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日本社会事業大学社会福祉学会



第39回 社会福祉研究大会

◆障害者福祉分科会A

日時:2000年7月2日(日曜日) 午後1−3時
場所:日本社会事業大学(C−302号)
   (東京都清瀬市竹丘3−1−30)
   西部池袋線清瀬駅から歩道15分

参加費:無料

分科会のテーマ

障害者地域生活支援の現状と課題

司会者:鄭 鍾 和(チョン ヂョン ハ) 
    日本社会事業大学大学院博士後期課程
助言者:立岩 真也(タテイワ シンヤ)
    信州大学医療技術短期大学部 助教授
報告者
近藤 秀夫(コンドウ ヒデオ)
    市町村障害者生活支援事業全国連絡協議会理事長 
    「市町村障害者生活支援事業の現状と課題」
中西 正司(ナカニシ ショウジ) ヒューマンケア協会 代表
    「地域生活支援の方法と課題 −利用者主体の地域生活支援の実践−」

発表時間:20分
質疑応答:10分

 

■近藤 秀夫(コンドウ ヒデオ)
    市町村障害者生活支援事業全国連絡協議会理事長 
    「市町村障害者生活支援事業の現状と課題」

 ●●要旨●●

1.「市町村障害者生活支援事業」の概要
 1995年に示された障害者プランの中で“障害者の総合的な相談・生活支援を地域で支える事業”として位置づけられた市町村障害者生活支援事業(以下、生活支援事業)は国の補助事業として96年度から開始された。99年度現在107ヶ所で実施されている。
 基本事業は@サービスの利用援助、A社会資源を活用するための支援、B社会生活力を高めるための支援、Cピアカウンセリング、D専門機関の紹介、と多岐にわたっている。この事業の実施主体は市町村であるが、社会福祉法人等に委託することができ、自立生活センターをはじめとする非法人のNPOも委託先として認められている。
2.市町村障害者生活支援事業の現状
@“等”に託した厚生省の思い
 厚生省は要綱の中で“等”という表現を多用しつつ、従来から地域で自立支援を行ってきた組織、人材を活用することを認めている。この事業を受託しているNPOは99年度で21ヶ所で、その多くでは障害当事者がピアカウンセラーとして常勤職員になり、事業の重役を担っている。
A基本事業が秘めた可能性
 「社会資源を活用するための支援」は幅広い地域活動の中でネットワークを培い、多様な社会資源、組織を柔軟に活用するものである。「社会生活力を高めるための支援」「ピアカウンセリング」は、障害者の自立生活運動の中から生み出された手法であり、その実践が評価された経緯がある。これらの事業が基本事業に位置づけられたことで障害者の地域生活の支援を行う上でより効果的になっている。
B障害当事者に「夢」と「希望」を与えたが‥‥
 しかし、実施団体によっては、基本事業であるピアカウンセリングすらほとんど実施できていない、ピアカウンセラーと身体障害者相談員制度を混同している、当事者の視点を持たない専門家主導のプログラムが実施されている等の問題点もある。また、地域で活動を行ってきた多くの当事者団体が受託を要望しているが、既存の社福法人等に委託されることも多く、この事業の本来の役割が果たせていない。
3.市町村障害者生活支援事業の課題
@どこまで変わる「与える福祉」の発想
 障害者を単なる利用者、対象者として見る従来の「与える福祉」の発想から脱却し、障害者自身をエンパワメントし、この事業を担う中心に位置づけるという方向に転換しなければならない。
A事業者の創造性が問われる
 重要な課題の一つに、“サービス・社会資源の開拓”があげられる。制度のみに頼るのではなく、行政との対等なパートナーシップのもと、自ら社会資源を生み出していく創造性が必要である。
B問われる当事者の「専門性」と「社会生活力」
 生活支援事業は当事者の活動実績を踏まえて作られたが、全国的にはピアカウンセラーをはじめ人材が不足している。当事者も自分の体験、経験を援助する力へと変えていくためには、この事業を担うための「専門性」と「社会生活力」を身につけなくてはならない。一方、生活支援事業を実施する中で地域の福祉を担う障害当事者を養成することも重要な課題である。

 ●●資料●●

1.「市町村障害者生活支援事業」の概要
@障害者プランでの位置づけ
 1995年に示された障害者プランの中で“障害者の総合的な相談・生活支援を地域で支える事業”として位置づけられた市町村障害者生活支援事業(以下、生活支援事業)は国の補助事業として96年度から開始された。96年度は全国18ヶ所でスタートし、97年度42ヶ所、98年度73ヶ所、99年度107ヶ所と増えてきたが、いまだ障害者プランの目標値(2002年までに690ヶ所)の15%程の達成率である。
A事業内容
 地域生活を行う障害者は多様なニーズを持っており、地域の様々な社会資源をコーディネートし、総合的な対応が必要となる。しかし、これは縦割りの行政組織が最も苦手とする分野であった。そのため、生活支援事業の基本事業は@サービスの利用援助、A社会資源を活用するための支援、B社会生活力を高めるための支援、Cピアカウンセリング、D専門機関の紹介、と多岐にわたっている。また、ABに関しては要綱に示された具体例にもとづき地域のニーズに応じて実施するという極めて柔軟性の高い事業内容となっている。
B実施主体
 この事業の実施主体は市町村であるが、“事業の全部または一部を、次に掲げる施設等を運営している地方公共団体、社会福祉法人等”に委託することができることになっている。“次に掲げる施設”として、身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者福祉センターに並んで、“障害者に対する相談・援助活動を実施している社会福祉協議会等”の項で社会福祉協議会に加えて、これまで地域で障害者の自立支援を行ってきた自立生活センターをはじめとするNPO(非法人を含む)も委託先として認められている。
 99年度の107団体の内訳は、行政8、社協21、NPO21、身障療護33、事業団・公社12、知的障害関連施設3、その他社福法人8、医療系施設1となっている。
C職員配置
 職員配置としては“社会福祉士等のソーシャルワーカーで障害者の相談・援助業務の経験がある者”“保健婦、理学療法士、作業療法士等で障害者の相談・援助業務の経験がある者”の1名を常勤で配置することになっている。ここでも“社会福祉士等のソーシャルワーカー”の項で障害を持つ当事者の立場で相談・援助業務を行ってきたピアカウンセラーが認められている。生活支援事業の予算額は1500万円であるため、常勤職員に加え非常勤職員を2名ほどおくことを想定されている。また職員に加え、相談の中で専門的な知識を要求された場合に対応する専門援助者(社会福祉士、介護福祉士、医師、保健婦、理学療法士、作業療法士、建築士、エンジニア等)を嘱託職員として確保することとされている。
 
2.市町村障害者生活支援事業の現状
@“等”に託した厚生省の思い
 上述したように、厚生省は要綱の中で“等”という表現を多用しつつ、この事業を柔軟に考え、従来から地域で自立支援を行ってきた組織、人材を活用することを求めている。“等”という表現を使わざるを得なかったのは、「自立生活センター」「ピアカウンセラー」が資格化、法定化された用語ではないため要綱には書けないというのが、当時の担当者(厚生省社会援護局更生課)の弁であった。
 この“等”が生かされNPOとしてこの事業を受託しているのは99年度で21ヶ所である。この21ヶ所の多くでは障害当事者がピアカウンセラーとして常勤職員となり、事業の中心を担っている。生活支援事業の実施にあわせて、地域の障害者団体で運営委員会を構成し事務局を新しく立ち上げる運営委員会方式とよばれる実施方法も生まれた。
 加えて、初年度は社会福祉協議会で受託し3年の期間をかけてNPO団体を設立して移行したケースや、身障療護施設や公社・事業団で実施しているが地域の当事者グループに社会生活力を高めるための支援やピアカウンセリングを部分委託している所も数ヶ所見られる。都内のB型センターで実施している所からは「行政ではこの事業はできないことがわかったので、当事者グループを育成して任せていきたい」というコメントも聞かれるようになっている。
A基本事業が秘めた可能性
 基本事業のうち、「サービスの利用援助」「専門機関の紹介」はこれまでも行政が実施してきたことである。これに「社会資源を活用するための支援」「社会生活力を高めるための支援」「ピアカウンセリング」が加わったことで障害者の地域生活の支援を行う上でより効果的になっている。
 「社会資源を活用するための支援」は障害者の生活を支えるための総合的な支援である。要綱では10個の例示がなされているが、行政制度の利用助言をするだけでは対応できない内容で、障害当事者の蓄積された経験がないと適切な情報提供ができない。福祉という特定の領域ではなく、幅広い地域活動の中でネットワークを培い、多様な社会資源、組織を柔軟に活用しなければならない。
 「社会生活力を高めるための支援」は、障害者自身に経験を通じて自身を与え、自立に向けての情報を選択する力など、まさに生きる力をエンパワメントするものである。「ピアカウンセリング」は、同じ障害を持つ仲間(ピアカウンセラー)が相談にのり、時にはロールモデルとして、障害者自身のもつ力を掘り起こすものである。これらの事業は障害者の自立生活運動の中から生み出された手法であり、その実践が評価され生活支援事業の中に位置づけられたという経緯がある。
B障害当事者に「夢」と「希望」を与えたが‥‥
 しかし、一方ではこの事業の本意が浸透していない市町村も多い。基本事業であるピアカウンセリングをほとんど実施できていない受託団体やピアカウンセラーと身体障害者相談員制度を混同している所がある。また、「社会生活力を高めるための支援」も「社会リハビリテーション」に読み替えられ、当事者の視点をもたない専門家主導のプログラムが実施されているという問題点もある。
 この事業の創設以来、地域での活動を行ってきた多くの当事者団体が受託を要望し行政に働きかけてきた。にもかかわらず、地域支援に実績のない社福法人等に委託されることも多く、この事業の本来の役割が果たせず、事業内容には地域間格差が大きい。

3.市町村障害者生活支援事業の課題
@どこまで変わる「与える福祉」の発想
 現状において指摘したように、この事業の趣旨の理解が不十分な所ほど、従来の福祉施策と何ら変わらないものになってしまっている。施設中心で組み立てられてきた従来の施策から転換しない限り、障害者の地域生活には結びつかない。
 障害者を単なる利用者、対象者として見る「与える福祉」の発想から脱却し、障害者自身をエンパワメントし、この事業を担う中心に位置づけていくことこそが、生活支援事業の本旨である。この認識を多くの地域に広げていかなければならない。
A事業者の創造性が問われる
 生活支援事業の今後の重要な課題の一つに、“サービス・社会資源の開発”があげられる。障害者の地域支援を行っていく際に、社会資源の不足という壁にぶつからない地域はまずない。生活支援事業の中で的確にニーズをつかみ、足りないサービスをどう資源化していくか、どのように地域に生み出していくか、ここからがこの事業の真価が、言い換えると事業者の創造性が問われるのである。
 実施団体のアンケートを見るに、介助サービスや移送サービスなどが多くの地域で不足しており、課題となっている。行政に新たな施策として整備するよう要望するのはもちろんのこと、制度のみに頼るのではなく実施団体自らが有償登録スタッフやボランティアを集めて、介助サービス、移送サービスに取り組み始めている所も少なくない。
 一方、ある地域では実施団体が行政に要望した所、「生活支援事業は市から委託した事業であるから、市の施策の範囲で実施して欲しい」というクレームがついたということもある。この事業は単なる行政の下請けではなく、対等なパートナーシップのもと、地域の福祉を形作っていくという視点を行政、実施団体双方が持たなければならない。
B問われる当事者の「専門性」と「社会生活力」
 私たちがこの事業について説明する時、「地域にはこの事業を担える当事者グループがない」「障害種別ごとの団体は存在するが、種別を越えて幅広い活動を行うという視点がない」などと良く言われる。確かに、生活支援事業は当事者の自立生活運動や地域支援活動の実績を踏まえて作られたものではあるが、そのような実践が全国津々浦々で展開されてきたわけではない。ピアカウンセラーをはじめ人材も全国的に不足している。
 当事者も自分の体験、経験を援助する力へと変えていくためには、この事業を担うための「専門性」と「社会生活力」を身につけなくてはならない。当会も活動の一つとして、生活支援事業実施団体の委託を受けて地域のピアカウンセラーの人材養成・発掘を目的とした出前のピアカウンセリング集中講座を実施している。人材がいないで済ますのではなく、生活支援事業の中で、事業の中心となる障害当事者、組織を発掘し、育てていく取り組みが重要であるとともに、行政もこの事業を地域の当事者グループに任せ、事業のプロセスの中で育成していくという視点を持たなければならない。地域の福祉を担う障害当事者の養成は生活支援事業の最重要課題である。なぜなら、生活支援事業を実施する中で当事者がエンパワメントされ、サービスの受け手から担い手へと成長する、この事はまさにこの事業の本旨にのっとったことだからである。

 

◆中西 正司(ナカニシ ショウジ) ヒューマンケア協会 代表
    「地域生活支援の方法と課題 −利用者主体の地域生活支援の実践−」

 ●●要旨●●

 障害者プランはその策定に障害者の参画を義務づけるなど生活支援における当事者の役割を意識したものであった。96年の市町村障害者生活支援事業は当事者主体で運営される自立生活センターをモデルとし、ここではさらに一歩進めて、障害者の当事者への地域支援能力を明確に重要な社会資源として捉え、必須事業の一つにピアカウンセリングを始めて位置づけた。また委託団体として非法人を認めたことは地域にある自立生活センター等の新たな状況を踏まえていたのである。

◆当事者の専門性
 地域ケアの中で当事者の専門性と専門家の専門性とが対立して語られるのであろうか。英国放送大学の教授ビック`・フィンケルスティンは施設ケアから地域ケアへの移行を次のように位置づけている。
 「ケアの地域への逆戻りは、障害者の家庭で元々提供されていたケアとサポートとの混合と、専門家が提供する分離的ケアとの間に境界が立てられた時に作り上げられた。専門家による援助の一方的性格を浮き彫りにしたのである。ケアはサポートの復活と提供がない限り、メインストリーム化(地域に戻ってくること)はあり得ない。」(中西・チョン・中原『セルフマネジドケア・ハンドブック』2000年5月、260p ヒューマンケア協会刊)
 さて、当事者のサポートの何がどこまで有効なのか、それに対して専門家のケアはどこまで有効なのか。生活支援事業の5つの必須事業を中心に考察していきたい。5つの必須事業とは以下に述べる項目である。

1.ヘルパー等の調整
2.ピアカウンセリング
3.社会生活力を高めるための支援
4.社会資源の活用
5.精神・知的等専門機関の紹介について検証してみよう

 ●●資料●●

1.ヘルパー等の調整
 従来行政のケースワーカーがヘルパーの調整にあたってきた。その場合訪問調査しニーズ確認し、業者に均等に依頼するというものであった。当事者のサポートではもっと木目の細かい支援が行われる。本人が同じような障害をもつ者に会ってヘルパーの利用法について話しを聞く機会を作る。自立生活体験室で試行的にヘルパーを入れてみての経験を通して自分でニーズを確認する。ヘルパー派遣組識全ての長所と欠点の情報を本人に伝え正しい選択ができるように本人をエンパワーする。全ての過程で当事者のピアカウンセラーが支援や相談にのる。このような支援方法をとる発想自体が障害当事者のニーズを体感しているからこそできるのである。
 このような支援のもはや必要ない者にはケアマネジメントから脱してセルフマネジドケアに向かうための支援が出来る。自己選択と自己決定の幅を広げていくのは自立生活における重要な要件である。そのためには介助者の評価、教育、管理が必要である。面接、雇用、解雇の各段階で自分が主体者になる必要がある。それを支援していくのがセルフマネジドケアへのピアカウンセラーの支援である。
一方、この過程をすべてケースワーカーやケアマネジャーに任せてしまっては本人はエンパワーせず、永久に自立できずに終わる。
 専門家の専門性の由来は情報の独占から来ている。ケアマネジャーが全ての情報を本人に伝えれば本人はエンパワーし、生き生きと自立生活に向かうのである。これは自立生活センターのピアカウンセラーが対等な関係の仲間として自立生活のための情報を惜しみなく伝え,本人がエンパワーしている姿を見れば明らかである。自らが権威となったり、専門家にはなる道を選んでいるのとは対照的である。

2.ピアカウンセリング
 ピアカウンセリングの何が有効なのか。障害を受容し克服していく過程でロールモデルの果たす役割については理解しやすい。しかしさらに重要なのは同じ地域に住み一生涯にわたり同じ障害者として見捨てることなく支援してくれる仲間が存在すると言う安心感だろう。この信頼感に裏打ちされてピアカウンセラーは他の支援者に比べ格段に重要な地位を占めるのである。
 2000年5月1日の福祉新聞によると授産施設で生活している障害者の6割は町で暮らしたいといっているのに対して親の84%はそれに反対している。この場合ピアカウンセラーは親や施設職員よりはるかに強く本人の支援者になれる。そして自立生活センターのあるところでは本人の不安感を自立生活体験室での体験的プログラムやピアカウンセリングプログラムの精神的エンパワープログラムによって徐々に取り除き、本人のペースに合わせた支援態勢を整えていく。最T初は反対していた親も徐々に心を開いて行く、そして最後には当事者支援のシステム的強固さと完璧なプログラムに感嘆する。
 一方、自立生活センターのような当事者支援のシステムやプログラムや介助サービスをもたない孤立した障害者が福祉センターやリハセンターに雇われた見かけ上のピアカウンセリングの場合、国の身障相談員制度と同じ事が起こる。年に1−2度しか相談が来ない、きても月に1回程度の相談日では聞くだけで支援にまでは程遠い。毎日障害者が常勤でいて相談に乗れなければ誰も信頼して相談しようとは思わない。

3.社会生活力を高めるための支援
 地域で障害者が暮らしていくために必要となる「力」には障害者に特有なものが多い。それも知識としてではなく体験や実行する中で獲得していく質のものが多い。介助を受ける立場から介助者を管理する力、調整能力、交渉能力が求められる。これはいわば従業員を5〜20名抱えた事業主の心境であろう。これを教えてくれる機関は自立生活センターの他にあるとは寡聞にして聞かない。専門職の教育課程にはこのような科目は今のところない。自立生活センターでこれにあたるサービスが自立生活(以下IL)プログラムである。単なる生活力のスキルであれば一般的な専門家がリハセンターで教えても同じではないかと考えられるが、ところが経験や体験、実行から学ぶことは社会の中で突発的な事象が起こったり、偶然街で出会った人との関係性の中から生まれてくる。リハセンターのような閉鎖的空間の中でその体験をすることは不可能であろう。また白沢正和氏と対談したおりに「専門家は障害者に失敗をさせないようにケアマネジメントするのが良き専門家である」という。これは根本的な誤りではないか、人間は失敗しながら学んでいる。失敗できない施設の中で成長はない。自立生活センターのILプログラムは親元や施設にいて失敗を経験できなかった人に失敗をさせるためのプログラムだとも言える。危険回避とか責任の所在という陳腐な管理思想解き放ち、自己責任と自己管理という人間本来の権利を障害者に取り戻していくのが自立生活運動でもある。

4.社会資源の活用の仕方
 一見専門職やケースワーカーが最も得意とする分野であり、これまでもやってきたところである。情報提供はノウハウとデータの蓄積とがあれば誰にでも出来るし効果も目に見える。それで終わりと考えたならあなたは当事者の支援者とはいえない。あなたのもっている情報をどれだけ本人に移転できたか、どれだけ本人が主体的にエンパワメントしたか。それが支援者の評価基準である。
 ケアマネジャーは本人に必要なサービスが地域になければ作り出さなければならないと規定されている。生活支援事業の職員も当然同じ事を要求される。しかし地域にリフトバスサービスを生み出したりホームヘルプサービスの時間数を増やしたりということは行政から出向している職員にはよほどの事がないと難しい。自立生活センターはこれまで地域に必要なサービスを事業体として生み出してきた。それは運動体とサービス提供者利用者が一体のものとしてあったからであって、それ以外の方法では不可能であったろう。世界の自立生活センターを回ってみて感じるのは強力な自立生活センターのある街とその国の福祉サービスはずば抜けてよいということである。
利用者主体のサービスとは当事者を抜きにしては存在し得ないという一般的真理がある。

5 専門機関の紹介
 福祉事業法の改正を控えてここ1−2年、入居型施設も地域への展開を模索し始めた。グループホームでもホームヘルパーが使えたり、施設内での集団居住から分散居住への転換は地域ケアの幕開けを予感させる事態とも言える。知的、精神障害者のホームヘルパー制度の開始とともに、地域で暮らしたいという希望を持っている78%の精神障害者、64%の知的障害者への対応を迫られている。(資料1を参照)
 
【資料1】
 
平成11年度 八王子市障害者生活支援事業集計(年間)

    (略)

注)S:小計、L:合計、当月:当月新規相談、当継:当月継続して受けた相談
  計1:2000年3月の合計、計2:3月+継続相談件数、計3:99年度全体合計
  2000年3月現在の相談件数は101件であり、年間全体相談件数は1281件であり、
  月平均相談件数は100件程度である。

  cf.◆市町村障害者生活支援事業

UP: REV:
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