっておこなわれたものでない限り」との表現がされているが、現状の医療類似行為ができなくなるおそれがあり、削除すること。

5.全体を通して、どの立場からの規定かを統一すること。例えば、3の(2)は事業者の立場で、表現されているが、4の(1)は利用者の立場での表現となっている。

U.その他の重要課題について

1. 介護人の資格要件、研修問題については、介護を受ける全身性障害者の生活に支障をきたすことがないようにするため、研修を受けることを前提にした居宅生活支援事業者における介護活動を容認するなど、柔軟的な必要な施策を行なうこと。

2. 区市町村によっては、実質的なサービスの上限が定められているところもあり、社会参加・社会的自立が可能となるように必要なサービスをきちんと受けられるように、財源保障を含め、必要な施策を行なうこと。

3. 従来の「全身性障害者介護人派遣事業」を継承するような、社会参加・身辺介護・家事援助など、類型に分けない全身性障害者に対するトータルな介護サービスを施策化(制度化)に努めること。その際、そのサービスの単価はトータル介護サービスにふさわしい金額に設定すること。
以 上
                                      

障害連と連合、政策協議を行う

 5月20日(火)障害連は、連合・政策福祉局小島茂局長などと意見交換会を行った。障害連から太田、春田、伊藤、三澤の4役員が出席した。
差別禁止法制定問題や、無年金障害者問題、介護問題など広範にわたった。「障害者介護と、介護保険については慎重な検討が必要」や「無年金問題は学習会の開催など具体的な動きが重要」あるいは「あいまいなかたちでの障害者基本法の改正には問題」などを障害連として指摘した。連合もそれなりに理解を示してくれたが、特に障害者の年金問題は年金審議会の議題にのぼってなく、「障害者団体としての何らかの動きが必要」との認識を示した。
6月10日(火)・11日(水)に連合の「制度政策討論集会」があるが、太田が参加する予定である。

 
 
>TOP

◆2003/06/03 『障害連事務局FAXレター』41号

「心神喪失医療観察法案」でJD緊急要望メールを
参議院法務委員と厚生労働委員に送る

いよいよ、6月3日(火)にも参議院の法務委員会で「心神喪失医療観察法案」が与党による強行採決があり得るという情報が流れる中、日本障害者協議会(JD)は、下記の要望を参議院法務委員と厚生労働委員全員に緊急にメールで送った。
                                       
JD発第03−12号
2003年6月2日

(宛先は、参議院法務委員と厚生労働委員の全員です)

日本障害者協議会
代表 河端 静子

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の
医療及び観察等に関する法律案」の廃案を求める要望

 貴職におかれましては社会福祉施策の推進、ノーマライゼーション社会の実現に向け、ご尽力されていることに心より敬意を表する次第です。
 さて昨年12月「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」が、私たち多くの障害者団体の反対や廃案を求める声をよそに、衆議院法務委員会で強行採決され、本会議で可決されたことに対して、本協議会といたしまして憤りをもって抗議声明を出しました。障害者施策の分野で強行採決されることは極めて異例であり、政府与党が、「何らかの意図をもっているのではないか」との疑念を抱かれても仕方がありません。
 今国会におきまして、この法律案が参議院に送付され、審議が進められていますが、その過程でこの法律案の問題点がますます明らかにされております。「審判」において通常の刑事被告人であれば守られる司法手続き上の諸権利を認めていないことなど、これまで多くの問題点が様々な角度から指摘されています。そして何よりも触法精神障害者の再犯防止を目的とした予防拘禁を可能とする差別的で人権を大きく制限する法律案といえます。さらにこの審議を通じて、日本精神科病院協会による政治献金問題も明るみにされ、精神障害者本人の立場にたってつくられた法律案とは到底言い難いことが証明されつつあります。
 仮にこれが成立する事態になれば、日本の障害者施策、社会福祉分野に大きな禍根を残す結果となることは明白です。 
本協議会は再三にわたって、他の障害者分野に比べて、精神障害者が地域社会で人間らしく生きることを可能とさせる社会サービス、福祉施策の質と量が著しく遅れており、まず地域福祉サービスと地域医療システムの充実が先決課題であることを強力に訴えて参りました。
 以上の認識に立ち、下記の事項について強く要望いたします。



1. 現在参議院で審議されている「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」を廃案にすること。

2. 社会的入院の解消など、精神障害者が地域社会の中で人間としての尊厳をもって生活することを可能とするような、地域福祉サービスや地域医療システムの充実を早急に実行すること。
                                  以 上

【問い合わせ先】日本障害者協議会事務局
〒162-0052 東京都新宿区戸山1−22−1
日本障害者リハビリテーション協会内
TEL 03-5287-2346 FAX 03−5287-2347
E-mail office@jdnet.hr.jp
URL http://www.djnet.gr.jp


第19回 DPI日本会議総会行われる

 5月31日(土)、6月1日(日)の二日間にわたって、約200名の参加者のもと、DPI日本会議は総会とシンポジウムなどを開催した。

 一日目は総会で、運動方針の論議や常任委員の選出などの議事を行った。常任委員には障害連から丸山武幹事が立候補し、承認された。運動方針は、障害者差別禁止法の制定や、障害者権利条約への対応、支援費問題に端を発した地域生活支援のあり方などなどに、力点が置かれている。

 ホームヘルプ問題で上限設定問題もさることながら「吸引などの医療行為についてどう対応していくのか」との質問もあり、執行部は「必要な介助を受けられるようにしていくのがDPIの基本的姿勢」とし、今後検討していきたいと答えた。

 二日目は「DPI世界会議の意義とこれからの運動課題」をテーマにシンポジウムが行われた。精神障害者施策が他の障害分野に比べて著しく遅れていること、あるいは難聴者は情報障害を受け、人間関係に大きな影響を及ぼしていること、また知的障害運動も大きな転換期にあり、当事者が運動の主体であることを周囲や親自身が認識していくことの必要性などが指摘された。
 三澤事務局長は「DPI世界会議札幌大会の成功を受け、日本の障害当事者者運動がDPIに結集し、障害者差別禁止法の制定や、地域生活支援システムの構築に向けた大きな運動を展開していくことが重要な時期である」とシンポジウムをしめくくった。

午後は、「権利確立への道―世界の障害者権利条約・日本の障害者差別禁止法」、「地域自立生活支援のあり方―支援費制度・アクセス(移動)等」、のふたつの分科会に分かれて活発な論議が交わされた。

 現在は、都道府県知事の行政処分として「措置入院」の制度があるが、医師だけの判断で入退院などを決めていることから「司法の関与が必要だ」という声があった。一方、今回の法案による新制度では、入院期間に上限はなく、「社会防衛を理由に精神障害者が長期間、入院させられるのではないか」などの懸念もある。

 今国会の審議では、木村義雄・厚労副大臣ら法案推進派の与党議員に対し、私立精神病院の経営者らでつくる「日本精神科病院協会」の政治団体が多額の献金をしていたことが発覚。「法案が金で動いている」と野党が批判していた。このため衆院で賛成した自由党は参院では反対に回った。 (06/03 16:55)

 
 
>TOP

◆2003/06/04 『障害連事務局FAXレター』42号

「心神喪失医療観察法案」参議院法務委員会で強行採決

 心神喪失状態で重大な犯罪(殺人や強盗、強制わいせつなど)を犯した者に対して、再犯防止を目的に強制入院などをさせることができる「心神喪失医療観察法案」が6月3日の参議院法務委員会で自民党議員から動議が出され、強行採決された。
 この法案は昨年12月衆議院法務委員会でも強行採決され、本会議で可決している。法務委員会での強行採決を受け、今週中ごろか後半にかけて本会議に上程されるとみられている。
 この法案は精神障害当事者、関係者団体はもとより、多くの障害者団体が反対し運動を展開している。私たちとしては最後まであきらめず運動をし可能性を追求していきたいと考えている。
 なお、日本障害者協議会(JD)は以下の通りの抗議声明を出した。DPI日本会議も抗議声明を出す予定。

「心神喪失医療観察法案」の参議院法務委員会における強行採決に対する抗議声明

日本障害者協議会 代表 河端 静子

私たち日本障害者協議会は、精神・知的・身体などといった障害種別を越えて、6月3日(火)参議院法務委員会において「心神喪失医療観察法案」が強行採決されたことに強い憤りを覚え、抗議する。
 今、精神障害者施策で求められていることは、社会的入院の解消など、精神障害者が地域社会の中であたりまえに生活していくことを可能とするような、住宅・相談・介護や、日中活動の場など、地域福祉サービスの充実であり、具合が悪くなったときには、いつでも気軽に受診できる地域医療システムの構築である。
 決して人権を制限するような再犯防止を目的とする予防拘禁などではない。精神障害者に対する誤った認識を人々に植え付けさせてしまうこの法案は、ノーマライゼーションの理念に反するものであり、廃案にされるべきである。
 本協議会は多くの仲間や市民と連帯を強めて、この法案の成立阻止に向け、最後まで全力を傾けていく決意である。

2003年6月4日

DPI東京、居宅生活支援サービスで再び要望書を提出

 支援費問題で、混乱が続いているが、国レベルでは障害者団体の代表者が参加するかたちで、懸案事項の「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」が5月26日(月)スタートした。
 さて、DPI東京行動委員会が東京都福祉局とこの間数度にわたり協議・交渉を重ねている。さる5月21日、DPI東京行動委員会は、東京都自立生活センター協議会との連名で下記の通り要望書を提出し、現在交渉日程を調整している。


                             2003年5月21日
東京都福祉局
局長   川 崎  裕 康  様

DPI東京行動委員会
代表 横山 晃久
東京都自立生活センター協議会
代表 中西 正司

全身性障害者の居宅生活支援サービスについての要望

 貴職におかれましては日頃より東京都の障害者施策の向上にご尽力されていることに、心より敬意を表する次第です。
 さて去る4月18日貴職から提示された「全身性障害者に関するホームヘルプサービス取扱要領(案)」に関しまして、意見を申し上げると同時に、重要事項について再度要望させていただきます。
 まず私たちが問題と捉え、指摘させていただきたいことは、支援費制度が実施され1ヶ月以上の月日が経ちましたが、区市町村によって運用に大きなばらつきがあることです。私たちが都の「全身性障害者ホームヘルプサービス取扱要領」に期待するところは、全身性障害者の社会参加・社会的自立の観点に立った、必要なサービスをきちんと受けられるようにするための指針的役割です。それはどの区市町村に住んでいようと保障されなければなりません。今回の「取扱要領(案)」が、この問題を解決しえる指針であるかは疑問の多いところです。
 都におかれましては旧来の「全身性障害者介護人派遣事業」にみられるように、全身性障害者の介護施策については、国及び他の自治体をリードされ、国の制度や他の自治体の施策に大きな影響を与えられてきました。今回につきましても従来通りの指導力を発揮されることが強く求められています。
 この間数度にわたり全身性障害の居宅生活支援サービスのあり方について、交渉を持たせていただきましたが、介護人の研修問題など重要な問題について合意をみるに至っていません。
 つきましては、上記の認識のもと、「取扱要領(案)」に関する意見と、重要課題について、下記の通り再度要望させていただきます。



T.「全身性障害者ホームヘルプサービス取扱要領(案)」について

1.「2 実施主体の責務」という項に、「予算の範囲内において」とありますが、これは敢
  えて明記するまでもないことで削除すること。

2.「3 外出時における移動の介護」の(1)の項では、「福祉その他の社会奉仕活動を含 
  む」とあるが、明確に例示として「自立生活センター等での活動など」を入れること。

3.同じく「3 外出時における移動の介護」の(2)の項で、宿泊を伴う介護が可能であ
  ることを示唆しているが、これをより明確にさせていくとともに、現実的には"移動
  介護"は単価が高く、区市町村においては認め難いと考えられるので、「移動」という
  表現を削除すること。

4.「6 痰の吸引その他の医療行為」の項で、「それが反復継続する意思をもっておこなわ
  れたものでない限り」との表現がされているが、現状の医療類似行為ができなくなる
  おそれがあり、削除すること。

5.全体を通して、どの立場からの規定かを統一すること。例えば、3の(2)は事業 
  者の立場で、表現されているが、4の(1)は利用者の立場での表現となっている。

U.その他の重要課題について

1. 介護人の資格要件、研修問題については、介護を受ける全身性障害者の生活に支障をきたすことがないようにするため、研修を受けることを前提にした居宅生活支援事業者における介護活動を容認するなど、柔軟的な必要な施策を行なうこと。

2. 区市町村によっては、実質的なサービスの上限が定められているところもあり、社会参加・社会的自立が可能となるように必要なサービスをきちんと受けられるように、財源保障を含め、必要な施策を行なうこと。

3. 従来の「全身性障害者介護人派遣事業」を継承するような、社会参加・身辺介護・家事援助など、類型に分けない全身性障害者に対するトータルな介護サービスを施策化(制度化)に努めること。その際、そのサービスの単価はトータル介護サービスにふさわしい金額に設定すること。
以 上
                                      

障害連と連合、政策協議を行う

 5月20日(火)障害連は、連合・政策福祉局小島茂局長などと意見交換会を行った。障害連から太田、春田、伊藤、三澤の4役員が出席した。
 差別禁止法制定問題や、無年金障害者問題、介護問題など広範にわたった。「障害者介護と、介護保険については慎重な検討が必要」や「無年金問題は学習会の開催など具体的な動きが重要」あるいは「あいまいなかたちでの障害者基本法の改正には問題」などを障害連として指摘した。連合もそれなりに理解を示してくれたが、特に障害者の年金問題は年金審議会の議題にのぼってなく、「障害者団体としての何らかの動きが必要」との認識を示した。
 6月10日(火)・11日(水)に連合の「制度政策討論集会」があるが、太田が参加する予定である。

 
 
>TOP

◆2003/06/10 『障害連事務局FAXレター』43号

障害者(児)の地域生活支援の在り方検討会(第2回)開かれる

 6月9日(月)障害者(児)の地域生活支援の在り方検討会が虎ノ門パストラルで行われた。この日は当事者委員を中心に7名の委員から意見発表があった。
 冒頭、事務局から前回の検討課題であった知的障害者の参加問題について、「正規の委員としてではないが、次回からオブサーバーとして参加してもらい、意見発表の場も持つ」との見解が示された。これに対して中西委員は「エンパワメントという観点からも知的障害者本人の参加は重要、全体に諮ってほしい」と発言した。太田も「当事者主体ということを考えても知的障害者の参加を求めるべき」と発言した。この問題は結局会議の最後で再度出されたが、結局オブザーバー参加という方向で江草座長がまとめ、時間切れとなってしまった。
 次に委員会の意見発表に移った。安藤豊喜委員(全日本ろうあ連盟)、太田修平委員(日本障害者協議会)、中西正司委員(DPI日本会議)、室崎富恵委員(全日本手をつなぐ育成会)、有留武司委員(東京都福祉局)、佐藤進委員(社会福祉法人・昴)、谷口明広委員(自立生活支援センター「きらリンク」)の順番で行われた。
 安藤委員は「聴覚障害者にとってはコミュニケーション保障が重要な課題」、太田は「その人にあった介護システムの確立と、「介護」という概念の見直しの重要性」(資料参照)、中西委員は「重度の障害者の自立生活にとって自立生活センターがこれまで果たしてきた役割は大きく、当事者団体への助成が重要な課題」、また、室崎委員は「過疎地域でのサービス提供事業の大変さと、社会資源の整備不足」などを訴えた。さらに有留委員は、地方自治体の立場から「一律的に補助金の配分基準を定めることには無理があり、全身性障害者の自立支援に最低限どれだけ必要かという論議が必要」、佐藤委員は「地域福祉への実際的な移行は財源論議が不可欠」、最後の谷口委員は京都での相談事業活動の中から「支援費制度となり障害者と事業所の間で浮かび上がる問題点」などを提起した。
 議論では、「地域生活支援といっても幅広く、この委員会で議論すべき課題を、今後より明確にしていくべき」とする意見や、「精神障害者の委員会は医療関係者の人が多く、こんなに活発な論議ではない。ぜひ精神障害者についてもなんらかのかたちで関わりを持たせるべきだ」とする発言もあった。日本障害者協議会の立場でも太田は「精神障害者の支援の在り方についても論議してほしい」と要望した。事務局としては「一方の精神障害者関係の委員会が立ち上がってなく、前段のヒアリングでは精神障害者については行わず、検討課題としたい」と難色を示した。
 次回の検討会は、6月24日(火)午後2時からである。次回も委員からの意見発表である。
                                          
資 料

障害者(児)の地域生活支援の在り方
                       日本障害者協議会  太田 修平

日本障害者協議会の活動
 1981年の国際障害者年を契機につくられた「国際障害者年日本推進協議会」がその前身。
 障害の種別を超えた障害者及びその関係者の幅広い連携を目指し、現在70団体によって構成される。
 現在、障害者差別禁止法や、総合的な障害者福祉法の制定、様々な施策の谷間に置かれている人たちの生活問題、あるいは民法の扶養義務の見直し等々が課題となっている。
 障害者基本計画の策定にあたっては、内閣府の懇談会に河端代表を委員として送り、積極的に問題提起をした。
地域生活支援で重要な観点
 成人障害者の家族からの独立を可能とさせる制度の確立。世帯単位から個人単位への変更など。
 「ホームヘルプ」ではなく、一人の人間の社会生活を支援するという観点。
 多様な介護システムの構築。 自分にフィットする介護サービスやその組み合わせの選択を可能とさせること。
 障害者と介護者が対等な関係で契約や雇用システムをつくっていくことの検討。(雇用者としての障害者)
 上記の他、北欧のように公営住宅などの中にケアスタッフルームを設置し、必要な時に介護が受けられるようにするなど。
 グループホームの整備と位置付けの問題。
 痰の吸引などの医療的行為も介護で行なえるようにすること。
 この検討会への要望
 精神障害者を切り離すのではなく、精神障害者の地域生活支援についても検討対象とし、それによって包括的な障害者の地域生活支援の在り方を提起する。
 知的障害の当事者の参加を具体化させる。

日本障害者協議会(JD)総会行われる

 日本障害者協議会は6月7日(土)、協議員総会を行った。事業報告、事業計画、決算、予算の論議と、そして新役員体制が選出された。
 組織と財政両面にわたる見直しと、新たな障害者運動のナショナルセンターづくりに向けたJDの役割が確認された。
 来賓として出席した八代英太衆議院議員は「障害者基本法の改正を今国会でめざしたい。内容は差別禁止条項の挿入、市町村障害者計画策定の義務化、中央障害者平等参画会議の設置などを考えている」とした。
 2003・2004年度役員人事は以下の通りに決まった。
○理事
 代表   河端 静子(社団法人日本筋ジストロフィー協会理事長)
 副代表  花田 春兆(全国障碍者自立生活確立連絡会)
 副代表  吉本 哲夫(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会会長)
 副代表  勝又 和夫(ゼンコロ会長)
 常務理事 藤井 克徳(きょうされん常務理事)
 理事   青葉 紘宇(全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会)
 理事   石井 光雄(全国難病団体連絡協議会会長)
 理事   五十嵐紀子(全国社会福祉協議会全国社会就労センター協議会)
 理事   江上 義盛(財団法人全国精神障害者家族会連合会専務理事)
 理事   大島 謙 (財団法人日本知的障害者福祉協会常任理事)
 理事   太田 修平(障害者の生活保障を要求する連絡会議代表)
 理事   黒崎 信幸(財団法人全日本ろうあ連盟副理事長)
 理事   佐藤 久夫(日本社会事業大学教授)
 理事   薗部 英夫(全国障害者問題研究会事務局長)
 理事   比留間ちづ子(社団法人日本作業療法士協会理事)
 理事   福井 典子(社団法人日本てんかん協会常務理事)
 理事   松友 了 (社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会常務理事)
 理事   丸山 一郎(財団法人日本障害者リハビリテーション協会国際部参与)

○監事
 監事   小林 孟史(社団法人全国腎臓病協議会常務理事)
 監事   有村 律子(特定非営利活動法人全国精神障害者団体連合会事務局長)

 
 
>TOP

◆2003/06/25 『障害連事務局FAXレター』44号

 知的当事者オブザーバーで発言する −第3回検討会開かれる−

 6月25日早くも検討会は第3回を迎えた。「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」である。この日ようやく知的当事者のオブザーバー参加が認められ、発言した。小田島栄一さん(ピープルファースト東久留米代表)、佐々木信行さん(ピープルファースト東京事務局長)、多田宮子さん(さくら会)、山田憲二郎さん(東京都知的障害者育成会本人部会ゆうあい会代表・全日本手をつなぐ育成会本人活動あり方検討委員会委員長)の4人である。
 「施設はひどい所だとみんなから聞いていて、施設生活は考えたことはない」、「都営住宅で暮らしたい」、「グループホームの方が良い」、「自立生活をするにはきちんとしたサポート体制が必要」などなどと4人は発言した。これは中西委員が「施設で暮らしたいと思っているかどうか、知的当事者オブザーバーに聞きたい」と発言し、それに答える形で発言したものだった。正式の委員としては残念ながら認められていないが、厚生労働省の検討会の中で知的当事者自身が発言したことは、ある意味で歴史的なことと言える。
 さて、その日の検討会であるが、前回に引き続き学識経験者以外の委員による意見発表であった。
 大濱眞委員((社)全国脊髄損傷者連合会理事)は、「契約に変わって、本当に自己選択できる制度となったか疑問がある。町田市に見られるように従来のサービスを下回っているところもある。重度障害者でも地域で普通に暮らすという視点での介護施策が重要である。高齢者と障害者とでは介護が違ってくる。障害者自身が介護者を今後養成することが重要で、パーソナルアシスタントシステムやダイレクトペイメントの制度から必要である」と発言した。
 笹川吉彦委員((福)日本盲人会連合会長)は「視覚障害者にとっては支援費制度が導入されガイドヘルプサービスが使いにくいものとなってしまった。手続きをする上で署名をどうするかなど問題点が多すぎる。これまでガイドヘルプサービスは本人のみの所得を基準に費用を出していたが、扶養義務者も対象となってしまった。社協自体がガイドヘルプサービスをやらなくなるところが多くなっている」と発言した。
 森裕司委員((福)日本身体障害者団体連合会事務局長)は、「支援費制度の実態調査を行う必要がある。ケアマネージメントシステムの導入を考えた方がよい。扶養義務者の費用負担について見直す必要がある。差別禁止法の検討も重要課題である。一方、施設の改革も重要で、ヒアリングなど施設などの場で検討会を行った方がよい」と発言した。
 竹中ナミ委員((福)プロップ・ステーション理事長)はビデオを使い、プロップ・ステーションを紹介しながら、「アメリカや北欧のように、チャレンジドが納税者になるという目標をもつことが重要である。働く能力を開発していき、障害者が働いて自立できるようになることが重要である」と発言した。
 早崎正人委員(大垣市社会福祉協議会在宅福祉サービス推進室長)は、地域生活支援サービスを担っている立場から発言し、「ケアマネジメント制度の導入は必要である。支援費の単価が介護保険に比べて低い。65歳以上の視覚障害者が介護保険で"自立"と判断されると、従来提供されていたサービスが認められなくなる」と発言した。
 村上和子委員((福)シンフォニー理事長)は「支援費制度になり、利用者も利用時間も増えている。支給量をある程度多く認定すると、利用者も安心し工夫するというゆとりが生まれる。児童の昼間の支援について柔軟に対応できるようにする必要がある。自治体の財源を確保していくことが求められる」と発言した。
 森貞述委員(高浜市長)は、冒頭5月に高浜市で起きた障害者とその親との無理心中について「非常に残念な出来事」と述べた上で、「高浜市では地域福祉に力を入れている。地域福祉計画や障害者計画をつくり、"地域福祉サービスを統合化""当事者主体の住民参加"などの理念で取り組んでいる」と発言した。
 これらの発言を受けての議論では、「介護保険サービスのあり方も見直そうとしている。身体介護や家事援助だけではないサービスを模索しようとしている」との意見も出た。
 中西委員は「新しい生活支援のあり方を具体化させていくために、ワーキンググループをつくり集中的な議論の場をつくったほうがよい」と提案した。これに対し事務局は「多くの人たちで情報を共有した方がよいと考えているが、検討課題としたい」と答えた。
 最後に太田は「知的当事者が今日大きな貢献をしてくれた。これからも期待したい。正式な委員としての参加を改めて求めたい」と述べた上で、オブザーバーにお茶が用意されていなかったので「用意するように」求めた。これについては「配慮したい」と事務局は回答した。
 次回は7月17日(木)に開催され、知的当事者と重症心身障害児を守る親の会などに対するヒアリングが行われる。

「連合」制度政策討論集会に参加

 6月10日〜11日横浜で連合の「2003〜2004年度制度政策討論集会」が開かれた。障害連からは代表の太田が参加した。太田は社会保障の分科会に参加した。障害者政策は「障害者差別禁止法の制定の検討」や、「無年金障害者問題の解決」などを謳っており、障害連など多くの障害者団体が指摘している課題を取り入れる内容となっていた。
 しかし、介護保険については「今後の見直しに際して、保険料負担を20歳以上からとし、給付の対象年齢についても見直す」との基本的な姿勢が示されていた。これに対し太田は「安易に制度を統合させるのではなく、サービスの中身を検証してほしい。慎重な対応を求めたい」と発言した。これに対して小島生活福祉局長は「障害特性に合わせたサービスの必要性や支援費固有のサービスについては理解しているので、対応は慎重にしたい」と答えた。

 
 
>TOP

◆2003/06/26 『障害連事務局FAXレター』45号

基本法改正問題で、JD、4野党と懇談をもつ

 6月25日(水)、日本障害者協議会(JD)は民主、共産、自由、社民の順に、障害者基本法改正問題で意見書を提出し、それぞれと懇談する機会をもった。JDからは河端代表、花田副代表、吉本副代表、太田政策委員長など6名が参加した。
 今年に入り、障害者基本法改正問題が急浮上し、今国会で審議、改正が現実感を帯びてきた。JDは既に、自民党関係者や公明党関係者とこの問題で折衝しているが、基本的には「障害者差別禁止法」が必要であり、もし基本法が改正されるとしても、それにつなげられる障害者の権利性を一層高めていくものとしていくことが重要である、という姿勢でのぞんでいる。25日もこのことを主張した。
 また与党で検討されている案について「何人も障害者に対して、その障害のゆえを以って不当な差別をしてはならない」などとされているが、実効性をもつ差別禁止条項とは言い難く、"不当な差別"という表現もおかしいことを指摘した。
 そして障害の定義について、"あらゆる障害を包括"しうる内容としていかなければならないことを指摘、国際生活機能分類(ICF)に準拠したものにすることが重要であると述べ、特に「長期にわたり」という文言は不必要であると訴えた。
 "自立への努力"という項目についても、「法の中で障害者に自立を求めるのは問題」であることを指摘した。
 さらに、中央障害者平等参画会議の機能や位置づけが不明確で、委員構成も曖昧で、政策決定過程への当事者参加を保障しているとは言い難いことを主張した。
 障害者の参政権の実質的な確立についても強く訴え、「基本法の中に政治への参加権をきちんと保障する条項を入れる必要がある」とした。
 これに対して野党各党は「差別禁止法の必要性については認識している」とし、JDの具体的な要望についても理解を示してくれた。難病問題について複数の党から「どういう考え方で"障害"の中に位置づけるべきか」という質問が出た。これに対して、太田などは「難病という定義も難しい。難病という言葉を入れるよりも、身体的な理由で生活制限を受けているすべての人が、障害の定義にくくられることが重要である」と述べた。
 野党各党はこの日のJDとの懇談を受け、与党との調整の際、反映させていきたいとした。

資 料

2003年6月25日
(民主党、日本共産党、自由党、社会民主党
の各党首宛に提出)
             日本障害者協議会
              代表  河端 静子

障害者差別禁止法につながる条項の新設を含む
障害者基本法の改正に関する意見

 障害者の完全参加と平等のための取り組みに敬意を表します。
 障害者差別禁止法の制定、及び障害者基本法の改正問題に関する本会の考えは以下の通りでありますので、よろしくお願いいたします。
 なお、本協議会をはじめとする障害者団体に進行状況を知らせ、その意見を反映させつつこの取り組みを進められるようお願いいたします。

1 障害者基本法に障害者差別禁止に関する規定を設け、それに対応する実体法を新たに制定すること
 1993年の障害者基本法改正の際大きな議論となったことで、その後、同年の国連決議「障害者の機会均等化に関する標準規則」の採択がなされ、過去10年に世界各国で障害者差別禁止法が制定されてきたことや、現在国連で障害者差別禁止を含む障害者権利条約制定の準備が進んでいること、また日本政府も障害者差別の禁止を含む人権擁護法案を準備するなどその必要性を認めていること、そして昨年10月のビワコ・ミレーニアム・フレームワークにおいても障害者差別禁止の法的整備が強調されていることなど、すでに十分すぎるほどの条件が整っています。日本における障害者の現実は、その多くが未だに無権利状態と差別の中に置かれており、この問題を解決しえる新たな法的な枠組みが急務です。それには、障害者差別や障害(者)の定義、対象となる分野(雇用、教育等々)の規定、障害者差別が生じた場合の是正や救済の手続き規定、障害者差別を行った者への罰則規定など、詳しい具体的な条項が多数必要となります。
 障害者基本法に「差別禁止条項」の挿入の議論もあるようですが、同法は、文字通り障害者施策に関する基本的な理念や国等の基本的な責務および各分野の施策の方向を定めるものであり、基本法に障害者差別の禁止を盛り込むだけでは具体的な効果は期待できません。

2 障害者団体への支援と政策決定へのその参加を位置づけること
 1993年の障害者基本法改正で中央障害者施策推進協議会に障害者の参加が規定されたものの、その後の審議会等の統廃合により同協議会自体が廃止されてしまいました。国連の諸決議が各国に促しているように、国・地方の政策の立案・決定と評価の過程に障害者団体が参加することは、効果的な政策の不可欠の前提であり、すでに多くの先進国・発展途上国を問わず実施されています。わが国でも多くの場合に実施されるようになりましたが、このことをより明確に位置づけるためにも基本法で、障害者基本計画策定時だけでなくより一般的な形での明記が必要です。
 同時に、障害者団体が全国の障害者・関係者の要求と意見をまとめ、質の高い政策提言を行い、かつ広く国民全体にその内容を理解してもらうためには、障害者団体に対する活動費用の助成や十分な情報の提供が必要です。この点についても障害者基本法に規定する必要があります。なお、障害者団体の活動費の公的助成は以前から国連が呼びかけ、すでに多くの国で実施されています。
 加えて、障害者の完全参加と平等の実現を推進する中心機関として、内閣府に男女共同参画会議に準じた「障害者平等参画会議」(仮称)を設置することが望まれます。
            
3 社会参加の権利の明記と努力義務の削除
 さらに、1993年以降の障害者施策をめぐる理念の進展を反映して次の改正が必要です。
 第1に、第3条2項「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」は「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する権利を有する。」との内容にするべきです。
 第2に、同じく第3条1項「すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。」の「処遇」を「環境と支援」というように改める必要があります。
第3に、障害者に社会参加努力義務、その家族に障害者の自立促進努力義務を課している第6条は削除されるべきです。障害者は一市民としての通常の義務と権利を持つものであり、障害者であるが故の特別の法的な義務を定めるべきではありません。
第4に、必要な施策を利用する障害者の権利を明確にするために、「第二章 障害者の福祉に関する基本的施策」の各条項に、「障害者は・・・の施策を受ける権利を有する」という内容の項を追加することが望まれます。
要するに権利主体としての法的な位置付けを強化し、明確にしていく必要があります。 

4 「親亡き後対策」の発想の終結
 第24条の、父母などが自分たちの死亡後の障害者の生活を懸念する必要がないように配慮する旨の規定を削除すべきであると考えます。これは親・兄弟が生きている間は家族扶養義務にもとづいて世話をするべきだという古い時代の考えによるものです。これを根本的に転換して、成人になった障害者は、親が生きていてもいなくても、ひとりの独立した市民として生きていくことができるように、経済的・社会的支援の施策の整備こそが重要です。

5 障害者の定義を見直すこと
 現在の障害者の定義(第2条)は「精神障害」を明確に位置づけた点で旧法より進んだものですが、依然として問題があります。
 いかなる種類であれ、障害にともなって日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者のすべてを包括的に対象とするべきです。

6 入所型施設・病院から地域への施策の促すこと
 新しい障害者基本計画では、ノーマライゼーションの理念のもと、施設から地域への移行の推進を強調していますが、その基本的な考え方を本法の総則部分に盛り込む必要があります。
 また、第11条の「自立することの著しく困難な障害者について、終生にわたり必要な保護等を行う」などの表現を改めるとともに、「どんなに重い障害をもっていても、人権が守られ、自己選択が尊重され、生き生きと社会参加できるように可能な限りの支援を保障しなければならない」などの内容を規定することが望まれます。

7 支援費制度への対応
 第17条(措置後の指導助言等)は、このままでは支援費制度の時代にふさわしくないものとなっています。措置も一部残っていることも考慮しつつ、国と地方公共団体が福祉サービスの利用を開始した障害者に対して、開始後も継続的に責任を持って支援をするように、新しい規定が必要です。

8 都道府県・市町村障害者計画の義務化
 障害者施策においても地方分権化が進む今日、地方自治体がニーズを調査し、障害者・関係者の意見を聞きつつ社会資源を計画的に整備することはますます重要となっており、これらの計画を義務化すべきです。

9 地域格差の縮小
 地域による障害者施策の質と量の格差が問題となっています。このため人口移動も珍しくありません。福祉用具の給付率も数倍から10倍の都道府県・市町村格差が報告されています。同じ制度でも認定と適用をめぐるばらつきが指摘されています。支援費制度の導入とともにこれが拡大する可能性も強まっています。
 したがって、国の責任で障害者施策に関する地方格差について総合的にモニターし、その情報を公開する等、極端な格差については、当事者の意向を反映したミニマム保障プランを示し是正につとめる、旨の規定を設けるべきです。

以 上

 
 
>TOP

◆2003/07/02 『障害連事務局FAXレター』46号

自民党、障害者団体とヒアリングをおこなう
‐基本法改正問題で‐

 自民党は7月T日(火)、障害者基本法改正問題で障害者団体とのヒアリングをもった。18団体が参加し、日本障害者協議会(JD)から河端代表と太田政策委員長が出席した。JDの要望は資料の通りである。この日配布された自民党からの改正案は、「与党試案」を少し手直ししたものであったが、基本的には「与党試案」とは変わりはない。ただ「与党試案」では、「中央障害者平等参画会議」とあったものが、「中央障害者施策推進協議会」と名称が変わっていた。JDの要望書は「与党試案」に基づいたものである。
 ヒアリングでは八代英太衆議院議員(自民党障害者特別委員長)から障害者基本法改正案についての説明があり、「障害者権利条約策定の動きもあり、『何人も、障害者に対して、障害を理由として不当に差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない』旨の規定を明記した。公共的施設や情報のバリアフリー化についても明示した。一度なくなった『中央障害者施策推進協議会』を復活させた。障害の定義については難病を加えることはできなかったが、なるべく広く捉えられるようにし、〈障害の予防に関する基本的施策〉の中で、難病に対する施策の推進を記した」などと述べた。
 また野党との調整の中で「5年後の見直し」を入れる方向で検討しているとのことであった。
 JDをはじめ多くの団体から「実効性のある障害者差別禁止法を制定してほしい」との声があがった。これに対して八代議員は「障害者差別禁止法は今後の課題。5年後の見直しではそのことも含めて検討していかなければならない」「基本法は理念法であるから強制力をもたせるとは難しい」と答えた。
 障害の定義についてJDの要望である「長期にわたり」を削除するようにという要望については、「検討したい」と答えた。
 この日は各団体から多くの意見が出された。「中央障害者施策推進協議会に施策に対するチェック機能をもたせるべきだ」や「『自立への努力』があるのはおかしい」などなど多岐にわたった。
 八代議員は「皆さんの気持ちは大体盛り込まれていると思う。今週が山場で民主党の対応が注目される。この改正案が今国会で成立するよう応援してほしい」と語った。
 なおDPI日本会議は、野党などに対し、慎重審議を求め、要請活動をしている。
                                   資 料
2003年7月1日

自由民主党 政調会障害者特別委員会
委員長 八代 英太 様
自由民主党組織本部厚生関係団体委員会
委員長 田村 憲久 様
     
日本障害者協議会
代表   河端 静子

障害者差別禁止法制定につながる障害者基本法改正について(要望)
 
 貴党におかれましては、日頃より障害者施策の推進にご尽力されていることに心より敬意を表する次第です。本協議会は障害者が現実の社会におかれた状況を考えた時に、米国など多くの国々で立法化されている障害者差別禁止法(障害者権利法)の制定が必要であると認識しています。
 今般、貴党をはじめとする与党の皆様が、「障害者を差別してはいけない」という文言などを入れ、障害者基本法の改正を検討されていることに感謝を申し上げる次第です。
 ただ、本協議会といたしましては、障害者の完全参加と平等という目標を実現するには、理念にとどまらない実効性のある"差別禁止規定"を設け、障害者差別禁止法の制定につなげていくことが重要であると考えています。
 以上の認識にたち、下記の諸点についてご高配を賜りたくよろしくお願い申し上げます。



1. 障害者差別禁止法(障害者権利法)の制定を早急に検討していただきたい
2. 与党試案に対して下記の通り意見を申し上げます
1) 第三条および第四条における「差別をしてはならない」という主旨の規定について、国や地方公共団体の責務をより明確化させ、理念にとどまらない実質的な差別禁止条項としていただきたい。
  また、「不当な」という表現を削除していただきたい。
2) 第二条における障害の定義は、WHOの障害の定義に準拠したものとし、可能な限りあらゆる障害を包括しうるものとし、また「長期にわたり」という表現を削除していただきたい。
3) 第七条にある(自立への努力)については、一般論として当然のことではあるが基本法に明記する性質の事柄ではないので、削除していただきたい。
4) 第二十三条の中央障害者平等参画会議の機能について、障害者施策の監視・評価なども盛り込ませ、障害当事者の政策決定の場への参加を保障する場として明瞭に位置付けた上で、委員構成のあり方についても明確にしていただきたい。
5) 第三条との関連で、障害者の政治参加の権利について明文化していただきたい。
6) 同じく第三条の「機会を与えられるものとする」を、より権利性の高い表現とし、「機会を有する」等にしていただきたい。
7) 第二章の「障害者の福祉に関する基本的施策」にある努力義務規定は、義務規定としていただきたい。

以上

 
 
>TOP

◆2003/07/03 『障害連事務局FAXレター』47号

「心神喪失法案」で、要望書ならびに声明を出す
−JD、DPI、衆議院法務委員会に対して−
 
いわゆる「心神喪失者医療観察法案」は、この6月参議院を通過した。施行日などの修正があったため、衆議院に再送付され法務委員会にかけられている。
 日本障害者協議会(JD)とDPI日本会議は、この法案の十分な議論、ならびに廃案などを求め、7月3日(木)、要望書(JD)ならびに声明(DPI日本会議)を衆議院法務委員宛にFAXで送付した。

 *略→以下に全文があります(立岩)

◇2003/07/03 DPI(障害者インターナショナル)日本会議→衆議院法務委員
 「「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案(心神喪失者等医療観察法案)」強行採決中止を求める声明」
◇2003/07/03 日本障害者協議会→衆議院法務委員
 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」の廃案を求める要望」

 
 
>TOP

◆2003/07/18 『障害連事務局FAXレター』49号

 第4回地域生活支援検討会行なわれる〜知的当事者などからヒアリング〜

 はっきりと主張した。「私たち知的障害者も委員として加えてほしい」と。

 7月17日、「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」の第4回が厚労省で行なわれた、この日も60名を越える傍聴があった。
 (福)全国重症心身障害児(者)を守る会の北浦雅子さん、ピープルファーストの大澤たみさん、佐々木信行さん、小田島栄一さん、(福)全日本手をつなぐ育成会(本人代表)の岡部茂夫さん、岡部由香さん、多田宮子さん、そして(福)滋賀県社会福祉事業団の中島秀夫さんからヒアリングが行なわれた。
 一人目の(福)全国重症心身障害児(者)を守る会会長の北浦雅子さんは「今、脱施設が風潮となっているが、知的にも身体的にも最重度の重症心身障害児(者)にとって、医療ケア、施設ケアは重要なものとなっており、そういう最も障害が重い人たちの医療と生活の場の更なる充実が必要である」と訴えた。
 続いて、ピープルファーストのメンバーが発言し、「施設よりも地域の中で暮らしたい、
ヘルパーや年金、住宅などの施策をしっかりとしたものにしてもらいたい。知的当事者自身の活動や支えあいがが重要である。地域生活への移行に向けて親の会の人たちも頑張ってほしい」などと述べた。
 次に(福)全日本手をつなぐ育成会(本人代表)からの発言となり、「自分たちのことは自分たちに関わらさせてほしい、この委員会の委員に入れてほしい。地域生活支援センターを増やしてほしい。まちの標識や看板などにかなをふって分かりやすくしてほしい」などと主張した。
 最後に、(福)滋賀県社会福祉事業団企画事業部副主幹の中島秀夫さんが発言に立ち、「支援費支給決定にあたっては、調整会議が重要な意味を持つ。市町村や担当者によって考え方が異なることが問題。滋賀県は"福祉特区"として、施設入所者が一時帰宅した時、居宅支援ができるように考えている」などと現状を報告した。
 質疑討論では、大熊委員が「知的当事者の委員会参加について賛成である」と表明、一方、別の委員は「理解できるが、この委員会は広い立場で議論する委員会で、そこにこだわりを持つ必要性はないのではないか」と発言し、太田はこれに対し「この委員会は居宅支援の上限設定問題でつくられた経過があり、他の障害当事者が参加している中で、知的の人が外されているのはおかしい」と述べた。さらに大濱委員も「知的当事者の委員参加問題について、きちんと論議すべきで、少なくとも各委員の意見をペーパーで出してもらう必要がある」と発言した。
 この件については江草座長に取り扱いを任された。
 "脱施設問題"について京極委員が発言し「脱施設は脱収容施設のことだと思う。日本では施設全体を言っているがごとく誤解されている部分があり、住宅施設や通所施設など
必要なものもあり、整理して考える必要がある」と述べた。
 これに関連して高橋委員から「同様の問題が高齢者問題にもあり、痴呆性高齢者の生活支援の在り方など、最近研究がまとめられている」と情報提供があった。
 最後に事務局から今後の検討・議論に向け、支援費制度以降の実態調査を行ない、
その結果をもとに9月以降の議論に役立てたい旨の説明がなされ了承された。

 次回第5回は、7月30日(水)午後2時から午後5時、厚生労働省17階専用第21会議室で行なわれる。
 ヒアリングの続きで、自閉症関係者と、地域ケア・ネットワーク実践例として、横浜市、長野県北信圏域から報告がされる予定。 

 
 
>TOP

◆2003/07/31 『障害連事務局FAXレター』50号

 第5回地域生活支援検討会行われる−自閉症関係者などからのヒアリング等−

 「支援費の居宅生活支援サービスについては、概算要求段階で、現行の国庫補助基準等を確保し、従前のサービスが低下しないように努めている」と河村社会・援護局長は述べた。
 これは、委員会の冒頭、中西委員から「概算要求の時期にあって、この検討会の成り立ちの経緯が、1月のホームヘルプサービス上限設定問題に端を発していることから、他の議題より先行してでも、この検討会で居宅生活支援費が今年度を下回ることがないように、きちんと議論をすべきで、また厚労省としての姿勢を聞いていく必要がある」との発言があり、それに応えた形で検討会の終了間際に見解を表明したものである。
 さらに、河村局長は「国庫補助基準の見直しについては、必要あれば支援費施行後の状況を見ながら、この検討会で議論してもらうことになる」とも述べた。しかし一方、「大きな動きとして政府は骨太の方針で補助金の削減を打ち出しており、厳しい状況であることは間違いない。今年度についてもホームヘルプサービスの予算については、平年度ベースで15%増をしている。ご理解いただきたい」と付け加えた。
 中西委員からは同じく冒頭「知的当事者をオブザーバーではなく、きちんと委員にするという問題についても解決していない」との指摘がされた。事務局は「オブザーバーでも発言したい場合は手を上げてもらえば座長の指名により発言できるようにしたい」と答えたが、中西委員は「納得できる回答ではない」とした。しかし、議事運営上の都合によりヒアリングが先に行われることになったため、会議の終了寸前に太田が「この問題は解決していないと認識している」と発言した。
 これを受けて、河村局長は「この検討会は22名という大きな規模となっている。地域生活支援のあり方について多角的総合的に検討してもらう場だと考えている。当事者、事業者、学識経験者等の割合のバランスを実質的・形式的に考慮していく必要がある」との見解を示した。
 知的障害者の参加問題は、精神障害分野を検討の対象に入れるかどうかという問題と同様、今後も主要テーマであることには変わりはない。
 さて、ヒアリングははじめに(社)日本自閉症協会北海道支部の佐藤裕さんが行った。
「自閉症という障害をもっと多くの人たちに知ってほしい。コミュニケーションの方法として絵など視覚的手段に訴えていくことが有効的であるが、それをきちんと行っている専門家が少ない。アメリカなどに行くと普通の市民にもいろいろな人がいるので、奇異な行動をしても受け止めてくれる土壌がある。日本は、『親は何してるんだ』という目で見られてしまう」と佐藤さんは語った。
 さらに質問に答えて「ガイドヘルパーを頼んでも通勤通学は対象外となっているため、自腹を切っている状態。公的支援をきちんとしてほしい」とも述べた。
 続いて、地域ケア・ネットワークの実践として、横浜市福祉局の桑折良一さんと、長野県北信圏域障害者生活支援センターの福岡寿さんの2人が発言した。
 まず、桑折さんは支援費移行後の状況を語り、「おしなべて前年度より実績が上がっている状況である」と報告した。また「グループホームなどが母体となっている地域活動ホームが中核となって地域支援活動を担っている」とした。
 「日常生活支援が少ないのは、担い手と時間制限があるからではないか」との質問に対し、桑折さんは「確かにその通りかもしれない。検討課題である」と答えた。他の委員からも多くの質問が出され、白熱した。
 福岡さんは「自分は療育等地域生活支援センターでコーディネーターをしているが、まずその人のうちに出かけていくことがネットワークを作る出発点ではないか。行政の人や関係者の人にも一緒に行ってもらい、実際に見てもらうことが重要である」と発言した。さらに、「国が明確な方針を出さないならば、地方に全部任せてほしい」と訴えた。

 オブザーバーのピープルファーストや、全日本手をつなぐ育成会などからも発言があり、「グループホームでなくて、アパートを借りて介助を受けて生活したい」「家賃や住宅の問題を何とかしてほしい」などの発言があった。
これに対して、横浜市の桑折さんは「横浜ではアパートを借りて生活する重度障害者に対してはアシスタントシステムがある」と語った。

 最後に、この秋にかけて行う「データ収集の進め方について」の説明が事務局よりあり、意見交換があった。このデータ収集は基本的にはすべての自治体に対して行うものとし、支援費制度移行後の自治体などの状況や、サービスを受けている障害者の生活状況などを把握しようとするものである。

 それにしても冒頭に戻るが、ホームヘルプサービスの予算が概算要求の段階でどれくらい確保されるのかが心配である。精神障害者の社会復帰施設の国庫補助も今年度大幅に厳格され、大きな問題となっている昨今である。私たち障害者団体は油断することなく、厚生労働省の姿勢を正し続けていくことを求められている。

 次回検討会は8月26日(火)に行う予定である。

 

シンポジウム
〜脳性マヒをはじめとする全身性障害者の社会的自立に向けて〜

★ 2003年9月13日(土)午後1時〜午後5時
★ 総評会館501会議室

この4月から支援費制度がスタートした。障害者の地域生活基盤を充実させていくことが、この制度の目的であった。現実の状況はどうであろうか。とくに脳性マヒをはじめとする全身性障害者のおかれている環境は、地域生活や自立生活といううたい文句とは裏腹のところにあるのではないだろうか。
 家族との関係も扶養義務制度の絡みで深刻である。施設問題も影に隠れやすいが、"人権"という視点で検証していく必要がある。さらには今、二次的な障害による体の痛み・苦痛という問題も、多くの全身性障害者の上にのしかかっている。
 このシンポジウムでは、時代の流れを把握しながらも、大きな議論とはなっていないがこれらの忘れてはならない問題にスポットをあてて考えていきたい。

シンポジスト
       小佐野 彰 氏(自立の家をつくる会代表理事)
       岸野 洋子 氏(東京青い芝の会事務局)
       小峰 和守 氏(全国療護施設自治会ネットワーク代表)
       宮本 泰輔 氏(DPI日本会議事務局)
司会  伊藤 雅文  (障害者の生活保障を要求する連絡会議事務局長)

【参加費】 300円なるべく事前にご連絡いただけるとうれしいです
【事務局】 03−5296−8028 e-mail [略]

主催  障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連)
   後援  東京都福祉局(予定)、日本労働組合総連合会、DPI日本会議、
日本障害者協議会、日本チャリティープレート協会(申請中)、
障害者職能訓練センター(申請中)
   協賛  自治労東京都庁職員労働組合、東京都労働組合連合会、
全国医療等関連労働組合連絡協議会、自治労都庁職民生局支部
カンパもお願いしています。郵便振替で 00140−5−250039 障害連 までおねがいいたします。

 
 
>TOP

◆2003/08/08 『障害連事務局FAXレター』52号

JD・日身連など4団体で、厚労省と交渉をもつ

‐ホームヘルプサービスの来年度予算要求に向けて‐
「厳しい状況を理解していただきたい」厚生労働省障害保健福祉部足利企画課長のコメントである。
8月8日、JD、日身連、DPI日本会議、そして育成会の4団体が概算要求の時期にあたって、ホームヘルプサービス問題で、足利企画課長、長田課長補佐らと交渉をもった。
ホームヘルプサービス問題は、現在「障害者(児)の地域生活支援の在り方検討会」でも議論しているところだが、発端は1月のホームヘルプサービス上限設定問題。
交渉で足利課長は「裁量的予算のうちの2%減を政府は方針としてだしてきた。概算要求段階においては2%減をベースにその2割り増しまで要求できることになっている。ホームヘルプサービスにかかる予算については、今年度予算の平年度ベース12か月分をなんとか確保していきたいと考えている。ただ義務的予算についても予算減で組むように言われている中、状況は非常に厳しい」と見解を明らかにした。
これに対して「12か月分組むのは誰が見ても当たり前の話」「地域移行の具体的な施策が必要であり、それがないと施設中心主義は変わらない」などという厚労省の基本的姿勢をただす意見が相次いだ。
足利課長は終始厳しい状況を強調した。精神障害者の社会復帰施設の補助金減額が明らかになっているように、このホームヘルプサービス問題も相当厳しい状況にあることを団体としても認識し、夏から秋そして暮れにかけて運動を強めていき、全国展開が求められている。
この日の出席者は、JDから吉本副代表、太田政策委員長、日身連からは森事務局長、DPIから三澤事務局長、中西常任委員、金事務局員、そして育成会の立場で松友常務理事であった。
なお要望書は以下の通り。

2003年8月8日

厚生労働省
 大臣 坂口  力 様

                   社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会
会長 兒玉 明
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会
理事長 藤原 治
日本障害者協議会
代表 河端 静子
特定非営利活動法人
DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長  山田 昭義 

2004年度障害福祉関係予算に関する要望書

厚生労働省におかれては日頃より障害者の生活の向上にご尽力いただき感謝いたします。
 2003年4月より開始された支援費制度に関しては、多くの自治体で真剣な取り組みがなされていることとは思われますが、まだまだ混乱状況は脱し切れておらず、利用者である障害者にそのしわ寄せがなされているという報告も数多くあがってきております。こうした状況を早急に脱しこの制度の目的である利用者主体、選べる制度という実態を一刻も早く創り出すことに向けて、厚生労働省として一層の努力をされるようお願いするものであります。
また、今年1月の支援費制度導入に関する大混乱の結果発足することとなった「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」においては、あくまでも利用者のニーズに沿った介助サービスを始めとする地域生活条件の確立に向けた検討がなされるものと期待しておりますが、それと同時に現在施行されている各種事業をより充実させることに向けた努力は欠かすことができないものであると考えます。
本年一月に、多くの障害者及びその家族が厚生労働省の姿勢に疑問をもち、厚生労働省へ駆けつけました。その当事者たちが、現在、来年度の予算編成に不安を抱きつつ、その動向を注視しています。つきましては厚生労働省として以下の諸点に十分留意の上、来年度予算の確保を図られるよう要望するものであります。



T 支援費制度予算の拡充

1.2003年度予算は11ヶ月予算であり、16年度予算は平年度(12ヶ月)化を行った上で、支援費制度導入後の支給決定量に応じた利用サービスの増加状況を踏まえ来年度予算を確保すること。

2.障害者基本計画では地域移行を掲げており、今後、施設サービスを使っていた人が、一定の数で地域生活支援関係のサービスを利用していくこととなる。介護保険では、施設と在宅の予算比率は6:4であり、支援費においてはその比率は8:2である。支援費においても介護保険と同様に地域福祉により基盤をおくような具体的な政策を示すこと。

3.施設から地域移行を促進する在宅の受け皿づくりの具体化を図るために、在宅サービスのメニューの拡大及びサービス量の拡充を行うこと。


U 居宅介護(ホームヘルプサービス)の予算の拡充及び国庫補助基準の見直しについて

1.1人暮らし、障害者のみ世帯等の場合で家族の介護が得られない重度障害者等の緊急性の高いホームヘルプのニーズに対して必要なサービス量を確保すること。

2.2003年度に設けられたヘルパーの国庫補助基準について、各地域の実態を踏まえて改善を図ること。
現在、人口規模が小さい市町村では重度障害者一人への派遣でも国庫補助基準を超えてしまうという問題がおこっている。また、福祉施策が整備されていたためにこれまで近隣市から重度障害者が移転してきた市町村においては一人暮らし障害者や障害者のみ世帯が多いため、今回の国庫補助基準では財政負担が重く、サービスの切り下げが起こっている。従って、市町村の人口規模や一人暮らし障害者や障害者のみ世帯の数に配慮した国庫補助基準の見直しが必要である。

 
 
>TOP

◆2003/09/08 『障害連事務局FAXレター』54号

「介護保険との統合」話題に出る〜第7回地域生活支援検討会行われる〜

 この8月末、厚生労働省の人事が大きく変わった。社会・援護局長に小島比登志さん、障害保健福祉部長に塩田幸雄さん、そして、同部の企画課長に村木厚子さんが新任した。
 9月8日の第7回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会は、厚労省の新体制になってはじめての会議となった。
 小島社会・援護局長は冒頭挨拶し、「これから障害者の地域生活支援のシステムの在り方や、各検討事項について議論してもらいたい」と述べた。
 この日は、「地域生活を支えるサービス体系の在り方について」をテーマに、3名の事業者委員から、支援費制度移行後の実績等についての報告があった。
 中西委員は、今年の5月に東京と大阪の自立生活センター利用者約700名を対象にアンケート調査したものを報告した。その中で「平均利用時間の8割を自立生活センターでサービスを提供していることが明らかになっている」と語った。「移動介助においては自立生活センター提供が9割を超えている」とのことであった。さらに、「利用者の多くは時間延長等対応が柔軟など、おおかた自立生活センターのサービスに満足している」などと付け加えた。
 続く早崎委員は、大垣市社会福祉協議会におけるサービス利用状況を報告した。「5月から6月にかけて一部の全身性障害者が抜けたため、少し減少したが、7月に入りまた支給量が増えてきた」とし、「サービスを提供する中で、どういうサービスをその人に提供すればよいのかわかってきた。アセスメントやケアマネージメントが今後重要となる」と述べた。
 最後の室崎委員は島根県の西部にある自身の法人の事例を紹介した。サービスの組み合わせによって、障害者の生活が良い方向へと変化していっている状況が報告された。また「市町村によって支給量の違いが出ていること」を指摘し、ケアマネージャーを配置していくことの必要性を強調した。
 これらの報告に対し、谷口委員は「今後の議論として、ADLに基づいた支給量のあり方と、社会参加などその人のニーズに基づいた支給量のあり方とは同じでないはずなので、その辺の検討をしていく必要がある」と感想を述べた。
 支給量の決定のあり方について中西委員は質問に答える形で「社会参加部分を十分に考慮していかなければならない」とも発言した。
 ケアマネージメントの必要性について太田は発言し、「多くの障害者は受身的な生活を強いられている。ケアマネージャーのような存在がいると、余計に受身的になってしまいやすく、慎重な議論が必要である」とした。

 高橋委員からは「高齢者介護研究会報告書」について説明が行われた。6月にこの報告書がまとめられたが、内容は「障害者介護のあり方に近づきつつあり、『要求する高齢者』という像を前提で政策化していくべきであるという立場に立っている。在宅か施設かという二者択一ではなく、グループホームというような中間的な居住形態や、施設機能のユニット化、地域展開も必要となる。介護保険の利点は赤字を出しても良いということ、つまりあとで被保険者などが穴埋めをしていけば良いということである。2015年を目標に新しい高齢者介護システムの構築を提起している」とのことである。
 関連して京極委員が発言し、「この研究会を注目していた。障害者の地域生活支援にも示唆を与える内容となっている。支援費の検討の際、審議会で基本的な介護については今の介護保険的なもの、社会参加部分については障害者施策という考えで検討した経緯もある。いずれの日にか障害者団体や国民の合意を得、支援費も介護保険の中に組み込んでいく必要があると考えている」とした。

 最後に高原障害福祉課長より来年度予算の概算要求について説明がなされた。「基本方針は義務的経費(年金・医療を除く)の増加を認めない。裁量的経費の総額を2%減(科学技術振興費を除く)」とする。ただし、裁量的経費の要望額については、2%減の額の2割増まで認める、という厳しいものとなっている。支援費の居宅介護については12ヶ月分17.6%増を要求し、支援費全体では16.7%増を要求している」などの説明があった。

 次回の検討委員会は9月30日(火)10時から12時、厚労省17階専用第18会議室で開催される。

お知らせ
9月13日(土)シンポジウム「脳性マヒをはじめとする全身性障害者の社会的自立に向けて」午後1時、総評会館501会議室で行います。
皆様のご出席をお待ちしております。

 
 
>TOP

◆2003/09/30 『障害連事務局FAXレター』55号

"経営優先"か"ニード優先"か、議論のとば口に入る
〜第8回地域生活支援在り方検討会行われる〜

 9月30日(火)の第8回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会は、ある程度議論に時間が割かれた。会議の終了間際「今日はいい議論が行われたと思う。支援費制度を考えていくときに、事業者の立場からの経営優先の考え方と、サービス利用者の立場に立ったニード優先の考え方とどう折り合いをつけていくかが今後の課題である」という総括的な意見が出た。
 この日は「地域生活を支えるサービス体系の在り方について」をテーマに、佐藤委員と村上委員から報告があり、討論が行われた。
 まず佐藤委員は、自身が携わるファミリーサポートセンター昴のこれまでを紹介した。同センターは、レスパイトサービスを全国に先駆けて行った。現在はその延長線上の移送及び一時預かり(宿泊含む)等の生活サポート事業と、ホームヘルプ・ガイドヘルプなどの支援費制度の事業を行っている。支援費制度の移行により、それまでの三倍の時間数の派遣となっている。きちんとニードに対応しきれていない部分も出てきているが、効率よく派遣体制を組み、利用者に合わせてもらうようにすれば、相当の収益性があることも見えてきた。そのために利用者を囲い込み、定型的な地域福祉サービスを提供しまう危険性があることを指摘した。
 さらに事例を紹介する中で、「自薦ヘルパーを登録したい」という利用者がいたが、資格を持っていないなどの理由で「断った」と述べた。
 続いて村上委員は、大分県下における障害児通園事業運営に関する調査票集計結果を披露し、「支援費では単価が低いため、収入減少・経営困難を招いている」などと述べた。次いで大分市におけるデイサービスの状況の説明が行われ、「高齢者ではデイサービスを受ける人は比較的軽度な人が多いが、障害者では重度な人たちが多いのが特徴である」と述べた。これからの地域支援のあり方については、「男性ヘルパーや知的障害者のガイドヘルパーを増やしていくことが必要であるが、何よりも本人と周囲をエンパワーする方向が求められる」と述べ、「ヘルパーやケアマネージャー、コーディネーターなど専門家に囲われた暮らしは、施設を極小化したようなもので、住民・隣人、公的サービス、私的サービス、ボランティアなど多様な支え合いによる暮らしが望まれ、ケアマネージメントが重要となってくる」などと述べた。
 これに対し質疑の中で太田は「多様な支え合いという考え方は賛成できるが、もっと大きく捉え、所得保障、住宅、交通などの社会資源の充実という観点が必要」と述べた。
 また「支援費で追加すべきサービスは何か、緊急の場合どうするのか」との質問が出され、佐藤委員は追加すべきこととして、一時預かりや公共交通機関によらない送迎サービスなどをあげ、村上委員は緊急時には携帯電話で対応をしているなどと述べた。

 最後に事務局から報告事項として「抽出調査による支援費制度の施行状況について」があった。これはあらかじめ93の市町村を選定し、有効回答の76市町村分をまとめ、調査項目により、54〜78市町村分をまとめたものである。
 この調査で明らかにされたことは、自治体によって支援費の施行状況について大きな格差が生じていることである。例えば身体介護についていうと、一人当たりの利用時間数の平均が100倍以上の格差として数字で表されているのである。様々な要因が考えられ一概には言えないものの、激しすぎる格差である。この格差はもちろん身体介護だけではなく、他の類型でも現れている。
 この調査について「政策担当者としては予測通りだったのか」との質問に対して「ある程度予測通りだったが、今後なぜバラつきがあるのかという分析が必要とされる」と高原課長は答えた。さらに介護保険サービスと併用して支援費によるサービスを受けている人がいることについて「もっと詳細に調べ、障害状況についても把握していく必要がある」と述べた。

 なお渡辺委員は、日経新聞社の政府の審議会、検討会に対する方針により辞任され、今回より山路憲夫委員(白梅学園短期大学福祉学科教授)が就任された。

次回はホームヘルプサービスのあり方を中心に議論することとなった。次回10月14日(火)午後1時半〜午後4時厚生労働省18階専用第22会議室

 
 
>TOP

◆2003/10/16 『障害連事務局FAXレター』56号

ホームヘルプサービス事業について論議を深める
〜第9回地域生活支援検討会行なわれる

 高原障害福祉課長は、議論の推移によって検討会としてまとめを出す可能性を明らかにし、「場合によっては第2順目あたりから、ワーキンググループをつくる必要があるかもしれない」との新しい見解を示した。
 第9回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会が10月14日(火)厚生労働省で行なわれた。この日は「地域生活を支えるサービス体系の在り方について(ホームヘルプサービス等居宅支援サービスについて)」をテーマにフリーディスカッションの形で行なわれた。事務局から「居宅支援3事業に関する主な意見等」という今までの検討会で出された意見、各団体が提起してきた意見などをまとめた資料が出され、これに基づいて意見交換がされた。この資料は、「1.議論が必要な具体的なニーズ」として、(1)居宅支援全般、(2)ホームヘルプ、(3)デイサービス、(4)ショートステイ、等と整理され、「2.その他」として(1)地域生活支援に関する理念等、(2)生活ニーズに応じたサービス提供の在り方、(3)財源の確保、サービス量の確保、等の項目が挙げられ、それぞれの項目に意見・考え方などがアトランダムに記されていた。
 その資料の説明を受け「視覚障害の人たちが支援費を受ける場合の事務手続きの問題、署名をどうするかといった問題」など、今まで指摘したにも関わらず抜け落ちているものが少なくないことを、複数の委員が提起した。また、太田は「義務的経費にすべきとの問題や、扶養義務者の費用負担の問題、ホームヘルプという概念の見なおしという重要な問題がすっぽり抜け落ちている。厚生労働省にとって都合のいい意見を中心に抜き出したようにも思える」と発言した。これに対して事務局は「決してそのようなことはなく、今回は3事業のニーズを中心にまとめたものであり、今言われた問題はもっと大きな問題というように認識している」と答えた。さらに他の当事者委員から、「説明の中でボランティアによるサポートも検討というニュアンスも多くあったが、現在不足しているサービスの供給体制の在り方を議論するのがこの検討会の役割ではないか」という指摘も出された。
 中西委員からは「この資料では抜け落ちているものを具体的に出していくことが重要」という意見が出され、"入院中のヘルパー派遣"や"当事者仲間のリーダー育成"など5項目が提起された。
 その他の委員からは、「事業者が利用者を囲い込まないような、社会的に認められうるシステムにしていく」ことや「市町村の自主性が発揮できるしくみにしていく」こと、さらには「類型の単価の見なおし」や「類型そのものを柔軟性のあるものにしていくこと」などの意見が出された。また「ショートステイやレスパイトサービスは下手をすると施設サービスと変わらなくなってしまう」という意見や、「移動介護が一般の交通機関の利用しか認めてないのは困る」あるいは「施設から在宅へ具体的な財源配分を変えていくことが重要」などという発言もあった。
 大谷委員からは「介護保険との関係についても考えていきながら、今の支援費で障害者のニーズにどれくらい応えられているのかを検討し、公的なサービスである以上、市民を納得させられる根拠や客観的基準は必要であるように思える。また代替的サービスについても検討していかなければならない」との発言があった。
 また、高橋委員は「権利擁護の仕組みについて具体化を急ぐ必要がある」と発言した。
 安藤委員や太田などが再三にわたり「検討会としてワーキンググループをつくっていく必要がある」を主張し、それに対して冒頭で記したような高原課長からその可能性を示唆する答えがあった。
 板山座長代理は、「今後議論を進めていくにあたり、スケジュールを明らかにしていく必要がある」と提起した。
 さらに板山座長代理は「精神障害者の地域生活支援の在り方に関する検討会」が発足し、その副座長に就任したことに「本来は一緒にこの問題を検討すべきだと考えていたが、人数の問題もあり、別々となってしまった。ふたつの委員会が連携をとりながらやっていきたい」と抱負を述べた。
 最後に大熊委員から、"施設にいたい人もいる"という発言を受けて、「ケア付き共同住宅など施設ではない居住の場が国際的な流れであることを押さえておく必要がある」との発言があった。

 なお事務局から出された資料は以下の通りである。
......................................

居宅支援3事業に関する主な意見等
1.議論が必要な具体的なニーズ
(1) 居宅支援全般
@ 入所施設から一時帰宅中の介助といった支援
A 医療的ケアに対する対応
(2) ホームヘルプ
@ 例えば失禁、転倒、パニックといった突発的に起こることに対する速やかな対応
A 24時間体制で待機者がいて緊急派遣を行う緊急介助派遣のようなサービス
B 職場や学校での介助
C 例えば、自治体単独事業としての放課後の障害児童預かりの場所や、無認可作業所といった活動の場において、介護支援を担うスタッフが十分揃っていない場合の身体介助等
D 重度の聴覚障害者について、情報、コミュニケーションに対する支援
E 通勤・通学等の日常的かつ恒常的な移動に対しての支援
F 自閉症者に対する移動介護における見守りとしての支援
G 移動介護における、公共交通機関以外の移動手段(自家用車等)
H 移動介護における、宿泊を伴う外出
(3) デイサービス
@ 例えば学校からセンターへ、センターから保護者の職場へといった自宅外への送迎
A 障害のある中学生や高校生の放課後や夏休みに対する対応
(4) ショートステイ
@ 施設以外での受入(共同作業やデイサービスセンター等)、受託先の弾力化
A 通所施設における宿泊による受入

2.その他
(1) 地域生活支援に関する理念等
@ これからの施策は、施設サービスから在宅サービスの充実へシフトさせることが必要
A 障害者のホームヘルプは、自宅における介護だけではなく、自立して社会で暮らすということをサポートすることである
B 自立に向けたサービスの在り方を考え、提供していくことが重要
C エンパワメントの視点が重要
D 障害者の介助サービスは、障害者のニーズに応じて時間、対象、サービス内容の3つについて無制限であるべき
E パーソナルアシスタント、ダイレクトペイメントの検討が必要
F ホームヘルプサービスの国庫補助基準は、NPOを含め提供基盤が整備されている都市部のサービス状況と町村のサービス状況に格差があることから、一律の基準ではなじまない
(2) 生活ニーズに応じたサービス提供の在り方
@ 公的サービスを弾力的・柔軟的な運用をすることで利用者のニーズの多くに対応可能
A 公助のみでサービス賄うことは,一人施設化(世界一小さい入所施設)。ケアマネジメントの手法を利用しながらインフォーマルサービスを加えるほうが、生活の幅に広がりがでる
B 現状で用意されている公的サービスの範囲を越えてニーズがある場合は、それを県や市町村に認識してもらい、欲しいサービスがなかったら作ってもらうように活動しなければならない
(3) 財源の確保、サービス量の確保
@ サービス提供事業者について、特に町村部について事業者の確保が必要
A 日常生活支援のサービスを提供する事業者数が少なくその確保が必要
B 移動介護の単価は低いため、移動介護を行う事業者が少なく、その確保が必要
C 地域に移行するためには、ショートステイ事業を増やすことが必要
D ショートステイがないため、市の単独事業でグループホームの寮を使って対応している
E 全身性障害者の居宅支援に関するニーズの内、ホームヘルプサービスとして公的に提供すべき内容と範囲について検討し、市町村が行う支給量決定の勘案基準等の策定を図る」ことが必要
F ガイドヘルパーについて、身体介護を伴う場合と伴わない場合の判断を含む最低限の基準を定めることが必要
.................................................................................
次回検討会 10月28日(火) 午前10時から厚生労働省17階

 
 
>TOP

◆2003/10/28 『障害連事務局FAXレター』57号

財源論議を早急に行うよう当事者委員求める
〜第10回地域生活生活検討会行われる〜

 「予想以上に支援費利用が伸び、今年度のホームヘルプ予算では足りなくなってしまうという情報もあり、この検討会が1月のホームヘルプサービス上限設定問題に端を発してつくられた経緯から、財源確保をどうするかという問題について、この検討会で、今日の予定を変更してでも行うべきだ」と、中西委員、大濱委員、太田など当事者委員は主張した。
 これに対して事務局は、「次回の検討会でテーマとしたい。必要なデータを次回には提出するようにしたい」と答えた。板山座長代理は「事務局に次回までしっかりとした準備をしてもらって、議論をした方が話ができる」と述べた。森祐司委員は「支援費制度がスタートし、障害者の介護サービスの低下が危惧されている。この委員会の議論に障害者団体が消耗していることも確か。そういう当事者の危機意識が存在するということをふまえて、次回きちんと論議したらどうか」と発言した。

 この日のテーマは「地域生活をとらえるサービス体系の在り方について(就労支援、住まい等の施策について)」であった。
 事務局から、就労・住まいに関する現行の主な施策の形態と、「就労・住まいの支援施策に関する主な意見等」と題した資料が配られ説明があった。
 その後、質疑に入り、笹川委員から「ITの在宅就労の研究会に視覚障害者が入っていない」との指摘があった。また「就労・住まい・介護は地域生活支援にあたって関連性をもつ一体となっているものと捉えられるべきである。一般就労と福祉就労の線引きを考え直す必要がある」と京極委員は発言した。
 竹中委員は「スウェーデンやアメリカに比べ、有能な障害者が社会全体のリーダーとなっていない。福祉とか就労とかいう枠組みそのものを根底から変えていく必要がある」と発言した。
 障害者の就労実態などをまとめていくこととなった。その際、「精神障害者も組み込んだものをつくってほしい」と大熊委員は述べた。
 中西委員からは、住まいに関して「高齢者居住安定法を障害者にも適用していき、家賃債務保証などを行っていく必要がある」との意見提起がされ、さらに「見逃してはならないこととして、知的障害者が公営住宅での単身入居がいまだにきちんと認められていないことがある」と述べた。ピープルファーストや育成会本人部会のメンバーも、この問題について具体的に発言し、さらに家賃補助の必要性について訴えた。

 報告事項として事務局より「居宅生活支援サービスの利用状況調査の結果について」が仮集計として出された。今年の4月の状況を対象に、3201市町村に調査、有効回答数は3192市町村であるとのこと。今年1月の段階と比べ、ホームヘルプサービスの利用状況は相当伸びており、全身性障害者の場合でいえば83時間から、日常生活支援としての135時間と1.6倍に伸びている。
 また、有留委員から東京都における「居宅介護支援費実施状況」が出された。これはこの4月から6月までの3ヶ月分の状況を調査したものであった。サービス決定量とその実績は、身体障害者の日常生活支援が相当大きなウエートを占めており、いずれの月も全国調査の平均値125.8時間の約2倍となっていた。視覚障害者ならびに知的障害者の移動介護等の時間数も軒並みに、昨年度に比べ大幅に上回っており、利用時間数全体でも昨年度に比べ9.9%増という内容であった。
 この状況から、「東京都として厚労省に対して緊急アピールを出した」と有留委員は付け加えた。
 「このような状況をどうみるか」との中西委員の質問に対し、高原課長は「今年度は平年度べースで約15%増の予算を確保した」と述べ、全体を見るには6月以降の不確定要素があるとの見解を示した。
 
 次回検討会 11月14日(金) 午後2時〜午後5時
厚生労働省18階 専用第22会議室

 
 
>TOP

◆2003/11/06 『障害連事務局FAXレター』58号

2003年度障害連総会(拡大役員会)行われる

 去る10月27日(月)2003年度総会(拡大役員会)を千代田区神田公園事務所で行った。5団体が出席、1団体がオブサーバーで参加した。
 活動方針は、支援費制度をはじめとする介護問題に重点を置くことをはじめ、年金問題、とりわけ無年金障害者の解消に力を入れていくことが確認され、また、脳性マヒをはじめとする全身性障害者の諸問題の解決に向け、シンポジウムの開催などを通し、取り組んでいくことになった。
 財政問題も論議され、事務局は加盟団体に対し、会費請求をきちんと行う必要性が確認された。その上でできれば年間二口納入をお願いしたいという提起があり、あくまで「考え方」としては了解されたが、未回収分をとることが先決課題とされた。
 言語障害問題をはじめ、全身性障害者が抱える問題が多方面から提起され、障害連のこれからの運動に方向性が与えられた。
 なお、役員については2002年度役員が継続していくことになり、必要があれば臨時総会を開き、役員の入れ替えも検討していくことになった。


10月4日東京交通労働組合と障害者の集いが行われました
 雲ひとつない「青空」のもと東京国際フォーラムにおいて、東交と障害者の集いが行われました。
今回の大きな柱としては、2005年のバリアフリー法改訂に向けてDPI日本会議の三澤氏から「今、世界的に障害者の権利規定を明確にした条約の機運が高まる中で、日本でも移動の保障をはじめとした差別禁止法の取り組みが必要」との講演がありました。
私たち障害連と、東京交通労働組合(以下、東交)はこれまで8年の間、議論を積み重ね、時には交流会を通じて「意思疎通」のための時間をつぎ込んできました。
 いずれにしても東交労組と私達障害者が築き上げてきた関係をさらに深めていきたいと思います。今後どう取り組んでいくのかも障害者側がもっと意見をすり合わせていく作業も重要だと考えています。
 再来年は東交労組設立から60周年を迎えるそうです。現在イベントを企画しているよ
うです。いずれにしても「人にやさしい都市交通」を全国各地に発信していくことも重要な「時期」に来ている事を感じました。

9.13 シンポジウム行う
 去る9月13日(土)「脳性マヒをはじめとする全身性障害者の社会的自立に向けて」をテーマに70名以上の参加のもと障害連主催のシンポジウムを総評会館で行った。
 シンポジストには小佐野彰さん(自立の家をつくる会)、岸野洋子さん(東京青い芝の会)、大島由子さん(東京都清瀬療護園自治会)と高橋さん(同園職員)、宮本泰輔さん(DPI日本会議事務局)らがたった。司会は伊藤雅文事務局長が行った。
 支援費など介護サービスの問題や、施設における様々な問題、二次障害など医療問題などが様々な観点から出されていった。フロアからも「支援費は事業者にとってはいいが、選択肢がない中で、障害者にとってはメリットがない」などの積極的な発言が何人かから出された。
 このシンポジウムによって脳性マヒなど全身性障害者の生活問題は非常に根が深いものであることが明らかにされた。
 今回は東京都福祉局の後援など、さまざまな団体が支援してくれた。
 障害連としては、この種のシンポジウムを連続して行う予定である。

 
 
>TOP

◆2003/11/14 『障害連事務局FAXレター』60号

ホームヘルプ予算今年度2割強不足する見通し
〜第11回地域生活支援検討会おこなわれる〜

 11月14日開かれた第11回障害者(児)の生活支援の在り方に関する検討会は、2日前に行われた7団体と厚生労働省との経過もあり、緊張に包まれた雰囲気の中で始まった。
冒頭高原障害福祉課長は今年度のホームヘルプ予算の執行状況について説明し、「支援費の4月と5月の利用実績から考えて、今年度のホームヘルプにかかる国の経費は、330億円が必要になる」と述べ、「今年度のホームヘルプ予算が11か月ベースで、278億円であることから、大幅に不足となる」見通しを明らかにした。
さらに、同課長はその理由について「支援費制度に移行し、総費用、総利用に関する、一時間当たり費用ともに、措置時代より伸びをみせる。昨年度と今年度を比較して総費用の伸び率(今年度については4月分)は34.6%となる。総利用時間数についても7%の伸びとなった」ことをあげた。
これを受けて、検討委員会に参加している障害7団体は共同で要望書(別記参照)を提出、日身連の森裕司委員が読み上げた。
 塩田障害保健福祉部長はこれに答え、「サービスの利用が増えたこと自体、支援費制度の影響によるものとしてとらえていきたい。今朝、厚生労働大臣も記者会見の中で、『支援費制度が全国津々浦々に行き渡っている状況と認識している』と述べている。要望書をふまえ精一杯の努力をして行きたい」と回答した。

 この日は、全国知事会として浅野宮城県知事からのヒアリングもあった。浅野知事は「初年度からこういうことになったことは憂慮すべき事態である。今後施設から居宅支援へ財源配分の変更をおこなう必要がある。市町村障害者生活支援事業等の一般財源化については、基本的には一般財源化は反対ではないが、これについては事業が浸透しないうちの一般財源化などで問題は大きい。今後ホームヘルプサービスについては、財源確保の観点から、介護保険に巻き込んでいく必要があるのではないか」等々と発言した。
 これに対して、大濱委員やピープルファーストの佐々木さんから、障害者のホームヘルプを介護保険に統合していくことに疑問の意見がだされ、特に大濱委員は「障害者の介護と高齢者の介護は基本的にちがうのではないか」とただした。
 浅野知事は「それは正論かもしれないが、現実問題として財源を確保していかなければならず、国民連帯の観点からも統合の必要性を現時点では感じている」と答えた。
 
 相談事業やケアマネジメントのありかたについても、この日は自由討議が行われた。
 中西委員は「セルフケアマネジメントが必要であり、障害者が障害のある仲間のエンパワメントを受けることにより、自らの生活を築いていくことが重要である。ケアマネジメントは時間的にも限定していく必要がある。障害者の生活のありようと高齢者のそれとは必然的に違いがあり、今のケアマネジメント手法で障害者のケアマネジメントをおしはめていくことは問題」と主張した。
 これに対して、複数の委員から「ケアマネジメント手法を取り入れていくことは重要。現在の介護保険のケアマネジメントは本来のケアマネジメントとはちがう。障害者や高齢者のもつニーズに対してマネジメントしていくことは求められている」などの意見も多く出された。
 太田は「福祉は利用したい人、あるいは利用の必要性のあるものが利用するもの。決して押し付けられるものであってはならない。専門家の人材育成は必要だと思うが、当事者や、当事者組織との共同によって、専門家支配の弊害を防ぐ策が必要」と発表した。
 この他、「利用者本位の視点」や「中立性の確保」等々議論は多岐にわたった。

ホームヘルプサービス問題は、私たちが1月に懸念していた問題が顕在化し、重要な曲がり角にさしかかっている。これからの取り組みが重要である。


次回検討会 11月26日(水)14:00〜17:00
厚生労働省 18階専用第22会議室
※申し訳ありませんが、次回検討会の報告はお休みさせていただきます。

別 記
2003年11月14日

厚生労働大臣 坂口 力 殿

ホームヘルプサービスの国庫補助に関する緊急要望書
拝啓
 平素より、貴殿の障害者福祉へのご尽力に感謝申し上げます。
私たちは、ホームヘルプサービスを利用し地域で生活する重度障害者及び家族を会員に持ち、また、その生活を支援する団体です。
本年から障害者福祉の分野では支援費制度が導入され、措置制度から利用契約に基づく福祉サービスに大きく変わりました。「自己決定」「自己選択」の支援費制度の理念のもと、サービスの利用者である障害者の主体性が高まるとともに選択の幅が広がり、特にホームヘルプサービスを始めとする地域生活支援のサービスが拡充されました。また、既存のサービスの充実だけでなく、今まで必要であるにもかかわらずサービスを受けられていなかった多くの障害者が支援費制度によってサービスを受けられるようになりました。とりわけ、これまでホームヘルプサービスの利用ができなかった知的障害者においては、全国でサービス利用が活発に進んでいます。また、市町村が支援費制度発足にあたって、財政が厳しい中にもかかわらず支援費制度の予算を拡充させたことも大きな要因です。支援費制度がもたらしたこのような状況については、私たちは大きく評価しているところです。
しかしながら、支援費制度によって各地域のサービス量が増加したことで、本年度の国庫補助金が大幅に不足する可能性が強まっています。厚労省は現在、自治体に対して調査を行っていますが、すでに都道府県、政令指定都市から自治体のサービス量に応じた補助金の確保を要望する声があがっています。  
市町村は国庫補助が受けられることを前提に予算を組んでおり、国庫補助が受けられないということであれば、今年度末にサービスの縮小を行わざるをえない市町村が出てくることは確実です。このような情報に接し、今後、必要な介護を受けられなくなるのではないかという不安の声が多くの障害者から寄せられています
また、支援費制度発足の年においてすでに財源的にたちゆかなくなることは、制度の存続にもかかわることであり、支援費制度が始まりようやくこれから地域生活への展望を持ち始めた多くの障害者の期待を裏切るものです。
本年度の予想を上回るサービス量の拡大は、支援費の制度の理念に沿って各自治体が障害者施策に懸命に取り組み、潜在的なニーズが掘り起こされた結果であり、まさに支援費制度導入によって意図した状況が起こったといえます。これに対して国がしっかりと財源保障をし、市町村をさらに支援する体制をとるならば、今後の障害者の地域生活支援はよりいっそう進み、支援費制度は世界に誇れる障害者福祉制度となるでしょう。
私たちはこのように考え、本年度のホームヘルプサービスについて必要な予算の増額を行っていただけるよう国に強く要望致します。

要 望 団 体
         社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 会長  兒玉 明
日本障害者協議会            代表  河端 静子
特定非営利活動法人 DPI日本会議   議長  山田 昭義
社会福祉法人 日本盲人会連合      会長  笹川 吉彦
財団法人 全日本聾唖連盟        理事長 安藤 豊喜
         社団法人 全国脊髄損傷者連合会     理事長 妻屋 明
         社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会    理事長 藤原 治

 
 
>TOP

◆2003/12/12 『障害連事務局FAXレター』64号

「ホームヘルプ予算今年度メドついた」塩田部長語る
〜第13回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会開かれる〜


 委員会の冒頭、塩田障害保健福祉部長は、「ホームヘルプ予算について今年度2割を超える予算の不足が予想されていたが、関係者の努力によって、所要額を全額確保できる見通しがたった。また、来年度予算についても、満額確保できるように現在努めているところである」と挨拶した。

 12月12日(金)、「第13回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」が厚生労働省で行われた。予算確保の状況が厳しい情報が流れる中、今回は傍聴希望者が多数となり、抽選となったとのこと。

 塩田部長の挨拶を受ける形で、障害7団体を代表して森裕司委員(日本身体障害者団体連合会)が「私たちの要望を受け止めていただき深く感謝したい」とお礼を述べた。
 
 さて、委員会はこれまでの論点整理と今後の委員会の進め方について事務局から提案があった。内容は、1.ライフステージ等に応じたサービス体系の在り方、2.サービスを適切に供給していくためのシステムの在り方、3.サービス供給を支える基盤の在り方、とされ、財源の在り方については、3の中に位置付けられている。また、ホームヘルプについては当事者団体の委員と学識経験者とで作業班をつくり、つめた議論を行いたいとした。

 中西委員からも、ホームヘルプを中心にした2巡目以降の議論の進め方について具体的な提案がされた。

 中西委員からの提案も含めて、座長と事務局が相談し、次回具体的な提案を行うことになった。

 今回の議論では、将来的にどう財源を確保するか具体的な議論が必要との発言が目立った。「地方の立場にたった仕組みをつくってほしい」「現在の介護保険におけるサービスを見たとき、その改善を図る意味でも介護保険への論議が必要」「どういう制度設計をしていけばよいかという観点で、介護保険への論議をしたほうがよい」といった発言が相次いだ。

 これに対して、中西委員や、オブザーバーたちから「介護といった重要な施策は税で行うのが基本ではないか。保険は道理にあわない」「自分たちには負担能力がない。介護保険では難しい」と主張した。

 最近の検討委員会の動きを見ていると、財源確保という至上命題によって、介護保険への統合の論議が先走っている傾向が強い。もちろん、財源確保は重要な課題であるが、その中身の在り方によって終着駅は決まってくるはずである。今、障害を持つ人たちの地域社会の中で社会的自立、社会参加を可能とさせる社会基盤はどうあるべきか、社会保障給付の在り方はどうなのか、といった議論こそ求められる。現状の介護保険制度を見る限り、到底ばら色の制度とは言いがたい。

次回検討会は1月22日(木)10時〜12時、厚労省17階18階会議室
                                          

平成16年度に向けた事業運営の見直しについて提案を受ける

 去る10日(水)厚労省障害保健福祉部は、障害7団体を呼んでこの問題について説明を行ったが、12日の検討会終了後、それをペーパーにする形で、各団体に手渡した。

 来年度のサービス量を確保するという観点から、見直したいとし、○居宅介護(ホームヘルプサービス)支援費の早朝、夜間等加算の適用の見直し、○居宅介護(ホームヘルプサービス)支援費基準額等の見直し、(1)身体介護、家事援助について、現行の介護報酬の単価に合せる、(2)全身性障害者の移動介護について、日常生活支援との一本化を図る、(3)移動介護について、「身体介護を伴う」と「身体介護を伴わない」の区分をやめ、一本化を図る、○地域区分率の見直し、などとある。

 支援費基準額の見直しは、身体介護について、90分を超えて30分ごとに加算する額が現行の2,190円から830円と大幅に減額される。また、全身性障害者の移動介護が日常生活支援と一本化されることは、移動介護を多く認めていた自治体の障害者にとっては大きな痛手となることが明らかである。

 この提案は12月20日ぐらいまでに団体に持ち帰った上、回答することとなっている。やりくりに大変なことは理解できるが、しわ寄せが地方の障害者などより弱い立場にある障害者にこないようにさせることが一番求められている。


 
 
>TOP

◆2003/12/18 『障害連事務局FAXレター』65号

厚労省、ホームヘルプ等の事業運営の見直し、白紙に戻す

  前号で、ホームヘルプサービス支援費の早朝、夜間等加算の見直しや、身体介護、家事援助等についての支援費基準額の見直しなどについて、厚労省から7団体に提案があったことを伝えた。
  それに対して、7団体は下記の要望書を提出し、12月17日(水)午後3時から高原障害福祉課長らと交渉をもった。その結果「これらについては、障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会で議論していく」ことになった。
  この交渉には、日本障害者協議会(JD)から藤井常務理事、DPI日本会議からは三澤事務局長らが出席した。
  また、グループホームの事業運営の見直しについても、厚労省は関係団体に突然提案したが、重度障害者の生活を無視するものとして、関係団体から大きな批判の声が高まっていた。
  この日、DPI日本会議やグループホーム関係団体などは、午前中約300名が厚労省に集まり抗議の集会と交渉を行った。その結果、厚労省は見直し案について白紙撤回し、突然の提案に対し陳謝した。

別 記

2003年12月17日

厚生労働大臣 坂口 力 殿

「平成16年度に向けたホームヘルプサービスの事業運営の見直し(案)」についての意見と要望

拝啓
 平素より、貴殿の障害者福祉へのご尽力に感謝申し上げます。
この度、貴省から提案のありました「平成16年度に向けたホームヘルプサービスの事業運営の見直し(案)」については、支援費制度が始まってわずか1年での大幅な類型・単価体系の変更であり、ホームヘルプ事業者に対して大きな混乱を産み、利用者に対するサービスの低下がおこる可能性が非常に強いと考えています。
 このような重要な見直しについては、現在行われている障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会において検討されるべき課題であり、拙速な制度の変更は貴省と当事者団体の信頼関係を損なうこととなります。
本年の大幅な予算不足を受けて事業運営に対して何らかの工夫をしなければならないことは理解しますが、あくまでもサービス利用者の地域生活の保障を第一に考えた対応を要望致します。





1.現状でこのような大幅な見直しをすることは時期尚早であり、貴省の案を白紙に戻し、互いの信頼関係を保ちつつ、障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会で議論すること。

2.なお、今回、同様に来年度予算に関する見直しとして示された「平成16年度に向けたグループホームの事業運営の見直し(案)」についても白紙に戻し、当事者・関係者との信頼関係を保ちつつ検討を進めること。
以上


要 望 団 体
社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 会長  兒玉 明
日本障害者協議会                 代表  河端 静子
特定非営利活動法人 DPI日本会議      議長  山田 昭義
社会福祉法人 日本盲人会連合         会長  笹川 吉彦
財団法人 全日本聾唖連盟           理事長 安藤 豊喜
社団法人 全国脊髄損傷者連合会        理事長 妻屋 明
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会     理事長 藤原 治

 
 
>TOP

◆2003/12/22 『障害連事務局FAXレター』66号

DPI東京、ホームヘルプで都福祉局と意見交換する

  厚労省が来年度予算編成に向けて、ホームヘルプの事業運営の見直しを団体側に提案したが、「検討会の中で議論すべきこと」と団体側は受け入れず、白紙となる状況の中で、去る12月22日(月)DPI東京は役員を中心に、東京都福祉局芦田在宅福祉課長、小川係長などと意見交換を行った。

  芦田課長は、「国の予算不足が明らかとなり、都として国に早速要望書を出し、財源確保を求めた」。また来年度予算に向けた見直し問題に対しては「グループホーム問題については白紙撤回を、ホームヘルプについては、加算問題や、移動介護の日常生活支援への一本化など、ある程度都の主張が受け入れられた部分もあり、それについては評価した内容とした」と述べた。DPI東京から「私たちとしても評価できる部分もあるが、全国的に見ると、移動介護を薄く引き延ばして使っている実態もあるので、基準単価を低く見直すのは問題がある」という意見があった。

  都としては「支援費制度により利用が大幅に伸びることを見込み、今年度予算で42%増とし、現在37%ぐらい去年より増える見込み。来年度予算については約9%増を要求している」と課長は述べた。

  町田市で暮らす仲間からは、「今なお従来からホームヘルプを受けていた人と、新規の申請者とは明確に基準が違う」ことが訴えられた。「市は国が2分の1を補助しなかった場合のことを想定しており、もしそうなった場合、都は財政支援するか」の問いに対して、「それは無理。全体の4分の1を補助することになろう」と述べた。

  また課長からは「国の検討会で、日常生活支援、知的障害者の移動介護、視覚障害者のコミュニケーション介護など、ワーキンググループが設置されることになり、都としても参加要請を受けた」との発言があった。これに対してDPI東京からは「当事者と十分協議をした上、都としての考えをまとめるよう」に求めた。

  懸案事項の「取扱要領(案)」については、課長は「都の原案で市区などと協議している。『医療行為ついては、国の考え方より進みすぎているのではないか』『移動の介護の社会奉仕活動の範囲が広すぎる』などの意見が出ている。しかし"自立生活センターを明記"することについては難色を示している自治体が多い」と述べた。

  最後に課長から重度脳性マヒ者介護人派遣事業について、「現在原則として他人介護としているが、実態として90%が家族を介護人として登録している実態を考え、原則として家族介護というように変え、他人介護の場合は支援費を利用してもらうようにしたい」との考え方を明らかにした。

  これに対してDPI東京は、「障害者本人の自立という観点で制度がつくられるべきである」と基本的な考えを示し、障害者本人の意思や生活を無視した家族手当とならないよう求めた


REV:..20030507,29,0606,08,14,27,0706,17,18,0804,22,25 1023,1102,1113,16 1227,30, 20180806
障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連)
TOP HOME (http://www.arsvi.com)