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研究会「職場の人権」

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last update: 20160627


■第1回  1999.9.18

『今、なぜ<職場の人権>なのか?』

 180名参加という大盛況だった第1回例会では、研究会を呼びかけた労働問題研究者の熊沢誠、労働弁護の豊かな経験を持つ井上二郎、せんしゅう労連委員 長上田育子の3名が、それぞれの立場から現代日本の職場での人権の状況と、今何がなされるべきかを語り、あと、フロアの参加者を含めて相互に熱い討論を交 わしました。
 

■第2回  1999.10.16

『企業社会のストレスといじめ』

 職場のいじめ、ストレスを考える

 厳しい不況のなか、いま職場の多くの労働者に雇用不安や、ストレスと心身の疲れが充満しています。労働者の人権を直截に襲う職場のいじめ、退職強要、リ ストラ解雇、あるいは職場のサバイバル競争に生き残ろうとしての過労死など、深刻な問題があとを絶ちません。このことは日本型の労務管理や雇用システムと 無縁ではありません。日本の企業が強力に押し進めてきた労働者の「個人処遇化」は、従来の労働組合的団結をも駆逐するがごときです。「私たちの労働現場を もう少しは民主主義と人権が息づく界隈に変えるため」に、熊沢誠がストレスといじめの労働現場を分析しました。
 

■第3回  1999.11.13

『不安定雇用労働者の増大に どう闘うか』

 増大する不安定雇用者労働者。すでに非正規雇用労働者は30%を超え、女性に至っては53.8%になっています。そしてこのことに拍車をかけているの が、労働市場の自由化・雇用の流動化をもくろむ労働法制の全面改悪です。こんな情勢だからこそ何らかの社会的・法的規制が必要なはずなのに事態はまったく 逆で、昨年の労基法改悪に続き、派遣法、職安法までも改悪されました。雇用不安に対置する私たちの運動が、いまほど求められているときはありません。中野 麻美が豊富な実践を通じてさまざまなアドバイスを試みました。


■第4回  1999.12.11

『職場の人権確立に向けて−ドイツとの比較を通じて−』

 混迷著しい日本の労働運動について、西谷敏は「労働の人間性、つまり生存権と自己決定の両方が尊重される道」を考えるべきだと主張します。豊富なドイツ 労働法制の研究を通して、日本の労働法を比較検討し、ひいては日本の労働運動の再生の道を提言しました。


■第5回  2000.1.15

『新しい水準の<人権>概念を創設しよう
−労働問題・新福祉国家論・シングル単位論・市民(派政治)運動の統合を目指して−』

 資本側の労働政策攻勢に対抗して、今日の日本に求められている労働運動は、新自由主義路線に対抗する社会民主主義的な統合的政策体系を持った運動であ り、新福祉国家論を射程に入れた大きな構想をもった運動です。労働運動にフェミニズムの価値観をいれて、積極的にフェミニズム労働運動を創っていく必要が あります。伊田広行は、そのためには女性運動や労働運動の主体の側の理論的思想的統一と体制の建て直し(ネットワーク)−−その鍵は「シングル単位」−− が重要だと考えてきました。以上の観点を踏まえて、<人権>概念を新しい資本蓄積段階に応じた形で発展させていきたい、またそこに、精神的水準を問題とす るスピリチュアリティの視点を結合させたい、例会で伊田はそう主張しました。
 

■第6回  2000.2.12

『改定労働者派遣法と日本的雇用の激変』

 1999年12月1日、改定派遣法が施行されました。派遣会社は、(1)雇用責任なし、(2)雇用調整可能、(3)経費節減、(4)リストラの可能性、 (5)職場の活性化・・・を宣伝文句に、派遣導入のメリットを売り込んでいます。経営側にはこれ以上ないほど好都合なことばかり。派遣労働拡大によって正 社員雇用が無意味化するのは必至です。とくに、法制定のどさくさまぎれに導入された「紹介予定派遣」は、深刻な結果をもたらす危険性があります。 他方、 新派遣法は「1年ルール」など派遣拡大への歯止めや各種の労働者保護措置を導入しました。しかし、経営側からは「新派遣法は使いにくい」と、早くも見直し の声が出ており、油断しているとせっかくの規制も骨抜きにされかねません。報告では1600件を超えるEメール相談から窺える派遣労働者の過酷な現実を紹 介し、新派遣法が日本的雇用にどのような影響をもたらすかが検討されました。
 
■第7回  2000.3.18

『職場のセクシャルハラスメント』

 1999年は、初のセクシャル・ハラスメント提訴(福岡)から10年、4月には改正「均等法」で事業主のセク・ハラに対する配慮義務が法制化、年末には 大阪府知事が選挙応援の女子学生に対するセク・ハラにより、辞任に追い込まれるなど画期的な年となりました。職場、学校、その他男女が同席するあらゆる場 で、セク・ハラは起きています。今回の報告は職場にしぼって、男性による女性への人権蹂躙の実態を紹介し、男性の意識改革を促しました。


■第8回  2000.4.15

『平等への女たちの挑戦−−最近の男女差別裁判の現場から』

 昨年11月、日本労働弁護団は、商工中金、住友生命、住友金属をそれぞれ被告とする男女差別裁判の原告側弁護団を、実態の解明に不可欠な会社資料の提出 を大阪地裁に命令させるという画期的な試みに成功されたとして、日本労働弁護団賞を授与しました。この例会では、上の三弁護団にいずれも属して中心的な役 割を果たした宮地氏が、豊富な資料を示しながら最近の女性差別裁判闘争にこめられた女性たちの思い、法廷での論争点、会社「内部」資料提出命令の意義など をクリアに語り、参加者に大きな感銘を与えました。なお、宮地氏の好著、「平等への女たちの挑戦」(明石書店)も参考になります。


■第9回  2000.5.13

『森田パートの人々−その生活とたたかい−』

 1980年12月9日、森田綿電臨時工パート労働組合が約80名で結成されました。ここに、本工化をはじめ、賃金、一時金、退職金などの格差是正要求を 含むパートの人権闘争が始まります。その19年後、さまざまのいやがらせに屈せず、残ったパート労組員9名が希望退職に応じないことを理由に正社員に先駆 けて全員指名解雇されました。それから2年間、解雇撤回に向けた闘いが展開され、やっと5名に正社員としての職場復帰、4名に退職金相当額の解決金を提示 させるに至り、解決の糸口をつかみました。

 「女やと思ってなめたらあかん!」と決して土俵から降りずに、仲間の連帯と闘いを生きる糧としてきた組合員、そして彼女たちとともに歩んだユニオン委員 長が、インタビュー形式で、その内面と生活に根ざした思想を語りました。


■第10回  2000.6.17

『障害者の雇用、職場は今・・・』

 昨今の雇用不安のなかで、とりわけまず犠牲にされているのが障害者です。障害者の就業率は僅か5%、25万人にすぎません。現在求職中の障害者は、10 万人を越えると言われていますが、それにもましてこの間解雇される障害者があとを断たないというのが現状です。かつて景気のよかったときにも障害者の雇用 はなかなか厳しかったのに、いざ不況になると真っ先に解雇されてしまうのが、障害者雇用の実態です。

 98年の「障害者雇用法」の一部改正で、法的雇用率が1.6%から1.8%に引き上げられましたが、しかしそのことで雇用が拡大したわけではありませ ん。未達成企業は、55.3%に増えています。また大阪府の実雇用率は1.5%と、前年と同様です。

 労働者の課題にすらなかなか取りあげられてこなかった障害者の雇用、職場の実態をこの問題に精力的に取り組んできた池田直樹弁護士が分析し、状況の改善 に向けた問題提起を試みています。



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■第11回  2000.7.15

『国際労働条約からみた職場の人権』

 国際人権規約やILO条約で規定された国際的なレベルの「職場の人権」カタログと比較した場合、日本における「職場の人権」は極めて遅れた状況にありま す。「憲法は企業の前で立ち止まる」とよく言われますが、実は国際労働条約における職場の人権は、憲法以上に日本の政府や裁判所によって無視されてきたも のなのです。この例会では、こうした状況に鑑みて、国際労働条約の概要や国際機関の活用の仕方などについて、労働法研究者の根本到氏が説得的な報告をしま した。とりわけ、性を含めた普遍的な意味での「同一価値労働同一賃金」などの重要な規定があるにもかかわらず、長い間無視されてきた「経済的、社会的及び 文化的権利に関する国際規約」については立ち入って検討が加えられました。また、ILO諸条約の批准において、日本が先進国として著しく立ち後れているの はなぜかをめぐって、活発な質疑応答がありました。


■第12回  2000.8.19

『大学非常勤教員の劣悪待遇を訴える』

 まず、阪神圏非常勤講師組合委員長・長澤氏が、大学における非常勤講師の地位と現状を報告した。大学は講義の約半分を非常勤教員に負っているが、その労 働条件は劣悪である。本務校のない専業非常勤は全国に約二万人もいる。1コマ(90分)で月4回講義して約2万5千円なので、10コマやっても、年収は約 300万円である。しかし、専任教員は45歳教授で1200万円程度もあり、その賃金格差は大きすぎる。こうした現状を指摘した上で、労働条件の改善要求 案や、将来的な賃金のあり方ーーたとえば、専門職型の非年功賃金的な、年齢に関係ない賃金ーーが議論された。

 次に、同組合執行委員の福田氏から、全国の非常勤講師組合(京都、東京、阪神)の活動状況、社会保険に入れない不利益状況計算、週10コマ負担すると、 準備や採点などによってまともな教育活動ができないほど忙しくなること、立命館学園にみられるように、有期(3年)の契約職員というような不安定雇用を拡 大させる動きが広がっており、教員も職員もパート化によって使い捨てが進んでいること、そうであるにもかかわらず専任教職員組合はこれに積極的に反対して いこうとしていないという現状、さらに根本的に、今日の大学教育が形骸化しており、学生から不満が出ているが、どちらかというと非常勤教員や若い教員がこ れに対処しようとしている率が高く、今の賃金システムとは逆になっているということ(低賃金の教員ほどがんばっている)など、多様な論点が提起された。

 続いて、大阪経済大学の伊田氏が、専任教員の立場から、この問題の困難性が指摘された。長期的には専任教員との利害の共通性はあるが、将来性のある合理 的で平等な賃金に改変していく動きを非常勤教員側は求めているのに、それと専任教員の当面現状の年功賃金を守っていきたいという欲求が短期的には対立する 局面があることが指摘された。だが、専任教員側でも、大学の教育や運営状況に危機感をもつものにとっては、非常勤側の根本的変革欲求は、まさに利害を一致 させうるものであることも論議された。

 その後の質疑応答でも、大学の歴史的変遷課程においてこの問題をとらえるべきこと、あまりにひどい格差をメディアや裁判を通じて宣伝し、公序良俗に反す るものであるとしていくこと、などが活発に議論された。

 
■第13回  2000.9.9

『労働基準監督・職業安定行政−−できること、できないこと』

 第13回例会では、丹野弘(大阪労働基準監督署)、秋山正臣(神戸職業安定所)の両氏が、それぞれの実務体験にもとづいて、いま労働行政にできること・ できないことを率直に語った。たとえばきびしいスタッフ不足のため職安を訪れる人の待ち時間が2時間にもなり、順番が来たときにはもうその求人は満たされ ている。「行政警察」たる労基署のチェック機能は「罪刑法定主義」で、労基法違反でさえなければ個人の、民事上の「紛争」に立ち入れない・・・。興味ぶか い報告の後、労基署の業務と労働組合活動の関係、職員の研修の不十分さ、いじめは労基署でなぜ扱えないか、「職場の人権」擁護に寄与するような諸機関(労 基署、都道府県労働局、労政事務所、職安、労働委員会なと)の間のネットワーク形成の必要性などをめぐって、活発な質疑、討論が展開された。


■第14回  2000.10.21

『韓国民主労働運動に学ぶ−−非正規雇用労働者の組織化のために』

  第14回例会は、初めて外国(韓国)からの講師を招いての例会となった。報告を行ったソウル衣類業労働組合(旧清渓被服労組)の梁吉順(ヤン・ギルス ン)事務長は、まず初めにロッテホテル争議など最近の韓国での労働者の闘いを紹介し、続いて「地域労組連帯会議の現況と展望」、「ソウル衣類業労働組合の 現況と展望」について報告を行った。

 韓国ではIMF体制後、非正規職労働者が急増しており、非正規職・未組織労働者の組織化のために、1999年10月、ソウル地域の10地域労組が参加し て「地域労組連帯会議」が結成された。全国民主労働組合総連盟(民主労総)が産別労組建設を推進しているなか、地域労組連帯会議の役割とその重要性を強調 された。ソウル衣類業労働組合は、韓国労働運動を語る上でこの名前を抜きにしては語れない伝統的な労働組合である旧清渓被服労組の発展組織である。産業構 造の変化などで、厳しい闘いを強いられているが、労働者に対する献身性と闘争性により粘り強く闘争を展開している状況を報告された。

 韓国と日本の双方で非正規職・未組織労働者が増加するなか、具体的な闘争事例を紹介しながら、組織化に向けて力強く闘っている韓国労働運動の一旦を聞く ことができ、実に貴重な例会となった。


■第15回  2000.11.11

『日本の労働組合と人権』

報告者:熊沢 誠(甲南大学)

 今日、すぐれて個人の受難としてあらわれている人権問題に、日本の労働組合は何かをなしうるのか?について、熊沢誠氏から報告していただきました。熊沢 氏は、改めて労働組合の歴史的な位置を検証したうえで、いまどのような思想的、実践的な見直しが必要かを、様々な角度から提起されました。

 いま労働組合の無力化、さらには無用論まで蔓延するなか、その大きな要因として熊沢氏は、「個人の労働条件決定」に対処しえない労働組合のあり方を鋭く 批判された。しかしそれでもやはり「労働組合のもつ可能性」について、期待を込めた提起をされました。

 そしてその「可能性」のキーワードは、「人権の問題を扱いうる労働組合運動」の形成・強化だと、具体的に組合のあり様を例示しつつ強調されました。(詳 しくは会誌8号、1月13日発行をご覧ください。)


■第16回  2000.12.16

『介護労働について考える−安定した介護サービスが提供できる労働条件を! 』

報告者:陶山 浩三(日本介護クラフトユニオン事務局長)

 介護サービスの「有料サービスへの転換」の結果、介護サービスの利用は予想を大幅に下回る一人あたり利用額にとどまっていること、また、「身体介護」よ り単価の低い「家事援助」に利用が集中している等、介護保険導入以後の介護現場の実態について、まずお話しがありました。次いでこういった介護を支えてい る労働者の4割近くが非正規雇用で働くパートヘルパーや登録型ヘルパーであること、賃金水準としての時間給は低いとは思われないが、移動時間・通勤費・待 機時間や打ち合わせ時間が必ずしも支払われていないなど劣悪・不安定な労働条件で働いていること、こういった介護労働者のおかれた状況を改善するには何よ りも介護報酬のアップが必要であることが話されました。


■第17回  2001.1.13

『子供の人権、教師の人権 』

報告者:山田潤(学校に行かない子と親の会[大阪]世話人/今宮工業高校教諭)

 第17会例会では、学校に行かない子と親の会(大阪)代表や全国不登校新聞社大阪編集局理事をなさっていて定時制高校教員でもある山田潤氏に、不登校と 不登校をめぐる言説について話していただいた。山田氏は人権とはどのようなところに成り立つ概念なのか?そもそも子どもと教師の人権を同一平面上で考える ことができるのかなど、子ども─教師の関係性について問題提起した。さらに、不登校は義務教育の発生と共に存在していたはずで、教育というものがそもそも はらむ原理的無理が、今、ようやく私たちに見えてきたのであり、不登校というだけで問題視する社会状況を批判した。報告の後、会場からは不登校の子と中心 的に関わっている親はやはり母親であり、ここにもジェンダー格差があるのではないか、また、不登校の子もいずれは自活していかなければならず、その学力を つけるサポートを学校はきちんとしてほしい等活発に質疑が交わされた。


■第18回  2001.2.17

『ファミリーレストランの職場体験 』

報告者:
   島田 満(ファミリーレストラン従業員)
   西野方庸(関西労働者安全センター)

 現代日本のなじみの風景として定着したファミリーレストランは、同時に、重い責任と心労を担う少数の正社員と、低賃金で定型的な仕事を忙しくこなす多数 の非正社員からなる、典型的な若者の職場です。そこで店長候補として働き、深刻な労災を負った島田さんに、顧みて職場のありよう、現状について、率直に 語っていただきました。また、島田さんの状態に則した労災から職場復帰にまつわる諸問題、あるいは昨今社会問題になっている「労災隠し」の現状について、 関西労働者安全センターの西野さんから貴重なアドバイスを受けました。


■第19回  2001.3.10

『パート労働の未来像〜オランダから何を学ぶか〜 』

報告者:三山雅子(同志社大学教員)

 三山氏から最初に、90年代に入ってからの日本における非正社員増加の特徴について話しがあった。その後正社員より安い労働力であることが日本のパート タイマーの特徴であるのに対し、オランダではフルとパートタイマーの賃金格差は日本より遙かに小さいこと、その背後にはパート労働者を保護する社会的規制 があることが話された。しかし、オランダではパート職種が低格付けの仕事に集中しがちなため、賃金格差は小さいけれども低賃金であるという矛盾を抱えてい ることが指摘された。その後、伊田氏より男女平等、男性を変えるかという点から見て「1.5モデル」・「オランダモデル」には積極性と限界があるというコ メントがなされた。


■第20回  2001.4.14

『郵政職場は今・・・ 』

報告者:酒井 満(郵政労働者)

 今回の「職場の人権」は、「郵政職場は今!」というテーマで、郵政労働者の酒井 満さんにお話していただきました。かって郵政職場は、労働組合運動も活 発で労働者の職場における「自治・自立」もある程度確立していましたが、それがここ数年郵政当局により剥奪さえてきており、かなりひどい職場になり、いま や「職場の人権」も脅かされるようになってきているようです。

 2001年1月に「省庁再編」があり郵政省が「総務省」に統合され、03年には郵政事業部門を「郵政公社」にし、そして最終的には「民間企業」にしよう と政府は考えていますが、このなかで、いわゆる郵政労働者のなかの「不良分子」を一掃しようとしています。今盛んに行われている、無謀な「強制配転」や首 切りは、この脈略で読むことができるでしょう。

 この間の「人事交流」と称して当局が行っている「強制配転」は、組合活動家・病弱者・高齢者への「いじめ」でありリストラです。とりわけ、郵便物を配達 する集配課の職員は、地域を熟知していなければできない仕事であり、現場労働者の長年の経験が必要な職種です。それを、遠方へ配転することは、長年の労働 者の熟練を無視し剥奪することです。30年のベテランも異なる地域では、まったくのシロウト同様になるからです。これは、当局が、労働者から職場における 「自治・自立」を奪うことを目的でなされたものであり、大きな「人権無視」につながっています。また、郵便労働者に物品の「営業活動」を強制し、もし売れ なければ労働者自らが購入しなければならないようになり、労働者に大きな犠牲を強いています。

 さらに、「不良分子」には、懲戒免職・分限免職・失職など様々な根拠で首切りが行われ、あらゆる処分や病弱者への退職強要などが行われています。公務員 は「身分保障」がなされていて容易にクビにはならない、と言われていますが、実際は様々な解雇が行われているのです。

 こういう事態に対して、様々な地域で処分を受けた労働者が闘っており、労働組合も現場で対抗しようとしています。そして、郵政内部の労働組合だけではな く、地域の住民とのつながりのなかで、郵政当局の蛮行をはねかえすことが重要になるでしょう。 



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■第21回  2001.5.12

『SOHO・在宅ワークの虚実 』

報告者:華房 ひろ子

 前半の華房さんの報告は「在宅ワークは甘くない」として,自らの経験も織り交ぜたものでした。主婦のあこがれでありブームともいえた在宅ワークについ て,希望者の無知にも問題があるというところが,話の出発点です。続いて業界の実態として,ワープロ入力の単価がどんどん下がっていることや,仕事の紹介 を装う悪徳商法などの実態,また自身の在宅ワークを取材した雑誌記事のどの部分が「ヤラセ」なのか等,詳細な報告がされました。

 後半の吉村さんの報告は「『自営的就業』としての在宅ワーク」として,類似の就業形態との関連を考えるものでした。それによると,よく似たものとしての 「家内労働」に関する法規制は,在宅ワークに及びにくいようです。また名目上は事業主でも他者に使われる立場としての自営的就業が,在宅ワークに限らず多 様化してきているということでした。


■第22回  2001.6.9

『過労死・過労自殺の語るもの』

報告者:川人 博(弁護士)

 報告者、この問題への取り組みにおいて先進的で主導的な役割を果たしてきた東京の川人博弁護士は、その日の講演の焦点を過労自殺に絞った。川人氏は、ま ず、24歳の社員が仕事の重圧と長時間労働から鬱病に、ついで自殺に追い込まれた電通の事件にたいする最高裁2001年3月24日判決ーー社員の健康に対 する会社の注意義務や(不当な)「業務量の調整義務」を指摘し、長時間労働と自殺の因果関係を認め、電通側の上告を棄却したーーの「歴史的意義」に注意を 促し、ついで今日の職場における<過重な仕事−鬱病−自殺>問題の広がりを、遺書を含む多くの資料に基づいて説得的に分析した。この日はまた、やはり過労 自殺した京都のそば処チェーンの店長の妻が来会、死に導かれる夫の労働生活のようすと、抗議の行動に至る遺族の心の軌跡を語った。討論の時間は乏しかった が、過労死に対する労働組合の対応、いわゆる「覚悟の自殺」の法的な扱い、鬱病時の過労自殺予防的な闘いの難しさなどが論じられた。最後に川人氏から、告 発を続けながら告発を超える視点を!との問題提起があった。


■第23回  2001.7.7

『ひとり親世帯 その労働と福祉』

報告者:藤原 千紗(岩手大学)

 「一人親世帯 その労働と福祉」 ひとり親世帯の数少ない研究者・藤原さんが1)ひとり親世帯の量的少なさが意味すること、2)父子・母子世帯の就労状 況・生活水準の貧困について、ジェンダーの視点で鋭く・分析し、就労対策の問題点を語ってくれました。 ひとり親世帯は日本では子どものいる世帯の4%で す。諸外国ではフランスが13%、ドイツで12%と欧米社会では1〜2割を占めています。欧米社会のひとり親世帯の8〜9割は母子世帯で、量的な問題から 福祉給付が政治問題化されています。日本では、4%の背景に隠されている「男性と対でしか生活することのできない女性の社会経済状況」がある。また離婚・ 非婚出産に対する社会のまなざしから、離婚さえできず、ひとり親世帯として社会に登場すらできない。母子世帯は社会保障の給付や仕送りなど全ての収入の平 均が97年で227万円と生活保護基準以下の収入です。しかし、生活保護を受けていない世帯が大変多いと推定されます。また、15万円を得るためには、時 給800円のレストランの仕事とスーパーの棚卸しの仕事を週62時間するなど、藤原さんは女性のジェンダーによる貧困を指摘しました。

 他方父子家庭も、妻の家事労働(アンペイドワーク)が前提の就労(残業、転勤、無遅刻・無欠勤)ができないことや、配偶者控除・家族手当がなくなること で、貧困のみならず男社会から排除されたことによる精神的抑圧や子どもを福祉施設に預けざるをえない状況があるなど、男性のジェンダー問題も指摘されまし た。性分業世帯というものを標準とした雇用・労働システム、税・社会保障のシステムこそがひとり親世帯の貧困問題の背景で、世帯単位から個人単位への課題 が浮き彫りにされました。

 最後に母子世帯の親の就労対策の問題点として、98年に児童扶養手当の所得制限が300万円に切り下げられた事を機に、厚生省は自立支援を打ち出したけ れど、職業訓練・職業紹介を行う労働省は「雇用機会均等の下では(母子家庭が)就職困難者ってことはありえない」と、従来の就業困難者としての職業訓練に おける支援がしりぞけられている実態を指摘しました。 静かな報告でしたが、鋭く熱い課題を鮮明にしてくれたと感じました。


■第24回  2002.08.11

『職場の人権−−連合笹森事務局長が語る』

報告者:笹森 清(連合事務局長)

 わが国の労働組合のナショナルセンター連合(日本労働組合総連合会)の笹森清事務局長が、「職場の人権」というテーマのもと、約1時間熱弁を振う。「連 合も反省している。」これまでの正規社員だけをメンバーとした「企業別」労働組合という既存の連合のスタイルからの脱皮を模索。メンバー以外の雇用労働者 (非正規社員を含む)全体の労働条件向上を目指す。均等待遇・ワークシェアリング・労働時間などで政労使の社会的合意を形成する。それと同時に、職業の紹 介・斡旋やNPO事業、保育・介護といった労働者相互に供給し合う機能を担う主体として生まれ変われる。こうした主張に対し、矢継ぎ早にフロアーから具体 的な回答を求めた質問が出された。有期雇用者・パートタイマーといった、これまでメンバーでなかった労働者のニーズの吸い上げにどう努力するのか?リスト ラ・いじめなど従来守られてきたはずの組合員の労働条件が脅かされてはいないか?こうした質問に対して、笹森氏はコミュニティユニオンを始め、地域・ NPOなどどのネットワーク作りに前向きに取り組み、諸問題を共に解決していこうと呼びかけた。


■第25回  2001.9.8

2周年記念シンポジウム
「職場の人権  三政党に聞く」

報告者:
   今泉 昭(民主党参議院議員)
   平井浩一(共産党衆議院議員政策秘書)
   辻元清美(社民党衆議院議員)
   
 研究会「職場の人権」は、この2年間、メディアや学者の研究ではみえにくい「職場の実態」をみつめることで、そこに起こっている人権侵害にどうしていけ ばいいのかを考えようとしてきた。だが、2年の研究を積み重ねて、その成果を外に発信していく段階に至ろうとしている。

 そこで今回は、実際の労働行政や労働立法に大きく関わる政党・政治家の側と意見を交流し、「政治に何ができるか」を聞き、職場の人権侵害を減らすために 求められる方策を探ることを目的とした研究会となった。

 当日は、民主党、今泉昭氏、共産党、平井浩一氏、社民党、辻元清美氏の3者が出席し、職場の人権事務局が事前に提出していた質問およびフロアからの質問 や実態報告に答える形で、3政党の考えが示された。

 民主党からは、高コスト構造の見直しが避けられない中で、年齢差別禁止などの対策が必要なこと、共産党からは、現行法を徹底的に利用して人権侵害に対抗 していくとともに、サービス残業禁止、解雇制限、企業再建における労働者保護などの立法が準備されていること、社民党からは、エコロジーとジェンダーの視 点を基本とした社会民主主義路線で、働き方と暮らし方全般の変革が考えられており、雇用継続保障、パート法改正、家族的責任と仕事の両立などの立法が準備 されていること、等が示された。年功制、103万円の壁、有期雇用の評価などにおいては態度の違いも一部にみられたが、3党が共同して雇用形態差別を禁止 していくことなどが必要という点は確認された。今後も現場の実態を踏まえた研究と政党の結合が望まれると感じた。


■第26回  2001.10.13

『工場組立ラインで働き続けて30年』

報告者:浅田 隆正(工場労働者)
コメンテーター:熊沢 誠(甲南大学)

 10月例会では、高度経済成長の1970年に東芝大阪工場の電機洗濯機職場に就職し、低成長期とリストラ期を経て近く定年を迎える浅田隆正氏が、みずか らの職場と労働について語った。浅田氏は、鎌田慧、熊沢誠、中岡哲郎などの労働に関する考察を読み込み、体験の文章表現も試みてきた在野のインテリゲン チャーでありながら、「現場労働者」であり続ける「志」に従って、近年ではフリーターなどもふくむ職場の同僚たちと離れず、30年にわたって組み立て (「組み付け」と言う方が正確である)ラインのコンベア作業を担ってきた。

 ときに得難い資料を参照しながら語られた内容は豊富で、簡単な紹介になじまないが、主要な話題はたとえば、「教えられた通り手を動かさねば絶対スピード についてゆけない」コンベア作業の性格、職場のグレード別・属性別人員構成、賃金体系の能力主義化、繁閑に応じた所定内労働時間調節の残酷さ(繁忙期の実 働8.75時間が心身を疲弊させる、しかも残業手当はカット!)、現場労働のニーズから遠ざかる組合機能・・・などである。

 報告の後、コメンターの熊沢氏が、最近の定年延長の問題点などを加えて論点を整理した。フロアーを交えた討論のテーマは、コンベア作業の労働の質、浅田 氏が働き続けることができた理由、職場の人間関係などである。


■第27回  2001.11.17

『『セックス・ワーク』から見えること』

報告者:
   水島 希(京都大学大学院)
   伊田 広行(大阪経済大学教員)

 講師は京都大学理学部研修員の水島希氏で、専攻は動物行動学(メスの繁殖戦略)。

 まず始めに、氏自身がなぜセクシュアリティやジェンダーの問題に取り組むことになったか、幼少の頃や学生時代の問題意識等(なぜ女性は男性の何倍も頑張 らなければならないのか、女性の性について語り合う場が少ない等)を述べられた。

 それから、今回のテーマである「セックスワーク」・「セックスワーカー」(性的サービスを提供する仕事、セックスワークを仕事にしている人)の定義を し、日本のセックスワークをとりまく法的状況(売春防止法、風俗営業適正化法、子ども買春・子どもポルノ禁止法、出入国管理法等)や、具体的な職種の分類 の説明をし、日本ではセックスワークが法的にあいまいな、不安定な状況にあることを述べられた。

 その実態に迫るべく、氏のグループが行なっている、セックスワーカーを対象とした実態調査(アンケートやインタビュー)の結果が示された。仕事の内容、 就業動機、客との関係性、HIVや性感染症(STD)の知識や予防対策や検査状況、仕事への誇りや罪悪感、仕事上の不利益について、詳細に述べられた。

 それとの比較のために、海外ではセックスワークを取り巻く状況がどうなっているのかについて、特に、台湾の台北での公娼制度の廃止に反対する当事者を中 心とした運動の状況を、実際に現地で撮影したビデオ(当局への抗議の模様、市民にも開かれたワークショップやフェスティバル等)を見ながら説明された。

 最後に、セックスワークを取り巻く厳しい現実、取り組みの難しさ、なぜ難しいのかを述べられた。根強い偏見、法的な禁止、蔑視や罪悪視、何が起こっても 自業自得とされてしまうこと、結果的にセックスワーカーが被害や不利益を被り、サポートがほとんどないこと、労働環境を改善していく解決法がとられにくい 点、話題にすることすら避けられる、話されるにしても当事者抜きでの語られる語られ方を挙げられた。セックスワーカーを取り巻く労働環境や状況を良くして いくことは、ひいては現実にある性差別や女性労働全体を良くしていくこと(底辺の底上げ)につながるのではないかと指摘された。

 休憩の後、コメンテーターの伊田広行氏からは水島氏の講演を受けて、セックスワークを職業として位置づけること、またはそもそもどう見るのかを、箇条書 き的に、肯定派・否定派の両方の考え方を詳しく挙げられた。

 会場からの意見や質問は、セックスワークの存在そのものが性差別的だとして賛成できない等の批判的な意見や、またはセックスワークは普通の労働者として 位置づけるべき、セックスワークの労働状況(就業人数、年齢構成、ノルマ、賃金形態)についてもう少し報告が欲しかった、セックスと人格の関係性等、会場 からは多数の意見が寄せられた。それらを受けて水島氏は、再度セックスワークを取り巻く差別的な状況や、(学内でセクハラ対策委員をしている経験から)セ クハラを捉える視点、セックスワークを性差別だと言い切ってしまうこと(対立的に議論をしていくこと)で女性のセクシュアリティをとりまく問題の本質や現 状が見えにくくなってしまうこと等について述べられ、最後は伊田氏からは会場の反応について幾つか指摘をされ、水島氏のセックスワーク研究や今回の講演の 意義についてまとめられた。

  以上


■第28回  2001.12.8

『自治体のアウトソーシング』

報告者:
   小畑 精武(自治労・公共サービス民間労組協議会事務局長)
   吉村 臨兵(奈良産業大学教員)

「自治体委託と地域公共サービス産別建設」

 自治体財政悪化のために、最近自治体がコスト削減の一環として一部の公共サービスを外部委託(アウトソーシング)する傾向にあるが、今回の研究会は、外 部委託の労働者の雇用環境の問題について、アメリカのリビング・ウエイジの運動の現状にもふれながら、自治労本部オルガナイザー(自治労・公共サービス民 間労組協議会事務局長)の小畑精武さんに報告をいただいた。要旨は以下の通り。

 地域公共サービスは基本的には公務員が担うという原則がある中、特に1980年代以降、自治体は公共サービスの一部を民間業者への外部委託や非常勤や臨 時職員に委託する傾向を強めていった。最近ではそれが実に様々な部門や段階で顕著になっている。例えば清掃関連ではごみの収集が正規で、清掃工場への運搬 が委託、工場の管理部門は正規で、焼却機械の運転操作はそのプラントを造った会社や下請け等というかたちで外部委託がすすんでいる。それは臨時・非常勤が 補助的労働から基幹的労働へ、短期雇用から長期雇用に進展していったことを意味する。しかし臨時・非常勤労働者は正規の公務員ではないため(公務員法が適 用されないので)、雇用の不安定さの問題が表面化している。自治労では特に90年代以降これら臨時・非常勤や民間委託の労働者を結集し組織化をすすめ、同 一権利・均等待遇を求めて、正規職員の組合とともに運動を拡大し連携していくことになる。

 自治体が民間業者と委託契約を結ぶ際、例えば競争入札などで企業が「1円入札」などというように非常に低い金額で落札する状況がある。そのため、公共 サービスの一定の水準の維持とそこで働く労働者の権利の問題など、公正な労働基準が守られているのかという問題もでてきた。最近では自治体と企業の契約の あり方の問題、地域における公共サービスのあり方の問題を考えるべき段階にきている。

 ところで現在90年代のアメリカ各地で活発に取り組まれている「リビング・ウエイジ」(生活賃金)の運動が注目をあびている。例えば空港や大学など広範 に働き場所があるような公共施設で、本体の労働者とは別にテナントとして入っているレストランなど外部の労働者にも同じような待遇の保障をすること、つま り自治体が直接に契約している会社の労働者でなくても、自治体が税金で補助などしているところに雇用されている労働者に対してはすべてリビングウエイジが 適用されるように、州、郡、市などのエリア単位で運動が展開されてきた。

 アメリカのリビング・ウエイジの事例を参考にし、日本での自治体や地域公共サービスのあり方、自治体における外部委託のあり方を考えながら、ひいては、 市民としてそこで働き生活することを含めどのような地域コミュニティを創造していくのかを考えるべき現状にきているといえよう。

 小畑氏の報告に引き続き、奈良産業大学の吉村臨兵氏より、自治体の外部委託の多様なありよう、業者との契約方法の実態、労使関係の枠組みの変化について 以下のようなコメントがあった。

 企業が自治体とさまざな契約方法を結ぶ中で、外部委託や臨時・非常勤の労働者の権利を実際的にどう保障していくのか。例えば使用者責任の一端を自治体に 問うことや、請負契約における最低制限価格の制度や、国レベルなら政令である予算会計及び会計令の改正を活用していくことで、自治体の中で質を考えた民間 委託契約のルールづくりを進める段階にきている。それはひいては地域公共サービスの質の向上にもつながるといえよう。

 質疑応答では、リビング・ウエイジの運動を担っているのはどのような層なのか、いかなる職種でも例えば時給1200円にしていくような国民的大運動は可 能か、いわゆる「お役所仕事」と呼ばれる公務員の仕事に対して民間外部委託が歓迎されるような風潮がある中での公共サービスの質の水準との兼ね合いの問 題、雇い主が多様な中でどのような運動を展開するのか、日本に年功賃金体系がある中でリビング・ウエイジを導入するとしたら世帯賃金的な部分との兼ね合い をどうするのか等、他にも多様な問題が提起された。

 
■第29回  2002.1.12

『労働組合運動の甦りのために』

報告者:熊沢 誠(甲南大学)

 第29回例会では熊沢誠氏が「労働組合運動の甦りのために」というテーマで報告し た。氏はまず最初に、非正規雇用者比率・失業率・組合組織率・争議損失日数などの、 労働組合運動を巡るいくつかの指標のここ25年間の変化を紹介した。その後、80年代 以降の市場万能主義と規制緩和の進展と、それに促されなかば強制的なかば自発的に 進んだ労働者の競争への投企(=ある種の個人主義化)が、先進国の労働運動を苦境 に陥らせてきたことを指摘した。  次いで諸外国の争議・協約事例や新たに作られた公的規制の紹介をとおして、こう いったなかにあっても世界の労働者の反撃が始まっていること、そこに日本の労働運 動が学ぶ点が多々あると述べた。そして労働条件の個人処遇化と価値観の個人主義化 が進んでいるからこそ「集団主義=競争制限を原理とする労働組合」が必要であると 主張した。しかし、1)伝統的集団主義を手ばなしで評価することはできず、従来の集 団主義はいくつかの点で克服せねばならない要素を持っていること、2)非正規労働者 の増大に対応して労働社会としての企業社会の唯一性からの本格的な脱皮が必要なこ と、3)困難ではあるが、実効ある労働の国際基準の確立に向けて活動が始まっている こと、またその大切さを述べた。  フロアーからは、80年代以降の米国の国際戦略の変化やドルと金のリンク解消・変 動相場制への移行が資本移動にとって有した意味、ビジネスマン意識を持っている人 たちに連帯をどう納得してもらうか、電機労連の新しい雇用政策に対する評価などに ついて意見・質問があった。


■第30回  2002.2.9

『均等待遇を求めて ―京ガス賃金差別裁判勝利から―』

 第30回例会では、女性社員比率6%の典型的男性中心職場で、男女差別待遇を闘ってきた屋嘉比さんから、京ガス男女賃金差別裁判とペイエクイティについ て報告があった。

 最初に京ガス裁判の概要について話しがあった。屋嘉比さんもかつてメンバーであった京ガス職員労組は、1)家族賃金制度は当然、2)民間では差別があっ て当たり前として男女賃金差別を闘うことができないばかりか、差別是正を闘争方針にするよう要求する屋嘉比さんに対して組合脱退を迫った。そのため屋嘉比 さんは差別是正の団交・地労委への申立てなどを、女労組の一人組合員として闘ってきた。京ガスが男女差別を明白とした地労委斡旋を拒否するにいたり、屋嘉 比さんは京都地裁に提訴した。男女差別を比較した対象者男性は屋嘉比さんとは職種が違い、ペイエクイティ理論を使う以外に裁判で勝てないと思ったと屋嘉比 さんは述べた。その後、ペイエクイティ原則採用の国際的動向と一審判決(知識・技能、責任、精神的負担・疲労度において、屋嘉比さんの職務と対象者男性の 職務に価値の差はなく、女性差別であり、労基法4条違反で違法)の意義について語った。

 コメンターは、会社の利益と存立に直結する仕事であっても、女性が担当したらそれは単純・補助作業とみなされ、男性より低賃金という屋嘉比さんの状況は 彼女一人のものではなく、一審判決は同じ状況にいる女性の差別処遇を是正する大きな武器になることを指摘した。その上で、しかし、ペイエクイティを使って 解決できない問題のあることについてふれた。この後、フロアーとの議論に移った。会場からは、差別を是正するためにはここまで大変な闘いをしなけれななら ないことに対する怒りやペイエクイティとリビング・ウェッジをつなげて闘うことの必要性などの発言があり、白熱した議論が展開された。

 

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■第31回  2002.3.9

『リストラの現場では、今‥』

報告者:
  矢野 英基(朝日新聞記者)
  清野 博子(読売新聞記者)
  宮里 邦雄(弁護士)

 3月例会は、相変わらず続いているリストラの最近の実態や背景について新聞記者の方二人と弁護士の方にお話しをしていただいた。

 まず最初に、朝日新聞の矢野英基記者より、経済状況が悪化するにつれて企業が若い層にリストラのターゲットを広げているとして、20代と30代でリスト ラにあわれた方3人の実状が紹介された。そして3人が共通して語ったこととして、そもそも雇用問題について身近に感じていなかったため、いざ自分が問題に 出会ったときにわからないことが多すぎること、また市民運動・NGO的な活動として労働組合運動をするという感覚があり、矢野記者はこういう方式の運動を どこまで広げられるかが今課題になっているのではないかと述べた。

 読売新聞の清野博子記者は女性に関わる問題を長年取材する中で見えてきたこととして、今行われているリストラの以前から、女性、特に総合職女性は形とし ては「自発的に」辞めていかざるをえない状況に追い込まれているのではないかと語った。そして企業にいる女性たちが追いつめられている結果、とりわけ30 代や40代の働く女性たちは将来に対する希望や理想がもてないというしんどい状況におかれていると述べた。このようにかなり絶望的な状況だが、能力のある 人を使えなければ企業は生き延びていけないのであり、優秀な人材に男女は関係ないということに希望を見つけることができるのではないかと清野記者は話しを まとめた。

 労働弁護団の宮里邦雄弁護士は、この2?3年のリストラ110番の電話相談では、1企業のリストラではなく企業組織を再編する過程で生じているリストラ に絡んだ相談が多いことを指摘した。こういった企業再編は、純粋持ち株会社を認めた独禁法の改正や産業活力再生法などのリストラ促進・サポート法制を利用 する事で行われており、その結果「解雇権濫用(禁止)の法理」など、これまで雇用や労働条件について確立されてきたルールが、公然と踏みにじられている述 べた。最後にこういった流れに対抗するためには企業別労働組合の殻を破って、企業再編を実際に決定している本当の「使用者」を相手として組合が交渉してい くことの必要性とEUの例をあげて労働者を保護する立法的整備の必要性を指摘して話を終えた。

 
■第32回  2002.4.13

『増大する不安定雇用労働者の組織化のために
            −− ユニオン運動の現状と展望』

報告者:
  泰山 義雄(北摂地域ユニオン/コミュニティ・ユニオン関西ネット)
  上田 育子(せんしゅうユニオン委員長)

コメンテーター:熊沢 誠(甲南大学教授)


 4月例会は、高度経済成長と共に歩んできた日本の労働運動の弱点を補うものとして1980年代半ばに出発したユニオン運動を大阪の地で担う泰山義雄氏 (北摂地域ユニオン/コミュニティユニオン関西ネット事務局長)と上田育子(せんしゅうユニオン/同代表)氏が報告した。

 大阪では1980年代に入って、『東地協合同労組 ゆにおんひごろ』が発足した。大企業組合は、正社員だけのもので、同じ職場で働いている非正規社員に は無関係の存在だった。『一人でも、誰でも入れる労働組合、会社に乗り込んで一緒に団交をやってくれる、、、ユニオンはまさに労働者の権利を守るセイフ ティネットである。

 今、グローバリズムの中で、雪崩をうって崩壊しつつある日本の雇用環境にあえぐ不安定雇用者達を、地域ユニオンは救うことができるのか?今後の展望は? 以上の点についてお二人に語ってもらった。報告の要旨は以下の通り。

泰山義雄氏の報告

 1、ユニオン運動は関西ネットワーク加盟11ユニオンにまでほろがり、また全国ユニオンと共闘もしている。

 2、ユニオン運動に対する社会的ニーズがあり、学者、弁護士、マスコミ等の協力、活動家の献身にもかかわらず、もう一歩飛躍出来ずにいる。組合員の組織 化、財政困難という問題を抱えている。

 3、相談ケースは多様をきわめ、活動家はカウンセラーをも兼ねる必要があり、全人間的に相談者を支えることから、心身に重荷を背負うことになる。

 4、増大する不安定雇用労働者を前にして、ユニオン運動はどうあるべきか?ユニオン事業の展開や学習、研究との連帯活動(研究会『職場の人権』)、市民 運動との連携、地域一環システムの創造?地域は末端であると同時に先端になる?が必要ではないか。

上田育子氏の報告

 1、医学部を卒業したが、いわゆるエリートコースを選ばず、パートタイム労働者として、「パート」の地位向上、権利獲得の運動に邁進してきた。現在の労 働環境激変の中で、これまでの、男はワーカホリックと家庭責任労働という構造を変革したい。

 2、あらゆる人たちと連携してさらに幅広い活動を展開したい。例えば、a)女性に対する間接差別をなくし、同一価値労働同一賃金を実現する、b)『均等 待遇アクション2003』大阪実行委員会の活動、c)研究会『職場の人権』の発展、d)『働く人の人権センター』を創設し、労働者の人権擁護行動計画づく り、人権侵害の調査、相談活動、行政への働きかけなどを行うなどである。


■第33回  2002.5.18

『雇用の男女平等政策を考える
  −− ジェンダー・ニュートラルな社会システムの構築にむけて』

報告者:
  竹中 恵美子 (大阪市立大学名誉教授/ドーンセンター館長)

 5月例会は竹中恵美子(大阪市立大学名誉教授/ドーンセンター館長)氏に、「雇用の男女平等政策を考える?ジェンダー・ニュートラルな社会システムの構 築にむけて?」のテーマで話していただいた。概要は以下の通りである。

 

 はじめに:?現代フェミニズムの半世紀の歴史は、何を明らかにしたのか?  現代フェミニズムは近代家族の発足とそれを包み込んできた資本主義体制がブラックボックスにして来たものを明らかにしてきた。近代国民国家の構造は、パ ンの稼ぎ手である男性と、そのウラで、無償のケア労働を担う従者としての女性からなる家族から成り立っている。これが総体としての女性抑圧構造であり、社 会システムとしての性別役割分業を変えない限り、女性差別はなくならない。

 

1. 雇用における男女平等政策は、いまどのような段階にあるのか

 この問題は新しい課題ではなく、国際的にも一定の変化をとげている。その分水嶺は1980年であった。国連の「女性差別撤廃条約」は、1979年に採択 され、その基調は性別役割分担の解体であった。これを受けた形で1981年にILO156号条約(家族的責任条約)が採択された。遡って1965年に採択 されたILO123号条約は、高度経済成長の最中で、家庭の主婦を労働の場に引き出す必要が生じた為、家庭責任との両立を配慮する内容で、家庭責任は女性 のものという前提に立っていた。「女性差別撤廃条約」以後、はじめて家庭責任を男女で分担する方向をとることになった。日本は、ILO156号条約を、 1995年になってやっと批准した。その背景にあるものは、生産のありかたの変化、多様な労働力の需要、経済のグローバル化、労働の規制緩和などであり、 女性は格好の低賃金労働者=パートタイマーとして多用されることになった。以下女性労働者を巡る現状をみていく。

現状:1. 女性労働の階層化
 再生産労働(子供を産み育てることや、老親介護)の負担度が階層化を生む。キャリアウーマンはナニーを雇うということで、再生産労働がどんどん条件の悪 い女性に移転していく。

現状:2.少子化現象
 日本などのように性別役割分業が解消されないままだと、女性が二重労働を強いられることになり、キャリアのために子供を持たなくなり少子化現象となる。 生産年令人口の不足を前にして国も経営者側もこのままの性別役割の効率の悪さに気づきはじめている。

現状:3. 機会の平等
 機会の平等といっても「機会」の中身が問題だ。男性基準(ケアレスマン)で作られた労働条件をみたすことのできない女性ははじきとばされる。さまざまな ケアを押し付けられていると自発的に仕事から降りてしまう結果になる。

現状:4. アンペイドワーク
 これまでのアンペイドワークの研究に問題があった。主流の近代経済学は前提とされる個人をケアを担わない成年男性に置き、女性、子供、高齢者を考慮に入 れてこなかった。人間の再生産にも考えが及んでいない。男性の経験のみを基礎にし、女性の経験をとりあげることがなかった。労働か非労働か、生産か消費か の二分法で、その中間がない。その中間を女性が担っているのにもかかわらず。フェミニスト経済学はこの点をついている。国連も同じ方向をとっている。「女 性は、全社会の3分の1の労働をし、10%の収入、1%の資産を得ている。」と言われている。評価されないアンペイドワークに光りをあてるべきである。と いっても、主婦労働を評価することと勘違いしてはいけない。

 

2.転換点にたつ新しい政策モデルとは

 政策が前提とするモデルをケア不在の成年男性(稼ぎ手)モデルからケアつき個人単位モデルにしていく。そして家族単位の政策を個人単位にきりかえる。そ の時ケアなどのアンペイドワークをゼロにするのか、ケアする権利を認めるのか議論の分かれるところである。

 

3.いま日本に求められる雇用における男女平等の最重要課題

 1980年代、多くの国が性分業の撤廃に動いたが、日本は逆コースをとり、企業は性分業の上に立って成長した。90年代には少子化の影響で、日本でも男 女共同参画が女性施策の中心となり、性に中立的な立場を取るようになってきた。

 日本における最重要課題は、パート労働の転換である。EUでは、80年代はできるだけパートを正規社員化する方針だったが、「自発的パートタイム労働に 関する理事会指令案」を出し、フルタイムと同等の権利を有する男女に開かれた良好な雇用として拡大する政策にきりかえている。パートタイマーとフルタイ マーの均等待遇、相互乗り換えの自由、生き方の自由選択が眼目で、労働時間が短いことを理由にした時間差差別を撤廃した。この点を日本も早く、見習わなけ ればならない。そのためには、時間のフェミニスト政治が必要である。日本では、労働組合もジェンダーの視点をこれまで持ち得ず、本気で労働時間の短縮をし なかった。余暇とアンペイドのケアとのバランスを考え、男女を含めてフレキシブルな労働時間を再考する必要がある。


■第34回  2002.6.8

『若者の労働(職業)意識』

報告者:
  山田 潤 〔西野田工業高校定時制教員/学校に行かない子と親の会(大阪)代表〕

コメンテーター:
  安富 久美子(私立高校教員)

 今回の報告者山田 潤さんは、大阪府立の定時制高校の教師で、「学校に行かない 子と親の会」大阪代表でもある。私立大学の非常勤講師もやっておられて、あくまで 現場の若者たちと接しての報告でした。

 前置きとして次のように述べておられます。
〜私の見聞は、ごくごく限られています。演題どおりの全体的な展望は背負いかねま す。研究会がなぜこのテーマをとりあげられたのでしょうか。「最近のこどもは、若 者は,,,,,」という、はなから見下したような議論だけはしたくありません。〜

 25年前、定時制高校の教師になったころは、卒業生達はさまざまな職業に就いて いった。私は彼等を職場に訪ね、カメラに収めるのが常だった。解体屋、配管工、機 械工、板金工、大工、左官 などさまざまだった。苦しい徒弟修行がふつうだったが、自分が辛抱して働き続ける ことで、弟妹が高校に進学で きるとがんばる子がおおかった。今、時代が変わり、もうこのような職種の求人はこ なくなった。仕事はあるが、中小企業の経営者たちは、求職してもだれもこないだろ うとあきらめている。一方、いまの子供達は、たいていの子がやりがいのある仕事を 嫌い、「ぼうーっと座って、にこーっとしてたら給料がもらえるところがいい」とい う。この子達には、自分の給料で学校にやる弟妹はいない。

 大学には、大学生の実態や意識をさぐりたくて講師にいっている。ある時、親の学 歴をきいてくる宿題を出した。中に、自分の母親が定時制高校の出身であることをは じめて知り、背筋に電流が走ったと言った学生がいた。普通高校ににいける能力があ るのに経済的に不可能だったことに驚いたという。つい、30年〜40年前のことも 子に語り伝えていないのに驚いた。最近の親は、子供にしてやれる最大のことは教育 であると考えている。子供ががまんして通っていた学校に行かなくなった時、特に母 親はパニックになる。不安感と自分のいきがいが失われることでどうしていいかわか らなくなる。

 教育問題は、労働問題のかげにある問題だ。親の職業観、労働観こそ問いなお されるべきだ。私は「しごと」は子供にとって「ほんもの」で、教育はほんものに出 会うまでの準備にすぎないと考える。いまは、準備にばかりかまけて、どうやっ て子供に「ほんもの」と出会わせるかが考えられていない。「ほんもの」に出会った ときに、子供達は輝く。

 今の子供たちは、、、、という前に、今のような社会をつくり、今のような環境を 子供達に与えている大人が 反省すべきではないのか。工業化時代から、情報化時代に変わり、働き方も職業も変 わってくる。若者達が、新しい途を選択していくだろう。


■第35回  2002.7.13

『新しい低賃金労働−−「中小」化する時間あたり賃金』

報告者:
  要 宏輝(連合大阪中小労働運動センター所長)

コメンテーター:
  吉村 臨兵(奈良産業大学経済学部教員)

 7月例会では,連合大阪の中小労働運動センターから要宏輝氏をお招きし,新しい 低賃金労働,非典型労働の広がりについて報告していただいた。要氏は総評時代の全 国金属を始め,ほぼ一貫して中小製造業の労働運動と関わってこられた。報告の要旨 は以下のとおり。

 

 まず賃金破壊・雇用破壊の流れとして,大きな「賃金引き下げ圧力」,「失業圧力」 がある。これに公務・民間の両職場でのダウンサイジング・アウトソーシングが関わっ ていることは衆知のことであるが,それは労働者を必要なときに必要な時間だけ効率 よく働かせようとする政府ならびに経営者の労働力政策の現れでもある。

 そこで労働者の側の実態を見てみると,年収200万円時代が到来している。それ が40-50歳失業者の初任賃金であり,近畿のタクシー労働者の年収であり,別会 社化された私鉄大手のバス運転手の年収であり,派遣労働者の平均年収でもある。ま た,1400万人近い非正規労働者数は組織労働者数の1154万人を上回るに至っ た。

 その非正規雇用の質的側面を見ると,かつては正規労働者が自らの職場を守るため にパート等の劣等処遇を容認したような経緯もあったが,今では非正規労働者ははっ きりと常用代替の性格を帯びているものがある。次に,労務管理上かつてはあまり聞 かれなかった兼業労働の公認がみられるようになった。さらに,それら非正規労働者 の賃金水準は,生活保護を受給しないと暮らしていけないような低位なものとなって いる。

 以上のような状況下で労働運動に求められていることは,職場動向、とりわけ電機 と公務から目を離してはいけないということである。電機では,派遣解禁への取り組 み,兼業の容認,それにEMSのような業態の成長といった,非典型の就業形態の先端 をゆくようなものが見られる。また,公務の世界では,委託の進展と労働条件の悪化 が同時に現れている。最後に経済的不利益よりも「人格的不利益」に目を向けるとい うことも労働運動に求められているところであろうと述べて, 要氏は報告を終えた。


■第36回  2002.8.10

『何がサラリーマンを駆りたてるのか−−「働きがい」と「働きすぎ」を考える』

報告者:
  櫻井 純理 (立命館大学非常勤講師)

コメンテーター:
  伊田 広行 (大阪経済大学教員)

 8月の例会は民間企業で勤務経験を持つ、大学非常勤講師櫻井純理さんの報告でした。報告の要旨はつぎのとおりです。

 この数年間にサービス残業が急激に増大している。就業時間「週60時間以上」の割合も再び増大している。なぜこのように働くのか?会社の仕組みとして働 かざるを得ない側面はあるにせよ、そこには自発を誘引する要因がある。

 長時間労働を強制的に規制する法律の不備や、労働行政の貧困さのほかに、人員不足、柔軟な働き方を求められる職場環境、集団主義的な「和」を優先する環 境、家庭を顧みるより個人の成功に価値をおく社会、「速さ」「時間の正確さ」を重要視する文化、教育における努力主義の強調などである。

 職場の中で、能力を発揮でき、競争に勝つ快感、達成感を得ることでついついがんばってしまうほどの仕事に感じるやりがいとは「能力」と「機会」のバラン スの取れた状態である。

 リストラが常態化するまでは会社がバランスのよい状態を施してきた。企業間の競争がさらに激化するこれから、労働者側も自分の雇用を守り、働きがいを得 るために自ら努力することが求められる。

 報告を受け、コメンテーターの伊田さんから「他者の働きを尊重し、認めること、必要としあい、働きがいを分かち合う」ということと「自己啓発」「自助努 力」とも言われたが両者は矛盾するのではないか、働きがい、生きがいと結びつく自分自身の存在意義を問うことが本来のねらいであると思うが、これは「何が サラリーマンを駆りたてるのか」というテーマの設定ではととらえきれないのではないかとの指摘がありました。また、会場から「働きすぎの構造」を何とかし ようと考えるのであれば「本当にやりがいのある仕事ができているのか」という問いになるのではないか、といった意見が出されました。


■第37回  2002.9.21

パネルディスカッション 『均等待遇とワークシェアリング』

パネラー:
  林 誠子 (連合副事務局長)
  竹信 三恵子 (朝日新聞記者)
  熊沢 誠 (甲南大学教授)

コメンテーター:
  上田 育子 (せんしゅうユニオン)

 パネルディスカッションは、3名のパネラーを迎え、せんしゅうユニオンの上田さ んをコーディネーターにすすめられた。

 甲南大学の熊沢さんは、「働きすぎの男子正社員の労働時間を少なくし、均等待遇 を伴ってどんな労働時間でも同じように処遇されるべきと」、その今日的な意義を述 べられた。

 朝日新聞の竹信さんからは、「欧州型ワークシェアリングは有償労働と無償労働の 転換。労働時間を減らした分は人間らしい労働にするために社会保障制度を充 実させるかなどの議論が必要。この部分が日本のワークシェアリングでは欠陥」と人 間らしい労働像への転換が強調された。

 連合の林さんは、「仕事、賃金、労働時間を分かち合い適正に配分するのがワーク シェアリング。目的は男が働いて女が家庭生活を守るという役割や仕組みから、多様 な価値を認め合い働き方やライフスタイルを見直し、とりわけ仕事を分かち合うこと で雇用の維持、確保をすること。連合は働き方の見直しとパートの均等待遇が大前提 で不必要な有期雇用をなくすことも含め法整備する。そのためには男性を基本にした 賃金システムを大きく変更すべき。」と主張。これに対し、会場から住宅手当や家族 手当などの既得権は守るべきとの意見が出て、林さんは「既得権こそ問題」と答え、 拍手が沸いた。今後誰もが自立できる賃金を求め、均等待遇とワークシェアリングの 議論をさらに深められればと願う。(せんしゅうユニオン寄稿/「なにわユニオン」 第35号より転載)


■第38回  2002.10.12

『アメリカ労働運動の新しい息吹』

報告者:
  戸塚 秀夫 (国際労働研究センター共同代表)


 10月例会のテーマは、「アメリカ労働運動の新しい息吹」でしたが、報告者の戸塚 さんは、〜それを如何に受けとめるか〜という副題を、自らつけられました。

 報告のポイントは、新しいタイプの運動として社会運動ユニオニズムが勃興したけ れども、日本にも通用するかどうか、また労働者がグループごとに、女性のコーカス、 ヒスパニックのコーカス、マイノリティのコーカスなどコーカスを盛んに行うことが 特徴となっているというものでした。その後、質疑に移りました。当日出された質問 は

 *Q1 9月11日のテロとアメリカの労働運動について

 *Q2 ユニオニズム、コーカスの詳しい説明を

 *Q3 労働運動が街頭にでて、コミュニティや、大学との連携を深めているとの ことだが、そのような労組活性化のしかけは?

などでした。報告はかなり難解でしたが、質疑の方は内容もよくわかり、回答も明解 で、1時間20分にわたって活発に議論が展開されました。

 
■第39回  2002.11.10

『「個人の時代」の労働組合運動』

パネラー:
  西谷 敏 (大阪市立大学教授)
  熊沢 誠 (甲南大学教授)

  11月例会は初めての日曜日開催。報告のテーマは、『「個人の時代」の労働組合』。 企業における人事諸制度は、たとえば成果重視の賃金制度など「個人化」の色合いを 強めています。労働者意識もそれとともに「個人化」しつつあるなか、これからの労組合のあり方を展望することが、今回の主要なテーマでした。当初予定して いた報 告者のうち西谷敏さん(大阪市立大学教員)が欠席となり、熊沢誠さん(甲南大学教 員)の報告のみとなりました。

  熊沢報告ではまず、1980年代以降の新自由主義的な思想・政策の台頭を背景として、 企業における労働条件の決定がますます「個人処遇」化しつつあることが語られまし た。そして、労働者の個人化志向については、それが本当に労働者の自発的な選択と 言えるのかという疑問が投げかけられます。労働条件の個人処遇化が生み出している ものは、少数の成功者と多数の不成功者への二極化現象であって、それは中産階級の 崩壊にほかならない。数多くの労働者は、実は、リスクの高い挑戦や成長よりも生活 の安定を望んでいるのではないのか、という問いかけです。

  熊沢さんは「ふつうの労働者の<価値観としての個人主義>は<生活防衛方途とし ての集団主義(ないし連帯主義)>なしには守られない」という考え方を基本的なス タンスとした上で、上記のような「個人化」の時代における連帯主義を展望します。 今後の労働組合の課題として指摘されたのは、以下のような点です。まず、労働者間 競争の枠組みとルールをつくる。つまり、能力主義的な労働者管理の実態を組合が把 握し、賃金格差に納得性と透明性を持たせるための取組みを行う。次に、組合の内部 に執行部権力から独立した一種の司法機関を設け、労働者個人の訴えの後ろ盾として 機能させること。そして、過労死や職場のいじめ、過重なノルマといった「個人の問 題」を「組合の問題」から排除しないこと。これからの労働組合には、労働者個人の 「自己決定」に対する集団的な支援と、個々の受難に対する集団的な取組みという役 割が求められている、と熊沢さんは主張しました。

  熊沢さんの報告ののち、『個人尊重の組織論』(中公新書)などの著書がある太田 肇さん(滋賀大学教員)が特別コメント(太田さんは、熊沢さんの呼びかけで今回初参加)。太田さんは、雇用労働と自営の境界線が曖昧になりつつあること や、労働者 を選別化・序列化するために企業の都合で導入されている能力主義の現状への批判な どを語られました。労働者を自営業型へ移行させつつ、そこで発生する労働者間格差 を政策的に解消することが、太田さんの展望の骨子です。

  質疑応答では多くの手が上がり、たとえば、「個人処遇化に組合がどう対応するか は一律ではなく、労働者の職種やジェンダーなどに応じて多様なあり方が考えられる のではないか」「いまどきの個人主義的な労働者に、『雇用を守る』といった従来型 のアピールでは弱いのではないか」といった意見がありました。熊沢さんは、「企業 内の労働者の多様化を否定するわけではなく、どんどん分解していけばよい。むしろ 層ごとに分解した労働者は企業の枠を越えて連帯していけるのではないか」と発言。 労働者個人のニーズと組合の決定レベルが近づくことが重要なのだと強調しました。

 
■第40回  2002.12.14

『公務臨職――「法の狭間」で均等待遇を求めて』

報告者:
  中谷 紀子 (学校給食パート調理員)
  前田 静 (市立病院パート看護師)

コメンテーター:
  増田 登 (泉大津市労連委員長)
   
  12月例会は、報告者に市立病院看護師の前田静さんと学校給食調理員の中谷紀子さんを、コメンテーターに泉大津市労連委員長の増田登さんを迎えて、 「公務臨職---『法の狭間』で均等待遇を求めて---」のテーマで行われた。前田さんと中谷さんからは、労働条件の一方的切り下げ(例えば、給与切り下 げ・労働時間の一方的削減等)や雇い止めによる解雇攻撃など、パートであるが故に受けた差別的取り扱いと、労働組合を作り、組合運動をする中でそれを撤回 させてきたこと、また正職とほとんど同じ仕事をしているにもかかわらず、正職との間にある待遇差も少しずつ改善させてきたことを話していただいた。増田さ んからは、正職の組合として臨時職員の解雇撤回闘争を闘った経験を話していただいた。

  前田さんと中谷さんは全く違う仕事をしているにも関わらず、パートであるが故に受けた差別的取り扱いは共通しており、この点がお話聞いていて強く印象 に残った。質疑の時に、臨時職員労組を作って運動をしている方から、組合運動をやってきた中で一番感じたことは、同僚の正職が臨時職員の担当している仕事 を専門職として認めてくれたこと、また臨時職員を一人の人間として認めてくれるようになったことだと述べておられたが、パート問題の本質はここにあるのだ と思った。つまり臨職と正職との間にある待遇格差は待遇の問題であるのみならず、一段下の存在とみなされた臨職の人としての尊厳の問題なのだと。



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■第41回  2003.1.11

『労働時間規制概念のあいまい化』

報告者:
  在間 秀和 (弁護士/大阪労働者弁護団代表幹事)
 
 
在間 秀和 氏

 

  1月例会は大阪労働弁護団の在間秀和弁護士に「労働時間規制のあいまい化」というテーマでお話しいただいた。

  在間さんは最初に、27年間弁護士をしているが、ここ数年かかわる労働事件の状況が大きく変わってきていること、その背景には裁判官の感覚が弱者を救 済する労働法的発想から、対等な当事者の間でどちらの理屈が法にかなうかという民法・商法的な感覚に変わってきていることがあることを話された。

  ついで1947年の労基法制定以降の労働時間法制の変遷について、変形労働時間制・フレックスタイム制・見なし労働時間制・裁量労働制など広範囲にわ たってお話し下さった。次にこの間の労働時間に係わる重要な判決である三菱重工長崎造船所事件(労働時間とは「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれ たものと判断できる段階」であることを認める)・大星ビル管理事件(仮眠時間も労働時間として認める)・京都銀行のサービス残業に対する大阪高裁判決に触 れ、最後に’02年12月26日に出された厚生労働省労働政策審議会の建議「労働法制の改定案」ついて話された。そしてこうした労働時間規制緩和と労働時 間でカウントしない、評価しない、成果がどれだけあがったかで判断する成果給はセットになっていること、8時間労働制を今あらためて強調して守ることを基 本にするべきであるし、いろんな形で問題提起することが必要であることを指摘して講演を終了した。


■第42回  2003.2.15

『新しい社会運動の模索――〈スピリチュアル・シングル主義〉から労働への向かい方を考える』

報告者:
  伊田 広行 (大阪経済大学教員)

コメンテーター:
  三山 雅子 (同志社大学教員)  
   
  今回、伊田広行さんの語られた<スピリチュアル・シングル主義>については、理論的な得心は別にして、様々な受け取り方、感じ方をした方が多かったの ではないだ ろうか?そういう点が、伊田さんのいうところの「スピリチュアル」なのであろう。 要するに、伊田さんの<言葉>に「霊的」に共感できる人、できない人で、大きく評 価が違ってくるのだ。つまり、「伊田ワールド」にはまりこめるのか否か、というこ とであり、決して伊田さんの<言葉>に共感できる人が先進的で、そうでない人が旧 タイプの人間である、とうことにはならない。

  伊田さんの語り口はとつとつとしているが饒舌である、という実に「不思議な雰囲 気」を醸しだす人である。お話は、非常に真剣なものだった。労働運動を含めた日本 の社会運動が低調している理由は何か?それを乗り越えるには「個人」や「個人単位」 などをキーワードにして理論と実践を再構築する必要があるのではないか?それは、 太田肇さんや西谷敏さんのお話を当研究会でもお聞きしようというこの間の問題意識 と共通するものがあり、集団主義と古い共同体主義への懐疑と、新自由主義のもとで の競争促進的な個人主義への危機感が背景にあり、きわめて今日的な問題意識の一部 である。

  伊田さんは、<スピリチュアル・シングル主義>とは何か?について、<アート> というキーワードを示しておられたし、「知性・身体・感性と<たましい>」をトー タルに持つことの必要さを語った。「たましい」とは何か?については、国家が「共 同幻想」であるなら共同幻想としての「たましい」も存在するのではないか?と語れ ていたように思う。終末医療で現在必要とされる「霊的な」ものの必要性もうなずけ るものがあった。あと、生活・人生の中で、本当にしたい<こと・労働>と、生活を 再生産するための<労働>とに分離している現状に危機感を示し、人生を前者を中心 に過ごすことの重要性や前者による後者の包摂の重要性を語られたが、これは、昔、 内山節さんが、語られていたことに通じるものがあるような気がする。

  このように、お話は、「幻想的」で「夢うつつ」の中に私たちをいざなってくれて、 リラックスできて、ここちよい心持にしてくれたが、高額の税金徴収と「新福祉社会 (国家)」の必要性について語られた時点で、私は現実に引き戻されたような気がす る。そうか!この話は「国家・政府」という集団・集団主義を前提とした物語であっ たのかと。そのとき、伊田ワールドは、もはや、幻想も夢想も、陰影さえも止めてい なかったのである。


■第43回  2003.3.8

『労働組合における個人と集団』

報告者:
  西谷 敏 (大阪市立大学教授)

コメンテーター:
  井上 二郎 (弁護士)  

  3月例会では、西谷 敏さん(大阪市立大学教授)さんが、11月例会「『個人の時代』の労働組合運動」を踏まえて「労働組合における個人と集団」とい うテーマで報告した。

  氏は1980年以後、個人の尊厳、政党支持の自由などから日本のユニオン ショッ プ協定の見直しを提案してきた。

  現在、日本の労働組合の機能低下は著しいが、組合員の個人主義化がすすんだから組合離れが始まったのではなく、相当以前から形骸化していたと思われ る。組合員幹部と会社側との癒着、退屈で古臭い決起集会、日当付きの動員など、組合員の態度に出さない離反は進んできていた。

  オイルショック以来、最大課題のベースアプが低迷しつづけ、労働組合の使命が疑問視されて久しい中、デフレに突入し、リストラが大手をふって行われる ようにようになった。これは労働組合を変える努力をしなかった組合員の責任でもあると私は思う。

  例会の後半の質議では、「組合の極度の弱体化中では、逆に団結強制が必要」という意見と、それに反対する意見が衝突した。「本工主義」、女性組合員の 軽視、個人の自己決定権無視など、組合の現状がいろいろ語られたが、これからの新しい労働組合像は出るにいたらなかった。西谷氏から、今後の労働運動のス タイルとしては、きっちりしたコアを持った同心円的まとまりとの提起があった。労働法学会については、今の労働運動を左右する力はまだないということで あった。

 
■第44回  2003.4.12

『外国人労働者の実状』

報告者:
  丹羽 雅雄  (弁護士/すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク(RINK)代表)

  RINK(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)代表をし ておられる弁護士の丹羽さんは,2時間近くにわたり,日本で暮らす外国人労働者と 出入国管理政策の関係について熱弁を振るってくださいました。滞在期間が90日を 超える「外国人登録者」の数が2001年末で177万8千人であるといった事実確認から始 まったお話は,植民地支配にまでさかのぼる出入国管理政策の歴史などにも触れなが ら,次第に今日の問題に重点が移るという構成でした。

  戦後の外国人労働者の存在は,サンフランシスコ講和条約発効に伴って朝鮮や台湾 など旧植民地出身者が外国人化されたことが発端です。年表によって示されたところ では,この在日の人々は現在でこそ第5世まで生まれているオールドカマーではある ものの,彼らに対する「管理」のカテゴリーは時に応じて変転してきたということで した。そこに,プラザ合意の後の国内労働力不足によるニューカマーの問題がつけ加 わります。すなわち,差別行政や差別意識がなお解決されていないところに,新たな 差別と人権侵害が生まれることになったということでした。

  こうして1990年代以降は外国人労働者への管理強化が進みながら,実状としては多 民族共生も進みつつあるということが指摘されました。例えば「怪しい外国人を見た ら110番」といった防犯ビラが地域の警察署によって配布されるかと思えば,2000年3 月に公表された「第二次出入国管理基本計画」では外国人労働者を受け入れることの できる職種や分野をさらに増やすことが目指されています。そうした状況下で起こる 人権侵害を解決するにあたっては,人種差別撤廃条約やそれを受けた国内法整備は大 きな意味をもつということでした。これについては,福井県の武生(たけふ)コンフ ィクソン組合や,浜松市の宝石商の事例などに関し,行政担当者の感受性や弁護の難 易といった点も含めた具体的な描写を聞くことができました。また今後の課題として ,現に実在する人権侵害への対応のみならず,出入国管理政策に対してさらに踏み込 んだ関与をせざるを得ないだろうとの見通しも示されました。

 
■第45回  2003.5.10

『若者の就業と職場』

報告者:
  熊沢 誠 (甲南大学教授)

コメンテーター:
  河野 尊  

  5月例会では、熊沢誠さん(甲南大学教員)が「若者の就業と職場」について報告 を行いました。

  昨今、フリーター人口の急増および若者の高い離職率が深刻な問題としてにわかに 注目されています。報告では、そうした実態をまずは正しく統計的に把握することか らはじめ、現在の不況下における最も手っとり早いリストラとして新規採用の抑制が 行われ、それにより若者の失業率が急速に増大しているということ、また、若者が就 業する職業・職種がパワーレスなものに偏在しており、雇用形態においても非正規化 が進行していること、そして、正社員として採用されたとしても、過重なノルマ、成 果主義による厳しい選抜にさらされ、少なくない若者が退職に追い込まれていくこ と、などが指摘されました。その他、若者がパラサイト・シングルとなることの問題 点、若者における階層分化、「能力や成果」を重視する若者意識の台頭、などについ ても検討が行われました。 

  報告はさらに、そうした現状を踏まえて今後なにがなされるべきかについて、とく に「主体の問題」について触れ、いまフリーターになる若者たちの「自分探し」が個 人化、脱社会化、心理化されたものに陥っていることを指摘し、重要なことは、そう した「自分探し」を克服してゆくこと、つまり他人や社会とのかかわりのなかで「が んばれること」を見つけてゆくこと、生き方、働き方のオルタナティプを持つことで あると強調しました。

  熊沢さんの報告を受けて、コメンテーターの河野尊さんは、大量生産・大量廃棄型 の生産システムが循環型へと転換してゆく現代において、ソーシャルベンチャーや NPOなどで、若者たちの注目すべき活動があり、そうした積極的側面を位置づけてゆ く必要があるとの問題提起を行いました。

  討論では、雇用の受け皿としてのNPOをどう評価すべきか、若者という場合に高卒 と大卒を区別する必要があるのではないか、若者問題とは大人の問題ではないのか、 女性差別と若者差別の関係はどうなのか、等々活発な意見が述べられました。

  なお、このテーマについては、9月の東京シンポジウムで引き続き取り上げてゆく 予定です。

 
■第46回  2003.6.14

『レンズを通して見た働く人たちの人権
       〜報道カメラマンの現場〜』

報告者:
  小山 師人 (元NHK大阪放送局報道部カメラマン)

 6月例会では、元NHK報道カメラマンである小山帥人さんが、報道カメラマンの職場の実態や人権問題、また自ら企画・取材・制作されたドキュメンタリー などについて、作品のビデオ映像の紹介を交えながらの内容の濃い報告をして下さった。
 まず、あまり知られていないニュース制作の過程とその中での報道カメラマンの立場の説明があり、犯罪報道における被疑者の犯人扱い、在日コリアンに対す る無視あるいは偏見、釜ケ崎を「別世界」の様に描き、怖いもの見たさの欲望を刺激するような映像など、テレビ放送による人権侵害の歴史が説明された。そこ では、公営放送であるはずのNHKも例外ではない視聴率競争によるウケねらいの報道や、放送現場での人権意識の欠如などの問題点が指摘された。放送労働者 の人権に関しては、過酷な長時間労働、同僚との競争の煽りや配転命令による管理などの現状が示された。

  小山さんの報告においても、また活発な質疑応答においても、浮かび上がった中心的な問題は二つに集約できると思われる。一つは、「不快映像」の回避、 放送用語統一の必要性、及び放送禁止用語などを通して、表現者である放送労働者にかかってくる様々な強制の圧力、表現への規制の問題である。これらの規制 にはもちろん妥当なものも多いが、人権意識に基づくというよりは、抗議を避けるための事なかれ主義による、理由のはっきりしない規制も多い。それは人権を 守るというよりも、むしろ人権侵害の現実を隠蔽する結果につながるという重要な指摘がなされた。「人権」の名において、人権侵害が助長されてしまうことも あるのだ。そしてそれらの規制に対しての労働組合の介入が拒否されているというひどい現実が指摘された。ここで個人的に印象に残ったのは、「ただ体制に順 応する人には、表現への規制が強制とは感じられていない」という指摘だ。放送現場における人権の感覚に関して言えば、小山さんのように一放送労働者として の表現の自由という、自分自身の人権が侵害されている事が認識でき、自分がしたい表現への制約と現場で戦う事ができて、初めて取材対象である他者の人権が 尊重できるという事ではないだろうか?そこに釜ケ崎の労働者を彼ら自身の視点から撮ってこられた小山さんの基本的なスタンスが感じられた。

  もう一つは映像メディアの力という点である。一方では、例えばイラク戦争報道での「不快映像」である死体映像の回避が、「クリーンな戦争」というイ メージ操作に帰結する事が指摘された。しかしもう一方では、映像技術の発達により市民が映像の発信地となる可能性が開け、事実、韓国を始め諸外国では民衆 メディアを放送するチャンネルが充実しつつある事が説明された。市民も映像メディアの力を手にしつつあるのだ。残念ながら日本では、電波を放送局が握り総 務省が許認可権で管理するという法的・制度的な問題があること、また同時に「電波は市民のものである」という価値転換の必要性が指摘された。それでも、現 在小山さんが推し進めておられるように、日本でもインターネット・テレビやカフェ放送といった民衆メディアチャンネルが発達しつつある。労働運動を映像化 することは簡単ではないが、民衆メディアの開かれた可能性という小山さんの指摘は、例会の参加者に一条の光を投げかけたと言えるだろう。

 
■第47回  2003.7.19

『労働者の新しい学び
       〜労働教育ワークショップ〜』

 研究会「職場の人権」では、発足以来、職場の実態報告や労働問題についての理論的研究を月に一度続けてきた。こういった例会を重ねる中で、会員の中から この研究会として、今現にある労働問題を解決する力になるような試みをするべきだという声があがってきた。7月例会「労働者の新しい学び〜〜労働教育ワー クショップ〜〜」は、そのような試みとして初めてもたれたものである。

 最初にワークショップとはいったい何をするものかという説明が行われた。次いで参加者がお互いを知りあい、うち解けた雰囲気でワークショップをすすめて いけるよう他己紹介ゲームをおこなった。その後、今日の例会の中心である職場のいじめを題材にしたロールプレイ「あなたが同じ職場の仲間なら」とすごろく ゲーム「職場の人権バージョン」をおこなった。ロールプレイは例会参加者にいくつかのグループに分かれてもらい、参加者全員にいじめ役やいじめられている 労働者とその同僚などの登場人物を割り振り、実際に役をやってもらうなかで職場のいじめを疑似体験するというものであった。すごろくゲームの方は人生ゲー ムのまさに職場の人権バージョンともいうべきものであった。参加者はこのゲームで、サイコロの目という偶然と参加者本人の選択によって職業や雇用形態とそ れらによる労働条件の違い、労働組合や結婚などを疑似経験して、働き方と暮らし方について考えるというものであった。この二つのワークショップの後、全体 を通しての意見交換をおこなった。そこではワークショップという学び方の形式について、役柄とはいえ発言の中身は人格と分離できないから、このような意味 でロールプレイは有効なのかという意見がでる一方で、普段話さない人もワークショップでは自分の意見をはっきりと言える場合があり、ワークショップは全員 が参加できて、その中で意見を引き出すことのできるという意味で有効なやり方だと言う意見もあり、賛否が分かれた。


■第48回  2003.8.9

『女性とマイノリティを包摂する労働運動の実現をめざして 〜「女性ユニオン東京」の実験〜』

報告者 :
  伊藤 みどり (「女性ユニオン東京」委員長)

コーディネーター :
  上田 育子さん (せんしゅうユニオン委員長)

 8月例会は女性ユニオン東京の伊藤みどりさんを迎えて、「女性とマイノリティを包摂する労働組合をめざして」というテーマで、女性ユニオンの経験とそこ から見えてくる労働組合の21世紀戦略について語っていただいた。

 最初に伊藤さんは、女性やパートタイム労働者の低い組織率、執行委員に占める女性比率の低さなど、労働組合をめぐるジェンダー状況について述べた。つい で、代議員制度では女性が代議委員に選ばれることが非常に難しく、少数意見が組合の中に反映されにくいこと、また既存の労働組合の中では女性がリーダー シップをとることに対して大きな組織的中傷・妨害があること、その中で女性の活動家は男性からのむき出しの敵意を浴びせられ、孤立感を感じていると語っ た。つまり、企業内組合や大単産・大単組が中心の既存の労働組合運動は、妻が支えてくれてこそ活動に参加できるという運動スタイルを含めて、男性・正社員 中心主義の運動であると述べた。

 伊藤さん自身、男性と一緒の労働組合で20年位活動してきたが、家族制度の問題や同一価値労働同一賃金問題・セクシャルハラスメントなどは、提案しても 全体の問題にならなかった。また、働く女性が増え、女性の労働相談が増加したにもかかわらず、 労働組合に女性が定着しなかった。こういう経験をするなかで、男性中心の労働組合ではできなかった問題に真正面から取り組むために、「女性労働権の確 立」・「性差別の撤廃」・「同一価値労働同一賃金」を目指して、1995年に女性ユニオン東京を結成した。

 時間もお金もなく、組合活動するゆとりもない女性たちは、それでも組合活動をするために、様々な工夫をこらしてきた。たとえば労働相談から団体交渉・労 働委員会まで、未経験の人でもできるようにマニュアルを作り、パソコン上に蓄積してきている。ミーティングも、司会や書記は専従など一人に偏らないよう回 り持ちにしている。つまり、誰でもができるようにして、やれることは自分でするし、たくさんの人が組合活動を経験するようにしている。

 これまでの10年近い女性ユニオン東京の活動では、たとえば男性に頼るべきか否か、上部団体を脱退するか否か等、いくつかの転機があった。そういう転機 を経ながら毎年500件ほどの労働相談を受け、70件ほどの団体交渉を組合経験のない女性たちだけ でおこない解決してきた。

 こういう力を女性は持っているのであり、21世紀に向けてこれまで男性が独占してきた執行部の責任や権限を、女性にもっと経験してもらうことが、女性組 合に限らずどんな組合にでも必要なのではないか。また女性が担えるよう労働組合業務のあり方を変えていくべきだと述べて話を終えた。

 
■第49回  2003.9.20

「職場の人権」設立4周年記念シンポジウム

『若者たちの失業と就業をめぐって』

パネラー :
  乾 彰夫 (東京都立大学教授・教育学)
  鎌田 慧 (ルポライター)
  箕輪 明子 (首都圏青年ユニオン執行委員)
  熊沢 誠 (研究会「職場の人権」代表/甲南大学教授)

コーディネーター :
   櫻井純理氏(立命館大学)

 9月例会は「職場の人権」設立4周年記念シンポジウムとして初めて東京で開催されました。『若者たちの失業と就業をめぐって』をテーマに四名の方に報告 をしていただきました。

 箕輪明子さん(首都圏青年ユニオン執行委員)は、青年ユニオンによせられる年間200件を超える相談活動(賃金未払い、セクハラ等)を紹介し、「青年が すぐ仕事を辞める」といわれるが実態は強制的に退職に追い込まれている事例が多いこと、「フリーターであっても安定して働いていけることの具体的なイメー ジ」を運動側がもつべきことを述べました。

 乾彰夫さん(東京都立大学教授)は、教育学の立場から、現在の日本の若年雇用問題をヨーロッパ諸国にも共通する「子供から大人への移行期」の長期化・複 雑化の問題であると同時に、社会保障制度が充分でない日本の場合では「親の責任」「家庭責任」のイデオロギーが強いことを明らかにしました。

 鎌田慧さん(ルポライター)は、戦後の労働史を流れをふりかえりつつ、現在のフリーター問題がかつての臨時工問題の復活として捉えられること、今マスコ ミのなかでも人権の意識が薄れつつあること、労働者の側が対抗文化をもたなければならないこと、などを話しました。

 熊沢誠さん(研究会「職場の人権」代表/甲南大学教授)は、現在の若者の就業が「恵まれない」分野に偏在していることを分析し、ワークシェアリングにむ けた取り組みが必要であること、職業教育の問題を重視すべきこと、などを提起しました。

 報告を受けて会場では活発な討論が行われました。
 職業教育の具体像はどのようなものか、現場での経験をふまえた意見交換が行われました。また、「若者や非正規労働者の賃金を上げていくためには正規の賃 金の切り下げが必要か」という論点については、「高年齢者の賃金が高止まりしていることによってはじめて若者や非正規の賃上げができる」という主張と「パ イは一定なのだから公正な分配を目指すべき」といった賛否両論が展開されました。


■第50回  2003.10.11

『精神医療の現場で働く人たち』

報告者 :
  有我譲慶 (光愛病院労組委員長)

 10月例会は、光愛病院統一労働組合・全国精神医療労働組合協議会の有我譲慶さん に、「精神医療の現場で働く人たち」というテーマでお話いただいた。

 最初に有我さんは、精神疾患は60人に1人の人がかかっている誰もがなりうる病気であること、また、向精神薬による薬物療法と社会心理療法などのリハビ リを組み合わせることにより、治療しながら地域生活を送ることができ、厚生労働省も糖尿病と同 じ慢性疾患として位置づけていることを話された。

 次に精神医療に携わる労働者の人権は精神障害者の人権と表裏一体の関係にあること、だから精神医療の現場で働くことについて理解してもらうためには、精 神医療の おかれている状況について知る必要があるということで、有我さんは我が国の精神医療の実態について様々なデータを使って話して下さった。

 たとえば、

 1)地域で暮らしながら治療を受けることが当たり前になる中で、人口千人あたりの精神病床は世界の様々な国で60年代末以降減少をたどっていること、そ の中で日本だけは反対に、精神病床を増加・維持していること

 2)日本は精神障害者の平均在院日数も突出して多く、ヨーロッパ諸国の中でも長期入院である英国と比べても約5倍もの長期間になっていること(日本 432.7日、英国86.4日)

 3)日本の医療法の人員配置基準では、精神病床は一般病床と比べ、医師数で1/3、 看護職員で3/4、薬剤師で約1/2になっており、慢性的な人手不足状態にあること

 などである。

 医療の中にある医師――看護士――患者というヒエラルキーに加えて、この慢性的な人手不足が患者さんに対する医療的放置や隔離と拘束の横行を生みだし、 「大和川病院暴行死事件」の後も患者さんへの虐待と人権侵害を続発させていることを指摘した。厚生労働省は医療費を抑制するため診療報酬をマイナス改訂 し、その結果病院側は人件費比率の圧縮を図るため、現在非正規雇用の拡大を進めていることを話された。

 例会当日には、非正規職員の方と家族会の方からも発言があった。非正規職員の方からは有期雇用の時間給で働いていること、時間給もわずかしか上がらない 労働実態についてお話があった。家族会の方からは、何度も引っ越しをせざるを得なかった家族がいるなど、患者とその家族を地域の人が受け入れてくれるよう になることが、病気を抱えながら地域で暮らしていくためには必要であるという発言があった。

 

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■第51回  2003.11.15

『ファストフードの現場では――各国の労使関係』

報告者 :
  大石 徹 (芦屋大学教員)

 11月例会は文化人類学を専門とされる大石徹さん(芦屋大学教員)が講師。「マクドナルド」に代表されるようなファストフード現場の労働事情や、マクド ナルド的な働き方の多様な分野への広がりとその問題点を中心に、報告が行われました。

 最初に「マクドナルド化」(McDonaldization)と呼ばれている過程と、それに関わる労働実態が具体的に紹介されました。マクドナルド化と は、ファストフード店の仕事形態やシステムが、世界中のますます多くの産業や制度で採用される過程のことです。たとえば日本の郵政公社でもマクドナルドに ならい、アルバイト労働者に支払うバイト料の段階化を導入するなど、ファストフードをはじめとする外食産業以外にも類似した労働形態が広く普及しつつあり ます。マクドナルド化の特徴は、効率化、計算可能化、予測可能化、制御。作業工程や接客を単純化するとともに、規格化・定量化を進め、原材料生産から生産 工程、客数管理にいたるまでの制御力を高めていく。そのプロセスではもちろん、労働者に対する企業の制御力も高まります。  

 このようなマクドナルド化によって、仕事はマック仕事(McJob)へと変化してきました。つまり、技術水準が低く、低賃金、高ストレス、不安定な労働 条件の疲れる仕事です。特に低学歴、低技能、下層階級出身者を中心に、「チップを渡されるような仕事」、マック仕事にしか就けない階層が形成されているの です。ポスト産業社会のなかでは、高賃金・高地位の仕事とマック仕事のような低賃金・低地位の仕事の「分化」が進行しています。たとえば、マクドナルド社 の最高経営責任者の年収は、アメリカの同社で働くパートの平均賃金と比較すれば、300倍近くに相当します。  

 このような仕事の変化に対して労働者たちもさまざまな抵抗を行ってきています。この日の報告では世界20ヶ国のファストフード産業における労働運動が、 レジュメで紹介されていました(その内容については、ファストフード産業の労働運動を参照)。一つだけ例を挙げれば、アメリカ・オハイオ州マセドニアのマ クドナルドで1998年4月、約20人の若い労働者(高校生・大学生中心)が5日間ピケを張り、全米トラック運転手組合の支部がこれを支援(食材の供給を 拒否)。労働条件の改善や有給休暇付与、シフトスケジュールの告知などを要求するストライキでした。  

 しかし、活発に見えるこれらの労働運動もあまり成功しているわけではありません。経営側による徹底した組合つぶし、労働法制の抜け穴(交渉単位としての フランチャイズ店の位置づけの問題)、もっとも弱い立場にある労働者層ゆえの問題(解雇されれば次の職がない、あるいは、すぐに他の店へ移るので徹底して 抵抗しようとしない)などがその理由です。日本でもファストフードの労働現場には若年労働者が多いことから、若者による職場改善を促進するためには何が必 要なのかを考えることが必要です。大石さんは最後に、若者たちにとって現在の労働運動は(コミュニティユニオンも含めて)魅力的なものとは言えず、そこに も課題があると問題提起しました。この点については報告後のディスカッションでもひとつの焦点になりました。

 
■第52回  2003.12.13

『アメリカのリビング・ウェイジキャンペーンから日本の地域労働運動を考える』

報告者 :
  吉村臨兵 (奈良産業大学教員)

コメンテーター :
  泰山義雄 (北摂地域ユニオン)

 12月例会は「アメリカのリビング・ウェイジキャンペーンから日本の地域運動を考える」というテーマで、吉村臨兵さんにお話いただいた。吉村さんは最初 に「リビング・ウェイジ」、つまり「生活賃金」を求めるという考え方は、19世紀末イギリスのマッチ女工や港湾労働者のストライキで既に「食物とある程度 の家庭的、個人的愉楽」を要求するという形でみられたことを話された。次いでリビング・ウェイジキャンペーンの背後にあるものとして、アメリカで20世紀 初頭にマサチューセッツ州を皮切りに始まった最低賃金規制や現行の連邦・州レベルの最低賃金、建設産業の産業別最低賃金ともいうべきデービス・ベーコン法 などのアメリカにおける最低賃金規制の歴史について話された。

  リビング・ウェイジキャンペーンの要求を最初に条例化したのは、1994年のボルティモア市である。それ以降80の市や群で条例化が行われているけれど も、その背景には次のような社会状況がある。

 1) 現在、連邦最低賃金額は物価水準を勘案すると'68年をピークに漸減傾向にあり、連邦最賃では生活が困難になってきている。その結果、連邦最賃を受け取っ ていても何らかの社会保障的なもので生活水準を維持しなければならない事態が広範囲に見られるようになった。

  2) さらに'96年の個人責任・就労機会調停法成立の結果、福祉見直し路線が加速化し、例えば失業しても失業保険の手当をもらえない失業者が2/3を占めるよ うになっている(同手当は70年代には失業者の半数以上の手に渡っていた)。

 

 また今は賃金相場を二層化させる構造が強まっているとして、福祉労働プログラムとアジアの輸出加工区を例に話された。

 この後泰山義雄さんから、経済のグローバル化・市場原理の拡大・規制緩和が進む中で貧富の差が拡大し、労働者も二極分化してきていること、これにどう歯 止めをかけるかという時、リビング・ウェイジという考え方は社会的公正基準を作っていく意味で非常に魅力があるというコメントがなされた。

 
■第53回  2004.1.17

『介護労働の現場から
  ――豊かな介護・自立できる労働条件をめざして』

報告者 :
  玄場絢子 (高齢社会をよくする女性の会・大阪/介護労働研究会)

 第53回研究会は、「介護労働の現場から――豊かな介護・自立できる労働条件を目指して――」というタイトルで、まず高齢社会をよくする女性の会・大阪 /介護労働研究会の玄場絢子さんに、話していただいた。

 玄場さんは、同会が行った「介護保険制度下における利用者とホームヘルパー」調査にもとづいて、ヘルパーの1)40〜50代の女性が圧倒的で就労形態は 登録・パート等非正規が7割というプロフィール、2)週間就労日数や1週間の活動時間、月収は5割ちかくが8万円未満で、自立して生活できる月収でないな どの労働条件、3)現在の主な仕事は、どの就労形態も複合型が多くなっていることや、介護保険の枠外の仕事をせざるをない職務実態、4)そして「利用者が ヘルパーの職務に理解がない」という悩みを抱えているなど、介護保険の下でのヘルパー労働の実態について詳しく話して下さった。次いで、現役へルパーの方 2名と特定非営利活動法人泉ひまわりの会理事長から、介護をしている当事者の生の声を語っていただいた。

 高齢化が進んでいること、介護保険が成立したことによって、介護については知っていると思っている人が多いと思う。第53回研究会は、このような思い込 みを打ち砕いてくれる研究会であった。家事介護にあっては、家族の衣服の洗濯まで要求されたり、90分の介護時間の間におかずを5品作ってくれと言われる 場合があること、また身体介護にあっては同じく入浴援助をしても、ヘルパーがする場合は看護師がする場合より報酬が安く設定されていることなど、ヘルパー の職務があたかも限りなく従来の「妻」役割の延長で理解され、それゆえ低賃金にされていることなど、気づかされたことの多い研究会であった。

 
■第54回  2004.2.21

『年功賃金の功罪
    ――なぜ、どのように変革すべきか』

報告者 :
  木下武男 (昭和女子大学教員)

 今回は、木下武男さん(昭和女子大学教員)に、「年功賃金の功罪」というテーマでお話していただきました。木下武男さんは、ご自身も15年もの長きにわ たって大学の非常勤講師をしておられたとのことで、正規労働者と非正規労働者との労働条件・賃金の格差の問題点については、痛感しておられるがゆえに非常 に力のこもったお話でした。

 木下さんからは

 1) 今の年功賃金が「生活給」であり、世帯主労働者一人が家族を養うための生計費を得なければならないし、家族生計費の上昇に対応する賃金が必要だっ たことから、労働組合もそれを獲得することに運動のポイントをおいていた

 2) その生計費は必然的に年齢や性別で異なるだろうし、パート労働者は生計費補助的なものとされ低く据えおかれることになる

 3) さらに、企業の大きさの差で賃金に格差も出てくる。この結果が、大きな賃金格差を生んでいる

 4) そこで、賃金を世帯主賃金から個人単位賃金にする、仕事給に社会保障制度を加えて考える、ジェンダー視点に立つ職務分析・職務評価を行うという内 容で、新しい生活賃金思想に基づいた生活賃金を作り出す必要がある

ということが、まず話されました。次いでここから

  5) 新しい労働運動として個人加盟制の地域ユニオンを発展させて、職種別ネットワークを組合横断的につくり、職種別交渉が実現するような取組をすること が必要ではないか、そして職種別賃金を「同一価値労働・同一賃金」原則にもとづく横断賃金にしていくことが必要であるという提案を行い、「連合」の報告を 例に取りながら、過去の確執などに囚われずに情況の変化に目を向けないと、労働者の利益に背を向けることになる

と問題提起されました。  

 議論では、コメント担当の岩佐卓也さんから「正規労働者の年功賃金に準拠して女性労働者・非正規労働者の賃上げを勝ち取った事例はある」という異議が出 され、木下さんからは、「賃金事態のパラダイムチェンジが必要である。パイが大きくならないのだから分配を均等にしなければならないのです」という逆異議 も出され、白熱した論議が 成されました。

 今の男性正規労働者の年功賃金が「世帯主の生計費賃金」であること、パイを大きくするには第三世界などから「収奪してこなければ」ならないことを考える と、岩佐さんの論議は面白いのだけれど、個人単位賃金に改め、パイを大きくせずに分配の公正さを追求べきという木下さんの議論が現実的なのかなと思いまし た。

 
■第55回  2004.3.13

『内部告発制度のゆくえ
――公益通報者保護法案の問題点について考える』

報告者 :
  阪口徳雄 (弁護士/公益通報支援センター事務局長)

コメンテーター:
  根本到 (神戸大助教授)

 3月例会の報告者である坂口弁護士は「公益通報支援センター」で中心的に活躍しておられる。当日の報告はまず,そのような活動に関わっている人ならでは の具体的 な描写に満ちたもので,事業者や官庁といった組織の内部の不正や,連絡してくる労働者のおかれる環境がよくわかるものだった。同センターは2002年10 月に設立されたもので,大阪にある。東京のほうがもちろん通報や相談を受けるうえで人的な厚みも あるものの,持ち込まれる件数がそれを上回って多くなるため,その種のセンターを開設するに至っていないという。

 次に当日の報告のテーマとなったのは,このほど閣議決定された「公益通報者保護法」案のはらむ問題である。その法律が「ない方がまし」か「ないよりま し」かという点について坂口氏の言明された結論は,「ないよりまし」のほうだった。それでも同法案の問題点,あるいは不十分な点についてかなりの時間をさ いて説明を聞くことができた。

 たとえば,内部告発した労働者が不当に解雇されないということがこの法律の大き な眼目となるはずであるが,その組織の管理部門や監督官庁を経由せずに直接マスコ ミへ訴えた場合などには,労働者が保護されにくいようになっている。また,通報( 告発)できる不正や犯罪がきわめて限定されているという点にも驚かされた。近年話 題になることの多かった大手事業者による不正としては食品に関連するものが挙げら れるが,なるほど食品衛生法にかかわる通報はできる。ところが,同じように違法行 為を通報できる領域が無制限に広がると困る,という政治的な抵抗から,結局20にも 満たない法律に関してのみこの「公益通報者保護法」が適用されることになったのだ という。

 会場からは,この法律がむしろ密告を誘発する危険もあるのではないか,といった質問も出るなど,じっくりと議論が行われた。いずれにせよ,施行されたと してもまだまだ「使いにくい」法律だということもあり,どのように権利を擁護する法律へ育ててゆくかについては労働組合の取り組みも大きな要素となる。


■第56回  2004.4.17

『労働問題の焦点はどこに?
 ――熊沢誠「岩波新書三部作」をめぐって』

報告者 :
  鈴木良始(同志社大学)、三山雅子(同志社大学)

コメンテーター:
  熊沢誠(甲南大学)

 研究会「職場の人権」代表の熊沢誠さんは、1997年から2003年にかけて三作の岩波新書、『能力主義と企業社会』『女性労働と企業社会』『リストラ とワークシェアリング』を刊行し、現代日本の労働者にとって枢要の問題を多面的に考察しました。4月例会はこの「三部作」の特徴や意義がどこにあり、残さ れた問題点は何かを切り口としながら、現代日本の企業社会が抱える諸問題について考えるものでした。

 報告者は鈴木良始さんと三山雅子さんで、ともに同志社大学の教員。鈴木氏には『日本的生産システムと企業社会』(北海道大学図書刊行会、1994年)、 「日本的労使関係のゆらぎ」(『(季刊)経済と社会』第5号、1996年)、「フォードの経営思想」(渡辺峻他編著『やさしく学ぶマネジメントの学説と思 想』ミネルヴァ書房、2003年)、三山氏には「働き方とジェンダー」(原ひろ子他編『ジェンダー』新世社、1994年)「大競争時代の日本の女性パート 労働」(竹中恵美子編『労働とジェンダー』明石書店、2001年)、「日本における労働力の重層化とジェンダー」(『大原社会問題研究所雑誌』第536 号、2003年)などの著作・論文があります。


 鈴木氏は熊沢三部作について、まず、次のような「3つの意義」を挙げました。

意義@:能力主義管理の分析を「企業の管理分析」に限定せず、労働者側の意識と対応の面からもとらえ、それを「自発と強制がないまぜ」になったものとして 把握した。

意義A:能力主義管理への対抗軸に管理の「程度問題」を据えて、管理をどこまで許容し、どこに制約を加えるかを具体的に検討した。

意義B:能力主義管理を社会構造のなかに位置付けて、階層別の労働実態と労働意識の分析を行った。


 その上で、残された問題点、疑問として以下の3点が指摘されました。

疑問@:第二期(1970年代後半〜1992年)の能力主義管理について、「ゼロサムの厳しい選別」という見方と、「仕切られた競争」「遅い選別」による 競争意欲の持続という指摘とは、整合的に説明できないのではないか。

疑問A:今後の賃金支払いシステムも中心は職能資格制度にあり、仕事給(四象限図の第一象限)には向かわないとしているが、仕事給(ただし、個人別柔軟性 を維持)と成果主義の結合した賃金システムが中堅以上に定着する可能性があるのではないか。

疑問B:個人別職務割り当ての柔軟性と評価の個人別多様性を、一律型ワークシェアリングの障害ととらえているが、果たしてそうか(むしろ別の要因のほうが 大きな障害ではないか)。


 続いて三山氏は、三部作のなかでも特に『女性労働と企業社会』に焦点を当て、「性別職務分離」と「女性労働者の階層分化」への強いこだわりがその方法的 特徴であり、能力主義とジェンダーの関係を多様な観点から指摘している点に意義があると評価しました。続いて、この著作から得られる示唆に基づき、女性労 働を取り巻く現状と将来の展望が語られました。企業内の仕事が「付加価値型」職務と「効率型」職務に二分割されつつある過程では、ジェンダー差別が温存さ れているとはいえ、いっそう事態は複雑化しています。従来のように単純な「女性賃金」と「男性賃金」の格差では問題は語れず、比較対象としての男性賃金も 二分化されていくからです。さらには、付加価値型職務への裁量労働制の導入(間接性差別や高齢者差別の強化につながる可能性)や、企業再編と非正社員の増 大(平等の対象者は別企業の可能性)なども女性差別の問題解決を複雑化する要因です。これらの状況をふまえると、熊沢氏が三部作で繰り返し強調している 「能力主義管理に対する規制」と「雇用機会を分かち合う思想」が、女性労働者の対する差別の是正・解消のためにも喫緊の課題であるという結論に達します。

 両氏の報告を受けて、熊沢氏のコメントでも、三部作それぞれの「意義」と「問題点」に対する自身の「自覚」が語られました。「問題点」としては、「経済 的合理性」の裏付けが弱い(日本経済を活性化させるのか?)という批判を受けていること、男女平等論と「女性の解放」論との違いへの追求は不十分、エリー ト社員や組合幹部の人間像分析が不十分、「連帯」の思想が「個人の時代」になおインパクトを持ちうるのかという不安…などが挙げられました。

 報告、コメント後には例会参加者を加えて質疑応答、議論が行われました。議論では、今後の賃金支払いシステムの姿(企業横断的な職務賃金は広がるか否 か)、今後の「連帯」の姿をどう描くか、個人化の中で「労働者意識」はどう変化しているかなどが中心的なテーマとなりました。

 
■第57回  2004.5.15

『住友系三社・性差別裁判の現段階 
 ――私たちはなにを訴えてきたのか』

報告者 :
  矢谷康子(住友化学・原告)、黒瀬香(住友金属・原告)

コメンテーター:
  熊沢誠(甲南大学)

 5月例会は、住友系三社性差別裁判の原告である井上千香子さんと矢谷康子さんをお迎えして「住友系三社・性差別裁判の現段階」というテーマでお話を伺っ た。

 最初にお二人から、高校卒業後にスタートしたそれぞれの職業史を話していただいた。仕事をするなかで、結婚・出産後も働き続けようと仕事に対する考え方 が変わったけれど、そのような彼女たちに見えてきた会社と労働組合の姿は次のようなものであった。同期入社同学歴の男性はほとんどが管理補佐職などに昇進 し、職掌転換試験を受けるよう推薦され、職掌を転換していく中で、女性はずっと下位の等級に置かれ続け、転換試験受験の推薦さえされなかった。会社の女性 に対するこういった扱いを男女差別だから是正するように組合へ訴えても、組合は能力評価の結果だといって取り上げなかった。このような状況のなかで定年ま で勤め上げたとしても、一般職が定年時に就く資格等級は男性総合職が1年間の実習を終えて就く資格等級にすぎない。また、たとえ男性が担当していた契約や 営業を一般職女性が担当しても補助扱いで、月収で同期入社同学歴の男性と20〜25万も差がつき、一般職女性は一人前扱いされない。

 このような性差別を正すそうと婦人少年室へ調停を申し入れたが3社とも不調で裁判を決意した。また、国内で闘うだけでなく国連に「日本からの手紙」とし て日本の女性労働者の実態をデータとして持って行く活動もおこなったが、国連で世界中の人が性差別克服のために闘っている姿を目にし、自分達が間違ってい ないことを確信した。このような闘いを続ける中で職場では結婚後も働き続ける女性が増え、男性社員の中にも彼女たちの言うことはわかると言ってくれる人が 現れるなど職場は少しずつ変わってきている。そして二人は住友電工の和解(http://www.ne.jp/asahi/wwn/wwin/# の住友 電工裁判をクリック)を不動のものにしたい、あの内容を私たちにも適応させたいし、たとえ最高裁までいってダメでも、女性差別撤廃条約の選択議定書がある から、議定書を日本政府に批准させることも含め明るく闘っていきたいと話を結ばれた。この後の質疑では、組合は賃金データの提出に何故非協力的なのか、女 性正社員は全正社員の1割ほどしか占めていないのだから、賃金差別を是正してもコスト的に大問題ではないと思うが、何故是正が難しいのか、直属の上司次第 で女性への仕事与え方や昇進スピードは変わるのではないかという質問が出た。また、住友以外の性差別裁判を闘っている原告は、かつて管理職が担当していた 仕事を担当しても、女性は男性より給料を安くされ、女は男の下に位置づけられている実態があり、女性の低賃金は性別職務分離だけからでは説明できないと 語った。


■第58回  2004.6.26

パネルディスカッション 『ホームレスとジョブレス』 

パネラー :
  ありむら潜さん(まんが『カマやんの野塾』作者)
  山田實さん(NPO釜ヶ崎支援機構 理事長)
  島和博さん(大阪市立大学大学院・創造都市研究科・都市共生社会研究分野教授)

 6月例会は、大阪市立大学大学院の島和博さん、NPO釜ヶ崎支援機構理事長の山田實さん、まんが「カマやんの野塾」作者で釜ヶ崎のまち再生フォーラム事 務局長であるありむら潜さんの3人にお出でいただいて、「ホームレスとジョブレス」をテーマに、パネルディスカッションを行った。

 最初に島さんから、野宿「問題」をどうとらえるかについて話があった。釜ヶ崎の現実を見ていると、都市の一番不安定なところでホームレス状態すれすれで 働いてた人たちが、ホームレスになっている。つまりホームレスは寄せ場=釜ヶ崎というコンテキスト抜きに語り得ない。にもかかわらず、メディアの作るホー ムレス像は「リストラでホームレスに」になった的見方(=スーツ・ホームレス的な見方)で、労働者の中にある階層問題を捨象して取り上げている。このよう な寄せ場と野宿の問題を切り離す形で「野宿者の可視化」をすることに違和感を感じていると語った。また、寄せ場の日雇い労働者の生活は非常に不安定で、仕 事が無くなればすぐに野宿せざるを得ず、釜ヶ崎の労働者の生活そのものが野宿を組み込んで成り立っている。これに対し現在ホームレスと呼ばれている人たち の多くは、いろいろな理由で寄せ場(釜ヶ崎)から排除され、「現役」日雇い労働者として生きていくことができなくなった人たちである。こうした人たちが、 都市の中で何とか生き延びようとして作り上げた生活の一つの形が野宿生活だと考えている、だからホームレス(野宿生活者)に「なる」ことと野宿「する」こ とは基本的に違うことではないかと述べられた。最後に、現在釜ヶ崎の日雇い労働者が直面している問題は景気変動に伴う短期的失業ではなく、社会経済構造の 変化にともなって寄せ場という労働市場が無用な存在となり、スクラップ化され始めてきた結果生じてきていると述べられた。

 山田さんは、欧米基準では釜ヶ崎総体がホームレスになるが、日本の行政の認識はそうではないとまず述べられた。野宿生活になる(=安定した居所を失う) と現在の日本の社会保障制度では野宿生活から他の生活に移行できる仕組みがなく、路上生活者に有効に対応できる仕組みがない。日雇い雇用保険・健康保険も 一定の就労日数が条件になっており、野宿生活者は対象外となっており、失業以降は人間扱いされていない。働ける人を路上で放置し、死にかけるまで入院させ ない。そして、患者の体が良くなったらまた、路上に放り出す。こういうお金の使い方ではなく、病気にならないうちに社会的に必要とされるような事業、身近 な地域住民密着型の就労対策をするべきである。結局労働を通じてしか社会参加はできないし、こういう対策をとったら、釜ヶ崎の人たちも自分はまだ社会に役 だっているという意識を堅持できると述べられた。

 ありむらさんは最初に釜ヶ崎が縮小してきていることを、多くが55歳以下であるあいりん職安登録者数から話された。55〜65歳の人は高齢者特別清掃事 業に登録しているが、これに加え新しい存在として65歳以上の人たちが5500人いると述べられた。この人たちは就労対策によって就労自立することが難し く、生活保護で福祉的自立を目指してもらうことになる。これまでは仕事があれば何とかなっていたが、それが難しいという意味でこれは新しい事態の出現で、 新しい仕組みづくりが必要だと述べられた。この新しい仕組み作りの根底にあるのは、旅人から住民へというベクトルである。つまり、「まちづくり」をテーマ に、一人ひとりが住み続けられるための様々な仕組みづくりをしていくことが必要で、こういった理念・手法で再生フォーラムが取り組んでいる運動についても 語られた。この後、労働市場、生活空間としての釜ヶ崎の将来についてパネルディスカッション行われた。



■第59回  2004.7.19

『過労自殺の労働者像』

報告者 :
  大野正和さん(大阪経済法科大学非常勤講師)

 なぜ、死に至るまで働くのか。7月例会では、「過労自殺の労働者像」と題して、仕事論・仕事心理学の立場から、大野正和さんに報告を行っていただきまし た。過労死・過労自殺者の「心理」と責任境界が曖昧な「職場」。この相互関係を読み解きながら話は進められました。

 まず、1995年に起きた「オタフクソース事件」が取り上げられました。判例と自殺者の母親からの聞き取りにより、過労自殺者像と彼を取り巻いた職場状 況が明らかにされます。たった3人の閉鎖的な特殊製造職場。このなかで、部門のリーダーとして同僚の指導法に悩み、その果てのうつ病発症、そして自殺に及 んだ過程が語られました。母に残した「おれが行かんとソースができん」という言葉に、過労自殺者の責任感、何があっても現場を放棄しない本人の強い意志を うかがい知ることができます。

 大野さんは、この事例をもとに、過労死・過労自殺に至らしめる心理と職場の日本的な特質を抽出します。一つ目は、まじめで責任感が強く他者に気を遣う 「メランコリー親和型性格」。過労死・過労自殺事例を検討してみると、被災者はほとんどがこのメランコリー親和型であるといいます。二つ目は、責任境界が 曖昧な「柔軟な職務構造」。日本の場合、欧米のような職務要素が弱く、職務構造が柔軟であることはよく言われますが、メランコリー親和型がこの柔軟な職務 構造に組み込まれていることを強調するところに大野さんの主張のオリジナリティがあります。特に、80年代後半以降、メランコリー親和型の人が職場で持ち 味を十分発揮して働くために不可欠な、良好な人間関係に支えられた職場集団性が失われていったと説明されました。その結果、メランコリー親和型の人が職場 で孤立無援に仕事を背負い込み、過労死・過労自殺につながることになると言われます。三つ目の特質、長時間労働説の限界性ともこのことは関連します。つま り、短時間労働が増え、仕事負担の二極化が訪れたのも、ちょうど職場集団性が崩壊していった時期でもあるわけです。また、自由裁量度が高い労働者であって も過労死に至るということも強調されました。あながち、職場での上からの強制度が高いからといって、過労死が起こるわけではないことになります。管理の問 題というより、仕事中心社会をどう捉えるかという立場で、過労死に至る特質が説明されました。

 このように職場と心理との相互関係を紐解きながら、大野さんは自己と他者との能動的な関係構築を提言されました。職務領域をはっきりさせジョブレス社会 を改める、メランコリー親和型の人は職場と自分との関係を客観視する、職場集団性の問題を自分ひとりで受け止めない。そして、問題なのは、過労死の三つの 特質、「メランコリー親和型性格」「柔軟な職務構造」「職場集団性の崩壊」相互の緊張関係をどう緩和していくかということにあるとして、報告は締めくくら れました。

 重いテーマに対してよく考え抜かれた大野さんの見解について、フロアーからの意見も相次ぎました。1980年代の職場集団性崩壊の捉え方、仕事中心社会 でない自分中心社会とはどのようなものか、過労死と過労自殺は死に至る過程が大いに異なるのではないか、事例として挙げられたオタフクソースはそんなに現 場に権限を委譲していたのかなどでした。フロアーでの共通意見は、過労死に至る三つの特質「三点セット」は実によく考え抜かれているというものであったと 思います。しかし、仕事の自発性と強制との関係を考えるに、裁量権と労使関係がどうなっているのかにまで踏み込まないと事実は見えないという指摘もあった ように、重いテーマであるがゆえの大きな課題も出されました。

 なお、大野さんには、『過労死・過労自殺の心理と職場』青弓社、2003年の著書があります。

 
■第60回  2004.8.7

『働かない? 働けない? ひきこもる若者たちと就労支援
―― 雇用政策では見えないものを考える』

報告者 :
  樋口明彦
  (大阪大学大学院人間科学研究科院生/A´ワーク創造館非常勤職員)

コメンテーター:
  元ひきこもりの当時者、ひきこもり支援団体職員

 これまでに行われた社会的引きこもりについての調査によると、ひきこもりを抱える世帯は約41万世帯(全世帯の0.85%)で、ひきこもり経験者は約 69 万人(20?40代総人口の1.36%)、ひきこもり人数80?120万人と推測され、全国の保健所でのひきこもり来所相談件数も4083件にのぼる。

  8月例会は深刻化するこの社会的ひきこもりについて、大阪大学大学院生でA´ワーク創造館非常勤職員の樋口明彦さんに「働かない?働けない?ひきこもる若 者たちと就労支援──雇用政策では見えないものを考える──」というテーマで報告していただいた。

 樋口さんは最初に、社会的ひきこもりは精神疾患などの「病気」ではなく、家族以外の親密な関係が存在しない「ひきこもり」という「状態」を指すこと、ま た社会的ひきこもりは誰にでも起こりうると述べられた。

 次いで社会的ひきこもりの現状について話された。それによるとひきこもっている人の平均年齢は25歳前後で、ひきこもり経過年数は長期化していること、 社会的ひきこもりはいくつかのタイプにわけることが可能だが、家族や社会との関係を絶っている純粋ひきこもりは少ない。例えば社会的にひきこもっている若 者の半数以上は働いた経験があり、全くひきこもっているのではなく、ひきこもり状態と就労を周期的に行き来している。

 このような実態をふまえ、社会的ひきこもりの就労支援がどうあるべきかについて樋口さんは次のように話された。ひきこもっている人は十分な社会的サポー トもなく、労働市場に参入せざるをえない現状にあると思われ、「就労への移行」プロセスそのものをサポートするなど、狭義の雇用政策に限定されない多面的 な支援策が必要で、社会参加と就労のバランスに配慮することが大事である。そうでなければ仮にひきこもり状態を脱したとしても、社会参加と就労を持続的に 維持することは難しく、離職とひきこもりの往還を繰り返すことになる。最後に近年話題になっているニートNEET(Not in Education, Employment or Training、教育や職業訓練を受けず、就職もしていない若者を指す)と社会的ひきこもりの類似性に触れながら、若年者の就労支援についての提言を 行って樋口さんは話を終えられた。

 次いで、元ひきこもり当事者からご自身のひきこもり経験を語っていただくとともに、ひきこもり支援団体の方々からは現場での経験をふまえてコメントして いただいた。その後、質疑に移ったが、会場からは樋口さんの言う社会参加とはいったい何か、社会的にひきこもっている人たちは能力主義につまずいてひきこ もったのか、また、能力主義を前提とした社会参加なのか、それともそれとは別の能力主義を前提としない社会参加なのか等の質問がだされ、活発な議論が展開 された。

 

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■第61回  2004.9.18

設立5周年特別企画

パネルディスカッション <シリーズ「若者論」>

〜若者たちの働き方・生き方を考える〜

パネラー :
  10代〜20代の若者たち(正社員、フリーターなど)5〜6名

コーディネーター:
  河野尊氏(研究会「職場の人権」運営委員、シリーズ「若者論」担当)

 9月例会は、当研究会設立5周年企画として「シリーズ<若者論>〜若者達の働き方・生き方を考える〜」をテーマに、パネルディスカッションを行った。研 究会ではこれまでも若年世代の働き方や就業を巡る厳しい状況について取り上げてきたが('02年「若者たちの労働(職業)意識」、'03年「若者たちの失 業と就業をめぐって」)、今回は初めて、働く若者当事者の方9名(正社員5名、非正社員4名)をパネラーに迎えて例会を開催した。パネラーの方には、お忙 しいなか20問にもわたる事前アンケートに記入していただいたが、例会はそれをもとに、パネラーの方自身の仕事や生活観・人生観を語っていただくことから 始まった。聞いていて非常に印象に残ったのは、1)仕事をまかされたり、仕事の中で成長できることに、やりがいを感じている人が多かったこと、また、2) 同僚やお客様等、仕事のなかで接する人とのふれあいの中に楽しさをみいだしており、仕事に対して非常に前向きであったことだ。しかし、その一方で3)正社 員の人を中心に長時間働いている方が多く、ずっと続けていくことは難しいと思っており、4)その解決策として転職を考えている人が多かったことも、強く印 象づけられた。この後、研究者・コミュニティ・ユニオンの立場からのコメントを受け、次いでフロアからの質疑とそれに対するパネラーの回答があった。パネ ラーとフロア参加者のディスカッションからは、働くことを巡る現状認識やそういった現状に対してどう対処していくかといった点で、大きなギャップがあるこ とが浮き彫りになった。フロア参加者は年齢的には中高年層が多く、労働や人権に関心を持ついわば大人と働く普通の若者との間にある距離を感じさせられた。 この距離をどうやって埋めていくかが、ユニオンやさまざまな社会運動に問われているのであろう。

 
■第62回  2004.10.23

『「パート労働者の均等待遇確保法案」の成立を』

報告者 :大脇 雅子氏(弁護士)

 今回の定例会では、「新白浜パート訴訟」などをパート労働者と共に社会の様々な軋轢を振りのけながら闘ってこられた大脇雅子さんが、12年間の国会議員 生活の、女性パート労働者の正規労働者(男性)との「平等と差別禁止」を実現する立法運動への意気込みと努力の過程を語ってくれました。

 大脇さんは、弁護士活動のなかで、パート労働者の訴訟を扱ううちに、単に解雇問題があるだけではなく、賃金を含めたあらゆる労働条件の差別にも大きな問 題があることに気がつき、パート労働者の差別をなくす法律を作ることの必要性を実感し、パート労働法の制定などを目的に議員になることを決意されました。 そして、12年間、大脇さんは、パート議連の結成、官僚、他の国会議員などとの様々な格闘を行いました。

 このなかで、パート労働法はあっても、「均衡」という曖昧な表現のもとに均等はもちろん均衡さえ進まない、しかも、パート労働者は増えつづける、という ことで、「法の一部改正」に向けて、パート問題を叫び続けるため、パート議連を結成し、パート労働者だけではなく、契約社員・派遣労働者・公務臨時・非常 勤職員の「均等」も網羅するために、「短時間労働者等」という表現をつかい、この「等」に思いを込めて、平等と差別禁止を実現するために改正法案を作成さ れて行かれました。そして、諸事情のため、「等」は削除されたり、有期雇用について言及されなかったり、と不充分さはあるものの、均等と差別禁止に言及さ れた民主党案としてその12年の成果が実りました。

 お話は、臨場感にあふれた大変意義深いものでした。これからは、漸進的であっても、少しずつ前に進むことの重要性と必要性を学ばせてもらいました。

 
■第63回  2004.11.13

『教師は仕事について 若者たちにどのように語ってきたか』

報告者 :

   椎口 育郎 (高校教員)

   伊藤 正純 (大学非常勤講師)

 11月例会は、大阪の府立高校で30年ほど教員として働いている椎口育郎さんと大学で経済学を教えている伊藤正純さんに「教師は仕事について若者達にど のように語ってきたか」というテーマでお話いただいた。

 現在全日制高校に勤務している椎口さんは、これらの言葉は好きではないが、便宜的にカッコ付きで「底辺校」・「下位校」・「中位校」・「上位校」という 言葉を使うと断った上で、「底辺校」として位置づけられていた「定時制」での16年間の勤務経験から、かつての定時制の生徒は仕事で一定の自己形成をして いるように感じたということを話された。しかし今の定時制は、現在定時制で働いている教員に聞くと、飲食店などのサービス業やコンビニで、アルバイトや パートで働く子が増えている。つまり彼らの仕事は部分的な仕事で、将来の職業のためのトレーニングにならないものではないかと話された。次いで学校間格差 のなかでどこに位置尽くかによって、学校への意味づけ・学校への帰属感の強さや学校文化の有り様が異なっている(例えば「下位校」ほどアルバイトする生徒 が多いと思われる)。それに加え最近では自信や競争心が持てるかどうか、踏ん張ることができるかどうか、情報を収集・分析することができるかどうか、さら には根気や体力にまで格差が表れているのではないかと話された。例えば一昔前ならば、「下位校」でもスポーツの強い学校というのがあったが、近頃は見あた らない。ようするに学校間の不平等が明確になったのであり、学校間格差の様相を不平等と階層分化の視点からとらえる必要があるのではないかと主張された。 そしてアルバイトに走る高校生が増えていることは「学びからの逃走」という事態に対応しているとして、教える組織(=教えるのが教師で、教わるのが生徒) としての学校は行き詰まっていると述べられた。最後に教師は生徒に仕事について語ってこなかったとまとめられた。それは一つには教師が世間知らずというこ ともあるけれど、教師は知識、それも自分が正しいと思う知識を一定の体系のなかで伝えたいという意識を持っており、教師のなかではこのような意識と努力・ 勤勉言説が結びついており、進路指導もその延長線上にあるものであったからである。したがって努力・勤勉すると自ずと道が開けるのであり、進路指導でも仕 事について語ることにはならなかった。ついで伊藤正純さんが、教師(経済学)はなぜ仕事について具体的に語らないのかを、マルクス経済学の理論構成に即し て話された。そして労働日の短縮こそが根本問題であり、余暇のなかで互いの仕事を学び合ってこそ、自分の担当している部分的な仕事がどのような形で全体に 結合しているかがわかる(=「社会的個体」への成長)と述べられた。伊藤さんは最後に日本経済のマクロ分析について述べられたが、そこから浮かび上がって きた日本の姿は輸出主導型経済のもと雇用が増加せず、労働分配率が低く抑えられているというものである。それは雇用戦略の中で「生涯教育」を重視し、労使 参画のもとでエンプロイアビリティを高めていこうとしているEU(典型的には教育改革で成功したフィンランド)とは対照的なものであった。

 
■第64回  2004.12.11

『現代日本における労働者階層のかたち』

報告者 :熊沢誠氏(甲南大学教授、当研究会代表)

コメンテーター:岩佐卓也氏(神戸大学教員)

 雇用状況が大きく変わり、労働者のなかで階層性が強まりつつあると言われていますが、その現状ははたしてどのようなものなのでしょうか。12月例会で は、当研究会代表の熊沢誠さんに、このヴィヴィッドな問いかけに応答する形で、現代日本における労働者階層の現状についてご報告いただきました。  


 まず、熊沢さんは、『平成14年就業構造基本調査』をもとに、@雇用形態(正規従業員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員)、A性別(男性、女 性)、B職業(専門・技術、管理、事務、販売、サービス、運輸・通信、生産工程・労務)、C所得という4つの指標に着目されました。なぜなら、何よりも、 これらの要素が労働者の階層性に大きな影響をもたらしているからです。

 以上の分析を通じて浮かび上がったのは、下記のように分化しつつある労働者の姿でした。

@ 男性正社員(約49%)
      能力主義・競争・選別の強化、深刻化する心身の疲労、長時間労働

A 女性正社員(約19%)
    キャリア差別の現実、性別職務分離

B 非正規労働者(約30%)特に、中高年主婦や若者
    基幹労働としての単純作業、不安定性、アトム化

 最後に、現状への対抗案として、各階層が抱えるニーズに応える「労働運動の 可能性」に言及され、今後の労働組合の意義を示唆しつつ報告を終えました。


 階層化しつつある労働者の姿を、できるだけ具体的なイメージへと結実させよ うとする熊沢さんのご報告に触発され、活発な質疑応答が交わされました。

 近年の熊沢さんの論点が「資本―労働関係」から「労働者階層間の関係」へと移行しつつあるのではないか、少子高齢化社会の進展によって労働者の階層化は どのように進むのか、来るべき団塊世代のリタイアによって労働のあり方はどう変わるのか、若年者やパートタイマーなど非正規労働者にとっていかなる凝集性 (まとまり)がありえるのか、階層化にともなって細分化していくニーズに労働組合はうまく応じることができるのかなど、いくつもの質問が相次ぎました。

 質問の多さからも、参加者による関心の高さや事態の切実さをうかがうことができます。労働者の階層化という問題が、今後も注視すべき大きなテーマである ことを納得させる例会でした。

 
■第65回  2005.01.22

『中小企業労働の周辺
  ――現代の中小企業問題はどこにあるのか?――』

報告者 :松永桂子(大阪市立大学大学院経済学研究科日本学術振興会特別研究員)

コメンテーター:要宏輝(連合大阪なんでも相談センター相談員)

 中小企業の廃業率が高まるなか、中小企業は雇用面において大きな役割を果たしているとベンチャー支援が叫ばれています。しかし、町工場などにみる中小製 造業の現場においては、今もいっそうのコストダウンが要求されています。このようななか、1月例会では、本研究会でははじめて中小企業の労働問題を取り上 げました。報告は、気鋭の若手研究者・松永桂子さんです。

 松永さんはまず中小企業を取り巻く状況の変化を、その認識論と実態のはざまで捉える視点を提起しました。認識論の変化を端的に示すものは、1963年の 中小企業基本法(旧法)と1999年の中小企業基本法(新法)の政策理念の違いです。旧法の政策理念は「格差の是正」でしたが、新法のそれは「多様で活力 ある独立した中小企業者の育成・支援」なのです。したがって、旧法では「規模間格差」は是正すべき対象でしたが、新法では中小企業の「多様性」を強調する ことによって「結果としての格差の存在」は是認するようになったというのです。これは大転換です。中小企業論においてすら「格差」は「成果主義格差」とし て是認されるのです。

 では、実態はどうでしょうか。規模間格差は厳然として存在しています。月間現金給与の規模間格差は1998年以降拡大していますし、小規模製造業での低 賃金化は進行しています。したがって、この認識論の変化はこの実態を見えにくくさせる働きをしています。賃金等での「格差」問題の力点が「集団主義格差」 から「個人主義格差」に移行し、労働者間の「連帯意識」の希薄化が生じたのと同じような状況が中小企業論でも起きているとのことでした。

 要さんのコメントは長く大阪の中小企業労働運動に携わってきた人らしく、鋭くもあり、また中小企業労働運動の困難さを示すものでした。近年、系列という 言葉は使われることが少なくなりましたが、しかし、日本の製造業大企業の利益は、下請分業構造なしには実現していないとのことでした。下請分業構造におい ては、下請企業にとっての売上は親企業にとってはコストなのです。したがって、親企業は利益をあげるために、下請けに対して絶えずコストダウン圧力をかけ るのです。下請けはこの圧力を吸収できるのは、人件費でこの圧力を吸収できるときだけです。これでは賃金の「規模間格差」はなくなりません。

 では、日本の労働運動はこの困難な課題にどう立ち向かっていくべきなのでしょうか。10名を超える人が質問に立ち、活発な討論が行われました。

 
■第66回  2005.02.19

『ペイ・エクイティ大研究――日本における理論と実践』

報告者 :森 ます美(昭和女子大学教授)

コメンテーター:屋嘉比 ふみ子氏(京ガス男女賃金差別裁判原告/おんな労働組合・関西)

 2月例会は「ペイ・エクイティ大研究〜〜日本における理論と実践」というテーマで、森ます美さんに報告していただいた。

 森さんからは、まずペイ・エクイティ(=同一価値労働同一賃金原則、以下PE)とは何かという説明があった。PEとは同一労働同一賃金原則の発展した形 態で、違う仕事、目に見て明らかに違う異なる職種であっても、その労働、職務の価値が同一であれば性・年齢に関わらず、同一の賃金を払うべきであるという 原則であり、ILO100号条約(’67年に日本も批准)に基づいたものである。この原則の実現をせまるPE運動は、1970年代以降、米国・カナダ・ ヨーロッパにおいてフェミニズム運動の展開に背中を押されるような形で、男女賃金格差是正運動として展開してきた。このようにPEは、男性が家族を養うべ きだという日本の家族賃金イデオロギーに基づく属人給としての年功賃金とは相容れないものである。次いで日本におけるPE運動の展開過程に触れながら、ご 自身が意見書を書かれ、日本で初めて同一価値労働同一賃金原則を採用して勝利した京ガス裁判を例にして、異なる仕事の価値を計る職務評価の方法について具 体的に話された。

 このように日本におけるこれまでのPEの実践は正規労働者の男女間賃金格差の是正が中心であったと述べられた。しかし、90年代末の雇用流動化による非 正規労働者の増加の下ではこれに加え、正規と非正規の間の均等待遇、非正規へのPE原則の適用が大きな課題になっていると指摘した。森さんは、PE原則は 雇用管理区分による賃金格差合理化に対抗するものであり、またジェンダー差別と間接差別に対抗するものであることを強調した。

  最後に理論的実践的提案として、

・日本の男女間賃金格差は人事考課制度の性差別性からでているのだから、戦略としてはそちらを優先すべきという提案があるが、それぞれの職場でできるとこ ろから、できる戦略を採用していくことが重要である

・同一価値労働同一賃金原則と個人単位賃金や個人単位賃金水準について理論的検討・コンセンサスの形成が必要である。また、現在のように正規労働者を含む 賃金水準の下落が進行している時には同一価値労働同一賃金原則だけでなく、同時に賃金水準をアップさせる運動戦略が必要である。

・同一価値労働同一賃金の法制化も追求すべきである

大略以上のようなことを述べて報告を終えられた。


■第67回  2005.03.19

『『トラック運転手』の労働運動 全港湾大阪支部の闘い』

報告者 :

   具志堅 和男 (全港湾大阪支部執行委員 車両部会会長 勤続38年)

   大野 進 (全港湾大阪支部執行委員 港湾部会会長 勤続31年)

コメンテーター:熊沢 誠 (甲南大学教授、当研究会代表)

 3月例会では、日本では数少ない港湾・運輸の産業別労働組合である、全港湾大阪支部執行委員の具志堅和男氏と大野進氏をお迎えして、「トラック運転手の 労働運動」というテーマでお話を伺いました。

 まず、具志堅氏からトラック産業労働全般の現状について報告がなされました。統計によると、事業者数約6万、労働者数約150万、平均年齢40.6歳 (全産業平均39.5歳)、年間労働時間2192時間(同1845時間)、賃金478万(同503万)となっている。これらから、トラック産業はほとんど が中小企業、典型的なブルーカラー労働者、不規則な長時間労働、低賃金などが示された。特に現時点での大きな問題として、貨物自動車運送事業法の規制緩和 がトラック産業労働の現場を苦しめていることを強く訴えられた。規制緩和により、営業区域の撤廃、免許制から許可制へ、車両保有台数の緩和、運賃の事前届 出制から事後報告制へと変更がなされた。これにより新規参入が容易になって(97年から約1000社毎年増)過当競争が生じており、荷主に対して歯止めを かけることができず、トラック産業労働者・事業者に大きなインパクトを与えている。

 次に、大野氏から全港湾大阪支部の歴史と具体的な取り組みについて、ご自身の体験談を交えられながら熱のこもった報告がなされました。全港湾の発足は 1945年に間瀬場由造、兼田富太郎による大阪河川運送労働組合の設立に端を発している。この大阪支部では、統一集団交渉を原則として、反戦平和への取り 組み、解放共闘への参加、産業別運動を重視している。また、事前協議制度、本四架橋闘争、港湾年金闘争など、これまでの大阪支部の具体的な取り組みと成果 について報告がなされた。

 コメンテーターの熊沢誠氏からは、労働運動の可能性について発言がなされた。トラック産業はここ30年のうちに急速に発展した最も多い労働者数を抱える 一大産業であることから、世間ではトラック産業への関心はあまり向けられていないが、彼らが日本の労働運動で大きな発言権をもっている。この産業の労働運 動が日本全体の労働運動に大きな影響を与えうるという指摘がなされた。

 討議においては、用語などの基本的な質問から、機器導入による労働監視、労働運動の活発化の方策など様々な質問が投げかけられた。トラック産業は日々の 物資の搬入により成りたつ工場や量販店などの国民の利益と、輸送する労働者の利益が反することから、労働運動が難しいこと。そして、労働者をいかにして組 織化していくのか。これらが中心的な課題のように思われる。


■第68回  2005.04.16

『トヨタ労働者、きのう、今日 ――日本的労務管理と労働者意識の変化』

報告者 :猿田 正機(中京大学教授)

コメンテーター :篠田 武司(立命館大学教授)

 4月例会は「トヨタ労働者、きのう、今日」というテーマで、中京大学の猿田正 機さんにトヨタ的労務管理について、また立命館大学の篠田武司さんにワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)についてご報告いただきました。

 猿田さんが4月例会でご報告された際の中心的な論点は、トヨタ的人材育成のコアとも言える労働者への動機付けについてでした。その第1は、経済的・社会 的刺激によるものです。端的に言えば、労働者の生活を保障するということです。頑張っている限り雇用は守られる(終身雇用)、賃金も他社と比べて高い、企 業内の福利厚生はしっかりと備えている等、労働者生活の基本的なところをしっかりおさえているわけです。終身雇用は暗黙の了解どころか、会長自らが雇用を 守ると明言してさえいます。とはいえ、労務コストの引き下げを行うために、いくらか昇格・昇進・昇給管理の中に能力主義的要素を組み込んでいるようです。 ただ、システムの変更はほとんど労働者がわからないような形で行われている点は、非常に巧妙であると言えます。

 動機付けの2つ目、要員管理・小集団管理も重要です。特に注目すべきは、「少人化」を行いつつできるだけフレキシブル(柔軟)に仕事をさせることです。 人数が少ないから、自分が休めば迷惑がかかるという感覚を労働者に持たせます。また、たえず創意工夫提案を行い、カイゼン活動をさせます(QC方式)。そ の意味では、トヨタは学習する組織であるということになります。

 そして、第3の動機付けとして行動科学的労務管理の利用もあります。企業内教育訓練によってチームワークの育成を行いながらも、常に競争を意識させて労 働者を仕事に駆り立てます。職制の教育(中堅技能者特別訓練)については非常に緻密な形でやられており、職制としての役割認識を叩き込む、リリーフ機能を 果たすために班内(組内)の仕事をマスターさせる、問題解決能力の向上を図るなど、その内容は多様です。この教育訓練はあくまでも自主的な研究会(自主 研)として行われており、場合によっては会合の数が10回以上(時間数にして40時間ほど)ほどにもなります。

 猿田さんはこれらの動機付け管理について、確かに見事なシステムではあると認めておられます。しかしながら、結局のところこのような人材育成のあり方 が、例えば長時間過密労働に自らを投げ込み、時には過労死するまで働く人がいることや、なんとかきつい仕事に耐えて定年退職した労働者の中には、老後はや ることがないので他の会社に再就職すると言い出す人もいることに象徴されるように、トヨタ的会社人間を作り上げていると批判されます。終身働き続ける人生 はいかがなものかと嘆いておられた猿田さんのお言葉が、大変印象的でした。

 次に、篠田さんからはヨーロッパでのワーク・ライフ・バランス論議を前提として、スウェーデンを例としながら日本(特にトヨタ)における仕事と生活の調 和=労働時間短縮の可能性についてお話いただきました。

 ヨーロッパでは様々な観点からワーク・ライフ・バランスが論じられています。中でも注目すべきは、経営の立場からの視点が提起されていることです。ス ウェーデンなどでは、労働者の突発的な欠勤やズル休み(アブセンテリズム)が頻繁に起きており、ストレスによる中長期的な病欠も近年増加しております。そ のような中、労働時間を短縮させてワーク・ライフ・バランスを達成し、労働者が生活を謳歌し楽しめるように企業が配慮することによって、労働者の勤労意欲 を引き出すといった政策提言がなされているわけです。

 それでは日本はどうか。残念ながら、日本における議論は経営と折り合うというよりも対抗的である場合がほとんどなのです。長時間労働や過密労働の問題 が、主に過労死という形で問題として提起されている。それではワーク・ライフ・バランスは達成されない。トヨタ自動車が2交代制のシフトにあらかじめ残業 を組み込んでいるような状況を打破するには、仕事と生活の調和=労働時間短縮が経営側にもメリットとなることを引き合いに出すような議論を展開しなければ なりません。そうでもしなければ、スウェーデンのような先進的な休暇制度(長期にわたる年休、サバティカル制度、教育休暇、両親休暇など)や厳格な残業規 制に近づくことはできない。

 篠田さんは、トヨタは無論のこと、日本全体でワーク・ライフ・バランスの議論が盛んに行われ、経営と労働が共同で取り組むことこそが最も有効な形である と主張されておりました。

 最後のディスカッションでは、女性労働とトヨタシステムの関わり、若年者の離職、労働者の悩み(コンピューターを使った労働)、創造的と言われながらも ゆとりがないことの矛盾、障害者雇用などについて話し合われました。その多くが、トヨタ労働の「影」についてのものです。トヨタ生産システムや協調的労使 関係が多くの企業から絶賛されている反面、労働者の人権に関わる問題は極めて多い。そのことを参加者全員が改めて認識した例会でした。


■第68回研究会(2005年5月)
「女性労働への偏見と差別を問う
 ――裁判におけるジェンダーバイアス」

●と き 5月21日(土)
 午後1時30分〜4時30分(1時開場)

●ところ ドーンセンター 4F 大会議室1
(電話 06−6910−8500)
 京阪電鉄・地下鉄谷町線「天満橋」駅下車。
 1番出口から東へ350メートル・徒歩5分。
 http://www.dawncenter.or.jp/shisetsu/map.html

●報告者  養父 知美さん(弁護士 とも法律事務所)
●コメンテーター  小河 洋子さん
(研究会「職場の人権」運営委員)

●参加費 500円(資料代を含む)
 研究会「職場の人権」の会員は参加費無料

●内容
 女性の就労人口が増えるなか、多種多様な働き方が用意されています。
 しかし、働く女性の過半数は非正規職であり、その雇用形態による不安定雇用、賃金格差は、女性労働を低賃金に押し止めています。
 性役割分業が根強く存在する日本の労務管理は、「均等法」や「パート法」の下でも、かたちを変えつつジェンダー差別を生きのびさせてきています。
 そして司法におけるジェンダーバイアスは、このことを補完する役割を果たしていると言えます。
 例会では、弁護士の養父知美さんから、さまざまな取り組み、相談、そして女性差別裁判から見えてきた女性労働への偏見や差別について、報告していただき ます。
 ご参集ください。


■第69回研究会(2005年6月)
「ドイツにおける労働組合と従業員代表による労働条件規制の交錯
 ――従業員代表の活動及び役割を中心に」

●と き 6月11日(土)
 午後1時30分〜4時30分(1時開場)

●ところ ドーンセンター 5F セミナー室
(電話 06−6910−8500)
 京阪電鉄・地下鉄谷町線「天満橋」駅下車。
 1番出口から東へ350メートル・徒歩5分。
 http://www.dawncenter.or.jp/shisetsu/map.html

●報告者  藤内 和公さん(岡山大学法学部教授)
●コメンテーター  根本 到さん(神戸大学海事科学部助教授)

●参加費 500円(資料代を含む)
 研究会「職場の人権」の会員は参加費無料

●内容
 ドイツでは、労働者の利益は労働組合と従業員代表の2つの方法で代表されます。
 組合は、産業別・企業横断的に労働協約を通じて労働条件を規制するのに対し、企業内では法律にもとづいて従業員代表が選出され、企業の事情を考慮して定 められる事項(たとえば、労働時間の配置、賃金支払方法、解雇・配転などの人事的事項)を規制します。
 従業員代表は、組合とは別に、企業および事業所の労働者全員を代表して選出されます。
 それは、争議行為を行うことは禁止され、使用者と話し合いによって使用者側と労働者側の利益を調整する役割を果たし、その活動に必要な費用はすべて使用 者が負担します。
 今回は、まず、労働協約による規制と企業内の規制の相互関係を紹介し、そのうえで、企業内で労働者利益を代表する従業員代表の具体的な運営の様子を紹介 し、従業員代表が解雇規制、人事考課、採用などで労働者保護のために果たしている役割を紹介します。


■第70回研究会(2005年7月)
〜研究会「職場の人権」
「若者論キャンペーン 2005」第1弾企画〜

「排除される若者たち −フリーターと不平等の再生産−」

●と き 7月9日(土)
 午後1時30分〜4時30分(1時開場)

●ところ ドーンセンター 5F 特別会議室
(電話 06−6910−8500)
 京阪電鉄・地下鉄谷町線「天満橋」駅下車。
 1番出口から東へ350メートル・徒歩5分。
 http://www.dawncenter.or.jp/shisetsu/map.html

●報告者 西田 芳正さん(大阪府立大学助教授)
  〃  内田 龍史さん(大阪市立大学大学院院生/部落解放・人権研究所)
  〃  妻木 進吾さん(日本学術振興会特別研究員)

●コメンテーター 樋口 明彦さん(大阪大学大学院院生)

●参加費 500円(資料代を含む)
 研究会「職場の人権」の会員は参加費無料

●内容
 近年、若者が抱える就労問題に大きな社会的関心が集まっています。
 フリーターやニートなど、新しい呼び名が次々に登場するなか、政府による本格的な支援である「若者自立・挑戦プラン」も開始されるに至りました。就労意 欲の低下や、やる気のなさという主観的要因について言及される一方、最近では、社会階層的な要因の存在が指摘され始めています。
 7月例会では、2003年に実施された「大阪フリーター調査」の調査結果をもとに、若年者就労問題のなかに垣間見える不平等の再生産メカニズムを取り上 げます。
 そのメカニズムには、労働市場、学校教育、ジェンダー、家庭事情、仲間関係など、重層的な要因が複雑に絡み合っています。自分探しやモラトリアムに悩む 若者ではなく、より厳しい困難に直面している若者の姿を映し出すことで、今までのフリーター問題を再考すると同時に、現代日本における労働のありようを捉 え直します。
 7月から9月にわたって、3ヶ月連続で、研究会「職場の人権」が展開する「若者論キャンペーン 2005」の第1弾の企画です。
 ぜひ、ご参加ください。


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■第73回研究会(2005年10月)
 シンポジウム JR宝塚線事故の労働問題
−運転士はなぜ110キロ以上のスピードで疾走したのか?−

と き  
 10月29日(土)
 午後1時開場、
 1時30分開始〜4時30分終了予定

ところ
 PLP会館 4階 会議室 
(電話06−6351−5860、
 JR大阪環状線「天満」駅下車、
 または地下鉄堺筋線「扇町」駅下車、徒歩5〜10分)

参加費 500円(当会の会員は参加費無料)

パネラー
○中島 光孝さん
(弁護士、大阪労働者弁護団事務局長、
 日勤教育服部さん自殺事件弁護人)
○幸  義晴さん
(JR福知山線運転士)
○宇仁 宏幸さん
(京都大学経済学部教授)

コーディネーター
 熊沢 誠さん
(甲南大学教授/研究会「職場の人権」代表)

内容
 一瞬にして107名の命を奪い、500人以上の市民に深い傷を負わせたJR宝塚(福知山)線の脱線転覆。
 あの悪夢のような惨事はなぜ起こったのか?
 ほんのわずかな遅れも許されない過密ダイヤに追われる過酷な運転労働、労働者を懲罰する非情の労務管理、安全配慮を二の次
にする収益至上主義の経営体質、そして現場労働者のしんどさを汲むことをいつしか忘れ去った労働組合・・・。
 要因は重層的であれ、明らかにそこには、市民の眼にはふだんなかなか見えにくい労働現場のすさまじい現況が潜んでいます。
 当研究会の10月例会は、
・実際に宝塚線の運転労働に携わる幸義晴氏、
・過酷な「日勤教育」によって自死に追い込まれた運転士ご家族の訴訟に力を尽くす弁護士の中島光孝氏、
・そして国鉄民営化以降の労使関係の変化を見つめてきた宇仁宏幸氏をお招きして、
 この大事故の直因となった労働問題を凝視し、そこから広く、今日の公共交通の危険をはらむありかたを考え直そうとしています。
 もちろん、すべての方に開かれたミーティングです。フロアからの率直な質問や発言は自由です。
 この深刻な事故について割り切れぬ思いを残す方も多いと思います。
 ご参会くださいますようお誘い致します。
 万障お繰りあわせの上、ぜひ、ご参加ください。


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■第74回研究会(2005年11月)
 時短に対する個人の選択と社会の選択
−「働きすぎ」から脱け出す道はあるのか−

と き
 11月23日(水・祝日)
 午後1時開場、
 1時30分開始〜4時30分終了予定

ところ 
 エルおおさか(大阪府立労働センター)
 7階 701号室
(電話06−6942−0001、
 地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅下車、徒歩5分)

参加費 500円(当会の会員は参加費無料)

報告者
 森岡 孝二さん
(関西大学教授、
 NPO株主オンブズマン代表、大阪過労死問題連絡会)

コメンテーター
 伊藤 正純さん
(桃山学院大学教育研究所名誉所員)

内容
 情報通信技術の発展により、職場と家庭の区別がつかなくなり、24時間眠らないグローバル市場のもとで、経済活動の24時間化が進行し始めています。
 また、IT化によって、業務の標準化、マニュアル化、アウトソーシング化が可能になった領域では、企業は長い教育訓練を要する労働者を必要としなくな り、パート、派遣、請負などの非正規労働者を多用するようになり、生産拠点を途上国に移しさえしています。
 さらに、米英の規制緩和の流れを受けて、日本においても労働市場の規制緩和が急ピッチで断行されています。
 その結果、労働基準法の時間規制は、さまざまに緩和ないし撤廃され、ホワイトカラーには法の適用すら除外しようという動きが強まっています。
 11月例会の報告者は、この8月に『働きすぎの時代』(岩波新書)を出版された森岡孝二さんです。
 同書では、グローバル資本主義、情報資本主義、消費資本主義、フリーター資本主義をキイワードに、今日の過重労働の実態と背景を考察し、働きすぎ防止の 対策を提示されています。
 森岡さんご自身も「働きすぎ」であることを見据え、日本や世界の長時間労働と、働きすぎからの脱出の道について語って頂きます。
 11月例会は「勤労感謝の日」の開催です。
 この機会に、多くの方々のご参集をお待ちしております。


■第75回研究会(2005年12月)
 歪んだ景気回復
―働く者の取り分は?―

と き
 12月11日(日曜)
 午後1時開場、
 1時30分開始〜4時30分終了予定
      
※12月例会は、日曜日の開催です。ご留意ください!

ところ  
 PLP会館 4階 会議室 
(電話06−6351−5860、 
 JR大阪環状線「天満」駅下車、
 または地下鉄堺筋線「扇町」駅下車、徒歩5〜10分)

PLP会館
http://homepage2.nifty.com/jinken/map/plpmap_1.htm

参加費 500円(当会の会員は参加費無料)

報告者
 伊藤 正純さん(桃山学院大学教育研究所名誉所員)

コメンテーター
 岩佐 卓也さん(神戸大学教員)

内容
 「気がつけば景気回復」。これは、ある雑誌の最近の特集の見だしです。
 日本の景気は確かに回復している、という。
 実質GDP成長率は途中いくどと足踏みをしますが、プラス成長に転化し、今回の景気回復は、バブルの崩壊以来の課題であった3つの過剰(雇用・設備・負 債)が解消した結果だから「本物」だ、といわれています。
 雇用統計でも、完全失業率が4・3%までに回復、有効求人倍率も0・96倍と、景気回復を示す数字が並びます。
 1997年以降、非正社員比率の上昇、ボーナス圧縮などにより下落傾向にあった平均賃金も、2005年に入って持ち直し、この4〜6月期の雇用者報酬は 実質プラス1・6%と大幅に増加しています。
 景気回復は、国内上場企業の損益分岐点が大幅に改善した結果なのでしょうが、だからこそ、景気回復を実感できない人々も多いのではないでしょうか。
 それは、社会の二極化を推し進める「歪んだ」形での景気回復だからです。
 億万長者を対象とするプライベート・バンキング(富裕層の個人を対象とする資産運用サービス)が事業拡大をしている一方で、年収が150万円にも満たな い膨大な数のフリーターが日本の製造業やサービス業を支えているのが現状です。
 ゼロ金利政策や、高所得者優遇の所得税の税率引下げとフラット化(最高税率37%で4段階)の一方で、公的な社会保障の弱さを示す数字も並びます。
 自殺者の数は7年連続で年間3万人を超え(特に中高年の男性)、生活保護世帯の数がついには100万世帯を超えています。そして、独身の若者 (20〜30代)の犯罪が増加している、ともいわれます。
 12月例会では、歪んだ形の景気回復の実態、この国の「いま」のかたちの分析を通して、働く者たちの「未来像」をともに探りたいと思います。
 2005年の最後の例会です。師走の多忙の折、大変お忙しいとは思いますが、ぜひ、ご参加ください。


■第76回研究会(2006年1月)
 急がれる対策、アスベストの労災問題
 
と き
 2006年1月14日(土曜)
 午後1時開場、
 1時30分開始〜4時30分終了予定

ところ
 エルおおさか(大阪府立労働センター)
 7階 701号室
(電話06−6942−0001
 地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅下車徒歩5分)

エルおおさか(天満橋)
http://mic.e-osaka.ne.jp/l-osaka/access.htm

参加費 500円(当会の会員は参加費無料)

報告者
 片岡 明彦さん(関西労働者安全センター事務局長)

コメンテーター
 豊田 正義さん(北摂労災職業病対策会議事務局長)

内容
 アスベスト被害が連日のようにマスコミで報道され、多くの人びとが健康被害
の不安をいだいています。
 アスベスト被害は、アスベスト工場の労働者や建設現場の人たちにとどまら
ず、工場周辺住民やアスベストを含んだ建材その他の製品を利用していた人たち
にまで及び、公害・環境汚染の様相を呈しています。
 1970年代からILOや様々な機関がその危険性を指摘し、警告を発してい
たにもかかわらず、政府・企業の安全衛生管理、対策の怠慢に他なりません。
 一刻も早く政府・企業の被災者救済・補償、原因の除去が望まれます。
 長年、アスベスト被害に取り組み、救済活動をおこないつつ、警鐘を鳴らして
きた関西労働者安全センターの片岡明彦さんから、急がれる政府・企業の対策と
補償についてお話を伺います。
 研究会「職場の人権」の2006年の最初の例会です。
 ぜひ、ご参集ください。

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■第77回研究会(2006年2月)
 規制緩和にさらされるタクシー運転手
−その現状と闘い−

と き
 2006年2月18日(土曜)
 午後1時開場、
 午後1時30分〜4時30分

ところ
 エルおおさか(大阪府立労働センター)
 7階 701号室
(電話06−6942−0001
 地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅下車徒歩5分)

エルおおさか(天満橋)
http://mic.e-osaka.ne.jp/l-osaka/access.htm

参加費 500円(当会の会員は参加費無料)

報告者
 佐々木 康晴さん(元トンボ交通労働組合執行委員長)

 「タクシードライバーは眠れない」。
 2005年9月に放映されたNHKスペシャルのタイトルです。ご覧になられ
た方も多くいらっしゃると思います。
 いま、「規制緩和」の影響を最も激しく受け、過酷な競争や犠牲を強いられて
いるのがタクシー運転手といえます。
 2002年の改正道路運送法の施行により、新規参入・価格・増車の3つが
「自由化」され、供給過剰や激しい値下げ競争のツケは、現場のタクシー運転手
の過酷な労働へと、はね返ってきています。
 タクシー会社の多くは賃金削減・歩合給を拡大させ、そのため、運転手は「眠
れない」「家に帰れない」ほどの長時間労働にさらされています。
 2月例会では、タクシー運転手の現状と、規制緩和に対抗する労働組合の取り
組みを、元トンボ交通労働組合委員長の佐々木康晴さんにお話しして頂きます。
 皆さま、ぜひ、ご参集ください。

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人権の視点から現代日本の労働や仕事、働き方・働かせ方を問う
研究会「職場の人権」
電話・FAX 06−6315−7804 
〒530−0027
大阪市北区堂山町8−13 堂山ビル4階
メールアドレス 
jinken@jp.bigplanet.com   
ホームページ 
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■第78回研究会(3月)
『社会変化のなかの教育・仕事・家族―若年層と女性のライフコース問題について―』

●とき:2006年3月18日(土) 午後1時30分〜4時30分(1時開場)

●ところ :ドーンセンター 5F 特別会議室 電話06-6910-8500
 http://www.dawncenter.or.jp/shisetsu/map.html
(京阪「天満橋」駅・地下鉄谷町線「天満橋」駅下車。1番出口から東へ
350m・徒歩5分)
  
●参加費:500円(当会の会員は参加費無料)

●報告者:本田由紀さん(東京大学助教授、教育社会学)

●コメンテーター:熊沢誠さん (甲南大学教授、社会政策・労使関係論/研究会
「職場の人権」代表)

●内容:
 3月例会では、『若者と仕事』(東京大学出版会)、『多元化する「能力」と
日本社会』(NTT出版)、『「ニート」って言うな!』(光文社新書)と、話
題作を立て続けに出版されている本田由紀さんを東京からお招きして、若年層と
女性の<現在>についてご報告して頂きます。
 現代の日本社会において、教育・仕事・家庭という三者の関係は矛盾に満ちた
状態にあり、それは主に、若年層と女性のライフコース上の問題として顕在化し
ています。
 若年層にとって「教育から仕事への移行」が、90年代半ば以降に、苦渋に満
ちたものとなったことは周知の通りでしょう。 また、少子化対策や男女共同参
画社会が叫ばれながらも、女性にとって、自分の仕事と家庭、中でも、子どもの
教育を両立させることは、従来よりもいっそう困難な課題となりつつあります。
 こうした若年層および女性が直面する現状を理解するには、教育・仕事・家族
という三つの社会領域の間の関係性における従来からの特徴と、その上に、新た
に付け加わる形で生じている「ポスト近代社会」とも言うべき事態とを見すえる
必要があります。
 本報告では、「学校経由の就職」「教育のレリバンス(意義)の欠如」「ハイ
パー・メリトクラシー」「パーフェクト・マザー圧力」「専門性」等のキイワー
ドを用いつつ、日本社会の現状分析と対抗策の提案をして頂く予定です。
 若者と仕事の問題をめぐって、その言動が、いま、もっとも注目されている気
鋭の教育社会学者、本田由紀さんのご報告です。
 この機会をお聴き逃しのないよう、お誘い申し上げます。


■第79回研究会(2006年4月)
 労働行政からみた“職場の人権”

●と き
 4月15日(土曜)
 午後1時開場、
 1時30分〜4時30分

●ところ
 エルおおさか(大阪府立労働センター)
 5階 視聴覚室
(電話06−6942−0001 地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅下車・
徒歩5〜6分)
http://mic.e-osaka.ne.jp/l-osaka/access.htm

●参加費 500円(当会の会員は参加費無料)

●報告者
 橋本 芳章さん(大阪府商工労働部職員/府職労働支部組合役員)

●コメンテーター
 小川 亮さん(ユニオンとうなん委員長)

●内容
 中小企業の街・大阪は、その時々の産業構造の変遷、好不況の波に敏感に反応
します。
 そのつど、最も影響を受ける労働者の雇用や、生活と権利を守るための施策
を、大阪の労働行政は担ってきました。
 しかし、いま、労働現場をめぐる環境は、規制緩和にさらされるなかで、さま
ざまな矛盾を抱え、いっそう混迷を深めています。
 総合労働事務所が開設している労働相談窓口には、年間1万件を越える問い合
わせがここ数年続いていますが、一方では、労働行政そのものが行政改革の対象
にさらされ、縮小へと向かわされています。
 4月例会では、長年、労働行政に携わり、また労組役員も歴任してきた橋本芳
章さんから「労働行政からみた“職場の人権”」と題して、労働者を取りまく状
況、大阪の労働行政、労使問題の隘路、等をお話していただきます。
 まさに、当研究会にふさわしいテーマです。
 ぜひ、ご参集ください。


■第80回研究会(2006年5月)
 ある私立大学の雇用差別と労働強化
−使い捨てられる大学教職員−

●と き
 5月27日(土曜日)
 午後1時開場、
 1時30分〜4時30分

●ところ
 エルおおさか(大阪府立労働センター)
 5階 視聴覚室
(電話06−6942−0001 地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅下車・
徒歩5〜6分)
http://mic.e-osaka.ne.jp/l-osaka/access.htm

●参加費 500円(当会の会員は参加費無料)

●報告者
 遠藤 礼子さん(立命館大学非常勤講師/ゼネラルユニオン副委員長)
 山原 克二さん(ゼネラルユニオン委員長)

●コメンテーター
 脇田 滋さん(龍谷大学法学部教授、労働法・社会保障・有期雇用問題)

●内容
 雇用の流動化政策のもと、有期雇用化が止めどなく蔓延し、いまや働く人の3
人に1人が有期雇用の働き方です。
 とりわけ、均等待遇等制度の整っていないもとでの有期雇用=非正規職への置
き換えは、働く人びとを劣悪な労働条件へと導き、正規職に対しては、使用者側
への限りない忠誠心や長時間労働(働きすぎ)が「自発的」に求められています。
 これは、アカデミズム(大学や高等教育)の世界も同様で、いま、非常勤の教
員・職員を大量に生み出しています。
 その最先端を突き進んでいるのが関西にあるR大学で、雇用契約年数に上限を
定め、3年から5年で、のきなみ解雇を通告するという「使い捨て」雇用をおこ
なっています。
 恒常的な職務・業務であるにもかかわらず、有期雇用で使い勝手のよい、物が
言えぬ状態に働く人びとを追い込むやり方は、はたして、教育や学問にたずさわ
る資格はあるのでしょうか。
 ついにというべきか、必然的に、このような「不条理」が告発される事態にい
たっています。
5月例会では、今回の告発の当事者であるゼネラルユニオンと、辛酸をなめさ
せられている多くの非常勤の教員・職員にお話をして頂きます。
 また、フロアからは、正規職にある教職員からの発言も予定しています。
 教育の場における雇用のあり方、大学や学校で働き続けることについて議論し
ます。
 ぜひ、ご参集ください。

★人権の視点から現代日本の労働や仕事、働き方・働かせ方を問う
研究会「職場の人権」
電話・FAX 06−6315−7804 
〒530−0027
大阪市北区堂山町8−13 堂山ビル4階

 

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■第81回研究会(2006年6月)
映像と表現で考える、働くということ

と き  
6月17日(土曜日)
午後1時30分開場、午後2時開始〜5時終了予定
※会場がいつもと異なるため、開始時間が30分違いますのでご注意ください

ところ   
新世界フェスティバルゲート 4階 
remo(レモ)NPO法人記録と表現とメディアのための組織
JR大阪環状線・大和路線「新今宮」駅前、地下鉄御堂筋線・堺筋線「動物園
前」駅の真上:5番出口
電 話 06−6634−7737
http://www.remo.or.jp/j/index.html

参加費 500円(当会の会員は参加費無料)

報告者  
櫻田和也さん(NPO法人remoスタッフ/大阪市立大学院創造都市研究科博
士課程)
河野尊さん(労働教育ファシリテーター/研究会「職場の人権」事務局次長)

内容
 6月例会は、「アートと労働・仕事のコラボレーション(共同作業)」の試み
の第1弾として、映像や市民メディアを活用して、労働や仕事の現場、働き方や
働かせ方の問題などを記録し表現している日本と世界の実践例(映像作品)をご
紹介します。
 アート系のNPO法人である「remo」のご協力をえて、ヨーロッパの「プ
レカリアート」(不安定階級)の試み(ユーロメーデーや反WTOのパレードや
労働者の語り・インタビュー)や、日本のレイバーフェスタでの3分間ビデオ
や、個人がデジカメに記録し作品にしたものを、幾つか視聴します。
 そして、自分たちの職場で起きるさまざまな出来事や問題を整理(記録)し、
映像やデジカメを「文房具」(道具、武器)にして、他者に伝えていく(表現す
る)ことの現状と可能性(個人からでも発信できること)について考えます。
 当会にとっては新たな視点と方法論です。ぜひ、ご参集ください。

参照
『インパクション 151号』
−特集 万国のプレカリアート!「共謀」せよ!
不安定階層(プレカリアート)の新たな政治を目指して−
(インパクト出版会、2006年4月、1200円+税)
http://www.jca.apc.org/~impact/magazine/impaction.html

★人権の視点から現代日本の労働や仕事、働き方・働かせ方を問う
研究会「職場の人権」
http://homepage2.nifty.com/jinken
電話・FAX 06−6315−7804 
〒530−0027大阪市北区堂山町8−13 堂山ビル4階
メール: jinken@jp.bigplanet.com   


■第82回研究会(2006年7月)<第1部>
労働者の実像を求めて−私の研究のテーマと方法−

と き  
7月22日(土曜日)
午後1時開場、午後1時30分〜4時30分

ところ  
エルおおさか(大阪府立労働センター)5階 研修室2
電 話 06−6942−0001
地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅下車、徒歩5〜6分
http://mic.e-osaka.ne.jp/l-osaka/access.htm

報告者
熊沢誠さん(研究会「職場の人権」代表、甲南大学名誉教授)

内容
 7月例会は、この3月、甲南大学を退職された当会代表の熊沢誠さんが、約
40年にわたる日本の労働研究のプロセスをふりかえって、変貌する日本現代史
のそれぞれの局面において、どのような視点から、どのような労働のありかたを
みずからの課題と受けとめてきたのか、そして、その分析と思索の結果をどのよ
うな著作に表現してきたのかを語り尽くします。
 熊沢さんは、在野の研究者としての新しい出発にあたって、次の世代の若者た
ちに、自分たち旧世代の問題意識や作品などの意味をどれほどまでに伝えられる
のか、試したいとも言われます。
 会員の皆さん、ひとつ試してみませんか。
 このヴェテラン研究者の語るところを、大胆に評論してみませんか。ぜひ、ご
参集ください。
 ひきつづき、7月22日(土)は例会終了後の夕方5時開場・5時30分か
ら、エルおおさか10階の宴会場「松竹」にて、「熊沢誠さんの退職をねぎらう
会」の宴を催します。
 こちらもぜひお集まりください。

■<第2部> 
「熊沢誠さんの退職をねぎらう会」のご案内

と き
7月22日(土曜日)
午後5時開場、5時30分開始〜7時30分

ところ  
エルおおさか(大阪府立労働センター)10階 宴会場(松竹)
電 話 06−6942−0001、
地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅下車、徒歩5〜6分

会費 6千円

当研究会の結成以来、代表をつとめてこられた熊沢誠さん が、今年3月末日で
甲南大学を退職されました。
熊沢さんの40年におよぶ研究者としての活動は、たえず私たち現場で活動する
者、労働者の見える位置にありました。
働く者への熱いまなざしが貫かれていた故のことでしょう。
熊沢さんのさまざまなメッセージ、幾多の著作に励まされた人は数知れません。
「学問と運動の境目に独特のネットワークを形成してきた人」と、小寺山康雄氏
(「現代の理論」2006年春号)は讃辞されています。
熊沢さんは、今後、在野の研究者として戦後労働運動の歴史をまとめられると共
に、当研究会の代表も続けられます。
労働運動の現状を憂い、意気揚々なのですが、ひとまず数々の業績をねぎらい、
敬意を表するために「ねぎらう会」を企画しました。
皆様のご参加をお願いします。


■第83回研究会(2006年8月)
 店長だって労働者だ!!−マクドナルド店長による残業代未払い裁判−

と き
 8月19日(土曜日)1時30分開始〜4時30分

ところ
 キャンパスプラザ京都 4階 第4講義室(京都市下京区西洞院通塩小路下る)
(電 話 075−353−9111、JR「京都」駅前、徒歩3分)
http://www.consortium.or.jp/campusplaza/access.html

報告者
 安部 誠さん(東京管理職ユニオン 執行委員)
※残業代未払い裁判を提訴された
 現役のマクドナルド店長のかた(原告)も予定しています

参考
・マクドナルド裁判のブログ         
http://macdnalds.exblog.jp/

・「東京管理職ユニオン」のホームページより  
http://www.mu-tokyo.ne.jp/blog/

・「日本マクドナルドユニオン」のホームページ 
http://www.mc-union.jp/index.html

コメンテーター
 大石 徹さん(芦屋大学教員)
 アメリカのフリーターやマック仕事を描いた『使い捨てられる若者たち』(岩
波書店、2006年)を翻訳

参加費
 5百円(研究会「職場の人権」の正会員は無料)

内容
 日本マクドナルド社はパート・アルバイト職員等13万人に対して、「未払い
残業代を2年前にさかのぼって支払う」と発表(05年8月)、その総額は約
22億円になると言われます。
 一方、「店長だって労働者だ」と、残業代の支払いを求める裁判がおこなわれ
ています。
 この裁判で原告が勝利すれば、日本全国のマクドナルドの店長がその対象とな
り、未払いの残業代が約100億円の規模になると試算されています。
 世界を席巻している<マック仕事>。
 マクドナルド社は、その徹底したマニュアル化によって代替が可能な大多数の
パート・アルバイトと、一方で、「ホワイトカラー・イグゼンプション」(適用
除外。経営者だけでなく中間管理職にも労働時間の管理をはずすこと)の先取り
といわれる無制限労働の店長たちの両者で成り立っています。
 マック仕事は、いまや、全世界的に、その働き方/働かせ方が、問われています。
 日本では、「東京管理職ユニオン」による最先端の闘いが引き金となって、日
本最大の労働組合の「連合」では、この5月に、「日本マクドナルドユニオン」
(マックユニオン)を結成しました。
 当会の05年8月例会(京都)では、若者にとってアルバイトの仕事としてな
じみの深い<マック仕事>をめぐり、現役のアルバイト(ハンバーガー、コー
ヒーのチェーン店)の大学生2名に報告して頂きました。
 今回は、正社員であるマクドナルド店長の働き方を通して、<マック仕事>を
検証します。
 ぜひ、ご参集ください。


■研究会「職場の人権」設立7周年記念
・特別企画(第84回研究会 2006年9月)
 パネルディスカッション
「職場のハラスメントを考える −声をあげるということ−」
〜モラハラ、セクハラ、パワハラ、アカハラのケースをめぐって〜

と き
 9月23日(土曜・祝日)  1時30分開始〜5時

ところ
 エルおおさか(大阪府立労働センター) 5階 視聴覚室
(電 話 06−6942−0001、 地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅
下車、徒歩5〜6分)
http://mic.e-osaka.ne.jp/l-osaka/access.htm

◆パネラー
御輿(おごし)久美子さん
(NPO法人「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」代表理事)

「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」(NAAH)のホームページ
http://www.naah.jp/

平山 みどりさん
(公益社セクハラ雇い止め裁判 元原告 ※大阪地裁で3月に勝利和解)

山下 未知子さん
(職場のモラルハラスメント裁判 原告 ※大阪地裁で審理中)

◆詩の朗読
上田 假奈代さん
(詩人/NPO法人「こえとことばとこころの部屋」代表)

上田假奈代さんのホームページ「あなたのうえにも同じ空が」
http://www.kanayo-net.com/
「こえとことばとこころの部屋」(ココルーム)のホームページ
http://www.kanayo-net.com/cocoroom/

◆コーディネーター
河野 尊(労働教育ファシリテーター/研究会「職場の人権」運営委員)

参加費 5百円(研究会「職場の人権」の正会員は無料)

内容
 設立7周年記念企画にあたる9月例会では、この社会で、ふつうに働き、生活
するひとが、思いがげずトラブルに遭い、悩み、幾つかある選択肢の中で「声を
あげること」を選んだ、そのプロセス(過程)を明らかにします。
 職場でのモラル・ハラスメント(精神的な虐待や暴力)やセクシュアル・ハラ
スメント、大学(高等教育機関)でのセクハラやパワーハラスメント等の当事者
たちは、なぜ、どうやって、「声をあげること」を選んだのか?
 様々な取り組み、裁判、支援など、日本版ロールモデルが切り拓いてきた地平
や、その想いをお聴きします。
 アート系のNPO法人を運営し、若者、障害者、野宿労働者など、社会の問題
と積極的に関わっている詩人には「声をあげること」と題して、「ロールモデル
のうた」 をテーマに創作の詩を詠む、朗読のパフォーマンスをして頂きます。
 これまでのことを振り返り、小さくとも何かのアクションを起こすきっかけと
なる、明日への第一歩を踏み出せるような、ひとときを共有します。
 ぜひ、お集まりください。


■第85回研究会(2006年10月)
「高校生の<学校−職場>の移行問題」

とき
10月21日(土曜日)午後1時開場、1時30分開始〜4時30分

ところ
エルおおさか(大阪府立労働センター) 7階 701号室
(地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅下車、徒歩5〜6分)

報告者
牧秀一さん(神戸市立楠高等学校教員、進路指導部長)

コメンテーター
筒井美紀さん(京都女子大学専任講師、教育社会学)

 景気が回復し、求人数も増加しはじめています。厚生労働省の「若者に関する
雇用情勢について」によると、15〜24歳の有効求人倍率は2001年度の
0・90から05年度は1・67に上昇し、完全失業率も01年度の8・4%か
ら05年度は7・9%(全年齢で4・6%)に下がってきています。
 新規学卒者の就職難を象徴する数字になっていた「卒業予定者就職内定率」
(高校生は各年11月末現在、大学生は各年の12月1日現在)も大幅に改善し
ています。高校生は、最悪だった02年は60・3%でしたが、05年は72・
8%です。大学生も、最悪の03年は73・5%でしたが、05年は77・4%
です。このように、数字の上では、たしかに改善の兆しは見られます。しかし、
では本当に、高卒就職者の雇用環境は改善しているのでしょうか?
 フリーターの大量の供給源は高卒就職者ですが、そのフリーター数は、02年
で209万人、03年で217万人、04年で213万人と、依然、高止まりし
たままです。正規雇用が増加せず、非正規雇用ばかりが増加しても、雇用環境が
改善したとは決して言えません。これらの数字を突き合わせると、高校生に対す
る企業の求人状況がここ10年あまりの間に様変わりしていると推測できます。
 10月の当研究会では、現職の、高校の進路指導のベテラン教師が見続けてき
た求人状況の変化と、その問題点を語って頂きます。コメンテーターは、高卒労
働市場を研究している新進気鋭の教育社会学者です。いまの若者の、学校から職
場(仕事)への移行(トランジッション)の困難さをめぐって考えます


■第86回研究会(2006年11月)
「パチンコ店労働者の仕事とキャリア」

とき
11月18日(土曜日) 1時30分〜4時30分

ところ
エルおおさか(大阪府立労働センター) 7階 701号室

報告者
桜井純理さん(立命館大学非常勤講師、労働社会学)

コメンテーター
熊沢誠さん(甲南大学名誉教授、研究会「職場の人権」代表)

アッピール
播磨和子さん(護法労組委員長)

 パチンコ産業の市場規模はおよそ30兆円といわれ、自動車産業(約40兆円)と
比較しても、その産業規模の大きさは明らかです。また、都市部はもちろんのこ
と、地方の田舎町でも必ずといっていいほどパチンコ屋を見かけるように、パチ
ンコ産業は全国津々浦々で展開され、約30万人の労働者が働いています。これほ
ど大きな産業であり、身近な産業でもあるパチンコですが、働く場としてのパチ
ンコホールが労働という観点から分析される機会はほとんどなかったといえるで
しょう。
 そこで、11月例会では、実際にパチンコホールで働く労働者への聞き取り調査
の分析に基づき、こうしたパチンコホールにおける労働の問題点が報告されま
す。また、パチンコ店ではアルバイトとして勤務し始めた若者がそのまま正社員
就職することが多くあり、非正社員と正社員の「敷居が低い」ことも特徴のひと
つです。そこで、報告の後半では若年(20〜30代)労働者のキャリア形成という
観点からも、パチンコホールでの労働が抱える課題が検討されます。


-----------------------------

(以下、転送・転載、大歓迎です!!)
 ↓↓↓↓↓


主催:「熊沢誠 連続講座」実行委員会
後援:研究会「職場の人権」


熊沢誠 連続労働講座 2006年 秋
「格差社会ニッポンの労働」のご案内

http://homepage2.nifty.com/jinken/news/yokoku-kouza.htm


日本を代表する労働問題の研究者の熊沢誠さんが、
この秋、地元の関西で、
労働や仕事の問題についての連続講座(全10コマ)をおこないます。
いま、
深刻な社会的「格差」をもたらしている労働問題の多面的な側面を分析し、
格差の是正のための方法をさぐりだします。
現場の労働者、会社員、公務員、女性、
若者、学生、フリーター、無業者・失業者、
NPOやNGO・市民団体・労働組合の実践家など、
この社会でさまざまな情況に置かれている「ふつうのひとびと」に、
働き方/働かせ方の問題に関心のあるすべてのひとに、
誰でもが聴いてわかりやすい講座にしたいと、
熊沢さんは新たな意欲を燃やしています。
この連続講座は、
かなり具体的なエピソード、
最新の資料やデータにもとづく
「情理」をつくした「語り」になることでしょう。
貴重な日曜日(労働者の休日・安息日)を、
いささかしんどい「学習」のために費やすご案内で、
本当は恐縮ですが、
そうであっても、
この連続講座にご参加されることを、おススメします。
この、またとない機会を、ぜひ、お聴き逃しなく!!


*講師紹介 熊沢 誠(1938年〜)
専攻は労使関係論、社会政策。
三重県四日市市出身。
京都大学大学院を修了後、
甲南大学の経済学部に約40年間勤務。
2006年3月末に退職。甲南大学名誉教授。
社会政策学会、労働社会学会に所属。
1999年9月に研究会「職場の人権」をたちあげ、
以後、代表として、全国430名の会員のネットワークを築く。
おもな著書・翻訳書は、
『若者が働くとき―「使い捨てられ」も「燃えつき」もせず―』(ミネルヴァ書房)、
『リストラとワークシェアリング』『女性労働と企業社会』
『能力主義と企業社会』(岩波新書)、
『ハマータウンの野郎ども−学校への反抗、労働への順応−』
『新編 日本の労働者像』『日本的経営の明暗』(ちくま学芸文庫)、
『民主主義は工場の門前で立ちすくむ』(社会思想社)、
など約20作品。
論文、書評・エッセイや、
講演会・対談・座談会・インタビューの記録は約500本。
研究者として40年間にわたり、
「現場にいる、世間的には無名の、ふつうの働き手たち」
数百〜数千名への聞き取り・対話を通じて、
日本的な「能力」、能力主義や成果主義、
企業社会や「会社人間」なるものを見すえ、
組織や集団における個人の自由や創造性とは何か、
「自発」と「強制」がないまぜになってしまうこと(強制された自発性)の分析では、
ひろく海外(欧米や中国)でも高く評価されている。


■熊沢誠 連続労働講座 「格差社会ニッポンの労働」

2006年10月1日〜11月26日の期間の、
だいたい、隔週の日曜日
全5日間(1日に2コマ×5日間=合計10コマを開講)


■スケジュール(全5日間、合計10コマ)

10月1日(日曜日)12時半開場 
@13時〜14時30分 30分休憩  
A15時〜17時
第1講 労働と職場のパノラマ――さまざまな労働者階層 @
第2講 格差をみる視点――「いわれなき差別」と「いわれある格差」 A


10月22日(日曜日)12時半開場
@13時〜14時30分 30分休憩  
A15時〜17時
第3講 モザイク化する雇用形態――正規労働者と非正規労働者 @
第4講 労働市場と職場のジェンダー――女性たち、若者たちの立ち位置 A


10月29日(日曜日)12時半開場
@13時〜14時30分 30分休憩
A15時〜17時
第5講 労働時間の二極分化――「働きすぎ」と「働けない」の共存 @
第6講 賃金決定における「規範性」のゆくえ――賃金格差の諸相 A


11月12日(日曜日)12時半開場
@13時〜14時30分 30分休憩
A15時〜17時
第7講 年功給、能力給、成果給――「個人処遇」としての賃金支払いの問題 @
第8講 「官民格差」と公共部門・公務員へのバッシング A


11月26日(日曜日)12時半開場
@13時〜14時30分 30分休憩
A15時〜17時
第9講 生活できない人びと――セーフティーネットワーク(安全網)のありかた @
第10講 「労働組合」原論――格差是正と労使関係 〜この世の希望にむけて〜 A


■会場
エルおおさか(大阪府立労働センター)11階 大会議室
(地下鉄谷町線、京阪電鉄「天満橋」駅下車、徒歩5〜6分) 
電 話 06−6942−0001

エルおおさか(天満橋)
http://mic.e-osaka.ne.jp/l-osaka/access.htm


■受講料
(A)全講座(計10コマ)の受講者
=合計5千円(1コマ:5百円、1日2コマ:千円の計算)。
全講座の受講者には、計10コマ分のレジメ・資料集を、
10月1日(日)の第1講の日に無料配布。

(B)そのつどの受講者=
1コマ:7百円、1日(2コマ):1200円。
そのつどの受講者は、受付で、
そのつど、上記の金額をお支払いください。
なお、初回には、レジメ・資料集の実費(3百円)も、
別途、頂きます。


■受講料のお支払い方法
(A)全講座の受講希望者は、

研究会「職場の人権」
郵便振替口座 00960−1−16684

に、お名前、性別、年齢、所属、連絡先の5点をお書き頂いて、
5千円をお振り込みください。
その際、必ず、「くまざわ講座」とお書き添え、
7月3日(月曜)〜9月25日(月曜)までに、
お支払いください。

(B)そのつどの受講者は、開講日に、
受付で、そのつど、お支払いください。


■申し込み、問い合わせ、連絡先

研究会「職場の人権」
http://homepage2.nifty.com/jinken/index.htm
事務局 (やすやま、こうの)
電話FAX兼用 06−6315−7804(留守録つき)
大阪市北区堂山町8−13 堂山ビル 4階
メールアドレス
jinken@jp.bigplanet.com

*なお、熊沢さんは、
8月にレジメ・資料集をつくる予定です。
いくらか、変更があるかもしれません。
テーマや中身についてご希望があれば、参考にさせて頂きます。
ご遠慮なく、ご連絡して頂けたら幸いです。

以 上

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■第95回研究会(07年8月)
「精神疾患の業務上認定の困難と課題」

●とき
8月11日(土曜日)午後 1 時30分〜 4 時30分

●ところ
キャンパスプラザ京都
http://www.consortium.or.jp/campusplaza/access.html
(電 話 075−353−9111)
(JR「京都」駅下車、西へ徒歩3分)

●報告者
笹尾達朗さん(NPO法人「あったかサポート」常務理事/社会保険労務士)
伊福達彦さん(NPO働く者のメンタルヘルス相談室/管理職ユニオン・関西)

●概要
 「過労死」や「過労自殺」の労災認定をめぐる請求件数は、毎年増加していま す。この間に司法判断や医学的研究に後押しされて行政の「認定基準」が緩和さ れて来ているとは言うものの、まだまだ請求件数を比例するほどに認定件数は、 増えていません。行政判断の壁が厚いことは、言うまでもないことですが、請求 行為をする労働者の側に立証責任を負わされている現状では、職場の同僚の支援 が無ければ事態は好転しません。
 「自らの限界を痛感しながらも働く者の関係性の復権を願ってやまない。」 と、「うつ」や「心因反応」を業務上として認めさせるために、社会保険労務士 としてさまざまな事案に奔走してきた笹尾さんにその体験をもとに、また伊福さ んからは、メンタルヘルス相談室の活動についてご報告していただきます。ご参 集ください。

■第96回研究会(07年9月)
※コミュニティ・ユニオン全国交流集会の分科会を兼ねています。

「人権の視点から現代日本の労働を問う
『格差社会』における労働組合の役割」

●とき
9月30日(日曜日)9時15分〜11時00分

●ところ
奈良県中小企業会館大集会室
http://www.pref.nara.jp/syoko/kaikan/
(рO742−22−4661)奈良市登大路町38−1
(近鉄「奈良」駅@番出口、すぐ。隣り裁判所、その隣り県庁の手前)

●問題提起
熊沢誠さん(研究会「職場の人権」代表 / 甲南大学名誉教授)

●概要
 1990年代から加速度的に顕在化した雇い方・働かせ方に関する企業労務の 展開がもたらした、雇用形態の多様化、ワーキングプアの急増、働き過ぎの人た ちと働けない人たちの共存、労働条件が悪くても声をあげられないこと・・・つ まり、<労働問題>こそが、日本をまぎれもなく格差社会とさせている。(『格 差社会ニッポンで働くということ』 熊沢誠著 岩波書店)
 いまや全労働者の3人に1人が非正規職、4人に1人がパート職と増大してい く不安定雇用労働者、あるいは職場における人権侵害の横行等働く者、とりわけ 若者の受難の時代にある。コミュニティ・ユニオンが対象とし、受け皿となって きた人たちである。しかし雇用の流動化政策の大きな流れのなかで、個々の努力 にもかかわらず非正規職化を押し止めることも、非正規職労働者の連帯を組織す ることもできていない。
 当分科会では、絶えずコミュニティ・ユニオン運動に寄り添い、熱い眼差しを 向けられて来られた熊沢誠さんから提起を受け、閉塞状況に切り込むユニオン運 動の可能性について議論します。ご参集ください。

■第97回研究会(07年10月)8周年記念シンポジウム
「若者たちのユニオン運動−「隣」に気づく・つながる・生きのびる」

●とき
10月27日(土曜日)午後1時30分〜4時30分

●ところ
エルおおさか(大阪府立労働センター)5F視聴覚室
http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html
(電話 06−6942−0001)
(地下鉄谷町線、または京阪電鉄「天満橋」駅下車。西へ徒歩5〜6分)
     
●報告者
中村研さん(ユニオンぼちぼち)
河添誠さん(首都圏青年ユニオン書記長)
石丸雄一さん(円山青年一揆実行委員・龍谷大学国際文化学部4回生)

●コメンテーター
橋口昌治さん(立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程)

●コーディネイター
樋口明彦さん(法政大学社会学部教員)

●概要
 まともに人権も保障されないような低賃金で劣悪な労働がますます広がりを見せるなか、特にその影響を強く受けているのが20代、30代の若い労働者たち です。低賃金のスポット(日雇い)派遣や請負労働を余儀なくされ、ネットカフェで寝泊りしたり、ファストフード店で夜を明かしたりする若者まで出てきまし た。このような実態に対して、「もう黙ってはいられない」と、若者たち自身が様々な形の労働運動や社会運動を展開し始めています。
 研究会「職場の人権」8周年記念例会では、このような、若者たちが中心になって組織・活動している新たなユニオン運動や社会運動に注目し、当事者のみな さんに集まっていただきます。ユニオン運動の実際や、そこで感じている困難や課題に加え、現代の若者を取り巻く労働環境や若者たち自身の労働観・ユニオン 観などについて広く語っていただき、これからのユニオン運動を展望するような例会にしたいと考えています。

*

■第98回研究会(07年11月)
「「格差社会」から「均等社会」へ−「均等社会」は夢ではない
〜「同一価値労働同一賃金原則」を実際に使ってみよう〜」

●とき
11月17日(土)1時30分〜4時30分

●ところ 
エルおおさか(大阪府立労働センター)701室
http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html
(電話 06−6942−0001)
(地下鉄谷町線、または京阪電鉄「天満橋」駅下車。西へ徒歩5〜6分)

●提案者
均等待遇アクション21京都

●概要   
 「職務評価」ときいて、自分の会社の「人事考課」を思い起こして、いやーな気分になりましたか? ぜひ「人事考課」とは全く違う「職務評価」を体験して ください。
 「京ガス」男女賃金差別裁判で、あらためて注目をあつめた「同一価値労働同一賃金原則」ですが、その理論的基盤となるのが、この「職務評価」です。本格 的にやるには時間のかかる職務評価ですが、均等京都では、ワークシートを使って、誰でも簡単に出来る、「カンタン職務評価」という方法を開発しました。
 この職務評価は、あくまで性に中立に、また誰が従事するかではなく、仕事そのものの分析・評価です。日々の仕事を客観的に見直すこともできます。ぜひ ワークショップで体験してみてください!


UP:20051231 REV:20060115 0425 20070803 0808 1004
労働  ◇熊沢 誠  ◇学会/研究会  ◇組織
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