HOME > 組織 >

国際宗教研究所




◆武藤さんより

お知らせ
公開シンポジウム
生命操作はどこまで許されるのか?
―〈人のいのちの始まり〉と科学の介入―

主催:国際宗教研究所
後援:朝日新聞社・大正大学

 この度、私ども国際宗教研究所では、下記のように公開シンポジウムを行う運びとな
りました。現代の急速に進む科学技術の進歩が投げかける困難な問題に、宗教界がどの
ように応答すべきかを考える集いとしたいと存じます。ふるってご参加下さいますよ
う、ご案内申し上げます。

(1)日時・場所
日時:公開シンポジウム 3月17日(土)、13:00―17:40(開場・12:30)
場所:大正大学礼拝堂
  〒170-8470 東京都豊島区西巣鴨3-20-1
(地下鉄都営三田線「西巣鴨」下車徒歩2分
    都電荒川線「新庚申塚」下車徒歩7分
    JR埼京線「板橋」下車徒歩8分)
(なお、シンポジウム終了後、希望者参加による懇親会を行います。18:00―20:00)

(2)パネリスト・司会者
◇発題者
井村裕夫氏(生命倫理委員会委員長、元京都大学学長)
西川伸一氏(京都大学教授、基礎医学)
薗田稔氏(京都大学名誉教授、秩父神社宮司)
大村英昭氏(関西学院大学教授、浄土真宗僧侶)
島薗進氏(東京大学教授、宗教学)
◇コメンテーター
最相葉月氏(ノンフィクションライター)
位田隆一氏(京都大学法学部教授、国際法)
◇司会
村上陽一郎氏(国際基督教大学教授、東京大学名誉教授、科学史)

(3)主旨
[人間のクローンが可能に] 
 近年の生命科学の発展は著しいものがあり、これまでには考えられなかったような、
新たな医療の可能性が切り開かれようとしています。臓器移植もこれまでのように、他
者の臓器をもらうのではなく、もっと自分のからだにあった臓器を別に作って取りかえ
るというやり方が可能になるかもしれないといいます。たとえば動物のからだを借りて
自分の遺伝子をもった細胞を育て、働かなくなった臓器を動物のからだから補充すると
いうようなことも夢ではない事柄と考えられているようです。
 このような新しい医療の可能性を切り開く上で画期的な出来事の一つは、いわゆる羊
のクローン、ドリーの誕生でした。1996年、イギリスのロスリン研究所で、羊の雌雄の
生殖細胞をかけあわせることなしに、一頭の雌の羊から、その羊と同じ遺伝子をもつ子
どもを作ることができたのです。とても難しいであろうと思われていた、高等な哺乳類
のクローンを作ることができることが判明し、その技術を用いれば、人間のクローンも
作ろうと思えば自由に作ることができることは確実と、皆が思うようになりました。し
かし、男女の生殖細胞の合体を経ずして、ある人間と同じ遺伝子をもった人間を産み出
すことが許されるでしょうか。
[胚とES細胞(万能細胞)の研究]
 多くの国々の政府が、人間のクローンの作製の可能性に危惧を表明し、禁止の方向で
政治的処置をとり、さらに法律の整備等を進めようとしています。しかし、クローンの
禁止をしようと思うと、関連する新しいさまざまな医療技術や、研究の可否についても
問わなくてはならなくなります。卵子と精子とが合体した受精卵は、一人の人間のいの
ちの始まり(生命の萌芽)といえる「胚」となります。やがて胎児となる前の、形も定
まらぬ細胞の塊ですが、しかし、その細胞群は将来、まったき人間にまで発達すること
ができる不思議な存在です。いのちの尊厳をそこに認めないわけにはいかないのではな
いでしょうか。ところが、この「人の胚」を用いて、さまざまな医療技術を開発するこ
とができるのです。
 たとえば、胚の段階までなら、クローンを作ってもよいのでしょうか。子宮に着床す
る前の「クローン胚」を作ることができれば、それを用いてさまざまな実験や医療技術
の開発ができるでしょう。また、胚から取り出すことができる「万能細胞」、すなわち
無限の増殖力をもち、さまざまな人体組織に発展していくことができるES細胞(人胚性
幹細胞)にも大きな期待がかけられています。すでに1998年、アメリカの学者が人間の
ES細胞の樹立に成功しました。クローン作製にまさるとも劣らない重大な技術開発と見
なされています。この細胞を取り出して、医薬に必要な物質を生み出したり、臓器を作
り出すなどということも可能になるかもしれません。
[生命操作はどこまで許されるのか?]
 しかし、胚を破壊してそのかわりに取り出すことができるこのES細胞、「いのちの不
思議」を体現するようなES細胞を、科学の対象として研究することが許されるのでしょ
うか。許されるとしてどのような配慮が必要でしょうか。新しい生命科学と生命操作技
術の発展は、「〈人のいのちの始まり〉への科学の介入」という、人類がこれまでまっ
たく知らなかった、新しい問題を現代人につきつけているのです。
 日本政府は科学技術会議の生命倫理委員会を中心に、クローン作製や人胚研究の許容
可能性について審議を重ねた上で、2000年4月に「ヒトに関するクローン技術等の規制に
関する法律案」を国会に提出しましたが、国会は同年11月にこの法案を成立させまし
た。ES細胞の研究についてもいちおうGOサインが出たと理解されています。しかし、こ
の問題についての国民の理解はまだまだ十分とはいえません。世界各地で今、さかんに
議論が行われているところです。人のいのちの尊厳に関わる問題ですから、それにふさ
わしく、多くの国民の理解を得て、じっくり議論を深めていく必要があります。
[問われる宗教界の対応]
 日本の国内でも、この問題に危惧を表明する人々は少なくありません。宗教界から
も、すでにカトリック教会や大本教から、より慎重な検討を求める声が上げられていま
す。キリスト教とは異なる宗教的基盤をもちながら、最前線の科学に深い関わりをもつ
日本は、かつて脳死問題についてそうであったように、この問題についても、独自の文
化的宗教的伝統を踏まえながら、確かな人間観や生命観に基づく方針を形づくっていく
べき時です。
 このシンポジウムは、宗教界がこうした問題について真剣に考えていくための、一つ
のきっかけを作ろうとするものです。また、この問題をめぐる宗教界の声が広く聞か
れ、理解されていくための機会ともしたいと考えています。自然科学の複雑な知識が求
められる問題なので、まずは問題点を理解することに力点を置きます。そして宗教団体
や宗教に関わりをもつ人々が、科学者やその他の人々と協力しながら、今後この問題を
ともに深く考え、豊かな内実をもった世論を形成していくのに貢献するための手がかり
を提供することを目標としています。

(4)参加申し込み
国際宗教研究所賛助会員関係者・個人会員、および宗教情報リサーチセンター(RIRC)
会員は無料。一般の方は、1,000円、学生は、500円です。なお、懇親会費は、3,000円で
す。

参加ご希望の方は、ファックスか葉書で国際宗教研究所まで、お申し込み下さい。参加
費は当日、受付で申し受けます。

連絡先:
(財)国際宗教研究所(〒165-0035 東京都中野区白鷺2-48-13、
Tel/Fax:03-5373-5855)



生命倫理[学]   ◇クローン  ◇学会/研究会  ◇研究・教育機関のホームページ
TOP HOME (http://www.arsvi.com)