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「精神保健・医療と社会」研究会

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■目次

2012年度
 ◇2012年度活動計画
 ◇2012年度メンバー
 ◇2012年度活動経過
 ◇2012年度業績
山本眞理氏公開インタビューについて(別ページ)
2011年度
 ◇2011年度活動計画
 ◇2011年度メンバー
 ◇2011年度活動経過
 ◇2011年度業績
2010年度
 ◇2010年度活動計画
 ◇2010年度メンバー
 ◇2010年度活動経過
 ◇2010年度業績
 ◇「生存学」創成拠点メールマガジン第7号掲載の紹介記事
2009年度
 ◇2009年度活動計画
 ◇2009年度メンバー
 ◇2009年度活動経過
 ◇2009年度業績
関連項目(arsvi.com内)


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■2012年度

□2012年度活動計画

◆「2012年度生存学研究センター若手研究者研究力強化型申請書」より抜粋

T.研究内容等および生存学研究センターにもたらす効果
@ 研究内容、目的、意義
 これまで、精神障害にかかる生存をめぐる運動の現代史、生存をめぐる制度・政策については、幾つかの断片的な記録が確認できる程度にとどまり、体系的な研究がされてこなかった。そのため、精神障害者の生存をめぐる現代史、制度、政策は、社会福祉(学)の言説や生命倫理学、社会事業史、行政史の叙述に取り込まれ、既存の学範による支配的な考えによって沈黙を強いられている。この沈黙を打ち破り、既存の学範の価値基準が、障老病異の生存を妨げてきた事実を白日の下にさらし、障老病異の運動が、いかにして生存の可能性を開いてきたかを明らかにする。
本プロジェクトは、「精神保健・医療と社会」の事象・表象・政策についての生存をめぐる闘いの場に出向いて調査研究を行い、新たな価値付与の可能性をさぐることを研究内容とする。しかしながら、生存学において精神医療関連事象・表象・政策を積極的に取り上げてはきたものの、生存をめぐる原理的な精神障害者の運動の現代史とそれをめぐる制度・政策とを交差させ展開することについては、必ずしも、十分な醸成がなかった。それを念頭に置き、当事者性や現場性を尊重しつつもそれらに同一化することなく、理論的かつ経験的に――すなわち〈批判的〉かつ〈建設的〉に――検討することを目的としている。
専門性・現場性および既存の学範にたいする批判的検討をすることで、生存学の学知としての水準をより向上させることができる。また、今年度は新たに国際連合を通じた発表やそこでの調査による国際的な生存に関する情報の収集と発信に着手する。それは、単に学問的意義にとどまらず、生存をめぐる闘いのミクロレベルの実践の「技」の蓄積と現代史・政策・国際的な動向を踏まえた「知」とを結びつけ、障老病異と生存の可能性を開拓するという社会的意義をももつものである。
A 生存学研究センターにもたらす効果
 本プロジェクトは、生存学研究センターの掲げる学問的課題群の内、主に【生存をめぐる現代史】と【生存をめぐる制度・政策】に貢献する。精神障害者の生存をめぐる闘いが、国際的な動向にいかにして繋がり、いかにして制度・政策に影響を与えてきたかを、運動の現代史と交差させながら展開させていく。
加えて、若手院生を中心に国際連合であるアジア太平洋社会経済委員会(ESCAP)で発表できることは、グローバルなハブ機能をもった拠点として国内外での「生存学」の交信に大きく寄与できるものであり、同時に若手研究者の研究力強化にも実効的である。

U.研究計画・方法・研究成果発表の方法
10月下旬、仁川での国連ESCAPハイレベル政府会議での発言(2名)、その他、アジア太平洋地域の精神障害者リーダーへの聞き取りと国障年運動への参加を通じた批判的な分析を行う。10月下旬、京都での第24回日本生命倫理学会大会への参加(1名)。11月上旬、北海道での日本社会学会大会への参加(1名)。その際に、浦河べてるの家での行動観察調査・1名への聞き取りと札幌すみれ会への聞き取りを行う。これら一連の調査を報告書にまとめ、2012年12月を目処に発行する。
参加者各々の実践上/理論上の関心にもとづき、生き伸びるための闘いの場へ出向き、社会調査の方法に従って実施する。また、今後の研究活動に不可欠となる、情報の入手及び発信の源となるキーパソンとの人脈の獲得も念頭に置き、ESCAPの次年度以降の第三次アジア太平洋障害者の10年を引き続き調査していくための土壌を作る。
成果物は、報告書を発行する他、各自で学会発表、論文にまとめたものを発信する。国連ESCAPハイレベル政府会議での発言に限っては、ESCAPのホームページ上でも公開される。本プロジェクトを通して、これまでの生存学で蓄積してきた学問を国際的な場に発信することもでき、さらに立ち遅れていた精神障害者の運動と生存学の研究の促進に寄与するものである。


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□2012年度メンバー

(◇→生存学研究センター若手研究者研究力強化型のメンバー)
(◆→先端総合学術研究科院生プロジェクトのメンバー)
(○→上記二つのメンバー)
◇青木 秀光   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域
阿部 あかね  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・3年
安部 彰    立命館大学大学院生存学研究センター特別招聘准教授
植村 要    立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
○牛若 孝治   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
片山 知哉   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
川端 美季   立命館大学大学院生存学研究センター・ポストドクトラルフェロー
桐原 尚之   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・1年
権藤 眞由美  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
齊藤 由香   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
○白田 幸治   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・3年
末安 民夫   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
杉原 努    佛教大学福祉教育開発センター・実習指導講師
立岩 真也   立命館大学大学院先端総合学術研究科教授
田中 慶子   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
◆田野中 恭子  立命館大学大学院応用人間科学研究科対人援助学・発達クラスター・2年
仲 アサヨ   先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
中田 喜一   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域
藤原 信行   立命館大学大学院先端総合学術研究科非常勤講師
長谷川 唯   日本学術振興会特別研究員PD
堀 智久    日本学術振興会特別研究員PD
松枝 亜希子  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
三野 宏治   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
山口 真紀   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
吉田 幸恵   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
渡邉 あい子  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年

☆先端総合学術研究科院生プロジェクト研究代表者
※生存学研究センター若手研究者研究力強化型事業推進担当者


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□2012年度活動経過

●調査活動
◇ESCAP高級官僚会議の調査
2012年10月27日(土)〜11月2日(金)
担当者:長谷川唯・桐原尚之
調査結果として「ESCAP高級官僚会議調査資料集」を発行した。

●研究会
◇第22回研究会
2012年8月30日(木)14:00-16:00,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
・Core Etics 09 投稿原稿の検討
発表者:
中田喜一「オンラインセルフヘルプグループの可能性」
桐原尚之「Y問題の歴史」

◇第21回研究会
2012年7月30日(月)14:00-17:00,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
・学習会
桐原尚之「精神障害者のピアサポートについて」
*資料
◆萩原浩史, 2012, 「精神障害者と相談支援――精神障害者地域生活支援センターの事業化の経緯に着目して」Core Ethics Vol. 8(2012)
ピアサポートの人材育成と雇用管理等の体制整備のあり方に関する調査

◇第20回研究会
2012年5月28日(月)14:00-17:00,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
・今後の方針の検討
1.基本的に、生存学若手研究力強化型の活動はは応益負担を原則とし、便益を得た人以外には極力雑務をさせない。
2.生存学若手研究力強化型の申請書のほうは基本的には桐原さんにお願いする(報告書も便益を受けた人が作成)。
3.高木俊介さんのテクストは当人からも書店からも返信がない。さらに、去年と同様、調整コストが高くつきそうなので、高木俊介さんを呼ばない。
・2012年度前期生存学若手研究力強化型を申請する

◇第19回研究会
2012年4月22日(日)14:00-17:00,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
・各自の自己紹介
・今後の方針の検討
・院生プロジェクト申請書類の検討
 院生プロジェクトでは精神科医の高木俊介さんの招聘を決めた
・10月27日〜11月2日
 長谷川唯・桐原尚之「ESCAP高級官僚会議」を調査


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□2012年度業績

◇学術図書・報告書
「ESCAP高級官僚会議調査資料集」.

◇論文
三野宏治,20121215,「それでも『遍照金剛言う』ことにします 第6回――脱精神科病院『アメリカの脱精神科病院 B』」『対人援助学マガジン』11: 156-68. [外部リンク][PDF]
藤原信行,20121030,「自殺動機付与・責任帰属活動の達成と,人びとの方法と/しての精神医学的知識」『ソシオロゴス』36: 68-83. ISSN: 02853531
三野宏治,20120915,「それでも『遍照金剛言う』ことにします 第5回――脱精神科病院『アメリカの脱精神科病院 A』」『対人援助学マガジン』10: 134-45. [外部リンク][PDF]
藤原信行,20120630,「非自殺者カテゴリー執行のための自殺動機付与――人びとの実践における動機と述部の位置」『ソシオロジ』174: 125-40. ISSN: 05841380
◇岡部茜・青木秀光・深谷弘和・斎藤真緒,20120625,「ひきこもる若者の語りに見る“普通”への囚われと葛藤――ひきこもる若者へのインタビュー調査から」『立命館人間科学研究』25: 67-80. ISSN: 1346678X [外部リンク][PDF]
三野宏治,20120615,「それでも『遍照金剛言う』ことにします 第4回――脱精神科病院『アメリカの脱精神科病院 @』」『対人援助学マガジン』9: 153-64. [外部リンク][PDF]
桐原尚之,20120410,「医療観察法治療プログラムである『内省プログラム』の批判」『精神医療』66: 138-44. ISSN :09190546

◇国際学会発表・口頭
Kirihara, Naoyuki & Yui Hasegawa,20121028, "Equality of legal capacity and Abolition of Mental Health Act," APDF2012, Incheon, Republic of Korea.

◇国際学会発表・ポスター
阿部あかね,20121123,「日本における精神科作業療法と生活療法の変遷」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
権藤眞由美,20121123,「JDF被災地障がい者支援センターふくしまにおける提言――交流サロン『しんせい』の取り組みを中心に」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
長谷川唯,20121123,「自立生活って何だ?!――自立生活に潜む医学モデルの検討」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
長谷川唯安孝淑,20121123,「コミュニケーション技術支援――『障害があることで感じる不便さ』の解消における社会モデル」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
堀智久,20121123,「英国における出生前診断と当事者のケア――ARCの事例を手掛かりに」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
川端美季,20121123,「近代日本における精神障害者の行動制限について」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
桐原尚之,20121123,「社会事業史のアンチテーゼとなる歴史と障害学」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
桐原尚之長谷川唯,20121123,「支援された意志決定を巡って――日本国内法の現状と課題」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
森下直紀吉田幸恵三野宏治,,20121123,「病/障害と福祉の争点――慢性水俣病・精神障害・ハンセン病への福祉政策」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.
吉田幸恵,20121123,「病者集団の共同体の接合と解体――日韓ハンセン病補償訴訟を事例に」障害学国際セミナー2012,於:韓国・ソウル・イルムセンター.

◇国内学会発表・口頭
中田喜一,20121103,「オンラインセルフヘルプの可能性」第85回日本社会学会大会自由報告,於:札幌学院大学.
長谷川唯,20120831,「重度障害者の地域生活をめぐる制度的課題――独居ALS患者の在宅独居生活支援活動を手がかりとして」第16回日本難病看護学会学術集会一般演題発表,於:セシオン杉並.
長谷川唯,20120610,「重度障害者の地域生活における制度的課題――独居ALS患者の一事例を通して」第26回日本地域福祉学会大会,於:熊本学園大学.

◇国内学会発表・ポスター
桐原尚之・白田幸治,20121027,「自殺を阻止するための強制的介入は正当化できるか(素描)――措置入院に反対する『精神病』者運動の思想から生命倫理を問う」日本生命倫理学会第24回年次大会自由報告,於:立命館大学衣笠キャンパス.
権藤眞由美,20121027,「ヴェトナムハノイILセンターの現状と課題」障害学会第9回大会自由報告,於:神戸大学鶴甲第2キャンパス.
桐原尚之・安原荘一,20121027,「歴史障害学試論」障害学会第9回大会自由報告,於:神戸大学鶴甲第2キャンパス.

◇その他書いたもの
○牛若孝治,20121215,「トランスジェンダーを生きる(3)――『自己物語の記述』による男性性エピソードの分析」『対人援助学マガジン』11: 192-6. [外部リンク][PDF]
○牛若孝治,20120915,「トランスジェンダーを生きる(2)――『自己物語の記述』による男性性エピソードの分析」『対人援助学マガジン』10: 169-72. [外部リンク][PDF]
○牛若孝治,20120615,「トランスジェンダーをいきる(1)――『自己物語の記述』による男性性エピソードの分析」『対人援助学マガジン』9: 187-90. [外部リンク][PDF]

◇その他講演・講師等


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■2011年度

□2011年度活動計画

◆研究課題:精神保健・医療・福祉(含関連事象)にかんする理論的,および経験的研究

T 研究内容等および「生存学」創成拠点にもたらす効果
(1)研究内容,目的,意義
本研究会は、前年度までの成果を継承しつつ、〈精神医療〉の名のもとに実践されている多種多様な事象を、当事者性や現場性を尊重しつつもそれらに同一化することなく、理論的かつ経験的に――すなわち〈批判的〉かつ〈建設的〉に――検討することを目的としている。とくに本研究会は、精神医療関連事象をフィールドとして、生存学において軽視されがちな、当事者性・現場性および既存の学範にたいする〈批判的〉な検討を推進することで、生存学の学知としての水準をより一層向上させることができる。

(2)「生存学」創成拠点にもたらす効果
本研究会には、既存の精神保健・医療・福祉における自明な前提に疑問を抱く〈現場〉の専門職者、および既存のアカデミズムの〈精神医療批判〉に飽き足らない社会学徒が参加している。両者が同じプロジェクトのなかで互いに刺激を与えあい、互いの研究成果を批判的に検討しあうことは、メンバー各々の持てる能力とフィールドを十二分に活用し、研究業績を挙げること――これらの研究成果は生存学の成果となる――を促進する。

U 研究計画・方法・研究成果発表の方法
(1)各々の実践上/理論上の関心にもとづいて研究成果を報告し、その成果をHPにアップする。
(2)以下の公開インタビューを行い、その成果を学術雑誌ないし書籍において公開する。
・全国「精神病」者集団の山本眞理(長野英子)氏(「精神病」者集団会員/障がい者制度改革推進会議総合福祉部会・部会メンバー/World Network of Users and Survivors of Psychiatry 理事)への公開インタビュー。
 インタビュアー:事業推進担当者 立岩真也教授(予定)。
→cf. 全国「精神病」者集団([外部リンク]公式HP
→cf. World Network of Users and Survivors of Psychiatry(WNUSP)([外部リンク]公式HP
B精神医療現場での実践に関する調査活動を行う。
C@における検討を経たうえで、各々が学会報告を行う。
・関西社会学会、障害学会、Asia Pacific Social Work Conference,他
D@における検討を経たうえで、各々が学術雑誌に論文を投稿する。
・『Core Ethics』、『生存学』、『立命館人間科学研究』、『障害学研究』、『社会学評論』、『ソシオロジ』、他


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□2011年度メンバー

阿部 あかね  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年*
植村 要    立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
片山 知哉   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
川端 美季   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程生命領域・5年
権藤 眞由美  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・3年
齊藤 由香   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
末安 民夫   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
杉原 努    佛教大学福祉教育開発センター・実習指導講師
田中 慶子   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
田野中 恭子  立命館大学大学院応用人間科学研究科対人援助学・発達クラスター・2年
仲 アサヨ   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
中田 喜一   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
藤原 信行   立命館大学GCOE「生存学」創成拠点リサーチアシスタント
堀 智久    立命館大学GCOE「生存学」創成拠点ポストドクトラルフェロー
松枝 亜希子  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
三野 宏治   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
山口 真紀   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
吉田 幸恵   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
渡邉 あい子  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
*プロジェクト研究代表者

事業推進担当者:立岩 真也 (立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)


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□2011年度活動経過

◆研究会
◇第18回研究会
2012年2月17日(金)14:00-,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
藤原 信行の『ソシオロゴス』誌投稿論文にかんする第一回査読会議
→cf. 詳細は[外部リンク]ソシオロゴスHPを参照

◇第17回研究会
2011年10月9日(日)14:00-18:30,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
山本眞理氏公開インタビューを開催した

◇第16回研究会
2011年9月11日(日)14:00-17:00,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
山口 真紀によるニルス・クリスティ関連文献の報告
→cf. 『人が人を裁くとき』
阿部 あかねによる「全国『精神病』者集団の歴史」についての報告
→cf. 全国「精神病」者集団

◇第15回研究会
2011年7月22日(金)16:30-18:30,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
阿部 あかねによる以下の報告.
「精神医療の現代史における改革派の動き」(仮題)
→cf. 東大病院精神神経科病棟(通称赤レンガ)占拠・自主管理

◇第14回研究会
2011年7月1日(金)14:00-17:00,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
浦河べてるの家,20020601,『べてるの家の「非」援助論――そのままでいいと思えるための25章』の検討会.
渡邉あい子による以下の文献の報告.
 山本真理(長野英子),20061201,「私たちはまず人間だ――ピープルファースト! (特集 自立を強いられる社会)」,『現代思想』34(14): 62-77.

◇第13回研究会
2011年5月31日(火)14:00-17:00,於:立命館大学衣笠キャンパス創思館416教室(生存学書庫)
・各自の自己紹介
・今後の方針の検討
・院生プロジェクト申請書類の検討


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□2011年度業績(日付の新しい順)

◇学術図書・分担執筆
角崎洋平松田有紀子編,20120320,『歴史から現在への学際的アプローチ(生存学研究センター報告17)』立命館大学生存学研究センター.
 →中田喜一
天田城介村上潔山本崇記編,20120310,『差異の繋争点――現代の差別を読み解く』ハーベスト社. ISBN-10: 4863390343 ISBN-13: 9784863390348 \2835 [amazon][kinokuniya] ※ d04
 →吉田幸恵
◆佛教大学社会福祉実習研究会編,201105**,『社会福祉実習――現場とともに歩む社会福祉士をめざして』高菅出版. ISBN-13: 978-4901793513 \2520 [kinokuniya]
 →杉原努

◇論文
吉田幸恵,20120331,「統治下朝鮮におけるハンセン病政策に関する一考察――小鹿島慈恵医院設立から朝鮮癩予防令発令を中心に」『Core Ethics』8: 433-43. ISSN: 18800467 [PDF]
田中慶子,20110331,「社会問題の医療化――過労自殺に対する行政施策を事例として」『Core Ethics』8: 257-66. ISSN: 18800467 [PDF]
植村要,201203**,「大学が担う障害を有する学生の文字情報へのアクセシビリティの確保について――2010年の改正著作権法施行以降の『テキストデータ』の扱いを中心に」『人権教育研究(花園大学)』20: 121-38. ISSN: 09191119
杉原努,201203**,「精神保健福祉領域のインターンシップ事業に関する考察」『福祉教育開発センター紀要(佛教大学)』9: **-**(掲載決定). ISSN: 13496646
杉原努,201203**,「精神保健福祉援助演習における事例作成の方法と意義」『福祉教育開発センター紀要(佛教大学)』9: **-**(掲載決定). ISSN: 13496646
三野宏治,20120331,「知的障害者の地域生活移行の事例からみる支援の強制力の発動についての考察」『Core Ethics』8: 375-83. ISSN: 18800467 [PDF]
権藤眞由美,20120331,「ヴェトナム北部の精神障害者における治療選択としての『民間療法』に関する一考察」『Core Ethics』8: 483-91. ISSN: 18800467 [PDF]
藤原信行,20120331,「自殺動機付与/帰属活動の社会学・序説――デュルケムの拒絶,ダグラスの挫折,アトキンソンの達成を中心に」『現代社会学理論研究』6: 63-75. ISSN: 18817467
三野宏治,20120325,「対人支援関係における専門家の権力性に関する考察」『対人援助学研究』1: 1-10. [PDF]
中田喜一,20120320,「日本のセルフヘルプグループ言説の歴史社会学――1970年から現在まで」角崎洋平松田有紀子編『歴史から現在への学際的アプローチ(生存学研究センター報告17)』立命館大学生存学研究センター,263-83. ISSN: 18826539
三野宏治,20120315,「福祉の概念・言葉の解釈についてB――自立の支援 2」『対人援助学マガジン』対人援助学会,8: 168-78. [外部リンク][PDF]
三野宏治,20111215,「福祉の概念・言葉の解釈についてA――自立の支援 1」『対人援助学マガジン』対人援助学会,7:161-71. [外部リンク][PDF]
植村要,201111**,「中途失明した女性が女性性の主体となることの可能性と困難――スティーブンス・ジョンソン症候群患者へのインタビュー調査から」『女性学年報』32: 113-37. ISSN: 03895203
三野宏治,20110915,「福祉の概念・言葉の解釈について@――居場所」『対人援助学マガジン』対人援助学会,156-66. [外部リンク][PDF]
Uemura, Kaname, 20110823, "The Meaning of Self-presenting as a 'Cyborg'," Ars Vivendi Journal, 1: 2-17. [外部リンク][PDF]
◆田野中恭子,20110715,「統合失調症の家族研究の変遷」『立命館人間科学研究』23: 75-89. ISSN: 1346678X [外部リンク][PDF]
片山知哉,20110430,「文化の分配,所属の平等――デフ・ナショナリズムの正当化とその条件」『障害学研究』7: 185-218. ISSN: 18825265
堀智久,20110430,「専門性のもつ抑圧性の認識と臨床心理業務の総点検――日本臨床心理学会の1960/70」『障害学研究』7: 249-74.
Katayama, Tomoya, 2011, "Cultural Bias in the Medical-Ethical Discussion on Health Care Proxy: What Difficulties Do Gays and Lesbians Confront in Japan?," Journal of Philosophy and Ethics in Health Care and Medicine, 5: 76-91. ISSN: 18812201 [外部リンク][PDF]

◇国際学会発表
Aoki Chihoko, Kaname Uemura and Sho Yamaguchi, 20120326, "Efforts Made in Japan to Claim the Right of the Visually Disabled People to Read," The 28th Annual Pacific Rim Conference on Disability and Diversity, Hawai‘i Convention Center.
吉田幸恵,20111109,「統治下朝鮮におけるハンセン病政策成立過程に関する一考察」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「第2回障害学国際研究セミナー」(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:立命館大学衣笠キャンパス.
植村要・山口翔・青木千帆子,20111109,「日本におけるスクリーンリーダー開発の歴史と情報保障」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「第2回障害学国際研究セミナー」(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:立命館大学衣笠キャンパス.
◆権藤眞由美,20111109,「『福祉避難所』成立の経緯とゆめ風基金の提言」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「第2回障害学国際研究セミナー」(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:立命館大学衣笠キャンパス.
川端美季,20111109,「近代日本の法規制における『精神病者』の排除――公衆浴場を中心に」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「第2回障害学国際研究セミナー」(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:立命館大学衣笠キャンパス.
青木千帆子・権藤眞由美,20111109,「被災した障害者の避難をめぐる困難について」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「第2回障害学国際研究セミナー」(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:立命館大学衣笠キャンパス.
Miki Kawabata, 20110718, "The Legal Exclusion of Mental Patients from Public bath in Modern Japan," 32nd International Academy of Law and Mental Health, Humboldt Universität zu Berlin.
吉田幸恵,20110709,「韓国ハンセン病施策の実情――日本統治下から解放までの小鹿島」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「障害学研究交流セミナー」(主催:京畿大学・立命館大学生存学研究センター),於:韓国・ソウル特別市・京畿[キョンギ]大学.
堀智久,20110709,「障害者・家族の運動の歴史――高度経済成長期/国際障害者年以降」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「障害学研究交流セミナー」(主催:京畿大学・立命館大学生存学研究センター),於:韓国・ソウル特別市・京畿[キョンギ]大学.
◆権藤眞由美・青木千帆子,20110709,「被災地障がい者支援センターふくしまの活動」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「障害学研究交流セミナー」(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:韓国・ソウル特別市・京畿[キョンギ]大学.
◆権藤眞由美・有松玲青木千帆子,20110709,「岩手・宮城・福島における『被災地障がい者支援センター』の活動経過」2011年度グローバルCOE「生存学」創成拠点国際プログラム「障害学研究交流セミナー」(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:韓国・ソウル特別市・京畿[キョンギ]大学.

◇国内学会発表
川端美季,20120325,「近代日本における精神障害者の法的排除について」第2回近現代精神医療史ワークショップ,於:名古屋国際センター.
川端美季,20120204,「近代日本における公衆浴場の衛生史的研究」第20回医療・社会・環境研究会,於:大阪大学.
藤原信行,20111203,「自死遺族による『不幸のレトリック』の実践と死因にたいする疑問の隠蔽」社会構築主義の再構築プロジェクト研究会 2011年度第2回研究会合プログラム自由報告,於:東京大学本郷キャンパス.
山口真紀,20111002, 「つまづきを語る――自閉者の手記による病名診断の隘路」RISTEX大阪研究会.
青木千帆子・権藤眞由美,20111001,「『福祉避難所』成立の経緯」 障害学会第8回大会自由報告,於:愛知大学.
◆山口翔・植村要青木千帆子,20110702 & 03,「ブラウザ・ビューア閲覧型電子書籍のアクセシビリティにおける課題」情報通信学会第28回大会,於:専修大学生田キャンパス.
田中慶子,20110528,「電通過労自殺事件をめぐる社会問題の構成」第62回関西社会学会大会自由報告,於:甲南女子大学.
林義拓(片山知哉),20110514,セクシュアルマイノリティを理解する週間公式シンポジウム「日本型LGBT共生社会の作り方」シンポジスト,於:明治学院大学. [pdf](パワーポイント)
→cf. セクシュアルマイノリティを正しく理解する週間 [外部リンク]公式HP
→cf. 当日の活動報告 [外部リンク]個人ブログ

◇学術シンポジウム企画運営
阿部あかね,20111009,「全国『精神病』者集団 山本眞理氏公開インタビュー企画――差別に抗する現代史」gCOE生存学院生プロジェクト「精神保健・医療と社会」研究会 公開企画 企画運営,於:立命館大学衣笠キャンパス.
→cf. 企画ページ
渡邉あい子,20111001 & 02,AIDS文化フォーラムin京都 「ダムタイプ《S/N》記録映像上映会」 企画運営,於:龍谷大学大宮学舎 東黌.
→cf. AIDS文化フォーラムin京都 HP

◇その他書いたもの
山口真紀,20120331,「出来事を思う『位置』と『距離』――宮地尚子『環状島=トラウマの地政学』書評」『Core Ethics』8: 525-7. ISSN: 18800467 [PDF]
吉田幸恵,20120320,「日本と韓国のはざまで――ソロクト・イクサン調査報告」『生存学』5: **-**. ISBN-10: 4903690911 ISBN-13: 978-4903690919 \2310 [amazon][kinokuniya] ※
吉田幸恵,20120310,「忘れられたくない/忘れたい,そのはざまで考える――『解体』する共同体のゆくえ」天田城介村上潔山本崇記『差異の繋争点――現代の差別を読み解く』ハーベスト社,85-92. ISBN-10: 4863390343 ISBN-13: 9784863390348 \2835 [amazon][kinokuniya] ※ d04
杉原努,201105**,「利用者の理解,施設や機関の理解,制度の理解の視点」『社会福祉実習』高菅出版,109-12. ISBN-13: 978-4901793513 \2520 [kinokuniya]
植村要,201104**,「視覚に依存する被服の機能」『人権教育研究センター報(花園大学)』38: 30-1.

◇その他講演・講師等
片山知哉,20120202,「親ごさんとのコミュニケーションの心得――パーソナリティ障害の場合」於:横浜市総合リハビリテーションセンター. [PDF]
杉原努,201202**,「ソーシャルワークとスーパービジョン」於:よさのうみ福祉会職員研修会.
片山知哉,20110712,「『不適切養育』について――前提・基礎・応用」於:横浜市戸塚地域療育センター. [PDF]
杉原努,201106**,「社会福祉の動向、社会保障と社会福祉の概念」於:日本精神科看護技術協会.

◇メディア出演
渡邉あい子,20110907(録画日),「障害とアート,パフォーミングアーツ(ustream配信,80分対談)」ソーシャルネットワーク大阪「森田かずよのバリアフリーラボ」トークゲスト.
→出演番組 http://www.ustream.tv/recorded/17119121



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■2010年度

□2010年度活動計画

◆研究課題:「精神保健・医療と社会」の事象についての理論および実証研究

T 研究内容等および「生存学」創成拠点にもたらす効果
(1)研究内容
「精神保健・医療と社会」の事象についての理論および実証研究を行い、新たな価値付与の可能性をさぐることをその研究内容とする。参加者各々の実践上/理論上の関心にもとづき研究成果を研究会等で報告し、研究成果の報告と討議を中心に、各自の問いを深め、共有化しさらなる議論を持って精神医療・保健福祉と社会の関係の究明を目指す。

◆目的
「精神系」の院生が互いの研究成果を報告し検討しあう機会のない中、各々の研究成果を検討しあう機会の創設とメンバーの持つ潜在的な可能性の引き出し及び、研究成果の報告を促すことを目的としてプロジェクトを設立し推進した。
現段階の到達状況として、月1度の頻度で5回の研究会で発表検討された研究発表は9本に上り、研究会での報告は後述する各自の執筆論文、学会発表や調査の方向性や論点の整理を促すことにつながった。また、報告者のみならず参加メンバー各自に対しても新たな研究の視座や共同研究の可能性を与えている。

参加メンバーの成果としては以下の論文12、学術図書5、学会発表18(口頭12ポスター6)他3(民間研究助成獲得2を含む)であり、研究会での発表検討がそれらの成果をもたらす一助になったことを勘案すると、2009年度の目的や必要性に対しての到達は果たしたものと考える。成果の具体的内容は2009年度の本研究会報告書を参照されたい。
これら昨年度からの状況を受け、2010年度の目的を次の2点とする。

1:個人の研究成果を検討しあう機会の確保
2009年度の成果からも研究成果の検討の場の確保は、個人の研究を進めるにあたり、有効かつ必要であると言える。今年度も個人の研究の検討の場として「精神保健・医療と社会」研究会を位置づけ、昨年と同等以上の研究業績を修める一助とすることをその目的とする。
2:「精神系」研究院生 その一群としての成果の発表と準備
昨年度のメンバー個人の業績については前述したとおり、一定の評価を得ていると確信している。しかし、「精神保健・医療と社会」研究会としてあるいは「精神系」研究院生という一群としての成果はまだ発表されていない。
今年度は雑誌『生存学』vol.3の特集として「精神」が組まれ、研究会に参加している院生の多くが投稿を予定している。投稿に際して、研究会での検討を実施することにより、「精神系」研究院生一群としての成果の発表としての方針を明確にする。

それに加えて、2011年2月初め・中旬に全国「精神病」者集団山本真理氏への公開インタビューを行い、2011年度作成予定のセンター報告に掲載する。山本氏にはすでに内諾を得ている。山本氏は1970年代から全国「精神病」者集団に参加し、精神医療・福祉制度や処遇改善に関する声明を出している。中でも「心神喪失者等医療観察法」に関する記述は多い。それらの意見表明や記述に至る詳しい経緯や実体験を聞くことは、来年度の精神研の研究活動の布石となると同時に歴史的事実の証言を得ることは言うまでもない。
山本真理氏へのインタビューは、「生存学」創成拠点の集積と考究―歴史及び現在の把握と理論的考察―と目的を同じくしており、学問の組み換え―当事者・支援者による学問形成の場と回路の形成―への可能性を含むものであると考える。インタビューに向けて本研究会では、山本真理氏の著作ならびにその主張を読み返すことも行う。
山本真理氏の活動や主張および著作などについては、氏のHP([外部リンク]個人HP)を参照のこと。

◆意義
本プロジェクトにおいて、これまで体系の「枠」に収まらなかったメンバー各々の研究を発表、検討、調査することにより、学問として研究がなされてこなかった取り組みに対してその情報の蓄積に貢献できる。
山本真理氏へのインタビューは当事者活動の歴史的発掘として意義がある。わが国の「精神障害者当事者活動/運動」についての研究・文献は、機関誌や個人記録に依るところが多く、あまり知られることがない。
また、本研究会メンバーの論文を『生存学』vol.3の特集「精神」に掲載することは、対外的にあまり知られていない事柄を商業誌という媒体を介して一般に詳しく紹介する役目を担っている。たとえば、クラブハウスモデルに関しては精神医療・福祉関係者が注目をする取り組みであるが、具体的なモデルの分析はほとんどない。また、脱施設に関する研究は知的障害者の大規模施設の研究は存在するが、精神病院に関するものはほとんどない。
山本氏へのインタビューも含めてこれらを『生存学』vol.3やセンター報告書に記載し発信することは、拠点の「自然科学と人文社会科学のはざまで分散し埋もれていた情報をデータベース化し、それをもとに本格的な学問的考察を行い社会に発信する」という目的と合致するものであり、当研究会のもつ意義である。

(2)「生存学」創成拠点にもたらす効果
 
プロジェクト参加予定者の研究は関連付けられる/付けた方がよいものは多くある。例えば、わが国の「脱病院・脱施設」のある時期は「反精神医学」と関係がある。また「反精神医学」の研究は精神医学の歴史的研究をも視野に入れるため「トランキライザーの歴史的研究」と近接している。その他、「病名の功罪」や「精神障害者の戦略的生活」など関係づけられてよい研究は多い。
昨年度の研究会ではそれらの認識が参加メンバーの中に顕在化され、成果として、プロジェクトメンバー阿部あかねよる「反精神医学」の研究は、三野宏治の研究調査の参考となった。具体的には2010年5月に実施された(大同生命地域福祉研究助成)参加した医師への聞き取りという結果をもたらした。また、吉田幸恵は本研究会での研究発表において山口真紀の「診断名を与えること/得ることについての問題の再検討――ニキの主張を起点にして」(福祉社会学会第7回大会)を参考文献としてあげた。これらの調査/研究について本年は具体的な形で発表する予定である。
その発表媒体として『生存学』vol.3を想定し、各自の問題関心を本プロジェクトで検討/研鑽することにより、発表するに足る成果物にする予定である。
この流れを通じて、精神系の研究は各々の研究を発表することはもちろん、互いをより一層関連づけた新たな取り組みをおこなうことが期待される。現時点で具体的に想定される効果は以下のとおり。

短期的には、
・生存学ホームページの各自の関心領域と研究会メンバー他の領域との関連付けの充実。現在、「精神障害/精神医療」を始めとする精神系ホームページは少なからず存在する。しかし、「精神系」ページを目的に拠点HPに訪れた人(たち)にとって利用がしやすい/役に立つという視点では決して使い勝手がよいとはいえない。それは、拠点ホームページに関してしばしば指摘されている、事項、文献、個人、研究内容などのページが独立してあることが、「精神系」のホームページにも同様にみられることにある。そこで、本年は、『精神医療福祉と社会』研究会ページと各自の業績、研究・関心分野及び関連研究、前文掲載への相互リンクを行うことを計画する。

・参加学会等での発表主旨や論文の掲載、事項ページの増補と作成『生存学』vol.3への論文執筆過程での情報の公開)。
・全国「精神病」者集団の山本真理氏への公開インタビュー
・『センター報告「精神保健・医療と社会」研究会(仮)』に関しての質の担保に関しての討議を行う。
具体的には、査読(内部査読、外部査読)の必要性に関して、その査読者の候補選定をふくめ行うこと。2010年5月27−30日に行われた「日韓交流事業」にて研究発表・交流のあった京畿大学、スユ+ノモの精神系研究者による寄稿に関して、事業推進担当者の立岩真也教授の助言のもとその可能性を探る。

中長期的には、
・ 全国「精神病」者集団の山本真理氏の公開インタビュー受けて、研究会参加者によるセンター報告の執筆/編集
前述したとおり、全国「精神病」者集団の山本真理氏へのインタビューは、「生存学」創成拠点の集積と考究―歴史及び現在の把握と理論的考察―と目的を同じくしており、学問の組み換え―当事者・支援者による学問形成の場と回路の形成―への可能性を含むものであると考える。
また、韓国の研究者への『センター報告「精神保健・医療と社会」研究会(仮)』寄稿に関する打診は、「生存学」創成拠点の掲げる国際研究発表・交流とその趣旨を同じである。
これらの取り組みにより、生存学拠点における「精神系」の研究の広がりと発信をより充実させることができると考える。


U 研究計画・方法・研究成果発表の方法
1 各々の実践上/理論上の関心にもとづき、研究成果(『コアエシックス』・学会発表の準備など)を報告し、その成果をHPにアップする。
2 1と並行して、『生存学』vol.3投稿予定論文について検討を行う。
3 精神保健・医療に関する公開インタビュー、学会報告や外部の査読付雑誌への投稿を行う。現在予定されているものは以下。

1公開インタビュー:全国「精神病」者集団の山本真理氏への公開インタビュー。インタビュー予定:事業推進担当者  立岩真也教授。
2 学会発表
3 論文投稿:『Core Ethics』vol.7 『生存学』vol.3 『立命館人間科学研究』vol.22


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□2010年度メンバー

三野 宏治   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年*
渡邉 あい子  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
片山 知哉   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
松枝 亜希子  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
仲 アサヨ   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
藤原 信行   立命館大学衣笠総合研究機構RA→PD
山口 真紀   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
阿部 あかね  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
吉田 幸恵   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
末安 民夫   立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
杉原 努 立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
中田 喜一 立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
植村 要 立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
齊藤 由香 立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
青木 千帆子 立命館大学衣笠総合研究機構PD
小林 勇人   立命館大学衣笠総合研究機構PD
*プロジェクト研究代表者

事業推進担当者:立岩 真也 (立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)


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□2010年度活動経過

◆研究会
◇第12会研究会
・2011年1月16日(日)
山本 真理(長野 英子)招聘企画に向けた事前勉強会
(報告者:小林 勇人藤原 信行山口 真紀


◇第11回研究会
2010年12月19日(日)
山本 真理(長野 英子)招聘企画の話し合い
・上記企画に向けた事前勉強会の講読文献の調査と選定

◇第10回研究会
2010年8月29日(日)
藤原 信行:『戦後日本社会学は自殺統計をいかに〈読み解いた〉か?――社会の診断・批判・構想』
萩原 浩史:『「きちがい」から「心の病」へ――テレビドラマにみる狂気の変遷』

◇第9回研究会
2010年7月18日(日)
渡邉 あい子:『なぜ「障害者アート」は知的障害者の作品を想起させるのか――精神科医・式場隆三郎の言説の変遷を追って』

◇第8回研究会
2010年6月15日(火)
三野 宏治:『オルタナティブサービスとしてのクラブハウスモデルの可能性』

◇第7回研究会
2010年5月24日(月)
中田 喜一:『撹乱するオンラインセルフヘルプグループ』

◇第6回研究会
2010年4月17日(土) 09年度の調査報告
三野 宏治:日本福祉文化学会参加報告 20100227-28 早稲田大学 「精神障害があるその人と支援者の「対等性」についての考察――当事者と専門家による共同研究を通して」
山口 真紀:東京都立図書館内「闘病記文庫」における調査 報告
吉田 幸恵:1. 多磨全生園・盲人における聞き取り調査 報告 2. ハンセン病資料館における調査 報告


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□2010年度業績

◇学術図書(共著・編集)
◆日本精神科看護技術協会・末安民生,20101112,『大切な人の「こころの病」に気づく――今すぐできる問診票付』朝日新聞出版(朝日新書). ISBN-10: 4022733683 ISBN-13: 978-4022733689 [amazon][kinokuniya]
◆吉浜文洋・末安民生編,20100615,『学生のための精神看護学』医学書院. ISBN-10: 4260001892 ISBN-13: 978-4260001892 [amazon][kinokuniya]

◇学術図書(分担執筆)
小林勇人,20100610,「カリフォルニア州の福祉改革――ワークフェアの二つのモデルの競合と帰結」渋谷博史・中浜隆編『アメリカ・モデル福祉国家 T――競争への補助階段』(渋谷博史監修・シリーズ「アメリカ・モデル経済社会」全10巻第4巻)昭和堂,66-129. ISBN-10: 4812210291 ISBN-13: 978-4812210291 [amazon][kinokuniya]
杉原努,201103**,「利用者の理解,施設や機関の理解,制度の理解」藤松素子編『社会福祉実習』高菅出版,**-**.

◇論文
阿部あかね,20100325,「わが国の精神医療改革運動前夜――一九六九年日本精神神経学会金沢大会にいたる動向」『生存学』3: 144-54. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 978-4903690728 [amazon][kinokuniya]
青木千帆子,20110430,「自立とは規範なのか――知的障害者の経験する地域生活」『障害学研究』7: **-**. ISSN: 18825265 [amazon][kinokuniya]
藤原信行,20110325,「『医療化』された自殺対策の推進と〈家族員の義務と責任〉のせり出し――その理念的形態について」『生存学』3: 117-32. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 978-4903690728 [amazon][kinokuniya]
片山知哉,20110325,「ネオ・リベラリズムの時代の自閉文化論」『生存学』3: 106-16. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 978-4903690728 [amazon][kinokuniya]
片山知哉・本田秀夫,20101219,「自閉症スペクトラムに特有の症候とは何か?」『精神科治療学』25(12): 1559-66. ISSN: 09121862
小林勇人,20100601,「就労支援・所得保障・ワークフェア――アメリカの福祉政策をもとに」『現代思想』38(8): 182-95.ISBN-10: 4791712145 ISBN-13: 978-4791712144 [amazon][kinokuniya]
三野宏治,20110214,「精神障害当事者と支援者との障害者施設における対等性についての研究――当事者と専門家へのグループインタビューをもとに」『立命館人間科学研究』22: 7-18. ISSN: 1346678X [PDF]
三野宏治,20110325,「クラブハウスモデルの労働とは何か?」『生存学』3: 174-84. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 978-4903690728 [amazon][kinokuniya]
中田喜一,20110325,「乱立するセルフヘルプグループの定義を巡って――可視性と想像性という観点から」『生存学』3: 198-209. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 978-4903690728 [amazon][kinokuniya]
杉原努,20110325,「レジリエンスを基礎にした精神保健福祉士養成――ACTの取り組みからの示唆」『生存学』3: 185-97. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 978-4903690728 [amazon][kinokuniya]
山口真紀,20110325,「自閉者の手記にみる病名診断の隘路――なぜ『つまづき』について語ろうとするのか」『生存学』3: 92-105. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 978-4903690728 [amazon][kinokuniya]
吉田幸恵,20101120, 「〈病い〉に刻印された隔離と終わりなき差別――『黒川温泉宿泊拒否事件』と『調査者』の関係を事例に」山本崇記高橋慎一『「異なり」の力学――マイノリティをめぐる研究と方法の実践的課題』(生存学研究センター報告14): 88-113. ISSN: 18826539

◇国際学会発表
青木千帆子,20101126,「『労働者(あなた)』にとって『障害者(わたし)』とは何か」グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム(2010年秋期) 第1回障害学国際研究セミナー(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:韓国・ソウル市.
Hayato, Kobayashi, 20100630-0702, "The Effects of U.S. Workfare Policies on Japanese Welfare Reform: A Vision for BI in Japan," 13th International Congress of the Basic Income Earth Network, Universidade de Sao Paulo, Sao Paulo, Brazil.
三野宏治,20100527,「精神障害当事者と支援者による障害者施設における対等性についての研究」グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム「ラウンド・テーブル・ディスカッション」,於:研究空間〈スユ+ノモ〉(韓国・ソウル).
三野宏治,20100529,「障害者の地域生活移行に関する問題点の整理および支援方法についての研究」グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム「国際研究交流会議」(2010年度韓日社会福祉交流セミナー),於:京畿[キョンギ]大学水原[スウォン]キャンパス(韓国).
三野宏治,20101126,「知的障害者の地域生活の現状に関する報告」グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム(2010年秋期) 第1回障害学国際研究セミナー(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:韓国・ソウル市.
吉田幸恵,20100527,「新たなナラティブアプローチの可能性――語ること・聴くこと・そこから生まれるもの」グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム「ラウンド・テーブル・ディスカッション」 於:研究空間〈スユ+ノモ〉(韓国・ソウル).
吉田幸恵,20101127,「1950年代以降の日本と韓国におけるハンセン病施策の変遷」グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム(2010年秋期) 第1回障害学国際研究セミナー(主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター),於:韓国・ソウル市.

◇国内学会発表
青木千帆子,20100524,「障害者労働の場にある交換とジレンマ」第61回関西社会学会大会自由報告,於:名古屋市立大学.
青木千帆子,20100717,「障害者労働をめぐる言説の分析」障害学研究会関西部会第33回研究会,於:茨木市民総合センター.
青木千帆子,20100908-10,「労働と賃金の等価交換という原則――労働の理念と現実をめぐるジレンマ」フィールドワーク社会心理学研究会,於:筑波大学東京キャンパス秋葉原地区.
青木千帆子,20100925-26,「『できない』ことはどう位置づけられるのか──共同連における議論の分析」障害学会第7回大会,於:東京大学.
藤原信行,20100516,「医療化された自殺対策の行為記述水準での局所的達成と責任帰属」第36回日本保健医療社会学会,於:山口県立大学.
片山知哉,20100516,「養育関係内の多文化主義――身体状況の差異によるコンフリクト,畳み込まれたポリティクス」第36回日本保健医療社会学会大会,於:山口県立大学.
片山知哉,20101120,「代理決定議論における文化的バイアス――ゲイ・レズビアンの直面する困難を例として」 日本生命倫理学会第22回大会,於:藤田保健衛生大学.
◆岩佐光章・本田秀夫・清水康夫・今井美保・片山知哉,20101028,「特定地域の出生コホートに基づく小児自閉症の長期追跡――その2. 20歳に至る15年間の社会適応の変遷と介入の軌跡」日本児童青年精神医学会第51回総会,於:群馬県民会館ベイシア文化ホール.
小林勇人,20100529,「ベーシック・インカムと労働を巡る問題の一考察――ワークフェアの歴史をもとに」福祉社会学会第8回大会,於:九州大学箱崎地区文系キャンパス
小林勇人,20100617,「ワークフェアの現状と課題――ニューヨーク市政を中心に」リサーチプロジェクト「多元的福祉社会における政策システム」福祉部会「福祉国家と社会的企業」研究会,於:立命館大学衣笠キャンパス.
小林勇人,20101127,「ワークフェアではなくBI、のために――生活保護改革の動向をもとに」ベーシックインカム・実現を探る会主催「ベーシックインカム・現在から未来へ――ベーシックインカム若手研究者と語り合おう!」,於:下北沢タウンホール
小林勇人,20110312,「生活保護改革の動向とワークフェア――ニューヨーク市の福祉改革からの含意」2010年度関西社会福祉学会年次大会自由研究発表,於:佛教大学紫野キャンパス.
三野宏治,20101106,「対人援助のコミュニケーションについて考える――対等性を軸に」 対人援助学会第2回大会,於:立命館大学衣笠キャンパス. ◆杉原努,20101024,「スタッフからみたACTにおける家族支援」(共同発表)第18回日本精神障害者リハビリテーション学会,於:北海道浦河町.
植村要,20100516,「医療に関わる情報が患者会活動に与える影響について――スティーブンスジョンソン症候群を例として」第36回日本保健医療社会学会,於:山口県立大学.

◇その他書いたもの
青木千帆子,20100809,「学位への道のり」『社会心理学会会報第187号』.
三野宏治,2011****,「クラブハウスでの職員と利用者の対等性を調査することで支援関係の新たな価値を探る」『第16回「地域保健福祉研究助成」報告集』公益財団法人大同生命厚生事業団,128-32.
 

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□生存学創成拠点メールマガジン掲載の紹介記事

◆20101020 「生存学」創成拠点メールマガジン第7号
研究会紹介 第7回 「精神保健・医療と社会」研究会 より

第7回は「精神保健・医療と社会」研究会(2009・2010年度「生存学」創成拠
点院生プロジェクト)をご案内します。

以下、プロジェクトの研究代表者である本学大学院先端総合学術研究科公共領
域・一貫制博士課程5回生の三野 宏治 による紹介です。

2009年に発足した「精神保健・医療と社会」研究会は「精神保健・医療と社
会」の事象についての理論および実証研究を行い、新たな価値付与の可能性を
さぐることを目的として活動しています。
 本拠点には、精神医療・保健・福祉と社会に関わる研究をする院生が少なから
ず在籍しています。ただ、研究会発足までそれらの人が一堂に会する機会はあ
まりありませんでした。拠点の特徴から本研究会メンバーの関心は精神医療・
保健・福祉を中心に据えてはいるものの、既存の学問体系に収まりきらないも
のです。つまり援助者からの視点からスタートしたものではなく、その援助者
や社会と当事者や事項の関係、あるいは当事者その人たち自らをも含んだ社会
の力動や変化について集積・分析・考察を進めています。
 活動の具体的な内容としては、各自の研究の発表と共に来年刊行予定の『生存
学』vol.3の特集「精神」と連動して登校予定論文の合評会を進めています。
また、2011年2月初め・中旬に全国「精神病」者集団の山本真理氏への公開イ
ンタビューを企画しており企画を進めています。これらの企画と並行して、月
一度の頻度で定期的に研究会を行い、各自の研究報告を行っています。
 今後の「精神保健・医療と社会」研究会の取り組みに関しては、本メールマガ
ジンや研究会HP等でお知らせいたします。



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■2009年度

□2009年度活動計画

◆研究課題:「精神保健・医療と社会」の事象についての理論および実証研究

T 研究内容等および「生存学」創成拠点にもたらす効果
(1)研究内容、目的、意義
◆研究内容
「精神保健・医療と社会」の事象についての理論および実証研究を行い新たな価値付与の可能性をさぐることをその研究内容とする。参加者各々の実践上/理論上の関心にもとづき研究成果を研究会等で報告し、研究成果の報告と討議を中心に、各自の問いを深め、共有化しさらなる議論を持って精神医療・保健福祉と社会の関係の究明を目指す。

◆目的
これまで精神保健・精神医療と社会に関わる研究をするものは少なからず在籍し、各自が各々研究を進めていた。ただ、既存の学問体系が援助者からの視点からスタートしたものが多く、その援助者や社会と当事者や事項の関係、あるいは当事者その人たち自らをも含んだ社会の力動や変化に注目したものが少ないため、プロジェクト参加者の研究は精神医療・保健・福祉を中心に据えてはいるが、その関心はそれらの「枠」に収まりきらないものであった。
また、それらの人たちが一堂にかいして互いの研究成果を報告し検討しあう機会はこれまで設けられることもなく、また成果の公表についても必ずしも十分になされてきたとは言い難い。
そこで、院生プロジェクトというかたちで「精神系」の院生たちが一堂に会し、各々の研究成果を検討しあう機会設け、彼/彼女たちが有する潜在的な可能性を引き出し、研究成果の報告を促すことを研究会の目的とする。

◆意義
これまで体系の「枠」に収まらなかったそれぞれの研究を発表、検討、調査することにより、学問として研究がなされてこなかった取り組みに対してその情報の蓄積に貢献できる。例えば、精神障害者のリハビリテーションモデルである「クラブハウスモデル」についての調査があげられる。わが国の「クラブハウスモデル」ついての文献は、クラブハウス実践者の「クラブハウスは実践であり研究の対象ではない」という背景からそれに関する記述が非常に少ない。 
また、単なる福祉やリハビリテーションだけではない、クラブハウスに集う人たちの関係性の変化や社会とのかかわりなども考慮し考察する。これらの単なる技術論に収まらない新たな「精神系」研究を行うことにその意義がある。

(2)「生存学」創成拠点にもたらす効果
プロジェクト参加予定者の研究は関連付けられる/付けた方がよいものは多くある。例えば、わが国の「脱病院・脱施設」のある時期は「反精神医学」と関係がある。また「反精神医学」の研究は精神医学の歴史的研究をも視野に入れるため「トランキライザーの歴史的研究」と近接している。その他、「病名の功罪」や「精神障害者の戦略的生活」など関係づけられてよい研究は多くある。
しかし、今まで各自の研究について詳しく発表される機会は少なく、また関連付けて研究されることはほとんどなかった。本プロジェクトが採択されたならば、これらの研究をおこなう者が各々の研究を発表することはもちろん、関連づけた新たな取り組みをおこなうことが期待される。
短期的には、
・生存学ホームページの各自の関心領域と研究会メンバー他の領域との関連付けの充実。
・参加学会等での発表主旨や論文の掲載、新たな事項ページの作成(具体的にはクラブハウスモデルページの新設)。
中長期的には、
・研究会参加者によるセンター報告の執筆/編集
などの活動を行う。これらの取り組みにより、生存学拠点における「精神系」の実績とホームページによる発信をより充実させることができると考える。


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□2009年度メンバー

三野 宏治  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年*
渡邉 あい子 立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
片山 知哉  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
松枝 亜希子 立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
仲 アサヨ  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
藤原 信行  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・5年
山口 真紀  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・4年
阿部 あかね 立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・3年
吉田 幸恵  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・3年
末安 民夫  立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程公共領域・3年
小林 勇人  立命館大学衣笠総合研究機構PD
*プロジェクト研究代表者

事業推進担当者:立岩 真也 (立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)


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□2009年度活動経過

◆研究会
第5回研究会
2010年2月20日(土)14:00-17:00
三野 宏治「精神障害があるその人と支援者の『対等性』についての考察――当事者と専門家による共同研究を通して(日本福祉文化学会発表予稿)」
渡邉 あい子「なぜ『障害者アート』は知的障害者の作品を想起させるのか――カテゴリ成立の言説から」「『障害者アート』と自立支援に関する事例報告」

第4回研究会
2010年1月11日(月・祝)14:00-17:00
藤原 信行「自殺動機付与/カテゴリー執行をめぐるポリティクスと精神医学的知――ある自死遺族による局所的実践を例に」
仲 アサヨ「精神病院不祥事件が語る入院医療の背景と実態――大和川病院事件を通して考える」

第3回研究会
2009年12月5日(土)14:00-17:00
松枝 亜希子「1950-70年代のトランキライザーの隆盛――規制の論拠と経過」
・吉田 幸恵「〈病い〉を抱えて地域で〈生きる〉人――ある精神障害者の生活史記録から」

第2回研究会
2009年11月3日(火・祝)14:00-17:00
三野 宏治「精神障害当事者と支援者による障害者施設における対等性についての研究」
山口 真紀「「病気のせい」の功罪――心を名づけることをめぐる言説の一考察」

第1回研究会
2009年10月3日(土)14:00-17:00
・各自の自己紹介
阿部 あかね「反精神医学議論における、『病気』をどう捉えるかという問題について」


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□2009年度成果

◇学術図書(共著・編集)
末安民生・アビリティクラブたすけあい,20090731,『介護者が安心して働くためのケア者ノート――息ながく続けるための実践法』筒井書房. ISBN-10: 4887205880 ISBN-13: 978-4887205888 [amazon][kinokuniya]
末安民生編,20090521,『精神科退院支援ビギナーズノート』中山書店. ISBN-10: 4521731163 ISBN-13: 978-4521731162 [amazon][kinokuniya]

◇学術図書(分担執筆)
藤原信行,20090525,「自殺(予防)をめぐる『物語』としての精神医学的知識の普及と自死遺族」浅野弘毅岡崎伸郎『自殺と向き合う』(メンタルヘルス・ライブラリー24)批評社,119-128. ISBN-10: 4826505043 ISBN-13: 978-4826505048 [amazon][kinokuniya]
小林勇人,20090715,「ワークフェア」VOL collective編(白石嘉治・矢部史郎責任編集)『VOL lexicon』以文社, 186-187. ISBN-10: 4753102696 ISBN-13: 978-4753102693 [amazon][kinokuniya]
三野宏治,20091208,「アメリカ合衆国:社会福祉の現状 IV――地域精神保健福祉」『世界の社会福祉年鑑2009』旬報社,190-200.

◇論文
阿部あかね
,「1970年代日本における精神医療改革運動と反精神医学」『Core Ethics』6: 1-11. ISSN: 18800467  [PDF]
小林勇人,20100320,「ワークフェアを巡る国際研究調査─アメリカ×キューバ×カナダ」『生存学』2: 390-3. ISBN-10: 4903690512  ISBN-13: 978-4903690513 [amazon][kinokuniya]
片山知哉,20100226,「養育関係内における多文化主義──子どもの文化選択をめぐる規範理論への予備的考察」安部彰堀田義太郎『ケアと/の倫理』(生存学研究センター報告11)立命館大学生存学研究センター,145-66. ISSN 18826539
◆日戸由刈・萬木はるか・武部正明・片山知哉・本田秀夫,20091219,「4つのジュースからどれを選ぶ?──アスペルガー症候群の学齢児に集団で『合意する』ことを教えるプログラム開発」『精神科治療学』24(4): 493-501. ISSN: 09121862 *
*第6回精神科治療学賞を受賞
松枝亜希子,20100331,「トランキライザーの流行――市販向精神薬の規制の論拠と経過」『Core Ethics』6: 385-99. ISSN: 18800467 [PDF]
→cf. 鈴木晃仁さん(慶應義塾大学・医学史)のブログで紹介されています.
  [外部リンク]鈴木さんブログ「身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌」の紹介記事
三野宏治,20100331,「精神障害者クラブハウスモデルの仕事を媒介にした相互支援の考察――その仕組みと発想」『福祉文化研究』19: 62-75.
三野宏治,20100331,「日本の精神医療保健関係者の脱病院観についての考察――米国地域精神医療保健改革とそれについての議論をもとに」『Core Ethics』6: 413-23. ISSN: 18800467 [PDF]
仲アサヨ,20100226,「精神病院不祥事件が語る入院医療の背景と実態――大和川病院事件を通して考える」安部彰堀田義太郎『ケアと/の倫理』(生存学研究センター報告11)立命館大学生存学研究センター,167-95. ISSN 18826539
仲アサヨ,20100331,「精神科特例を巡る歴史的背景と問題点――精神科特例の成立および改正の議論から」『Core Ethics』6: 277-86. ISSN: 18800467
→cf. 鈴木晃仁さん(慶應義塾大学・医学史)のブログで紹介されています.
  [外部リンク]鈴木さんブログ「身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌」の紹介記事
吉田幸恵,200912**,「〈病い〉とともに地域で生きるために――ある精神障害者の語りから明らかになるこれからの課題」『学術論文集』27,財団法人朝鮮奨学会,115-29. ISSN: 0287802X
吉田幸恵,20100331,「ある精神障害者の語りと生活をめぐる一考察――『支援』は何を意味する言葉か」『Core Ethics』6: 485-96. ISSN: 18800467 [PDF]

◇国内学会発表
・口頭発表
松枝亜希子,20090607,「1950-60年代のトランキライザーの隆盛」福祉社会学会第7回大会,於:日本福祉大学. 報告要旨
片山知哉,20090721,「精神医学的アプローチの提案」第13回横浜市療育研究大会全体会シンポジウム,於:横浜市総合リハビリテーションセンター スライド資料 Power Point
片山知哉,20091101,「医療における代理決定と所属――終末期医療においてゲイ・レズビアンが直面する諸困難を例に」日本医学哲学・倫理学会第28回大会,於:滋賀医科大学
片山知哉,20091114,「医療における承認と所属――障害のあるこどもにどの文化を伝えるべきか」第21回日本生命倫理学会年次大会,於:東洋英和女学院大学.
片山知哉・山田裕一,20090926,「ふたつの構造的抑圧――専門家支配と能力主義に抗して自閉文化の存在意義を擁護する」障害学会第6回大会,於:立命館大学朱雀キャンパス. 報告要旨/原稿
◆岩佐光章・本田秀夫・清水康夫・今井美保・片山知哉,20091002,「特定地域の出生コホートに基づく小児自閉症の長期転帰――幼児期に悉皆的発生率調査で同定されたこどもたちの15年後」児童青年精神医学会一般講演C1-V3.
小林勇人,20090607,「ニューヨーク市のワークフェア政策II――受給者のプログラム参加後の状況を中心に」福祉社会学会第7回大会,於:日本福祉大学. 報告原稿
小林勇人,20091218,「査読付学術論文を書くにあたって」同志社大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻大学院GP 院生運営主体小規模研究会,於:同志社大学新町キャンパス.
小林勇人,20100122,「ワークフェアの現状と課題――ニューヨーク市政を中心に」大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策専攻都市公共政策研究分野2009年度「ワークショップII」(小玉徹)ゲストスピーカー,於:大阪市立大学大学院創造都市研究科梅田サテライト.
三野宏治,20090607,「アメリカにおける脱入院化――ケネディ教書以前とその後」福祉社会学会第7回大会,於:日本福祉大学. 報告原稿
三野宏治,20100227,「精神障害があるその人と支援者の『対等性』についての考察――当事者と専門家による共同研究を通して」日本福祉文化学会第20回大会,於:早稲田大学.
渡邉あい子,20091206,「なぜ『障害者アート』は知的障害者の作品を想起させるのか――カテゴリ成立をめぐる言説から」アートミーツケア学会2009年度大会,於:慶應義塾大学三田キャンパス
山口真紀,20090607,「診断名を与えること/得ることについての問題の再検討――ニキの主張を起点にして」福祉社会学会第7回大会,於:日本福祉大学.
吉田幸恵,20090607,「精神障害者の地域生活支援の在り方の一考察――ある精神障害者の生活史聞き取り調査より」福祉社会学会第7回大会、日本福祉大学、2009年6月 [原稿]

・ポスター発表
阿部あかね,20090926-27,「1970年代日本の精神医療改革運動に与えた『反精神医学』の影響」障害学会第6回大会,於:立命館大学朱雀キャンパス 報告要旨/原稿
松枝亜希子,20090926-27,「向精神薬が規制されるにいたった経緯とその論拠――トランキライザーの事例から」障害学会第6回大会,於:立命館大学朱雀キャンパス. 報告要旨/原稿
三野宏治,20090926-27,「精神障害当事者と支援者による障害者施設における対等性についての研究」障害学会第6回大会,於:立命館大学朱雀キャンパス. 報告要旨/原稿
渡邉あい子,20090926-27,「障害者とパフォーミングアーツの生成と展開――1970年代から現在まで」障害学会第6回大会,於:立命館大学朱雀キャンパス. 報告要旨/原稿
山口真紀,20090926-27,「病名診断をめぐる問題とは何か――診断名を求め,語る声から考える」障害学会第6回大会,於:立命館大学朱雀キャンパス. 報告要旨/原稿
吉田幸恵,20090926-27,「〈病い〉を抱える人が社会で生きていく戦略――障害者の生活史から」障害学会第6回大会,於:立命館大学朱雀キャンパス. 報告要旨/原稿

◇その他書いたもの
片山知哉,20090715,リハビリテーションとメンタルヘルス(11)「まとめ・リハビリテーション従事者とメンタルヘルス従事者 1」(連載)『地域リハビリテーション』2009年7月号,三輪書店.
片山知哉,20090815,リハビリテーションとメンタルヘルス(12)「まとめ・リハビリテーション従事者とメンタルヘルス従事者 2」『地域リハビリテーション』2009年8月号,三輪書店.
天田城介小林勇人齊藤拓橋口昌治村上潔山本 崇記,「生産/労働/分配/差別について」(座談会)『生存学』2: 14-70. ISBN-10: 4903690512  ISBN-13: 978-4903690513 [amazon][kinokuniya]

◇研究助成
三野宏治,20090918,「クラブハウスでの職員と利用者の対等性を調査することで支援関係の新たな価値を探る」財団法人大同生命厚生事業団地域保健福祉研究助成.
三野宏治,201003**,日本社会福祉弘済会「調査・実践研究」福祉助成事業.




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■関連項目(arsvi.com内)

精神障害/精神医療
*個別の疾患・事象にかんする項目へはこちらから.
障害学
医療社会学
感情/感情の社会学


*作成:小林 勇人 更新:三野宏治藤原信行桐原尚之
UP: 20091203 REV: 20100113, 0226, 0326,20100422, 0728, 0803,1102, 20110615, 16, 20, 0703, 0715, 0811, 19, 25, 26, 0901, 08, 20120112, 0210, 0323, 27, 28, 0409, 20130219, 0314
精神障害/精神医療  ◇組織 
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