第5回多様な「生」を描く質的研究会(2011年度第4回多様な「生」を描く質的研究会)開催報告
last update: 20120209
■目次
◇開催日等
◇論題
◇提示された論点
◇議論の概要
■開催日等
・開催日時:2012年1月25日(水)15:00〜18:00
・場所:立命館大学衣笠キャンパス創思館409教室
・参加人数:2名(インフルエンザのため欠席者多数)
■論題
論題:「養子を迎え、育てた経験――養子縁組を考え、ある斡旋期間を通して子どもを迎え、特別養子縁組が成立するまでのプロセスに着目して」
担当:由井秀樹
■提示された論点
養親(母)の経験を、縁組を考え、ある斡旋機関を通して養子を迎え、特別養子縁組が成立するまでのプロセスに着目して検討した研究が発表された。報告内容の概要は以下の通りである。
不妊夫婦の選択肢として、しばしば養子縁組が提案される。しかしながら、実際に日本社会で養子縁組をするということは何を意味するのか、言い換えれば、養子縁組を選択した人々がどのような経験をするのか十分に示されていない。そこで本研究では、母親が中心的に子育てを担うという現状を考慮し、養子を迎え、育てるにあたって、養母がどのような経験(特に困難経験)をするのか、養母5名のライフストーリーを記述することで検討した。
結果、以下4点が養母の困難経験として示された。(1)夫、及び両親の縁組への反対、(2)斡旋機関に縁組を断られること、(3)養子の試し行動、(4)養子との愛着形成を意識してしまうこと、(5)特別養子縁組成立に要する実親の同意の不確実性、である。
こうした成果は、養子縁組を社会的養護の一形態と捉えるならば、養子によりよい養育環境を提供する実践の一助となり得る。と同時に、不妊夫婦に対し、より具体的なイメージとともに養子縁組という選択肢が提示されることに資すると考えられる。
■議論の概要
発表に対して、以下の点が課題として提示された。
まず、議論の前提、すなわち、なぜ結婚をしたら子どもを育てるのが「当たり前」とされるのか、という論点が十分に検証されていない。そして、告知(子に「養子である」と伝えること)の論点を報告では敢えて回避していたが、養子縁組を論じるにあたってこの点は避けて通れないのではないか。
さらに、報告者の養子縁組や生殖補助技術に対する立ち位置をはっきりさせた方が論旨は明確になるのではないか、という点であった。
今回は、学会投稿予定論文をもとに報告されたが、研究会での議論を通して、報告者の論文が、精緻化されていくことが期待された。
*作成:谷村 ひとみ