*この頁は故西尾等さんが遺されたホームページを再録させていただいているものです。→その表紙ALS [2003.7 再録:立岩 真也]



■運動ニューロン疾患について■ 運動神経のみが障害される病気を総称して、MND:運動(モーター)神経(ニューロン)疾患(ディジーズ)と言います。
その代表的なのがALSです。またSPMA脊髄性進行性筋委縮症との診断を受けても、ALSにその後進行する場合があります。本来SPMAは下位ニューロンの症状のみを示すタイプで、上位ニューロン症状の“腱反射の亢進”は見られません。
SMA:脊髄性筋委縮症やWH:ウェルドニッヒホフマン病(幼児期から発症)、KW:クーゲルベルクベランダー病(青年期より発症)は遺伝と言われています。また、球脊髄性委縮症(ケネディー症候群)もMNDとする場合があります。上位ニューロンが障害されるX染色体劣性遺伝です。
■ALS筋萎縮性側索硬化症とは■
◎上位ニューロンと下位ニューロンの両方が侵される病気で、最初は上肢又下肢の末端から非対称に進行する運動ニューロン疾患(MND)です。
つまり運動を司る神経のみが選択的に障害を受け、他の感覚系や自律系神経は侵されません。症状としては、筋力低下、筋委縮、筋収束などで始まり、上位ニューロンが侵されると下肢腱反射の亢進等が見られる。
タイプとしては、
1、上肢タイプ
2、下肢タイプ
3、球麻痺タイプ
の3つに区分され、上肢タイプでも、例えば右手から発症して、左手に進行する私の様な場合と、右足に進行する場合など様々です。その進行形態により、M型/N型/逆N型と呼ばれている。
進行速度はかなり個人差があり、何年も人工呼吸器を付けなくても暮らせる人もいれば、私の様に下肢に進行するより速く呼吸筋が侵されるケースも有ります。
元ニューヨークヤンキースのルーゲーリック選手や宇宙物理学博士のホーキング氏もALSです。

 
しかし、平均5年以上の生存率は20%以下に過ぎません。
この数値はいかに人工呼吸器装着を拒否して、死を選ぶ方が多いかを示しています。何故なのでしょう?

事実私の入院している病院でも、この2年半の間に人工呼吸器を装着したALS患者は『2名』で、非選択患者は『5名』です。
酸欠+二酸化炭素の増加により、呼吸困難と最後には顔を土色にして、意識もうろうのまま死を迎えるのです。それが尊厳死の現実なのです。何故?

■ALS筋萎縮性側索硬化症と治療最前線
『発症原因の研究』
  1. SOD-1遺伝子
    今現在ALS発症の原因として特定できており、また唯一実験可能なALS発病マウスを提供出来る意義は大きい。
    SOD(スーパーオキシドディスミターゼ)は強い
    活性酸素O2-(スーパーオキシド)を抑制する酵素です。体内ではO2-/H2O2/OH/シングルオキシジェンなどの活性酸素と、抗桔する酵素やベータカロチン(ビタミンA)/ビタミンCのバランスでなりたっているのです。
     人間の体内では、このO2-の強い殺菌作用で外敵から自分自身を防御している。感染が起きると、白血球が集まり酸素を出して殺菌します。泡の出る消毒薬も同じ殺菌原理です。
    また、心臓体外循環後や肝臓移植の為に虚血した後、血液を再還流すると活性酸素が発生して、組織障害を起こします。
    発生したO2-は通常ならSODにより、ハイドロゲンペロオキサイド/H2O2などに変化し、さらに様々なペロオキシダーゼにより、シングルオキシジェンに変り、ベータカロチンなどにより、H2Oに変ります。
    また、激しいストレスによっても、活性酸素を生じます。活性酸素には白血球の関与があります。

    ところがALSの2%の患者に、このSOD機能に異常(機能低下)があり、しかもそれが家族性(遺伝)であることが判っています。家族性FALSは孤発性PALSの約10%-15%以内と言われています。
  2. 第九染色体
    まれに、家族性ALSのうち第9染色体に異常が見つかっている特殊な家系の存在があります。異常な程その家系にはALSが多発しています。
  3. グルタミン酸
    ジョンズホプキンス大学の研究チームが中心になって、グルタミン酸の異常蓄積の原因が、EAAT2タンパクが複製の際に誤ってコードされ、疑似タンパクが正常なタンパクを抑制するため、グルタミン酸を抑制出来ずに、脳と脊髄の運動神経の周りにグルタミン酸が異常蓄積し、そのグルタミン酸は興奮性神経伝達物質で、運動神経を障害していくと考えられている。
  4. 発病原因は?
    地域的には和歌山/三重南部に多く、アルミニウム説を唱える学者もいる。また米国では、歯科治療の際のアマルガム(水銀)説や農薬環境物質に注意を喚起さすように訴えている人もいる。また、ポリオが完治したように見えても十数年後に筋委縮を起こす事がある事から、エンテロウイルス説を発表している学者もいる。またライム病原因説を提唱する学者もおり、非常に混乱している。
    血縁関係の無い家族や夫婦でALSになっている方の報告から、ウイルス説を支持するようにも思えるが、多くの夫婦がALSに“感染”している事実は見られない。歯科治療のアマルガムなら、もっとALS患者が増えてもおかしくない?
    交通事故や転落などによる頭部打撲や手術による影響も考えられる。また、喫煙による脳内血流不足も疑われる。
    しかし、これといった確証にはどれも乏しいのが事実です。それにはALS診断が消去法で行われており、確たる診断検査が確立されていない為に、誤診も有り、原因特定の弊害になっています。また、一つの原因で発症する病気ではないのかも知れません。それにALSといっても原因は様々かもしれません。
    【アンケートにご協力下さい。】


【DNAとRNAの雑学】
DNAはデオキシリボ核酸の略で、染色体上にあります。形状はラセン形でAGTCのたった4つの塩基の組み合わせから成り立ち、きちんとした法則があります。A(アデニン)はG(グアニン)とのみ対になり、T(チミン)はC(シトシン)とのみ対になります。つまりG-A, T-C, C-T, A-Gの組み合わせが、ラセン階段に並んだものを想像しましょう。§§§§§
複製する場合は、その対の鎖が酵素で切断されて、1本になっていきます。トランスファー(転写)RNAにより、きちんと塩基配列がコピーされていきます。(CATTGAATTTCAGTAA)のように。各対の塩基は決まっているから、反対側は(TGCCAGGCCCTGACGG)と必然的になります。何と合理的なのか! ! !
ある塩基配列により、特定のタンパクのみがメッセンジャーRNAにより精製されていきます。しかしその段階で、(例)G→Aと誤って複製されると疑似タンパクが作られていきます。癌などの場合も、本来は対になるはずの無い塩基同士がくっついたり、対の鎖に歪みが生じたり、癌タンパクを作り出したり様々な異変を作ります。
分子量を調べるには特定の部分で切断する酵素を使い、切断した後、電気泳動をかけます。放射性物質の32p(リン)が結合されているので、どのくらい移動したかは、32pの距離を比べれば分子量が判ります。分子量が大きいとのろく、小さいと速いのです。
小錦と若乃花と、瀬古を走らせ、距離の差から、体重(分子量)を割り出すのに似ています。

『治療薬の研究』
  1、グルタミン酸抑制薬
    リルテック/ノイロンティン(商品名:ガバペンティン)/LY 300164
  2、免疫抑制剤
    サノフィー(商品名:SR57746A)/FK506
  3、神経保護物質/神経成長因子
    GDNF/FK506
  4、抗酸化剤 
    大豆レシチン結合SOD(対O2-)
    セレン(対H2O2)
  5、その他の治療法
    リンパ球除去(リンフォプラズマ)
    末梢幹細胞移植など。
    免疫グロブリン療法
◆◇◆◇AGTC◆◇◆◇TaGC◆◇◆◇CGTA◇
ALS関係の書物。

「まぶたでつづるALSの日々」
土井巍・土井喜久子 著 1,800円 白水社

「肢体不自由者のためのコミュニケーション機器」
東京いきいきライフ推進センター
1部 300円。

東御建田 郁夫(ひがしみたてだ いくお)
「いのちの瞬き −まだ瞼は動く」
東洋経済新報社刊。本体千四百円。

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